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活動かつどう電位でんい

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活動かつどう電位でんい(かつどうでんい、えい: action potential)は、なんらかの刺激しげきおうじて細胞さいぼうまくしょうじる一過いっかせいまく電位でんい変化へんかである。活動かつどう電位でんいは、しゅとしてナトリウムイオンカリウムイオンが、細胞さいぼう内外ないがい濃度のうどしたがってイオンチャネルつうじて受動じゅどうてき拡散かくさんこすことにより、きるものである。

活動かつどう電位でんい動物どうぶつ本質ほんしつてき必要ひつよう条件じょうけんであり、素早すばや組織そしきあいだない情報じょうほうつたえることができる。また、動物どうぶつのみならず、植物しょくぶつにも存在そんざいする。活動かつどう電位でんいはさまざまな種類しゅるい細胞さいぼうからされるが、もっと広範こうはんには神経しんけいけいにおいて神経しんけい細胞さいぼう同士どうしや、神経しんけい細胞さいぼうから筋肉きんにくせんなどのほかからだ組織そしき情報じょうほう伝達でんたつするために使つかわれる。

活動かつどう電位でんいはすべての細胞さいぼうおなじわけではなく、おな種類しゅるい細胞さいぼうでも細胞さいぼう個体こたいによって性質せいしつことなることがある。たとえば、筋肉きんにく神経しんけいいで活動かつどう電位でんいはっする組織そしきとしてられるが、なかでも心筋しんきん活動かつどう電位でんい大抵たいてい細胞さいぼうあいだおおきくことなる。このこうでは神経しんけい細胞さいぼうじくさく典型てんけいてき活動かつどう電位でんいについてあつかう。

A. 理想りそうてき活動かつどう電位でんい概略がいりゃく細胞さいぼうまくじょういちてん通過つうかするさい活動かつどう電位でんい種々相しゅじゅそうしめす。
B. 電気でんきノイズや記録きろくのための電気でんき生理学せいりがく技術ぎじゅつのばらつきにより、実際じっさい活動かつどう電位でんい記録きろく概略がいりゃくからいがむ。

概観がいかん[編集へんしゅう]

細胞さいぼううちそとあいだでは、電位差でんいさつね存在そんざいしている。これは細胞さいぼう内外ないがいでのイオン分布ぶんぷと、これらイオンにたいする細胞さいぼうまく透過とうかせい(特定とくていのイオンのとおしやすさ)に由来ゆらいする。

電荷でんかつイオンの分布ぶんぷ細胞さいぼう内外ないがいことなるため、活性かっせいしていない静止せいし状態じょうたい細胞さいぼうでは通常つうじょう細胞さいぼうがいくら細胞さいぼうない電位でんいがマイナスとなっている。

活動かつどう電位でんいとは、この電位差でんいさがなんらかの刺激しげきによって一時いちじてき逆転ぎゃくてんする現象げんしょうである。活動かつどう電位でんいはスパイクやインパルスともよばれる。また、活動かつどう電位でんいたっすることを「発火はっか」としょうすることもある。活動かつどう電位でんい速度そくど複雑ふくざつさは細胞さいぼう種類しゅるいによりことなるものの、電位でんい逆転ぎゃくてんはばはほぼおなじである。

活動かつどう電位でんいにおけるまけからせいへの電位でんい変化へんかようする時間じかんみじかく、すうミリびょうである。どんな細胞さいぼう活動かつどう電位でんいにもじゅんだつ分極ぶんきょくそうさい分極ぶんきょくそうがあり、おおくの場合ばあい分極ぶんきょくしょう段階だんかいもある。心臓しんぞうペースメーカー細胞さいぼうのような心臓しんぞうとく細胞さいぼうでは、中間なかま電圧でんあつのプラトーしょう下降かこうしょう先行せんこう活動かつどう電位でんい持続じぞく時間じかんすうひゃくミリびょう延長えんちょうする。

