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エストロゲン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
エストラジオール
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 50-28-2
特性とくせい
化学かがくしき C18H24O2
モル質量しつりょう 272.38
外観がいかん 固体こたい結晶けっしょう
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

エストロゲンべい: Estrogen, えい: Oestrogen, どく: Estrogene)は、エストロン、エストラジオール、エストリオールの3種類しゅるいからなり、ステロイドホルモン一種いっしゅ一般いっぱんエストロジェン卵胞らんぽうホルモンなどとばれるが、おも女性じょせいホルモンばれる[1]

エストロゲン(べい: Estrogen)の語源ごげんは、ギリシャの“estrus(発情はつじょう)”と、接尾せつびの“-gen(しょうじる)”からっており、エストロゲンの分泌ぶんぴつがピークになると発情はつじょうするとわれたことに由来ゆらいする。

種類しゅるい

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左上ひだりうえエストロンみぎじょうエストラジオール左下ひだりしたエストリオールみぎエステトロール

以下いかの4種類しゅるいられている。

これらのよん種類しゅるい関係かんけいは、

アンドロステンジオンが、テストステロンかエストロンになる。
エストロンはエストラジオールになる。
テストステロンはエストラジオールか、アンドロステンジオンになる。
エストラジオールは、エストロンか、エストリオールになる。
エストラジオールとエストリオールは、ヒトの胎児たいじ肝臓かんぞうでのみエステトロールになる。
テストステロンは男性だんせいホルモン(アンドロゲン)に分類ぶんるいされている[2]

生成せいせい

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卵巣らんそう顆粒かりゅうまく細胞さいぼうそと卵胞らんぽうまく細胞さいぼう胎盤たいばん副腎ふくじん皮質ひしつ精巣せいそうつくられる。乳児にゅうじ早期そうき(1-3ヶ月かげつ)の女性じょせい思春期ししゅんきなみ分泌ぶんぴつりょうおおく、しょう卵胞らんぽう出没しゅつぼつするが、2さいから思春期ししゅんきむかえるまでは分泌ぶんぴつりょう減少げんしょうする。2さいから思春期ししゅんきむかえるまでの分泌ぶんぴつりょう女性じょせいで0.6pg/ml、男性だんせいで0.08pg/mlと女性じょせいほうたかくこれが女性じょせい思春期ししゅんきはつらい男性だんせいよりはや原因げんいんひとつとなっている[3]思春期ししゅんき卵巣らんそう発達はったつはじめるととも分泌ぶんぴつプロゲステロン増加ぞうかはじめ、だい性徴せいちょう促進そくしんさせる。更年期こうねんき以降いこう分泌ぶんぴつ減少げんしょうする。女性じょせい尿にょうには、大量たいりょうのエストロゲンがふくまれるため、下水げすい処理しょりすい多量たりょうのエストロゲンをふくむことになり、環境かんきょうホルモン環境かんきょうへの排出はいしゅつ問題もんだいになったことがある[4]

男性だんせい作用さよう

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女性じょせい乳房ちぶさ写真しゃしん

男性だんせい場合ばあいテストステロン(C19H28O2)をもとにエストラジオール(C18H24O2)がつくられて分泌ぶんぴつされる。そのりょう更年期こうねんき女性じょせいどう程度ていどとされる。思春期ししゅんきにテストステロンがえるのにつれエストロゲン濃度のうど増加ぞうかし、エストロゲンのほう相対そうたいてきおおくなると、ホルモンバランスのくずれにより女性じょせい乳房ちぶさこったりすることがある。のちにテストステロンがえてくると女性じょせい乳房ちぶさは1-2ねん消失しょうしつする[3]

エストロゲンはコレステロールから合成ごうせいされるステロイドホルモン一種いっしゅで、プロゲステロンコルチゾールアルドステロンテストステロンひとしおなカスケード反応はんのう系列けいれつなかにある。

分解ぶんかい

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肝臓かんぞう障害しょうがいによりエストロゲン分解ぶんかい能力のうりょく低下ていかすると、慢性まんせいてきエストロゲン濃度のうど上昇じょうしょうこし、男性だんせいでは乳腺にゅうせん肥大ひだい女性じょせい乳房ちぶさ)、女性じょせいではせい周期しゅうきみだれなどがしょうじる。経口けいこう摂取せっしゅされたエストロゲンのほとんどは、ちょう吸収きゅうしゅうされてもんみゃくから肝臓かんぞうはいって分解ぶんかいされてしまう。経口けいこうてきにエストロゲンを摂取せっしゅするには、分解ぶんかいされにくいエストロゲン誘導体ゆうどうたい摂取せっしゅする必要ひつようがある。

