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視覚しかく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
いち視覚しかくから転送てんそう
のう: 視覚しかく
ブロードマンののう地図ちずにおける17 (いち視覚しかく) があか、18がオレンジ、19黄色おうしょくしめされている。
名称めいしょう
日本語にほんご 視覚しかく
英語えいご Visual area, Visual cortex
関連かんれん構造こうぞう
上位じょうい構造こうぞう 大脳皮質だいのうひしつこうあたま
関連かんれん情報じょうほう
Brede Database 階層かいそう関係かんけい座標ざひょう情報じょうほう
MeSH Visual+Cortex
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視覚しかく(しかくや、えい: visual cortex)という用語ようごは、V1りゃくされるいち視覚しかく (または、線条せんじょう皮質ひしつ (striate cortex、有線ゆうせん皮質ひしつとも)) およV2V3V4V5りゃくされるそと線条せんじょう皮質ひしつ (extrastriate cortex、有線ゆうせんがい皮質ひしつ有線ゆうせんりょうがい皮質ひしつとも) をしめす。いち視覚しかくブロードマンののう地図ちずにおける17解剖かいぼうがくてき同等どうとうである。

イントロダクション

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いち視覚しかく (V1) は、こうあたまにあるとり距溝まわりに位置いちする顆粒かりゅう皮質ひしつ (Koniocortex) であり、外側そとがわひざじょうかくから直接ちょくせつ情報じょうほうる。

がわ皮質ひしつ視覚しかくみどりはらがわ皮質ひしつ視覚しかくむらさきしめされている。両者りょうしゃいち視覚しかくから出発しゅっぱつしている。

V1 はがわ皮質ひしつ視覚しかくはらがわ皮質ひしつ視覚しかくばれる2種類しゅるい主要しゅよう視覚しかく経路けいろ情報じょうほうつたえる。

  • はらがわ皮質ひしつ視覚しかくは V1よりはじまり V2、V4、を通過つうかしたがわあたま皮質ひしつへとかう。はらがわ皮質ひしつ視覚しかく経路けいろときに、what経路けいろともばれ視覚しかく対象たいしょう認識にんしき形状けいじょう表象ひょうしょう意識いしきにのぼる映像えいぞう)と関連かんれんしている。また、長期ちょうき記憶きおく貯蔵ちょぞうとも関連かんれんしている。

がわ皮質ひしつ視覚しかくはらがわ皮質ひしつ視覚しかく二分にぶんほう (またはwhere/whatの二分にぶんほう行動こうどう (action) /知覚ちかく (perception) の二分にぶんほう) [1]はアンガーライダー (Ungerleider) とミシュキン (Mishkin) によって最初さいしょ定義ていぎされ[2]現在げんざいでも視覚しかく神経しんけい科学かがくしゃ心理しんり学者がくしゃあいだ論争ろんそうこしている。おそらく、この二分にぶんほう視覚しかくでの実際じっさい出来事できごと単純たんじゅんぎている。この研究けんきゅうエビングハウス錯視さくしなどによって知覚ちかく判断はんだんゆがめられるという発見はっけんもとづいているが、通常つうじょうひと把握はあく運動うんどうなどの行動こうどうによって反応はんのうするとき知覚ちかくゆがみは発生はっせいしない。しかし、最近さいきん研究けんきゅう [3]では行動こうどう知覚ちかくはこれらの錯視さくし同様どうよう錯覚さっかくきているとされている。

視覚しかくのニューロンは、視覚しかく刺激しげき受容じゅよう呈示ていじされたとき活動かつどう電位でんい発生はっせいさせる。定義ていぎから、受容じゅようぜん視野しやうち活動かつどう電位でんいしょうじさせるものをす。しかし、あるニューロンにかんしては、そのニューロンの受容じゅよう特定とくてい刺激しげきのサブセットに応答おうとうする。この特性とくせいチューニングばれる。より初期しょき視覚しかくではより単純たんじゅんなチューニングがおこなわれている。たとえば、V1 のあるニューロンはその受容じゅようあらわれる垂直すいちょくせんたいして発火はっかする。より高次こうじ視覚しかくではより複雑ふくざつなチューニングがおこなわれている。たとえばしたがわ頭皮とうひしつ (IT) のあるニューロンはその受容じゅようあらわれる特定とくていかおたいして発火はっかする。