活動かつどう電位でんい細胞さいぼうまくじょういちヶ所かしょまらず、まくじょうすすむ(伝導でんどう)。長距離ちょうきょりじくさくすすむこともあり、たとえば脊髄せきずいからあし筋肉きんにくまでシグナルをつたえる。キリンクジラのような大型おおがた動物どうぶつにおいては、距離きょりにしてすうメートルすすむ。

活動かつどう電位でんい発生はっせいには通常つうじょう電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルの存在そんざい不可欠ふかけつである。このたねのNa+チャネルが存在そんざいしない細胞さいぼうや、存在そんざいしない細胞さいぼうじょう部位ぶい(おおくの神経しんけい細胞さいぼうじょう突起とっきなど)においては、活動かつどう電位でんい発生はっせいしない。なお、Na+チャネルのわりに(やはり電位でんい依存いぞんせいの)Ca2+チャネルを利用りようして、Ca2+電流でんりゅうによる活動かつどう電位でんい発生はっせいさせる生物せいぶつもいる。神経しんけい以外いがいでは、心臓しんぞう調律ちょうりつになっているほらぼう結節けっせつ細胞さいぼうげられる。

測定そくていほう[編集へんしゅう]

活動かつどう電位でんいパッチクランプほうなどの電気でんき生理学せいりがくてき手法しゅほうや、EOSFETsひとしニューロチップひかり使つかったまく電位でんいイメージング測定そくていされる。じくさくじょういちてんいた電極でんきょくからオシロスコープによってまく電位でんい記録きろくすると、オシロスコープじょうにはなみ周期しゅうきとして活動かつどう電位でんいかく段階だんかいあらわれる。一周いっしゅう活動かつどう電位でんい冒頭ぼうとうしめしたのような、いがんだサインえがく。ある時刻じこくにおける振幅しんぷく活動かつどう電位でんいまくじょうのそのてんたっしたかどうか、あるいは通過つうかしたかどうか、そうであればどれほどまえかに依存いぞんする。

静止せいし電位でんい[編集へんしゅう]

細胞さいぼうまくしき多数たすうまくタンパク(あか)やペプチド(だいだい)が、とうくさり(みどり)の修飾しゅうしょくけて細胞さいぼうまくじょう存在そんざいする様子ようすしめす。細胞さいぼうまく構成こうせいする脂質ししつ重層じゅうそう内部ないぶ疎水そすいせいであるため、イオンのような電荷でんか分子ぶんしは、細胞さいぼうまく自由じゆうできない。このことがまく内外ないがい電位差でんいさ存在そんざい可能かのうにしている。

活動かつどう電位でんいについてるためには、まず静止せいしまく電位でんい静止せいし電位でんいともいう)についておおまかに必要ひつようがある。

すべての細胞さいぼうまく内外ないがい存在そんざいする電位差でんいさ通常つうじょう細胞さいぼうがいくら細胞さいぼうないがマイナスである。この状態じょうたいを、まく分極ぶんきょくしているという。活動かつどうしていない状態じょうたいにあるまく電位差でんいさ静止せいし電位でんいばれ、神経しんけい細胞さいぼうではおよそ−70mVである(細胞さいぼうがい電位でんいを0としている)。この電位差でんいさしょうずる要因よういんはいくつかあるが、もっとも重要じゅうようなものはまくあいだにおける、イオン輸送ゆそう選択せんたくてきなイオン透過とうかせいである。

濃度のうど勾配こうばい形成けいせい[編集へんしゅう]

細胞さいぼうまくじょうらばって存在そんざいするNa+ - K+ポンプにより、K+細胞さいぼうないへの能動のうどう輸送ゆそうとNa+細胞さいぼうがいへの能動のうどう輸送ゆそうおこなわれる。このポンプは、みっつのNa+細胞さいぼうがい排出はいしゅつするさい同時どうじふたつのK+細胞さいぼうないむ。このことにより、Na+細胞さいぼうがいおお内側うちがわすくない、K+細胞さいぼうないおお外側そとがわすくないというイオン分布ぶんぷしょうじさせる。平衡へいこう状態じょうたいにおいてこの濃度のうど勾配こうばいから計算けいさんされる平衡へいこう電位でんいは、ネルンストのしきにより、K+やく−90mV、Na+やく+45mVのをとる。

