触角しょっかく

触角しょっかく（しょっかく、antenna、複数ふくすう形がた：antennae）は、節足動物せっそくどうぶつなどの頭部とうぶから突出とっしゅつしている対たいになった器官きかんのひとつ。主おもに感覚かんかくを司つかさどる。

基本きほん的てき特徴とくちょう

触角しょっかくは、節足動物せっそくどうぶつや軟体動物なんたいどうぶつの腹足類ふくそくるいなどの頭部とうぶにある、対たいをなす細長ほそながい突起とっき物ぶつである。

節足動物せっそくどうぶつ

節足動物せっそくどうぶつの触角しょっかくは頭部とうぶに備そなえ、先さき節ぶしより後ごの体からだ節ぶしに由来ゆらいの付属ふぞく肢し（関節かんせつ肢し）である^[1]^[2]。左右さゆうに対たいをなし、外そと骨格こっかくに包つつまれる。多数たすうの関節かんせつを持もっているのが普通ふつうだが、途中とちゅうの関節かんせつを大おおきく動うごかすものはまれで、多おおくの場合ばあいは基部きぶの関節かんせつで大おおきく振ふり動うごかすように使つかわれる。多おおくの場合ばあいは、頭部とうぶから前方ぜんぽうへ伸のばし、進行しんこう方向ほうこうを探さぐる役割やくわりを果はたしている。

触角しょっかくは多おおくの節足動物せっそくどうぶつが持もっている。触角しょっかくの形かたちや配置はいちは節足動物せっそくどうぶつにおいては、おのおのの分類ぶんるいレベルで、それぞれに重要じゅうような分類ぶんるい形質けいしつとなっている。特とくに昆虫こんちゅう類るいのコウチュウ目めやハエ目めの場合ばあい、触角しょっかくの構造こうぞうが科かの分類ぶんるいで重視じゅうしされる。また、触角しょっかくが二に次じ的てきに退化たいかし、もしくは触角しょっかくに相あい同どうの付属ふぞく肢しが触角しょっかくでない別べつの器官きかんとなった節足動物せっそくどうぶつもある。

様々さまざまな昆虫こんちゅうの触角しょっかく
ヤスデの触角しょっかく
軟甲類るいの体制たいせい模も式しき図ず
三さん葉虫はむしTriarthrus eatoniの復元ふくげん図ず

六ろく脚きゃく類るい、多た足あし類るい、Artiopoda類るい（三さん葉虫はむし類るいなど）、およびフーシェンフイア類るいなどの触角しょっかくは1対たい（甲殻こうかく類るいの第だい1触角しょっかくに相あい同どう）で単たん枝えだ型がた。ただし、六ろく脚きゃく類るいのカマアシムシには触角しょっかくがない。また、エダヒゲムシの触角しょっかくには分ぶん枝えだがあるように見みえる。
甲殻こうかく類るいでは2対ついの触角しょっかくをもち、前後ぜんごで第だい1触角しょっかく（first antenna、antennula）・第だい2触角しょっかく（second antenna、単たんに「antenna」とも）と区別くべつされる。基本きほんとして第だい1触角しょっかくは単たん枝えだ型がた、第だい2触角しょっかくはニ叉また型がたである。ただし軟甲類るいとムカデエビの場合ばあい、第だい1触角しょっかくは2本ほん以上いじょうの分岐ぶんきをもつ。甲殻こうかく類るいの初期しょき幼生ようせいであるノープリウスは、第だい2触角しょっかくを用もちいて遊泳ゆうえいをする。
鋏やっとこ角かく類るいには触角しょっかくはない。かつてこれは二に次じ的てき退化たいかの結果けっかと思おもわれたが、のちに鋏やっとこ角かくは上述じょうじゅつの群ぐんの第だい1触角しょっかくに相あい同どうであると判明はんめいした^[3]。ただし、歩ふ脚あしの1対ついが細長ほそながく伸のびて、触角しょっかくのように環境かんきょうを感知かんちする役割やくわりを果はたすようになっている鋏やっとこ角かく類るいがある。クモガタ類るいに属ぞくするサソリモドキ類るい・ヤイトムシ類るい・ウデムシ類るいの第だい1脚きゃく、ザトウムシ類るいの第だい2脚きゃくなどがその例れいである。また、クモガタ類るいの触さわ肢しは、感覚かんかく器官きかんとして用もちいられる例れいも少すくなくない。