視覚しかくこう大脳だいのう動脈どうみゃくとり距溝えだから血液けつえき供給きょうきゅうもっとける。

最近さいきん研究けんきゅう

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いち視覚しかく研究けんきゅうでは活動かつどう電位でんいネコフェレットラットネズミサルのうした電極でんきょくによって計測けいそくしたり、動物どうぶつにおける内因ないいんせい光学こうがく信号しんごう計測けいそくしたものや、ヒトやサルの V1 のfMRI信号しんごう計測けいそくするものがある。

最近さいきんのある発見はっけんでは、ヒトの V1 のfMRI により計測けいそくされる信号しんごう注意ちゅういによる調節ちょうせつ (attentional modulation) をつよくうけるというものがある。この結果けっかマカクザル生理学せいりがくてき研究けんきゅうにおいて、注意ちゅういによる調節ちょうせつによりニューロンの発火はっかほとん変化へんかられなかった結果けっか対照たいしょうてきである。しかし、マカクザルの研究けんきゅうは1ニューロンのスパイク活性かっせい調しらべたものであったが、fMRI 信号しんごう神経しんけい基盤きばんおもこうシナプス増強ぞうきょう (PSP) によるものである。したがって、今回こんかい結果けっかちがいがそのままヒトとマカクの生理学せいりがくてきちがいを意味いみするものではない。

最近さいきんの V1 の研究けんきゅうでは、そのチューニングの特性とくせい完全かんぜん説明せつめいし、皮質ひしつのカノニカル回路かいろのモデルとして利用りようしようとこころみたものがある。

いち視覚しかく損傷そんしょうくらてん (視野しやにできた『あな』) をす。興味深きょうみぶかいことに、くらてん患者かんじゃ意識いしきてきにそれを知覚ちかく出来できないにもかかわらず、くらてんにおける視覚しかく情報じょうほう利用りようすることが出来できる。この現象げんしょうめくらばれ、意識いしき相関そうかんしたのう活動かつどう (neural correlate of consciousness) に興味きょうみ研究けんきゅうしゃひろ研究けんきゅうされている。

いち視覚しかく (V1)

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いち視覚しかくのう視覚しかくもっと調しらべられている領域りょういきである。研究けんきゅうされたすべての哺乳類ほにゅうるいにおいて、いち視覚しかくこうあたま (こうあたま視覚しかく刺激しげき処理しょりになっている) のこうあたまきょく位置いちしている。いち視覚しかくは、もっと単純たんじゅんもっと初期しょき活動かつどうする視覚しかくで、静止せいし、または運動うんどうする対象たいしょうかんする情報じょうほう処理しょりとくし、また、パターン認識にんしきちから発揮はっきする。

機能きのうてき定義ていぎされたいち視覚しかくばれる領域りょういきは、解剖かいぼうがくてき定義ていぎされる線条せんじょう皮質ひしつとおよそ同等どうとうである。"線条せんじょう皮質ひしつ (striate cortex)"という名前なまえジェンナリせん (stria of Gennari) とばれる、外側そとがわひざじょうたいからはいしろしつのIVそうへとびるずいさやされたじくさくの、肉眼にくがんでも識別しきべつ可能かのうおおきなじま模様もよう由来ゆらいする。