静止せいし電位でんい形成けいせい[編集へんしゅう]

濃度のうど勾配こうばい維持いじする要因よういんはNa+ - K+ポンプであるが、静止せいし電位でんい支配しはいしているおおきな要因よういんは、K+漏洩ろうえいチャネルである。

Na+とK+は、ひらいたイオンチャネルをとおして電気でんき化学かがくてき勾配こうばい影響えいきょうした拡散かくさんする。通常つうじょう細胞さいぼうまくにおいてK+透過とうかせいはNa+透過とうかせいよりも75ばいおおきい。これはK+漏洩ろうえいチャネルがつねひらいていることに起因きいんする。静止せいし電位でんいが−70mVと、Na+平衡へいこう電位でんい+45mVよりもK+平衡へいこう電位でんい−90mVにちかをとるのは、この透過とうかせいちがいがおも要因よういんである。

静止せいし電位でんい同様どうようおおくの神経しんけい活動かつどう電位でんいはNa+とK+透過とうかせい依存いぞんしている。

活動かつどう電位でんい仕組しく[編集へんしゅう]

活動かつどう電位でんいおおまかなながれはつぎのようになっている。

静止せいし電位でんい[編集へんしゅう]

静止せいし電位でんいにおいて、いくつかのK+漏洩ろうえいチャネルはひらいている一方いっぽう電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルはじている。正味しょうみ電流でんりゅうながれていないが、まくあいだ移動いどうしているおもなイオンはK+であり、その結果けっか静止せいし電位でんいはK+平衡へいこう電位でんい比較ひかくちかをとる。

刺激しげき[編集へんしゅう]

興奮こうふん刺激しげきによるまく局所きょくしょてきだつ分極ぶんきょくは、神経しんけい細胞さいぼう表面ひょうめんまくにある電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルをひらく。その結果けっかNa+濃度のうど勾配こうばいおよび電気でんきてき勾配こうばい推進すいしんりょくとなり、細胞さいぼうない流入りゅうにゅうする。

だつ分極ぶんきょく[編集へんしゅう]

Na+流入りゅうにゅうまく電位でんい電荷でんか減少げんしょうするにしたがい、さらなるNa+チャネルがひらき、さらにおおきなNa+流入りゅうにゅうこされる。これはせいのフィードバックのよいれいである。Na+チャネルがおおひらくにつれ、Na+による電流でんりゅうはK+漏洩ろうえいチャネルによる電流でんりゅうち、まく電位でんい逆転ぎゃくてん内側うちがわがプラスとなる。

電位でんい変化へんかはNa+のみの移動いどうによるものとかんがえるのではなく、Na+とK+まくあいだでの「透過とうかせい」の変化へんかによるものとかんがえるべきである。

この、だつ分極ぶんきょくとそれにともなうNa+チャネルの開口かいこう周囲しゅういひろがっていくことで活動かつどう電位でんい伝導でんどうこる。

ピーク[編集へんしゅう]

まく電位でんいが+30mV程度ていどになると、Na+チャネルの電位でんい依存いぞんせいゲートがじ、さらなるNa+流入りゅうにゅう阻害そがいする。これにわずかにおくれて、電位でんい依存いぞんせいK+チャネルの電位でんい感受性かんじゅせい活性かっせいゲートがひらく。

活動かつどう電位でんいのどの段階だんかいにおいても、きわめてすこしのイオンの移動いどうしかこらないという認識にんしき重要じゅうようである。活動かつどう電位でんいしょうじているあいだの、細胞さいぼう内外ないがいでのNa+とK+濃度のうど変化へんか無視むしできるほどきわめてちいさい。

さい分極ぶんきょく[編集へんしゅう]

電位でんい依存いぞんせいK+チャネルがひらくことで、濃度のうど勾配こうばいおよび電気でんきてき勾配こうばい推進すいしんりょくとなりK+流出りゅうしゅつはじまる。K+流出りゅうしゅつすることで、まく電位でんい逆転ぎゃくてんさい分極ぶんきょくこされる。