植物しょくぶつせい卵胞らんぽうホルモンさま物質ぶっしつ

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植物しょくぶつなかには、エストロゲンとている生理せいり作用さよう物質ぶっしつ植物しょくぶつエストロゲン)もある。大豆だいずなどにふくまれるイソフラボン代表だいひょうであり、エストロゲンさま活性かっせいあるいは阻害そがいする作用さよう両方りょうほうられる[5]

2006ねん厚生こうせい労働省ろうどうしょう大豆だいず大豆だいずイソフラボンにかんするかんがかた公表こうひょうしたが、大豆だいず大豆だいず食品しょくひんではなく通常つうじょう食生活しょくせいかつ上乗うわのせして摂取せっしゅした場合ばあいである[6]食品しょくひん安全あんぜん委員いいんかいサプリメント添加てんかぶつとしてのイソフラボンの過剰かじょう摂取せっしゅ注意ちゅういびかけた。食品しょくひん安全あんぜん委員いいんかいは「現在げんざいまでに入手にゅうしゅ可能かのうなヒト試験しけんもとづく知見ちけんでは、大豆だいずイソフラボンの摂取せっしゅ女性じょせいにおけるにゅうがん発症はっしょう増加ぞうか直接ちょくせつ関連かんれんしているとの報告ほうこくはない[7]」と報告ほうこくしている。

プエラリアPueraria mirifica)の根茎こんけいふくまれるミロエステロールデオキシミロエステロールは、イソフラボンよりもやく1000~10000ばい作用さようつよく、ゆたかむねようなどのサプリメントとして販売はんばいされているが、それだけに副作用ふくさよう懸念けねん指摘してきされている[よう出典しゅってん]

生理せいり作用さよう

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エストロゲンはステロイドホルモンの一種いっしゅであり、その受容じゅようたいエストロゲン受容じゅようたい:ER)は細胞さいぼううちにある。エストロゲン-受容じゅようたいふく合体がったいかくうち移動いどうし、特定とくてい遺伝子いでんし転写てんしゃ活性かっせいする。エストロゲンの受容じゅようたい全身ぜんしん細胞さいぼう存在そんざいし、そのはたらきは多岐たきにわたっており、その解明かいめいにはまだ時間じかんがかかりそうである。一般いっぱんてきられているのは、乳腺にゅうせん細胞さいぼう増殖ぞうしょく促進そくしん卵巣らんそう排卵はいらん制御せいぎょ脂質ししつ代謝たいしゃ制御せいぎょインスリン作用さよう血液けつえき凝固ぎょうこ作用さよう中枢ちゅうすう神経しんけい意識いしき女性じょせい皮膚ひふうすLDL減少げんしょうVLDLHDL増加ぞうかによる動脈どうみゃく硬化こうか抑制よくせいなどである。

また、思春期ししゅんきにおける身長しんちょうびはエストロゲンの分泌ぶんぴつ促進そくしんされることでこされていると同時どうじにエストロゲンはほねはしせん閉鎖へいささせる作用さようもある。その結果けっか女性じょせい場合ばあい思春期ししゅんきにおける身長しんちょうびは男性だんせいよりはやいが、ほねはしせん閉鎖へいさ男性だんせいよりはやいため結果けっかてき成人せいじん男性だんせいより平均へいきん身長しんちょうひくくなる。一方いっぽう男性だんせいでエストロゲンが作用さようしない場合ばあいこう身長しんちょうになりやすい[3]家畜かちくにおいては受胎じゅたい阻止そしするために、交配こうはい2-48時間じかん以内いないにエストロゲンを注射ちゅうしゃすることが効果こうかてきであることがられている。

近年きんねん研究けんきゅうでは心臓しんぞう保護ほご効果こうか発見はっけんされており、心筋梗塞しんきんこうそくなどのしん疾患しっかんふせ効果こうかがあるとかんがえられている。ただし、ホルモン補充ほじゅう療法りょうほう近年きんねんだい規模きぼ臨床りんしょう試験しけんにおいて副作用ふくさよう指摘してきされ、動脈どうみゃく硬化こうか骨粗鬆症こつそしょうしょうたいしては治療ちりょうほう推奨すいしょうされている[よう出典しゅってん]

