(Translated by https://www.hiragana.jp/)
白質 - Wikipedia コンテンツにスキップ

はくただし

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
はくただし
特徴とくちょうてきこまかい網目あみめじょう外観がいかんしろしつ画像がぞうひだりうすいピンクのいろかげ)と、特徴とくちょうてき神経しんけい細胞さいぼうたいはいしろしつ画像がぞうみぎいピンクのいろかげ)をしめ顕微鏡けんびきょう写真しゃしん英語えいごばんHPS stain
ヒトののうみぎ解剖かいぼうした側面そくめんはいしろしつ外側そとがわくら部分ぶぶん)としろしつ内側うちがわしろ部分ぶぶん)を確認かくにんできる。
概要がいよう
表記ひょうき識別しきべつ
ラテン語らてんご substantia alba
MeSH D066127
TA A14.1.00.009、A14.1.02.024、A14.1.02.201、A14.1.04.101、A14.1.05.102、A14.1.05.302、A14.1.06.201
FMA 83929
解剖かいぼうがく用語ようご
ヒトののうしろしつ構造こうぞうMRI撮影さつえいしたもの)

はくただし(はくしつ、英語えいご: White matter)は、中枢ちゅうすう神経しんけいけい(CNS)のなかとくゆうずいされた神経しんけい線維せんい構成こうせいされる領域りょういきのこと[1]ながあいだ受動じゅどうてき組織そしきかんがえられてきたが、学習がくしゅうのう機能きのう影響えいきょうあたえ、活動かつどう電位でんい分布ぶんぷ調節ちょうせつし、リレーとして機能きのうし、ことなるのう領域りょういきあいだ伝達でんたつ調整ちょうせいする[2]

ずいさや(ミエリンさや)にふくまれる脂質ししつによって比較的ひかくてきあかるいをしていることからはくただしばれる。しかしながら、したばかりののう組織そしきずいさやだい部分ぶぶん毛細血管もうさいけっかんのある脂質ししつ組織そしき構成こうせいされているため、肉眼にくがんではピンクがかった白色はくしょくえる。標本ひょうほんにおいてしろしつしろいのは、通常つうじょうホルムアルデヒド保存ほぞんされているためである。

構造こうぞう

[編集へんしゅう]

はくただし

[編集へんしゅう]

しろしつは、のうのさまざまなはいしろしつ領域りょういき神経しんけい細胞さいぼうたいのある場所ばしょ)をたがいにつなぐたば構成こうせいされており、神経しんけい細胞さいぼうあいだ神経しんけいインパルス伝達でんたつしている。ずいさや絶縁ぜつえんたいとしてはたらき、電気でんき信号しんごうじくさくとおるのではなく跳躍ちょうやくすることを可能かのうにし、すべての神経しんけい信号しんごう伝達でんたつ速度そくどはやめる[3]

大脳だいのう半球はんきゅうない長距離ちょうきょり線維せんい総数そうすうは、皮質ひしつ-皮質ひしつ線維せんい総数そうすう皮質ひしつ領域りょういき全体ぜんたい)の2%であり、のう最大さいだい白色はくしょく組織そしき構造こうぞうであるのうはりで2つの半球はんきゅうあいだつないでいる線維せんいとほぼおなすうである[4]。SchüzとBraitenbergは「あら法則ほうそくであるが、ある範囲はんいながさの線維せんいかずはそのながさに反比例はんぴれいする」としるしている[4]

高齢こうれいしゃしろしつにおける血管けっかん割合わりあいは1.7–3.6%である[5]

はいしろしつ

[編集へんしゅう]

のうのもう1つの主要しゅよう構成こうせい要素ようそは、神経しんけい細胞さいぼう構成こうせいされるはいしろしつ実際じっさいには毛細血管もうさいけっかんによりピンクがかった褐色かっしょくである)である。くろしつは、のうないられる3番目ばんめいろ要素ようそであり、ドーパミン作動さどうせい神経しんけい細胞さいぼうメラニンレベルがちかくの領域りょういきよりもたかいため、くらえる。使用しようする染色せんしょく種類しゅるいによっては、顕微鏡けんびきょうのスライドじょうしろしつはいしろしつよりもくらえることがある。大脳だいのうおよ脊髄せきずいしろしつには、じょう突起とっき神経しんけい細胞さいぼうたい、またはみじかじくさくふくまれず[よう出典しゅってん]、これははいしろしつにのみられる。

位置いち

[編集へんしゅう]