分極ぶんきょく[編集へんしゅう]

電位でんい依存いぞんせいK+チャネルの閉鎖へいさ電位でんいおよび時間じかん依存いぞんしている。このチャネルはまく電位でんい変化へんかにすぐには応答おうとうせず、おくれて応答おうとうかえす。そのため、まく十分じゅうぶんさい分極ぶんきょくしたのちもK+流出りゅうしゅつつづき、一時いちじてきまく電位でんい通常つうじょう静止せいし電位でんいよりもさらにひくくなる。この分極ぶんきょく状態じょうたいはアンダーシュートともばれる。

このほか、Cl-チャネルの開口かいこうによりCl-細胞さいぼうない流入りゅうにゅうすることでも分極ぶんきょくこす。れいとして、ベンゾジアゼピンけい睡眠薬すいみんやくこう不安ふあんやくなどがある。ベンゾジアゼピンけい薬物やくぶつγがんま-アミノ酪酸GABAA受容じゅようたい-Cl-チャネルふく合体がったいのベンゾジアゼピン結合けつごう部位ぶい結合けつごうGABAA受容じゅようたいたいするγがんま-アミノ酪酸親和しんわせいたかめることで、Cl-チャネルをかいしたCl-細胞さいぼうない流入りゅうにゅう促進そくしんするため、細胞さいぼう分極ぶんきょくこし、神経しんけい興奮こうふんおさえる。

おう[編集へんしゅう]

つぎに、活動かつどう電位でんいおうばれる刺激しげき反応はんのうしない期間きかんうつる。おうはNa+チャネルが活性かっせい状態じょうたいとなっているためにしょうじる。詳細しょうさい後述こうじゅつ

おう一方向いちほうこうへの活動かつどう電位でんい伝導でんどう保証ほしょうする。おうがなければ原理げんりてきには活動かつどう電位でんいじくさく両方向りょうほうこうへと伝導でんどう可能かのうである。しかし実際じっさいには活動かつどう電位でんい伝導でんどう方向ほうこううしろはおうとなっているため、活動かつどう電位でんいの「逆流ぎゃくりゅう」がこらないようになっている。

閾値[編集へんしゅう]

電圧でんあつまく電位でんい)にたいするイオン電流でんりゅうのグラフと、仮想かそうてき細胞さいぼうにおける活動かつどう電位でんいの閾値(あか矢印やじるし)の関係かんけい

活動かつどう電位でんいは、興奮こうふん刺激しげきによるまく局所きょくしょてきだつ分極ぶんきょくが「閾値」をえたときにこされる。閾値の電位でんいはさまざまだが、一般いっぱんてきには静止せいし電位でんいより15mV以上いじょうたかい。

活動かつどう電位でんいは2つのチャネル(電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルとK+漏洩ろうえいチャネル)のみをもつ仮想かそうてき細胞さいぼうによってモデルできる。活動かつどう電位でんいの閾値の由来ゆらいはI/V カーブ(みぎ)により理解りかいすることが出来できる。(図示ずししたI/Vカーブはチャネルが活性かっせいしていない状態じょうたい電圧でんあつくわえたときの瞬間しゅんかんてき電流でんりゅうしめしている)