結合けつごうがたエストロゲン

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結合けつごうがたエストロゲン(Conjugated estrogens(CEs)、conjugated equine estrogens(CEEs))は、プレマリンなどの商品しょうひんめい販売はんばいされている、閉経へいけいホルモン補充ほじゅう療法りょうほう様々さまざま適応症てきおうしょう使用しようされているエストロゲン薬剤やくざい[8][9][10][11]ウマつかった、エストロン硫酸りゅうさん英語えいごばんエクイリン硫酸りゅうさん英語えいごばんなどエストロゲン共役きょうやくナトリウムしお混合こんごうぶつである[10][11][8]。CEEは、妊娠にんしんちゅうめす尿にょうから製造せいぞうされた天然てんねん製剤せいざいと、天然てんねん素材そざい完全かんぜん合成ごうせい製剤せいざいとが、利用りよう可能かのう[12][13]単独たんどく、またはメドロキシプロゲステロン酢酸さくさんエステルなどのプロゲステロンわせて配合はいごうされている[8]。 CEEは通常つうじょう経口けいこう投与とうよされるが、クリームとして皮膚ひふまたはちつ適用てきようしたり、血管けっかんまたは筋肉きんにく注射ちゅうしゃすることによっても投与とうよすることができる[10][14]

CEEの副作用ふくさようには、乳房ちぶさる、乳房ちぶさつう頭痛ずつう、むくみ、などがある[9][10]。プロゲステロンのような黄体おうたいホルモンと一緒いっしょ服用ふくようしない場合ばあい子宮しきゅうないまく形成けいせい子宮しきゅうないまくがんのリスクをたかめることがある[9][10]。 このくすりはまた血栓けっせんこころ疾患しっかん、ほとんどの黄体おうたいホルモンとわせた場合ばあいにゅうがんのリスクをたかめることがある[15]。CEEは、エストラジオールなどのエストロゲンの生物せいぶつがくてき標的ひょうてきであるエストロゲン受容じゅようたい作用さようする[10][9]。エストラジオールと比較ひかくして、CEEの特定とくていのエストロゲンは代謝たいしゃたいしてよりたいせいがあり、くすり肝臓かんぞうなどのからだ特定とくてい部分ぶぶん比較的ひかくてきたか効果こうかしめ[10]。この結果けっか、CEEではエストラジオールと比較ひかくして血栓けっせんしん血管けっかん障害しょうがいのリスクがたかくなる[10][16]