いち視覚しかくはIそうからVIそうまでラベルされた6そう機能きのうてきことなるそうけられる。そのうち外側そとがわひざじょうたい (LGN) からほとんどの視覚しかく情報じょうほう入力にゅうりょくけるIVそうは4A、4B、4Cαあるふぁ、4Cβべーた のさらに4そうけられる。4Cαあるふぁ そう外側そとがわひざじょうたいからのほとんどのきょ細胞さいぼうせい入力にゅうりょくけ、4Cβべーた そうしょう細胞さいぼうせい経路けいろからの入力にゅうりょくける。

ヒト成人せいじんいち視覚しかく平均へいきんニューロンすうはそれぞれの大脳だいのう半球はんきゅうにつき、やく1おく4000まんほどであると見積みつもられる。(Leuba & Kraftsik, Anatomy and Embryology, 1994)

機能きのう

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優位ゆういせいコラムのしき。これらの皮質ひしつコラムは、それぞれ片方かたがた受容じゅよう一部いちぶ表現ひょうげんしている。
方位ほうい選択せんたくせいコラムのしき受容じゅよう通過つうかするエッジのかたむきによって、コラムの反応はんのう選択せんたくせいがチューニングされている。方位ほうい選択せんたくせいコラムは、ピンホイール (pinwheel) を中心ちゅうしん特定とくてい受容じゅようにおけるすべての方位ほういをカバーするように構成こうせいされている。

V1 は視覚しかくにおける空間くうかん情報じょうほう明確めいかくなマップをつ。たとえば、ヒトのとり距溝じょうかべ視野しやした半分はんぶん視覚しかく情報じょうほうつよ応答おうとうし、しもかべ視野しやうえ半分はんぶん応答おうとうする。概念的がいねんてきには、このレチノトピーのマッピングは網膜もうまくから V1 へ視覚しかくぞう変換へんかんとみなせる。視野しやと V1 における位置いち対応たいおう非常ひじょう正確せいかくで、盲点もうてんでさえも V1 でマップされている。この対応たいおう関係かんけい進化しんかてき基本きほんてきで、V1 をもつほとんどの動物どうぶつにおいてられる。中心ちゅうしん動物どうぶつやヒトでは、V1 のおおきな割合わりあいめる領域りょういきが、視野しや中心ちゅうしんにあるちいさい領域りょういきをマップしている。この現象げんしょう皮質ひしつ拡大かくだい(cortical magnification) としてられる。おそらく、正確せいかく空間くうかんてきコーディングのために、V1 のニューロンの受容じゅようおおきさはすべての視覚しかく微小びしょう領域りょういき最小さいしょうであろう。

V1 ニューロンのチューニング特性とくせい (ニューロンの応答おうとう選択せんたくせい) は時間じかんによっておおきくことなる。短時間たんじかん (40ms前後ぜんこう) で、それぞれの V1 ニューロンは刺激しげきちいさなくみたいしてつよくチューニングされる。つまり、それぞれのニューロンの応答おうとうせい視覚しかく刺激しげき方位ほうい空間くうかん周波数しゅうはすういろわずかなちがいにけることが出来できる。さらに、ヒトと、りょうをする動物どうぶつの、それぞれの V1 ニューロンは優位ゆういせいち、文字通もじどおりょうのうちの片方かたがたたいしチューニングしている。V1 と一般いっぱんてきいち感覚かんかくのニューロンはたチューニング特性とくせいつものであつまり、皮質ひしつコラムとばれる構造こうぞうつくる。デイヴィッド・ヒューベルトルステン・ウィーセル優位ゆういせい方位ほういの2つのチューニング特性とくせい皮質ひしつコラムについて古典こてんてきなモデル (the classic ice-cube organization model) を提唱ていしょうした。しかし、このモデルはいろ空間くうかん周波数しゅうはすうなどの、ニューロンがチューニングされるほかおおくの特徴とくちょうについては適合てきごうしなかった。これらすべての V1 の皮質ひしつコラムの正確せいかく構成こうせいは、最近さいきん研究けんきゅうにおいて、いまだにホットなトピックである。