において、着目ちゃくもくすべきてん矢印やじるしにてしめされている。

  1. みどり矢印やじるし静止せいし電位でんいしめす。仮想かそう細胞さいぼうけいにおいてはK+平衡へいこう電位でんい(Ek)と一致いっちし、K+チャネルが開口かいこうしても電位でんいはEkのままである。
  2. 黄色おうしょく矢印やじるしはNa+平衡へいこう電位でんい(ENa)をしめす。仮想かそう細胞さいぼうけいにおいては、ENaはK+チャネルがじているときにたっしえる最大さいだいまく電位でんいである。ENaえる電圧でんあつ人工じんこうてきくわえて電流でんりゅう計測けいそくしている。
  3. あお矢印やじるし活動かつどう電位でんいのピークがたっしえる最大さいだい電位でんいである。この電位でんい事実じじつじょう最大さいだいまく電位でんいである。K+電流でんりゅう存在そんざいするためENaにはたどりけない。
  4. あか矢印やじるし活動かつどう電位でんいの閾値をしめす。この電位でんい以下いかでは電流でんりゅうそときであり、細胞さいぼう静止せいし電位でんいへともどってしまう。この電位でんいすこしでもえると電流でんりゅううちきになり、細胞さいぼうだつ分極ぶんきょくさせる。みどりせんもっとひくをとるところが、すべてのNa+チャネルがひら電位でんいである。

活動かつどう電位でんいの閾値はよくNa+チャネルが開口かいこうする「閾値」と混同こんどうされる。これはただしくなく、Na+チャネルに明確めいかくな「閾値」は存在そんざいしない。そうではなく、開口かいこうかくりつてきなものであり、分極ぶんきょくのときでさえ、時折ときおり開口かいこうするNa+チャネルがありえる。また、活動かつどう電位でんいの閾値はNa+電流でんりゅうがK+電流でんりゅう上回うわまわ電位でんいし、Na+電流でんりゅう有意ゆういおおきさとなる電位でんいとはことなる。

神経しんけい細胞さいぼうだつ分極ぶんきょくは、生物せいぶつ学的がくてきには通常つうじょうシナプスのじょう突起とっき起因きいんする。しかし、原理げんりてきには活動かつどう電位でんい神経しんけい線維せんいのどこからでもしょうじえる。

回路かいろモデル[編集へんしゅう]

A. じゅうまくうええがかれた単純たんじゅんRC回路かいろは、このイオンチャネルと脂質ししつまく関係かんけいしめしている。
B. より入念にゅうねん回路かいろえがくことによって、Na+チャネル(あお)、K+チャネル(みどり)をふくまくのモデルをしめすこともできる。

生体せいたいまくにおける活動かつどう電位でんい伝達でんたつ仕組しくみは、イオンチャネル細胞さいぼうまくRC回路かいろとみなすことでよりふか理解りかいできる。この回路かいろにおいて、イオンチャネルは抵抗ていこう絶縁ぜつえんたいである脂質ししつまくコンデンサーとしてあらわされる。電圧でんあつによって抵抗ていこうわる電位でんい依存いぞんせいイオンチャネルは可変かへん抵抗ていこうであり、K+漏洩ろうえいチャネルは通常つうじょう抵抗ていこうとして表現ひょうげんされる。まくあいだにおけるNa+とK+濃度のうど電源でんげん電池でんち)とみなせる。また、じくさく方向ほうこうへの神経しんけい伝達でんたつさまたげる要因よういん抵抗ていこうとして表現ひょうげんされる。

伝導でんどう[編集へんしゅう]

活動かつどう電位でんい伝達でんたつはいくつかのRC回路かいろをつないだものとみなせる。それぞれのRC回路かいろまくじょうのあるちいさい区域くいき表現ひょうげんしている。

まず、ずい線維せんいにおける活動かつどう電位でんい伝導でんどうについて説明せつめいする。活動かつどう電位でんいだつ分極ぶんきょく電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルの開口かいこうかえすことで伝導でんどうする。ある区域くいきにおいてだつ分極ぶんきょくにより電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルがひらくと、Na+促進そくしん拡散かくさんにより細胞さいぼうない流入りゅうにゅうする。流入りゅうにゅうした電荷でんかつNa+静電気せいでんきてき反発はんぱつによって付近ふきんイオンをまわりへしやり、同時どうじ付近ふきんかげイオンをひきつける。その結果けっか電荷でんかなみ、すなわちだつ分極ぶんきょくなみしょうじ、イオン自身じしん移動いどうることなしにとおくまでつたわることとなる。そして近傍きんぼう区域くいきにおいて十分じゅうぶんだつ分極ぶんきょくがおこると、その区域くいきにあるチャネルがひらく。この過程かていかえされることで、活動かつどう電位でんいじくさくうえ伝導でんどうする。

