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バソプレッシン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
こう利尿りにょうホルモンから転送てんそう
アルギニンバソプレシンの空間くうかん充填じゅうてんモデル

バソプレッシンえい: Vasopressin)は、ヒトふくおおくの動物どうぶつられるペプチドホルモンである。ヒトでは視床ししょう下部かぶ合成ごうせいされ、脳下垂体のうかすいたい後葉こうようから分泌ぶんぴつされる。片仮名かたかな表記ひょうきではバゾプレシンどく: Vasopressin)などとかれることもあり、こう利尿りにょうホルモン(えい: Antidiuretic hormone:ADH)、血圧けつあつ上昇じょうしょうホルモンともばれる。おおくの動物どうぶつではアルギニンバソプレッシン(えい: Arginine vasopressin:VP)だが、ぶたではリシンバソプレッシン鳥類ちょうるいではアルギニンバゾトシンである。アルギニンバソプレシンはこう用量ようりょう強力きょうりょく血管けっかん収縮しゅうしゅく作用さようち、心肺しんぱい蘇生そせい敗血症はいけつしょうなどにおいて血管けっかん収縮しゅうしゅくやくとしてもちいられるほかてい用量ようりょう尿にょうくずししょう治療ちりょうにももちいられる。合成ごうせいアルギニンバソプレシン製剤せいざい(商品しょうひんめい ピトレシン)が市販しはんされている。

ヒトにおいて

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こう利尿りにょうホルモンのとおり、腎臓じんぞうでのみずさい吸収きゅうしゅう増加ぞうかさせることによって、利尿りにょうさまたげるはたらきをする。またVaso(かん)+ press(圧迫あっぱく)+ in からつくられたかたりであることからもわかるように、血管けっかん収縮しゅうしゅくさせて血圧けつあつげる効果こうかがある[1]

意義いぎ

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利尿りにょうさまたげることは体液たいえき喪失そうしつふせぐことになり、脱水だっすいショックなどのように循環じゅんかん血漿けっしょうりょう減少げんしょうしたとき血漿けっしょう浸透しんとうあつ上昇じょうしょうしたとき)に体液たいえき保持ほじする意義いぎがある。

構造こうぞう

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9アミノ酸あみのさんからなるペプチドである。Cys-Tyr-Phe-Gln-Asn-Cys-Pro-Arg-Gly-CONH2のCysとCysがS-S結合けつごうでつながった構造こうぞう

合成ごうせい分泌ぶんぴつ

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のう視床ししょう下部かぶにある神経しんけい細胞さいぼうからだ合成ごうせいされたシグナルペプチド(SP)、バソプレッシン(VP)、ニューロフィジン(NPH)、とうタンパク質たんぱくしつ(GP)からなるプレプロプレッソフィジンばれるプレプロホルモンは、最初さいしょにシグナルペプチドをのぞかれプロホルモンとなり、じくさく輸送ゆそうにより脳下垂体のうかすいたい後葉こうようにあるシナプスおくられるあいだひらけきれしバソプレッシンとなり、血管けっかんない分泌ぶんぴつされる。

受容じゅよう伝達でんたつ

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バソプレッシンのシグナル腎臓じんぞう細胞さいぼうまくにあるV2受容じゅようたいかいしてつたえられる。そして、3りょうたいGタンパク質たんぱくしつであるGsタンパク質たんぱくしつ情報じょうほう伝達でんたつされ、それがアデニルさんシクラーゼを活性かっせいさせる。それによりATPがcAMPにわり、そのcAMPはAキナーゼ活性かっせいする。そのAキナーゼはしょう胞にあるアクアポリン2をかん腔側に移行いこうさせて、かん腔内のみず細胞さいぼうないさい吸収きゅうしゅうする。それによりこう利尿りにょう作用さよう促進そくしんされる。

作用さようじょ

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腎臓じんぞう尿にょう細管さいかん細胞さいぼうの1つである集合しゅうごうかんうちにあるアクアポリン2(AQP2)かん腔側細胞さいぼうまくあいだしつえき移動いどうし、集合しゅうごう管内かんないみず透過とうかせい上昇じょうしょう水分すいぶんさい吸収きゅうしゅう促進そくしんする。

バソプレッシンに関連かんれんした疾患しっかん

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治療ちりょうやくとしてのバソプレッシン

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ホルモン補充ほじゅう療法りょうほう

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バソプレッシンは、脳下垂体のうかすいたい後葉こうよう荒廃こうはいによる分泌ぶんぴつ不全ふぜん中枢ちゅうすうせい尿にょうくずししょう)にたいして、注射ちゅうしゃざいとしてもちいられている。 また、誘導体ゆうどうたいであるデスモプレッシンは、注射ちゅうしゃてんはなかたちもちいられている。

救急きゅうきゅう医療いりょうにおける適応てきおう

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敗血症はいけつしょうせいショックにたいする血管けっかん収縮しゅうしゅくやくとして、ノルアドレナリン投与とうよ効果こうか不十分ふじゅうぶん場合ばあいだい選択せんたくとして投与とうよ考慮こうりょされる(『日本にっぽんばん敗血症はいけつしょうガイドライン2020』)。

以前いぜんしん停止ていしたいする血管けっかん収縮しゅうしゅくやくの1つとして投与とうよされていたこともあったが、現在げんざいのガイドライン(『JRC蘇生そせいガイドライン2015』:2020でも変更へんこうなし)では推奨すいしょうされていない(『バソプレシンをアドレナリンの代用だいようとして使用しようすべきでないことを提案ていあんする(よわ推奨すいしょうひくいエビデンス)』)。

ヒト以外いがい生物せいぶつにおいて

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腎臓じんぞうとはことなるタイプの受容じゅようたいのうにも分布ぶんぷしており、バソプレッシンが動物どうぶつ行動こうどう影響えいきょうあたえることがラットなどをもちいた実験じっけん報告ほうこくされている。さらに幼少ようしょうのマウスにストレスをあたえると、バソプレッシンの分泌ぶんぴつ促進そくしんされ、これによりエピジェネティック調節ちょうせつによりバソプレッシンの分泌ぶんぴつレベルが生涯しょうがいにわたってたかくなる。そのことにより記憶きおくりょく低下ていか適応てきおうせいなどにたいする困難こんなんしょうじるという結果けっか報告ほうこくされた。

出典しゅってん

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