現在げんざいでは、V1 ニューロンの初期しょき応答おうとう選択せんたくてきとき空間くうかんフィルター (spatiotemporal filters) で構成こうせいされているとかんがえられている。空間くうかん次元じげんでは、V1 の機能きのうおおくの空間くうかんてき局所きょくしょてきふくあいてきフーリエ変換へんかんたものであるとかんがえられる。理論りろんてきには、このようなフィルターは、空間くうかん周波数しゅうはすう方位ほうい運動うんどう運動うんどう方向ほうこう速度そくど (したがって、時間じかん周波数しゅうはすうも) やほかのおおくのとき空間くうかんてき特徴とくちょうについて神経しんけいてき処理しょりおこなうことができる。V1 ニューロンにおける実験じっけんは、この理論りろん実証じっしょうするが、さらにあたらしい疑問ぎもんむ。

時間じかんてきおそく (100 ms) に、V1 のニューロンはシーン (scene) のより大局たいきょくてき構造こうぞう応答おうとうする(Lamme & Roelfsema, 2000)。このような応答おうとう特性とくせい回帰かいきせい処理しょり (高次こうじ領域りょういきからていつぎ領域りょういきへの影響えいきょう) ときりたい細胞さいぼう水平すいへい結合けつごう (Hupe et al 1998) によりしょうじるものとかんがえられる。

V1 へと中継ちゅうけいされる視覚しかく情報じょうほう空間くうかんてき (または光学こうがくてき)なぞうとしてというよりは、局所きょくしょてきなコントラストとしてコードされている。たとえば、片側かたがわくろ反対はんたいがわしろからぞうは、局所きょくしょてきなコントラストが最大さいだいであるくろしろけるせんがコードされ、輝度きど情報じょうほう (くろさやしろ自体じたい) はわずかなニューロンしかコードしない。情報じょうほう高次こうじ視覚しかく領域りょういきへと中継ちゅうけいされるにしたがって、局所きょくしょてき周波数しゅうはすう/位相いそう信号しんごうがよりおおくコードされていく。重要じゅうようなことは、このような皮質ひしつでの視覚しかく処理しょり初期しょきでは、視覚しかく情報じょうほう空間くうかんてき位置いち局所きょくしょてきなコントラストのコーディングのなかでつよ保存ほぞんされているてんである。

V2ぜん有線ゆうせん皮質ひしつ (prestriate cortex) ともばれ[4]視覚しかくの2番目ばんめひろ領域りょういきで、視覚しかく連合れんごうの1ばんはじめの領域りょういきである。この領域りょういきは V1 からのつよフィードフォワード接続せつぞくけ、V3、V4、V5へと接続せつぞくおくっている。また、V1 へのつよフィードバック接続せつぞくつ。

解剖かいぼう学的がくてきには V2 は左右さゆう半球はんきゅうがわはらがわの4つのよんふんえんけられる。この4領域りょういき一緒いっしょになって視覚しかく世界せかい完全かんぜんなマップを形作かたちづくっている。機能きのうてきには V2 は V1 とおおくの共通きょうつう特性とくせいつ。細胞さいぼう方向ほうこう空間くうかん周波数しゅうはすういろなどの単純たんじゅん特性とくせいにチューニングされている。V2 ニューロンのおおくの応答おうとう主観しゅかんてき輪郭りんかくきやその視覚しかく刺激しげき一部いちぶ一部いちぶかなどのより複雑ふくざつ特性とくせいによって調節ちょうせつけている。(Qiu and von der Heydt, 2005).