速度そくど[編集へんしゅう]

活動かつどう電位でんいは、ふと以外いがい条件じょうけんおなじであるとき、よりふとじくさくじょうでよりはや伝導でんどうする。神経しんけい伝達でんたつさまたげるおも原因げんいん電位差でんいさのために細胞さいぼう内側うちがわまくじょうあつまったかげイオンであり、直径ちょっけいおおきいとまくからはなれた部分ぶぶん、つまりマイナスに帯電たいでんしていない領域りょういきえるため、だつ分極ぶんきょくなみはやつたわる。

イカ伝導でんどう速度そくど向上こうじょうのため、直径ちょっけいふとくした巨大きょだいじくさく (Giant axon) をっている。とくアメリカオオアカイカ巨大きょだいじくさく直径ちょっけいが1mm以上いじょうもある[1]。だがこれらはずい線維せんいであるため、ほそゆうずい線維せんいくらべて伝達でんたつ速度そくどはあまりわらない。

哺乳類ほにゅうるいにおいては、自律じりつ神経しんけいけい交感神経こうかんしんけいふし神経しんけいずい線維せんいである。直径ちょっけい2µmのずい線維せんいはおよそ1m/sの伝達でんたつ速度そくどしめす。これにたいし、おな直径ちょっけいゆうずい線維せんいはおよそ18m/sの速度そくどをもつ。

跳躍ちょうやく伝導でんどう[編集へんしゅう]

ゆうずい線維せんいにおいては、活動かつどう電位でんいずいさや (ミエリン)で絶縁ぜつえんされた部分ぶぶんを「える」、跳躍ちょうやく伝導でんどうという現象げんしょうがある。ゆうずい線維せんいにおいて、ずいさやのまかれていない部分ぶぶんランヴィエしぼぶ。ずいさや存在そんざいによって、直径ちょっけい巨大きょだいさせずとも伝導でんどう速度そくどはやくすることができる。跳躍ちょうやく伝導でんどうという名前なまえのためによく誤解ごかいされるが、活動かつどう電位でんいが「跳躍ちょうやく」すること自体じたいずいさやかれていることによる「現象げんしょう」であり、跳躍ちょうやく伝導でんどうはや原因げんいんではない。

跳躍ちょうやく伝導でんどうは、生命せいめいおおきく複雑ふくざつするという進化しんか過程かていにおいて、よりとおくによりはや神経しんけい伝達でんたつおこなうために重要じゅうよう役割やくわりたした。もし跳躍ちょうやく伝導でんどうがなければ、伝導でんどう速度そくどげるためにはじくさく直径ちょっけいおおきくするしかなく、神経しんけいけいからだなかめる割合わりあいきわめておおきなものとなっていたであろう。