しろしつは、のう深部しんぶ脊髄せきずい表層ひょうそうだい部分ぶぶん形成けいせいする。大脳だいのうしろしつなかには、大脳だいのう基底きていかくじょうかくからあわあおだまくろしつ視床ししょうかくがわすわかく)や脳幹のうかんかくあかかく英語えいごばん脳神経のうしんけいかく)などのはいしろしつ集合しゅうごうたいひろがっている。

小脳しょうのう大脳だいのう同様どうよう構造こうぞうをしており、小脳しょうのう皮質ひしつ表層ひょうそう深部しんぶ小脳しょうのうしろしつ("arbor vitae"とばれる)、深部しんぶ小脳しょうのうしろしつかこまれたはいしろしつ集合しゅうごうたいじょうかく英語えいごばん球状きゅうじょうかく英語えいごばんせんじょうかく英語えいごばんしついただきかく英語えいごばん)がある。また、液体えきたいたされたのうしつ英語えいごばんがわのうしつだいさんのうしつちゅうのう水道すいどうだいよんのうしつ)も大脳だいのうしろしつ深部しんぶにある。

ゆうずいじくさくなが

[編集へんしゅう]

男性だんせいしろしつは、体積たいせきゆうずいじくさくながさの両方りょうほうにおいて女性じょせいよりもおおい。20さい時点じてん男性だんせいゆうずい線維せんいそう延長えんちょうは176,000 kmであるのにたいし、女性じょせいは149,000 kmである[6]よわいとともにそう延長えんちょうは10ねんごとにやく10%減少げんしょうし、80さい時点じてん男性だんせいは97,200 km、女性じょせいは82,000 kmとなる[6]。この減少げんしょうはほとんどほそ線維せんい損失そんしつするためである[6]

機能きのう

[編集へんしゅう]

しろしつ中枢ちゅうすう神経しんけいけいはいしろしつことなる領域りょういきあいだでメッセージを伝達でんたつする組織そしきである。しろしつしろいのは、神経しんけい線維せんいじくさく)をかこ脂肪しぼうしつ物質ぶっしつ(ミエリン)があるからである。このミエリンはほとんどすべてのなが神経しんけい線維せんいふくまれており、電気でんきてき絶縁ぜつえんたい役割やくわりをしている。これはメッセージをあちこちに素早すばや伝達でんたつするために重要じゅうよう役割やくわりをする。

20だい発達はったつのピークをむかえるはいしろしつとはことなり、はくただし発達はったつつづ中年ちゅうねんにピークをむかえる[7]

研究けんきゅう

[編集へんしゅう]

多発たはつせい硬化こうかしょう (MS) は、しろしつおか中枢ちゅうすう神経しんけいけい炎症えんしょうせいだつずい疾患しっかんなかもっと一般いっぱんてき疾患しっかんである。MSの病変びょうへんでは、じくさくまわりのずいさや炎症えんしょうにより悪化あっかする[8]アルコール使用しよう障害しょうがいは、はくただし容積ようせき減少げんしょう関連かんれんする[9]

しろしつアミロイドまだらは、アルツハイマーびょうやその神経しんけい変性へんせい疾患しっかん関連かんれんする可能かのうせいがある[10]よわいともなって一般いっぱんてきこるその変化へんかとしては、しろしつ希薄きはく英語えいごばんがあり、これはずいさやあわあきら喪失そうしつじくさく喪失そうしつ血液けつえきのう関門かんもん制限せいげん機能きのう低下ていかなど様々さまざま状態じょうたい相関そうかんしている可能かのうせいがある[11]

MRIじょうしろしつ病変びょうへん(en:White matter lesion)は、認知にんち障害しょうがいうつびょうなどいくつかの有害ゆうがいなことと関連かんれんしている[12]こう濃度のうどしろしつ(en:White matter hyperintensity)は、のう血管けっかんせい認知にんちしょうとくしょう血管けっかん/皮質ひしつのタイプの血管けっかんせい認知にんちしょうでよりおおられる[13]

体積たいせき

[編集へんしゅう]

しろしつ体積たいせきちいさいほど、注意ちゅういりょく陳述ちんじゅつ記憶きおく実行じっこう機能きのう知能ちのう学術がくじゅつ成績せいせきおおきな障害しょうがい関連かんれんしている可能かのうせいがある[14][15]。しかし、体積たいせき神経しんけい可塑かそせい英語えいごばんにより生涯しょうがいつうじて継続けいぞくてき変化へんかし、のう領域りょういきでの代償だいしょう効果こうかがあるためあるしゅ機能きのう障害しょうがい決定けってい要因よういんではなく一因いちいんである[15]しろしつ完全かんぜんせいよわいにより低下ていかするが[16]定期ていきてきゆう酸素さんそ運動うんどうにより長期ちょうきてきよわい効果こうか先送さきおくりされたりぎゃくしろしつ完全かんぜんせいたかめられたりするようである[16]炎症えんしょう損傷そんしょうによるはくただし容積ようせき変化へんかは、閉塞へいそくせい睡眠すいみん呼吸こきゅう英語えいごばん重症じゅうしょう要因よういんとなる可能かのうせいがある[17][18]