最近さいきん研究けんきゅうによって、V2 の細胞さいぼう注意ちゅういによる調節ちょうせつ (attentional modulation) がちいさく (V1 よりおおきく、V4 よりちいさい)、また、単一たんいつ受容じゅようにおけることなる下位かい領域りょういきの、複数ふくすう方向ほうこう反応はんのうすることで、適度てきど複雑ふくざつなパターンにチューニングされていることが判明はんめいしている。

V3 をふくむ3視覚しかく皮質ひしつふく合体がったい

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3視覚しかく皮質ひしつふく合体がったいという用語ようごは V2 の前部ぜんぶせっする皮質ひしつ領域りょういきしめし、V3領域りょういきふくんでいる。ヒトにおいて、"ふく合体がったい"という名前なまえは V3 とばれる領域りょういき正確せいかく範囲はんいについて、V2 のまえにある領域りょういきは2、3の機能きのうてき下位かい領域りょういきふくんでいるとする研究けんきゅうしゃによって論争ろんそうきているという事実じじつによる。たとえばデイヴィット・ヴァン・エッセン (David Van Essen) ら (1986) は大脳だいのう半球はんきゅう上部じょうぶに "がわ V3" (dorsal V3) という領域りょういき存在そんざいし、のう下部かぶ位置いちする"はらがわ V3" (ventral V3, はらがわ後部こうぶ領域りょういき, ventral posterior area, VP) とはことなると提唱ていしょうしている。がわ V3 とふくがわ V3 はのうことなる領域りょういきからことなる接続せつぞくけ、おおくの染色せんしょくほうによってことなるまりかたをし、視覚しかく刺激しげきことなるわせ (たとえばいろ選択せんたくてきニューロンははらがわ V3 におおい) に応答おうとうする。下位かい領域りょういきとして、V3A と V3B がヒトにおいて報告ほうこくされている。これらの下位かい領域りょういきは、がわ V3 の付近ふきん存在そんざいするが V2 とは区別くべつされる。

がわ V3 は通常つうじょうがわ皮質ひしつ視覚しかく一部いちぶかんがえられ、V2 といち視覚しかくから入力にゅうりょくけ、こう頭頂とうちょう投射とうしゃしている。解剖かいぼう学的がくてきにはブロードマンののう地図ちずにおける19位置いちする。fMRI による最近さいきん研究けんきゅうによって V3/V3A 領域りょういき広域こういきてきうごきの処理しょりかかわるとされている[5]がわ V3 をぜん視野しや表現ひょうげんする内側うちがわ (DM) とばれるおおきな領域りょういき一部いちぶかんがえるほか研究けんきゅう存在そんざいする。内側うちがわのニューロンは視野しやだい部分ぶぶんめるおおきなパターンの同期どうきしたうごきに応答おうとうする。(Lui and collaborators, 2006)

はらがわ V3 (VP)はいち視覚しかくからの非常ひじょうよわ結合けつごうと、したがわあたまかいとのつよ結合けつごうつ。初期しょき研究けんきゅうでは、はらがわ V3 は視野しやうえ半分はんぶん (かた視点してん上側うわがわ) を表現ひょうげんしている領域りょういきのみをしていた。しかし、より最近さいきん研究けんきゅうでは、はらがわ V3 は以前いぜんかんがえられていたよりもよりひろく、視覚しかく同様どうよう視野しや全体ぜんたい表現ひょうげんする領域りょういきかんがえられている。この改訂かいていされたよりひろはらがわ V3 はローサ (Rosa) とツィーデル (Tweedale) によってはら外側そとがわ後部こうぶ領域りょういき (VLP) とばれた[6]

V4マカクザルでは、有線ゆうせんがい視覚しかく皮質ひしつ存在そんざいする視覚しかく一部いちぶである。V4 は V2 の前部ぜんぶ位置いちし、こうしたがわあたま (PIT) の後部こうぶ位置いちする。V4 は左右さゆうのV4d、V4vの4領域りょういきからるとされ、さらにがわと吻側の下位かい領域りょういきくわえるものもいる。ヒトにおける V4 ホモログはまだられておらず、精査せいさされている事柄ことがらである。

