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前頭まえがしらぜん皮質ひしつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
のう: 前頭まえがしらぜん皮質ひしつ
外側そとがわめんブロードマンののう地図ちず。 『BrainInfo』によると、8一部いちぶと、9、10、11、44、45、46、47前頭まえがしらぜん皮質ひしつふくまれるとされている。
みぎ大脳だいのう半球はんきゅう外側そとがわめんいろのついた部分ぶぶん前頭まえがしらぜん皮質ひしつ上側うわがわ紫色むらさきいろ領域りょういき外側そとがわ前頭まえがしら前野まえのしたがわ青色あおいろ領域りょういき眼窩がんか前頭まえがしら皮質ひしつ
名称めいしょう
日本語にほんご 前頭まえがしらぜん皮質ひしつ
英語えいご Prefrontal cortex
略号りゃくごう PFC
関連かんれん構造こうぞう
上位じょうい構造こうぞう 前頭葉ぜんとうよう
構成こうせい要素ようそ 上前うわまえあたまかい
ちゅう前頭まえがしらかい
しも前頭まえがしらかい
動脈どうみゃく ぜん大脳だいのう動脈どうみゃく
ちゅう大脳だいのう動脈どうみゃく
静脈じょうみゃく 上矢うわやじょう静脈じょうみゃくほら
関連かんれん情報じょうほう
Brede Database 階層かいそう関係かんけい座標ざひょう情報じょうほう
NeuroNames 関連かんれん情報じょうほう一覧いちらん
MeSH Prefrontal+Cortex
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みぎ大脳だいのう半球はんきゅう内側うちがわめん紫色むらさきいろ部分ぶぶん内側うちがわ前頭まえがしらぜん皮質ひしつ上側うわがわ前頭まえがしらぜん皮質ひしつない側部そくぶしたがわ前頭まえがしらぜん皮質ひしつはらない側部そくぶ表記ひょうきされている。

前頭まえがしらぜん皮質ひしつ(ぜんとうぜんひしつ、えい: prefrontal cortexPFC)は、のうにある前頭葉ぜんとうよう前側まえがわ領域りょういきで、いち運動うんどうぜん運動うんどうまえ存在そんざいする。前頭まえがしら連合れんごう前頭まえがしら前野まえの前頭まえがしら顆粒かりゅう皮質ひしつともばれる。

細胞さいぼう構築こうちくがくてき観点かんてんから、前頭まえがしらぜん皮質ひしつは (ぜん運動うんどう顆粒かりゅう (agranular) 細胞さいぼうそうちがい) ない顆粒かりゅうそう (internal granular layer) Ⅳそう存在そんざいする領域りょういきとして定義ていぎされる。前頭まえがしらぜん皮質ひしつ様々さまざま分類ぶんるい方法ほうほうでいくつかの下位かい領域りょういきけられるが、代表だいひょうてきかたとして以下いかの3領域りょういき分類ぶんるいするものがある。

それ以外いがい区別くべつ可能かのう領域りょういきとして、前頭まえがしらぜん皮質ひしつはらがい側部そくぶ (vl-PFC)、前頭まえがしらぜん皮質ひしつない側部そくぶ (m-PFC)、前頭まえがしらぜん皮質ひしつ前部ぜんぶ (a-PFC)がある。

こののう領域りょういき複雑ふくざつ認知にんち行動こうどう計画けいかく人格じんかく発現はつげん適切てきせつ社会しゃかいてき行動こうどう調節ちょうせつかかわっているとされている。こののう領域りょういき基本きほんてき活動かつどうは、自身じしん内的ないてきゴールにしたがって、かんがえや行動こうどう編成へんせいすることにあるとかんがえられる。