跳躍ちょうやく伝導でんどうのメカニズムは、1939ねん田崎たさき一二かずじ博士はかせにより発見はっけんされた。

跳躍ちょうやく伝導でんどうのメカニズム
伝導でんどうさまたげるおも原因げんいんまくじょう存在そんざいする電荷でんかである。コンデンサーたくわえる電荷でんかは、まいいた距離きょりとおくすると減少げんしょうする。神経しんけいけいは、細胞さいぼうずいさやくことによって絶縁ぜつえん部分ぶぶんふとくし、まくじょう存在そんざいする電荷でんか減少げんしょうはかっている。
その結果けっかずいさやのある部位ぶいにおける伝導でんどう速度そくど格段かくだん向上こうじょうする。しかし同時どうじにこの部位ぶいでは、ずいさやがあるために電位でんい依存いぞんせいチャネルが存在そんざいできず、活動かつどう電位でんい再生さいせいさまたげられる。よって、ずいさやのまかれていないランヴィエしぼにおいてのみ活動かつどう電位でんい再生さいせいされる。ランヴィエしぼでは電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルが豊富ほうふ存在そんざいするので(ずい線維せんいにおける密度みつどより4けたほどおおい)、効率こうりつてき活動かつどう電位でんい再生さいせいすることが出来できるようになっている。
損傷そんしょうへの対応たいおう
ずいさやかれている部分ぶぶんながさは跳躍ちょうやく伝導でんどうにとって重要じゅうようである。はや伝導でんどうおこなうためには、このながさはければながいほどいが、ながすぎると信号しんごうなみ減衰げんすいしすぎてつぎのランヴィエしぼのチャネルの閾値をえることが出来できなくなる。現実げんじつには、ずいさやかれている部分ぶぶんながさは、信号しんごう最低さいていでもふたさきのランヴィエしぼまでたどりけるのに十分じゅうぶんながさをもつ。そのようにして、あるランヴィエしぼ部分ぶぶん損傷そんしょうなどの原因げんいんにより活動かつどう電位でんいこせなくなっていたとしても、そのひとつさきのランヴィエしぼまで信号しんごうつたえることが出来できる。
疾患しっかんとのかかわり
いくつかの病気びょうき跳躍ちょうやく伝導でんどうさまたげ、伝導でんどう速度そくど低下ていかさせる。これらの病気びょうきのうちもっともよくられたものとして、だつずい疾患しっかん一種いっしゅである多発たはつせい硬化こうかしょうがある。

おう[編集へんしゅう]

おうはNa+チャネルが活性かっせい状態じょうたいとなっているためにしょうじ、便宜上べんぎじょう絶対ぜったいおう相対そうたいおうにわけられる。

絶対ぜったいおうはいかに電位でんい変化へんかしようとも活動かつどう電位でんい発生はっせいしない期間きかんをいう。これはほとんどすべてのNa+チャネルが活性かっせい状態じょうたいとなっているためである。

相対そうたいおう絶対ぜったいおうつぎにくる)は、つよ刺激しげきあたえれば活動かつどう電位でんい発生はっせいがおこる期間きかんをいう。活動かつどう電位でんい発生はっせいしづらくなっている原因げんいんふたつである。ひと原因げんいんとして、細胞さいぼうがまだわずかに分極ぶんきょく状態じょうたいにあることがあげられる。これは、K+透過とうかせい静止せいし状態じょうたいのときとくらおおきなままであるためである。このため、閾値にたっするためによりおおきな電位でんい変化へんか必要ひつようとなる。もうひとつの原因げんいんは閾値自体じたい上昇じょうしょうにある。これは、いくつかのNa+チャネルがいまだに活性かっせいであるためである。

よく誤解ごかいされるが、Na+/K+ポンプは電位でんい変化へんかには寄与きよしない。Na+/K+ポンプは濃度のうど勾配こうばい維持いじすることにより静止せいし電位でんい維持いじ寄与きよする、ということはできるのだが、チャネルとくらべるとタイムスケールがながく、電位でんい変化へんかかかわる透過とうかせいへの影響えいきょうはチャネルとくらべると無視むしできる程度ていどちいさい。

電位でんい依存いぞんせいNa+チャネル
電位でんい依存いぞんせいNa+チャネルは2つのゲートをつ。Na+はこの2つのゲートがともひらいてはじめて細胞さいぼうないへの流入りゅうにゅう可能かのうとなる。
ゲートのひとつは細胞さいぼうまく電位でんい反応はんのうしてひら細胞さいぼうしつがいゲート(電位でんい依存いぞんせいゲート)で、まくだつ分極ぶんきょくしているあいだひらつづける。もうひとつの細胞さいぼうしつないゲート(活性かっせいゲート)は通常つうじょうひらいているが、電位でんい依存いぞんせいゲートがひらくとすぐにじてしまう。活性かっせいゲートがふたたひらくのは時間じかん依存いぞんてきであり、かくりつてきなものである。活性かっせいゲートがじているあいだはチャネルが活性かっせいしているとばれ、おうしょうじるおも原因げんいんとなっている。

進化しんかてき意図いと[編集へんしゅう]

植物しょくぶつ活動かつどう電位でんい[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]