V4 ははらがわ皮質ひしつ視覚しかくの3番目ばんめ領域りょういきで、V2 からのつよいフィードフォワードな入力にゅうりょくけ, こうしたがわあたま (PIT) へとつよ結合けつごうつ。また V1 からの直接ちょくせつ入力にゅうりょくをその中心ちゅうしんけている。くわえて、V5 とがわ前月ぜんげつじょうかい (DP) へとよわ結合けつごう存在そんざいする。

V4 ははらがわ皮質ひしつ視覚しかくにおいてつよ注意ちゅういによる調節ちょうせつ (attentional modulation) をける最初さいしょ領域りょういきである。おおくの研究けんきゅうでは、選択せんたくてき注意ちゅういが V4 の発火はっか頻度ひんどを20%変化へんかさせるとしている。モラン (Moran) とデシモーネ (Desimone) による、影響えいきょうりょくおおきい論文ろんぶんは、このような効果こうか特徴付とくちょうづけ、注意ちゅういによる効果こうか視覚しかくのどこにおいてもられることをあきらかにした最初さいしょ論文ろんぶんである[1][7]

V1 のように V4 は方向ほうこう空間くうかん周波数しゅうはすういろにチューンしているが、V1 とはことなり、V4 は対象たいしょう特徴とくちょうなかあいだてきふく合性あいしょうたとえば、単純たんじゅん幾何きかがくてき形状けいじょうなどに、チューンしている。しかし、V4 のチューニング空間くうかん完全かんぜんなパラメーターの記述きじゅつおこなったものはいない。また、V4 はしたがわあたまかいのようにかおなどの複雑ふくざつ対象たいしょうにはチューニングされていない。

V4 の発火はっか特性とくせいは1970年代ねんだい後半こうはんにこの領域りょういき名付なづおやでもあるセミール・ゼキ (Semir Zeki) によってはじめて描写びょうしゃされた。それまでは、V4 はその解剖かいぼうがくてきである前月ぜんげつじょうかいとしてられていた。元々もともと、ゼキは V4 の目的もくてきいろ情報じょうほう処理しょりするためであるとかんがえていたが、1980年代ねんだい前半ぜんはんに V4 はのより初期しょき視覚しかく同様どうようかたち認知にんち直接ちょくせつかかわっているとしめされた。この研究けんきゅうはアンガーライダー (Ungerleider) とミシュキン (Mishkin) により1982ねんはじめて提唱ていしょうされた2経路けいろ仮説かせつ (上述じょうじゅつ) によっても支持しじされている。

最近さいきん研究けんきゅうによって、V4 は刺激しげき顕著けんちょせい (salience) をコードする長期ちょうき可塑かそせいしめし、その可塑かそせい前頭まえがしらからの信号しんごうによってコントロールされることがかった。これにより、注意ちゅういによって受容じゅよう空間くうかんてき特性とくせい変化へんかする。

V5MT (middle temporal) としてもられ、外線がいせん条野じょうの一部いちぶであり、運動うんどう知覚ちかく局所きょくしょ運動うんどう信号しんごうのグローバルな知覚ちかくへの統合とうごうおよびあるしゅ眼球がんきゅう運動うんどうにおける主要しゅよう役割やくわりになうとかんがえられている[8]

神経しんけい結合けつごう

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MT 様々さまざま皮質ひしつおよ皮質ひしつのう領域りょういき結合けつごうしている。その入力にゅうりょくは V1、V2、がわ V3、内側うちがわ[9] [10]外側そとがわひざじょうたい顆粒かりゅう細胞さいぼう (koniocellular) 領域りょういき[11]および、しも視床ししょうまくらからけている。MT への投射とうしゃのパターンは視野しや中心ちゅうしん周辺しゅうへん幾分いくぶんことなっている。後者こうしゃでは、皮質ひしつせい中部ちゅうぶのうはり膨大ぼうだい後部こうぶからの入力にゅうりょくける[12]