前頭まえがしらぜん皮質ひしつによる機能きのうあらわもっと典型てんけいてき用語ようごとして、実行じっこう機能きのう (executive function) がある。実行じっこう機能きのう対立たいりつするかんがえを区別くべつする能力のうりょくほか現在げんざい行動こうどうによってどのような未来みらい結果けっかしょうじるかを決定けっていする能力のうりょく確定かくていしたゴールへの行動こうどう成果せいか予測よそく行動こうどうもとづく期待きたい社会しゃかいてきな"コントロール" (もしってしまったら、社会しゃかいてき容認ようにんできないような結果けっかこすような衝動しょうどう抑制よくせいする能力のうりょく)に関係かんけいしている。前頭まえがしら前野まえの異常いじょうは、ADHDなどの実行じっこう機能きのう障害しょうがいしめす。おおくの研究けんきゅうしゃは、人々ひとびと個性こせい前頭まえがしらぜん皮質ひしつ機能きのうとのあいだにはかすことの出来できないつながりがあるとかんがえている。

神経しんけい結合けつごう

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前頭まえがしらぜん皮質ひしつ脳幹のうかんあみさまたい賦活ふかつけい (RAS : Reticular Activating System) と、大脳だいのうえんけい両方りょうほうとのあいだつよ相互そうご接続せつぞく存在そんざいする。その結果けっか前頭まえがしらぜん皮質ひしつ中枢ちゅうすうこうレベルの覚醒かくせい (alertness) につよ依存いぞんするほかよろこび、いたみ、いかり、激情げきじょう、パニック、闘争とうそう応答おうとう (闘争とうそう-逃走とうそう-硬直こうちょく応答おうとう (fight-flight-freeze responses)) や基本きほんてき性的せいてき応答おうとうつかさどのう深部しんぶ構造こうぞうとの情動じょうどうかんする経路けいろにもつよ依存いぞんしている。

前頭まえがしらぜん皮質ひしつ研究けんきゅう

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前頭まえがしらぜん皮質ひしつ機能きのうかんする影響えいきょうりょくおおきい臨床りんしょうれいとしてフィニアス・ゲージのものがある。かれ人格じんかくは1848ねん事故じこにより、片側かたがわ、もしくは両側りょうがわ前頭葉ぜんとうよう破壊はかいされたことによって一変いっぺんしてしまった。ゲージは正常せいじょう記憶きおく言語げんご運動うんどう能力のうりょくたもっているが、かれ人格じんかくおおきく変化へんかしてしまったと一般いっぱんてき報告ほうこくされている[2]かれ以前いぜんにはられなかったようないかりっぽく、気分きぶんで、短気たんき性格せいかくになり、かれ友人ゆうじんはすっかりわってしまったかれを"もはやゲージではない。"とべた。かれ以前いぜんには優秀ゆうしゅう労働ろうどうしゃであったが、事故じこのちにははじめた複数ふくすう作業さぎょう遂行すいこうすることが不可能ふかのうになってしまった。しかし、いち資料しりょう綿密めんみつ調査ちょうさによって、ゲージの心理しんりてき変化へんかかんする描写びょうしゃおおくの場合ばあい誇張こちょうされたものであることがかっている。かれすうねん記述きじゅつされているかれ人格じんかく変化へんかもっと顕著けんちょ特徴とくちょうは、かれ生前せいぜん報告ほうこくされたものよりも格段かくだんにドラマティックなものになっている[3]

のちつづ前頭まえがしらぜん皮質ひしつ損傷そんしょう患者かんじゃ研究けんきゅうによって、ある状況じょうきょうにおけるもっと適切てきせつ社会しゃかいてき応答おうとう患者かんじゃ言語げんごできることがしめされている。しかし、実際じっさい行動こうどうするさいには、その行動こうどう長期ちょうきてきには自己じこ不利益ふりえきになるとかっているにもかかわらず、短期たんきてき満足まんぞくかんへと志向しこうした行動こうどうってしまう。

このデータの解釈かいしゃくから示唆しさされることとして、最終さいしゅうてき成果せいか比較ひかく理解りかいする能力のうりょくだけではなく、前頭まえがしらぜん皮質ひしつには、より報酬ほうしゅうることのできる長期ちょうきてき満足まんぞくのいく結果けっかるために短期たんきてき満足まんぞくかん先送さきおくりにするという選択肢せんたくし制御せいぎょする能力のうりょくっている。この報酬ほうしゅう能力のうりょくは、ヒトののう最適さいてき実行じっこう機能きのう定義ていぎする重要じゅうよう要素ようその1つである。