プレマリンは、現在げんざい使用しようされているCEEの主要しゅよう商品しょうひんめいであり、ファイザーしゃによって製造せいぞうされ、1941ねんにカナダで、1942ねん米国べいこくはじめて販売はんばいされた[11]米国べいこくでは、閉経へいけいのホルモン補充ほじゅう療法りょうほうもっと一般いっぱんてき使用しようされているエストロゲンの形態けいたいである[17][18]。しかし、ヨーロッパで閉経へいけいのホルモン補充ほじゅう療法りょうほうもっとひろ使つかわれている形態けいたいのエストロゲンであるbioidentical estradiol(生体せいたいないにあるホルモンと化学かがくてき同一どういつ構造こうぞうのエストラジオール)と比較ひかくして、人気にんきうしなはじめている[19][20][21]。CEEは、世界中せかいじゅうひろ入手にゅうしゅ可能かのうである[8]。CEEに非常ひじょうているが、原料げんりょう組成そせいことなるエストロゲン製剤せいざいに、エステルエストロゲンがある[10]。 2020ねんには米国べいこくで283番目ばんめおお処方しょほうされており、処方しょほうれいは100まんえている[22][23]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん解説かいせつ”. コトバンク. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  2. ^ のう活性かっせいするせいホルモン, 鬼頭おにがしら昭三しょうぞう,ブルーバックス, p28, ISBN 9784062574082
  3. ^ a b c 大山おおやま健司けんじ,山梨大学やまなしだいがく看護かんご学会がっかい,3,(2004),3.
  4. ^ 東京とうきょう環境かんきょうきょく. “内分泌ないぶんぴつ攪乱かくらん化学かがく物質ぶっしつ環境かんきょうホルモン)対策たいさく”. 2011ねん3がつ9にち閲覧えつらん
  5. ^ Bersaglieri, T.; Sabeti, P. C.; Patterson, N.; Vanderploeg, T.; Schaffner, S. F.; Drake, J. A.; Rhodes, M.; Reich, D. E. et al. (2004). “Genetic Signatures of Strong Recent Positive Selection at the Lactase Gene”. The American Journal of Human Genetics 74 (6): 1111–1120. doi:10.1086/421051. PMC 1182075. PMID 15114531. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1182075/. 
  6. ^ 大豆だいずおよ大豆だいずイソフラボンにかんするQ&Aについて厚生こうせい労働省ろうどうしょう、2006ねん
  7. ^ 食品しょくひん安全あんぜん委員いいんかい (2006ねん5がつ). “大豆だいずイソフラボンをふく特定とくてい保健ほけんよう食品しょくひん安全あんぜんせい評価ひょうか基本きほんてきかんがかた”. pp. 35. 2011ねん3がつ9にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c d “Sex hormones and their modulators”. Martindale: The Complete Drug Reference (36th ed.). London: Pharmaceutical Press. (2009). p. 2087. ISBN 978-0-85369-840-1. https://www.medicinescomplete.com/mc/rem/current/mono-E61.htm?q=C&t=advanced&ss=mn&p=57 
  9. ^ a b c d PREMARIN- estrogens, conjugated tablet, film coated Wyeth Pharmaceuticals LLC, a subsidiary of Pfizer Inc.”. labeling.pfizer.com. 2019ねん6がつ3にち閲覧えつらん
  10. ^ a b c d e f g h i “Pharmacology of estrogens and progestogens: influence of different routes of administration”. Climacteric 8 Suppl 1 (Suppl 1): 3–63. (August 2005). doi:10.1080/13697130500148875. PMID 16112947. 
  11. ^ a b c Clinical Gynecologic Endocrinology and Infertility. Lippincott Williams & Wilkins. (28 March 2012). pp. 751–3. ISBN 978-1-4511-4847-3. https://books.google.com/books?id=KZLubBxJEwEC&pg=PA751 
  12. ^ Pharmacology for Pharmacy Technicians Pageburst E-Book on VitalSource2: Pharmacology for Pharmacy Technicians Pageburst E-Book on VitalSource. Elsevier Health Sciences. (1 December 2012). pp. 573–. ISBN 978-0-323-08578-6. https://books.google.com/books?id=1nvESqVnxc0C&pg=PA573 
  13. ^ IARC Working Group on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans; World Health Organization; International Agency for Research on Cancer (2007). Combined Estrogen-progestogen Contraceptives and Combined Estrogen-progestogen Menopausal Therapy. World Health Organization. pp. 378–. ISBN 978-92-832-1291-1. https://books.google.com/books?id=aGDU5xibtNgC&pg=PA378 
  14. ^ Drugs@FDA: FDA Approved Drug Products”. United States Food and Drug Administration. 19 February 2018閲覧えつらん
  15. ^ “Safety and benefit considerations for menopausal hormone therapy”. Expert Opinion on Drug Safety 16 (8): 941–954. (August 2017). doi:10.1080/14740338.2017.1343298. PMID 28664754. 
  16. ^ “Hormones and venous thromboembolism among postmenopausal women”. Climacteric 17 Suppl 2 (Suppl 2): 34–37. (December 2014). doi:10.3109/13697137.2014.956717. PMID 25223916. 
  17. ^ Bhagu R Bhavnani and Frank Z Stanczyk (2014). “Pharmacology of conjugated equine estrogens: efficacy, safety and mechanism of action”. J Steroid Biochem Mol Biol . 142 (Jul): 16-29. doi:10.1016/j.jsbmb.2013.10.011. PMID 24176763. 
  18. ^ “Hormone Therapy (I): Estrogens, Progestogens, and Androgens”. Menopause. (2017). pp. 181–196. doi:10.1007/978-3-319-59318-0_11. ISBN 978-3-319-59317-3 
  19. ^ “Bioidentical menopausal hormone therapy: registered hormones (non-oral estradiol ± progesterone) are optimal”. Climacteric 20 (4): 331–338. (August 2017). doi:10.1080/13697137.2017.1291607. PMID 28301216. 
  20. ^ “What if the Women's Health Initiative had used transdermal estradiol and oral progesterone instead?”. Menopause 21 (7): 769–783. (July 2014). doi:10.1097/GME.0000000000000169. PMID 24398406. 
  21. ^ “The bioidentical hormone debate: are bioidentical hormones (estradiol, estriol, and progesterone) safer or more efficacious than commonly used synthetic versions in hormone replacement therapy?”. Postgraduate Medicine 121 (1): 73–85. (January 2009). doi:10.3810/pgm.2009.01.1949. PMID 19179815. 
  22. ^ The Top 300 of 2020”. ClinCalc. 7 October 2022閲覧えつらん
  23. ^ Estrogens, Conjugated - Drug Usage Statistics”. ClinCalc. 7 October 2022閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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