一般いっぱんてきには、MT への"もっと重要じゅうような"入力にゅうりょくはV1に由来ゆらいするとかんがえられている[8]。しかし、いくつかの研究けんきゅうは MT のニューロンは V1 ニューロンが破壊はかいまたは活性かっせいされたのちでも、視覚しかく情報じょうほうたいして、おおくの場合ばあい方向ほうこう選択せんたくてき応答おうとうできることをしめした[13]くわえて、セキール・ゼキ (Semir Zeki) らによる研究けんきゅうではあるしゅ視覚しかく情報じょうほうは V1 に到着とうちゃくするまえに MT 到着とうちゃくすることが示唆しさされている。

MT はそのおも出力しゅつりょくを、FST や MST、V4t (ちゅうがわあたま半月はんつき) をふくむその領域りょういき直接ちょくせつかこ領域りょういきへとおくっている。の MT 出力しゅつりょくさき眼球がんきゅう運動うんどう関係かんけいする前頭葉ぜんとうよう頭頂とうちょう領域りょういき (前頭まえがしら外側そとがわ頭頂とうちょう間野まの (LIP)) である。

機能きのう

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MT のニューロンの電気でんき生理学せいりがくてき特性とくせい調しらべた最初さいしょ研究けんきゅうにより、だい部分ぶぶん細胞さいぼう運動うんどうする視覚しかく刺激しげき速度そくど方向ほうこうにチューニングされていることがかった[14] [15]。このような結果けっかは MT 視覚しかく運動うんどう処理しょり重要じゅうよう役割やくわりになっていることを示唆しさしている。

MT 損傷そんしょうによる研究けんきゅうによっても、その運動うんどう知覚ちかく眼球がんきゅう運動うんどうにおける役割やくわりしめされている。また、運動うんどう知覚ちかくすることが出来できず、世界せかい静的せいてきな"フレーム"の連続れんぞくかんじられる患者かんじゃ神経しんけい心理しんりがくてき研究けんきゅうにより、霊長れいちょうるいにおける MT のヒトにおけるホモログは V5 であるとかった[16][17]

しかし、V1 のニューロンも運動うんどう方向ほうこう速度そくどにチューニングされていることから、これらの初期しょき結果けっかは、V1 では処理しょり不可能ふかのうなにを MT では処理しょり可能かのうなのかという問題もんだいをまだけてはいない。おおくの研究けんきゅうによって、この領域りょういき局所きょくしょてき視覚しかく運動うんどう信号しんごう複雑ふくざつ対象たいしょう大局たいきょくてき運動うんどう (global motion) へと統合とうごうしていることがかった[18]たとえば V5 の損傷そんしょうにより、運動うんどう知覚ちかく複雑ふくざつ刺激しげき処理しょり障害しょうがいきる。V5 には複雑ふくざつ視覚しかくてき特徴とくちょう (せんはしやコーナーなど) の運動うんどう選択せんたくてき応答おうとうするおおくのニューロンがある。V5 にあるニューロンの微小びしょう刺激しげきうごきの知覚ちかく影響えいきょうおよぼす。たとえば、上向うわむきの運動うんどう選択せんたくてき応答おうとうするニューロンをつけて、電極でんきょくにより刺激しげきしたとき、ニューロンを刺激しげきされたサルは上向うわむきの運動うんどうをよりおお報告ほうこくしやすくなる[19]

MT おこなわれている計算けいさん正確せいかくかたちかんしてはいまだに論争ろんそう存在そんざいする[20]。そして、ある研究けんきゅうでは、特徴とくちょう運動うんどうは V1 のような視覚しかくにおけるていつぎ領域りょういきでも、じつはすでに利用りよう可能かのうであるとしている[21] [22]

機能きのうてき構成こうせい

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MT 方向ほうこうコラムにより構成こうせいされていることがしめされている[23]。デアンジェリス (DeAngelis) は MT のニューロンはりょう視差しさへのチューニングにもとづいて構成こうせいされていると主張しゅちょうしている[24]

参考さんこう文献ぶんけん

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