イメージング

[編集へんしゅう]

しろしつ研究けんきゅうは、かく磁気じき共鳴きょうめい画像がぞうほう(MRI)ののうスキャナをもちいた拡散かくさんテンソルイメージングばれるニューロイメージングによりすすめられている。2007ねん時点じてんで700以上いじょう論文ろんぶん発表はっぴょうされている[19]

Jan Scholzらによる2009ねん論文ろんぶん[20]では、拡散かくさんテンソルイメージング (DTI) をもちいてあたらしい運動うんどう課題かだいたとえばジャグリング)を学習がくしゅうすることによるはくただし体積たいせき変化へんかしめされている。この研究けんきゅう運動うんどう学習がくしゅうしろしつ変化へんか関連付かんれんづけた最初さいしょ論文ろんぶんとして重要じゅうようである。これまでおおくの研究けんきゅうしゃはこのたね学習がくしゅうしろしつには存在そんざいしないじょう突起とっきによってのみ媒介ばいかいされるとかんがえていた。著者ちょしゃらは、じくさく電気でんきてき活動かつどうじくさくずいさや形成けいせい制御せいぎょしている可能かのうせい示唆しさしている。Sampaio-Baptistaらによるもっと最近さいきんのDTIの研究けんきゅうでは、運動うんどう学習がくしゅうともなしろしつ変化へんかずいさや増加ぞうか報告ほうこくされている[21]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Blumenfeld, Hal (2010). Neuroanatomy through clinical cases (2nd ed.). Sunderland, Mass.: Sinauer Associates. p. 21. ISBN 9780878936137. "Areas of the CNS made up mainly of myelinated axons are called white matter." 
  2. ^ Douglas Fields, R. (2008). “White Matter Matters”. Scientific American 298 (3): 54–61. Bibcode2008SciAm.298c..54D. doi:10.1038/scientificamerican0308-54. 
  3. ^ Klein, S.B., & Thorne, B.M. Biological Psychology. Worth Publishers: New York. 2007.[ようページ番号ばんごう]
  4. ^ a b Schüz, Almut; Braitenberg, Valentino (2002). “The human cortical white matter: Quantitative aspects of cortico-cortical long-range connectivity”. In Schüz, Almut; Braitenberg, Valentino. Cortical Areas: Unity and Diversity, Conceptual Advances in Brain Research. Taylor and Francis. pp. 377–86. ISBN 978-0-415-27723-5 
  5. ^ Leenders, K. L.; Perani, D.; Lammertsma, A. A.; Heather, J. D.; Buckingham, P.; Jones, T.; Healy, M. J. R.; Gibbs, J. M. et al. (1990). “Cerebral Blood Flow, Blood Volume and Oxygen Utilization”. Brain 113: 27–47. doi:10.1093/brain/113.1.27. PMID 2302536. 
  6. ^ a b c Marner, Lisbeth; Nyengaard, Jens R.; Tang, Yong; Pakkenberg, Bente (2003). “Marked loss of myelinated nerve fibers in the human brain with age”. The Journal of Comparative Neurology 462 (2): 144–52. doi:10.1002/cne.10714. PMID 12794739. 
  7. ^ Sowell, Elizabeth R.; Peterson, Bradley S.; Thompson, Paul M.; Welcome, Suzanne E.; Henkenius, Amy L.; Toga, Arthur W. (2003). “Mapping cortical change across the human life span”. Nature Neuroscience 6 (3): 309–15. doi:10.1038/nn1008. PMID 12548289. 
  8. ^ Höftberger, Romana; Lassmann, Hans (2018). “Inflammatory demyelinating diseases of the central nervous system”. Handbook of Clinical Neurology. 145. Elsevier. pp. 263–283. doi:10.1016/b978-0-12-802395-2.00019-5. ISBN 978-0-12-802395-2. ISSN 0072-9752. PMC 7149979. PMID 28987175 
  9. ^ Monnig, Mollie A.; Tonigan, J. Scott; Yeo, Ronald A.; Thoma, Robert J.; McCrady, Barbara S. (2013). “White matter volume in alcohol use disorders: A meta-analysis”. Addiction Biology 18 (3): 581–92. doi:10.1111/j.1369-1600.2012.00441.x. PMC 3390447. PMID 22458455. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3390447/. 
  10. ^ Roseborough, Austyn; Ramirez, Joel; Black, Sandra E.; Edwards, Jodi D. (2017). “Associations between amyloid βべーた and white matter hyperintensities: A systematic review”. Alzheimer's and Dementia 13 (10): 1154–1167. doi:10.1016/j.jalz.2017.01.026. ISSN 1552-5260. PMID 28322203. 