神経しんけいがくてき障害しょうがいにおける前頭まえがしらぜん皮質ひしつ役割やくわり理解りかいするための研究けんきゅう現在げんざい数多かずおお存在そんざいする。統合とうごう失調しっちょうしょう双極そうきょくせい障害しょうがいADHDなどのおおくの障害しょうがい病気びょうき前頭まえがしら皮質ひしつ機能きのう障害しょうがい関係かんけいしているとかんがえられており、こののうたいするかんがえから、このような病気びょうきあたらしい治療ちりょうほう可能かのうせいまれている。αあるふぁ2A アドレナリン受容じゅようたいかいして作用さようするグアンファシンふくむ、前頭まえがしらぜん皮質ひしつ機能きのう向上こうじょうさせる作用さようったいくつかの薬品やくひん臨床りんしょう試験しけんはじまっている。慢性まんせいてきなストレスは、学習がくしゅうをコントロールする前頭まえがしらぜん皮質ひしつ萎縮いしゅくこす可能かのうせいがあるので、腹式呼吸ふくしきこきゅう深呼吸しんこきゅうをし、物事ものごとがうまくいかなくても、すくなくともいま大丈夫だいじょうぶのアプローチがうまくいくかもしれないと自分じぶんにいいきかせること[4]

障害しょうがい

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最近さいきんすうじゅうねんにおいて、のう機能きのうイメージング手法しゅほうのう領域りょういきおおきさや神経しんけい結合けつごう決定けっていするためにもちいられている。いくつかの研究けんきゅうにおいて、うつびょうひとやストレスにさらされつづけているひと[5]自殺じさつしたひと[6]投獄とうごくされた犯罪はんざいしゃ社会しゃかいびょうしつしゃ (sociopath) 、薬物やくぶつ中毒ちゅうどくしゃなどの人々ひとびとにおいて前頭葉ぜんとうよう体積たいせきのう領域りょういきとの相互そうご接続せつぞく減少げんしょうしていることが示唆しさされている。

また、ヒトの前頭まえがしらぜん皮質ひしつのうめる割合わりあい動物どうぶつくらべてはるかにおおきいことから、前頭まえがしらぜん皮質ひしつおおきさや結合けつごうつよさが直感ちょっかん (sentience) と直接ちょくせつ関係かんけいしているとひろかんがえられている。くわえて、500まんねんものあいだのヒトの進化しんかにおいてのうおおきさが3ばいになったさい前頭まえがしらぜん皮質ひしつおおきさは6ばいになっている。

出典しゅってん

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  1. ^ Contributions of the prefrontal cortex to the neur...[Neurosci Biobehav Rev. 2002] - PubMed Result
  2. ^ Antonio Damasio, Descartes' Error. Penguin Putman Pub., 1994
  3. ^ Malcolm Macmillan, An Odd Kind of Fame: Stories of Phineas Gage (MIT Press, 2000), pp.116-119, 307-333, esp. pp.11,333.
  4. ^ The worst habits for your brain” (英語えいご). Harvard Health (2022ねん4がつ1にち). 2023ねん7がつ11にち閲覧えつらん
  5. ^ Liston C et al (2006). “Stress-induced alterations in prefrontal cortical dendritic morphology predict selective impairments in perceptual attentional set-shifting”. J Neurosci 26 (30): 7870-4. doi:10.1523/JNEUROSCI.1184-06.2006. PMID 16870732. 
  6. ^ Rajkowska G. “Morphometric methods for studying the prefrontal cortex in suicide victims and psychiatric patients”. Ann N Y Acad Sci 836: 253-68. doi:10.1111/j.1749-6632.1997.tb52364.x. PMID 9616803. 
  • Richard M. Burton, The Anatomy, Chemistry and Genetics of Human Behavior, Newport. 1996.
  • Fuster JM (1997) The Prefrontal Cortex: Anatomy, physiology, and neuropsychology of the frontal lobe, 2 Edition: Lippincott, Williams & Wilkins.

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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