有ゆう爪つま動物どうぶつ

節足動物せっそくどうぶつに類縁るいえんの有ゆう爪つま動物どうぶつ（カギムシ類るい）は、頭部とうぶも1対ついの触角しょっかくを持もつ。柔軟じゅうなんで、密生みっせいした環節かんせつに細分さいぶんされる。付属ふぞく肢しであるが、節足動物せっそくどうぶつの触角しょっかくとは異ことなり、これは先さき節ぶしに由来ゆらいのものである^[1]。

葉は足あし動物どうぶつ

汎ひろし節足動物せっそくどうぶつにおける3つの動物どうぶつ門もん（節足動物せっそくどうぶつ、緩なる歩ふ動物どうぶつ、有ゆう爪つま動物どうぶつ）に至いたる絶滅ぜつめつ動物どうぶつ群ぐんとされる葉は足あし動物どうぶつは、触角しょっかくをもつ種類しゅるいが確認かくにんされる。基本きほんとして先さき節ぶしの付属ふぞく肢しに由来ゆらい（有ゆう爪つま動物どうぶつの触角しょっかくに相あい同どう）と考かんがえられる1対ついのみをもち、目立めたてない構造こうぞう体たいであるが、オニコディクティオン属ぞくの Onychodictyon ferox は触角しょっかくが羽毛うもう状じょうに発達はったつし、Antennacanthopodia では2対ついの触角しょっかくがある。

軟体動物なんたいどうぶつ

腹足類ふくそくるいの頭部とうぶには上面うわつらに1対ついの突起とっきがあり、これが触角しょっかくである。この触角しょっかくは柔軟じゅうなんで細長ほそながく、先さきが細ほそくなるものや、先端せんたんが膨ふくらむものなど、様々さまざまな形かたちのものがある。触角しょっかくの基部きぶには目めがある場合ばあいが多おおい。カタツムリなどでは触角しょっかくの先端せんたんに目めがあり、柄え眼め類るいと呼よばれる。

リンゴマイマイ（カタツムリ）の触角しょっかく
カワニナ類るいの触角しょっかく

役割やくわり

多おおくの場合ばあい、触角しょっかくは感覚かんかく器官きかんであるとされている。何なにをどうやって感かんじているかは分類ぶんるい群ぐんによって様々さまざまであるが、多おおくの場合ばあい、接触せっしょく・気流きりゅう・熱ねつ・音おとあるいはにおいの感知かんちと味覚みかくを感かんじるための器官きかんであるとされる。ガなどの昆虫こんちゅうでは雌めすが誘引ゆういんフェロモンを出だして雄ゆうを呼よび寄よせるものがあるが、そのようなものでは、雄ゆうの触角しょっかくの方ほうが関節かんせつごとに長ながい突起とっきをもつ羽毛うもう状じょうになっているなど、雌めすに比くらべてよく発達はったつしている例れいが多おおい。

遊泳ゆうえいなどの運動うんどうに用もちいられる例れいもよくある。甲殻こうかく類るいの初期しょき幼生ようせいであるノープリウスは2対ついの触角しょっかくと大だい顎あごだけを持もち、主しゅとして触角しょっかくによって遊泳ゆうえい運動うんどうをする。ミジンコやカイエビ、貝かい虫ちゅうは成体せいたいでも遊泳ゆうえいに於おいて多おおくを触角しょっかくに頼たよっている。