  11. ^ O'Sullivan, M. (2008-01-01). “Leukoaraiosis” (英語えいご). Practical Neurology 8 (1): 26–38. doi:10.1136/jnnp.2007.139428. ISSN 1474-7758. PMID 18230707. 
  12. ^ O'Brien, John T. (2014). “Clinical Significance of White Matter Changes”. The American Journal of Geriatric Psychiatry (Elsevier BV) 22 (2): 133–137. doi:10.1016/j.jagp.2013.07.006. ISSN 1064-7481. PMID 24041523. 
  13. ^ Hirono, Nobutsugu; Kitagaki, Hajime; Kazui, Hiroaki; Hashimoto, Mamoru; Mori, Etsuro (2000). “Impact of White Matter Changes on Clinical Manifestation of Alzheimer's Disease”. Stroke (Ovid Technologies (Wolters Kluwer Health)) 31 (9): 2182–2188. doi:10.1161/01.str.31.9.2182. ISSN 0039-2499. PMID 10978049. 
  14. ^ Tasman, Allan (2015) (ウェールズ). Psychiatry. West Sussex, England: Wiley Blackwell. ISBN 978-1-118-84549-3. OCLC 903956524 
  15. ^ a b Fields, R. Douglas (2008-06-05). “White matter in learning, cognition and psychiatric disorders”. Trends in Neurosciences (Elsevier BV) 31 (7): 361–370. doi:10.1016/j.tins.2008.04.001. ISSN 0166-2236. PMC 2486416. PMID 18538868. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2486416/. 
  16. ^ a b Handbook of the Psychology of Aging. Elsevier. (2016). doi:10.1016/c2012-0-07221-3. ISBN 978-0-12-411469-2 
  17. ^ Castronovo, Vincenza; Scifo, Paola; Castellano, Antonella; Aloia, Mark S.; Iadanza, Antonella; Marelli, Sara; Cappa, Stefano F.; Strambi, Luigi Ferini et al. (2014-09-01). “White Matter Integrity in Obstructive Sleep Apnea before and after Treatment”. Sleep 37 (9): 1465–1475. doi:10.5665/sleep.3994. ISSN 0161-8105. PMC 4153061. PMID 25142557. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4153061/. 
  18. ^ Chen, Hsiu-Ling; Lu, Cheng-Hsien; Lin, Hsin-Ching; Chen, Pei-Chin; Chou, Kun-Hsien; Lin, Wei-Ming; Tsai, Nai-Wen; Su, Yu-Jih et al. (2015-03-01). “White Matter Damage and Systemic Inflammation in Obstructive Sleep Apnea”. Sleep 38 (3): 361–370. doi:10.5665/sleep.4490. ISSN 0161-8105. PMC 4335530. PMID 25325459. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4335530/. 
  19. ^ Assaf, Yaniv; Pasternak, Ofer (2007). “Diffusion Tensor Imaging (DTI)-based White Matter Mapping in Brain Research: A Review”. Journal of Molecular Neuroscience 34 (1): 51–61. doi:10.1007/s12031-007-0029-0. PMID 18157658. 
  20. ^ Scholz, Jan; Klein, Miriam C; Behrens, Timothy E J; Johansen-Berg, Heidi (2009). “Training induces changes in white-matter architecture”. Nature Neuroscience 12 (11): 1370–1. doi:10.1038/nn.2412. PMC 2770457. PMID 19820707. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2770457/. 
  21. ^ Sampaio-Baptista, C.; Khrapitchev, A. A.; Foxley, S.; Schlagheck, T.; Scholz, J.; Jbabdi, S.; Deluca, G. C.; Miller, K. L. et al. (2013). “Motor Skill Learning Induces Changes in White Matter Microstructure and Myelination”. Journal of Neuroscience 33 (50): 19499–503. doi:10.1523/JNEUROSCI.3048-13.2013. PMC 3858622. PMID 24336716. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3858622/. 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]