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ザクロ

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曖昧さ回避 「石榴ざくろ」と「柘榴ざくろ」はこの項目こうもくへ転送てんそうされています。その他たの用例ようれいについては「ザクロ (曖昧あいまいさ回避かいひ)」をご覧らんください。
ザクロ
花はなと実みのスケッチ
保全ほぜん状じょう況きょう評価ひょうか
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms
階級かいきゅうなし : 真正しんしょう双そう子葉しよう類るい Eudicots
目め : フトモモ目め Myrtales
科か : ミソハギ科か Lythraceae
属ぞく : ザクロ属ぞく Punica
種たね : ザクロ P. granatum
学名がくめい
Punica granatum L. (1753)[1]
シノニム
  • Punica malus L.
  • Punica florida Salisb.
  • Punica grandiflora hort. ex Steud.
  • Punica nana L.
  • Punica spinosa Lam.
英名えいめい
pomegranate
亜種あしゅ
  • P. g. subsp. chlorocarpa
  • P. g. subsp. porphyrocarpa

ザクロ（石榴ざくろ[2]・柘榴ざくろ[3]、英名えいめい: pomegranate、学名がくめい: Punica granatum）は、ミソハギ科かザクロ属ぞくの1種しゅの落葉らくよう小しょう高木たかぎ、また、その果実かじつのこと[4]。庭木にわきなどの観賞かんしょう用ように栽培さいばいされる。最もっとも古ふるくから栽培さいばいされた果樹かじゅの一ひとつで、果実かじつは食用しょくようになる[5]。

分類ぶんるい

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属ぞく

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ザクロは、ザクロ属ぞく2種しゅのうちの1種しゅである。ザクロ属ぞくの種たねはザクロと、ソコトラ島とう（イエメン領りょう）産さんのソコトラザクロ（Punica protopunica）の2種たねのみである[6]。このザクロ属ぞくは、リンネの『植物しょくぶつの種たね』（1753年ねん）でザクロが記載きさいされた[7]際さいが植物しょくぶつ学がくの学名がくめいとして有効ゆうこうとなったものとみなされている[8]。

科か

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ザクロ属ぞくは、ミソハギ科かに属ぞくす[9][10][11]。

Koehne (1881, 1903) は、下位かいに卵たまご形がたの果実かじつをつける3属ぞく、ザクロ属ぞく・ハマザクロ属ぞく Sonneratia ・ドゥアバンガ属ぞく Duabanga をミソハギ科かと区別くべつし、それぞれ単たん型がた科かとした。すなわち、ザクロ属ぞくは単たん型がたのザクロ科か Punicaceae とした。しかし Johnson and Briggs (1984) などにより、それらが系統的けいとうてきにミソハギ科かに含ふくまれることが明あきらかになった[9]。

亜種あしゅ

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ザクロは果実かじつの色いろなどから、2つの亜種あしゅに分わけられる[12]。

P. g. subsp. chlorocarpa
トランスコーカサス産さん
P. g. subsp. porphyrocarpa
中央ちゅうおうアジア産さん

栽培さいばい品種ひんしゅ

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  • ヒメザクロ Punica granatum 'Nana'[13]

形態けいたい・生態せいたい

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落葉らくよう小しょう高木たかぎで、高たかさは5 - 12メートルになる[2][3][14]。木きの寿命じゅみょうは200年ねんほどである[14]。樹皮じゅひは灰はい褐色かっしょくから褐色かっしょくで、生長せいちょうするとともに黒くろっぽくなって、細こまかく鱗片りんぺん状じょうに剥はがれる[3]。一いち年ねん枝えだは4稜りょうがあり、短たん枝えだの先さきはとげ状じょうになる[15][3]。葉はは対生たいせいで楕円だえん形がたから長ちょう楕円だえん形がたで[15]、深ふか緑色みどりいろをしており、なめらかで光沢こうたくがある[14]。

花期かきは初夏しょか（6月がつ）[2]。漏斗ろうと状じょうの硬かたい萼がくから、赤あか朱色しゅいろの花弁はなびらを出だして花はなをつける[15][14]。花はなは子房しぼう下位かいで、萼がくと花弁はなびらは6枚まい、雄蕊おしべは多数たすうある。花弁はなびらは薄うすくてしわがある[16][信頼しんらい性せい要よう検証けんしょう]。

果はて期きは秋あき（9 - 10月がつ）[2]。果実かじつは花はな托たくの発達はったつしたもので、球状きゅうじょうを呈ていする。果実かじつの色いろはさまざまで、桃色ももいろがかった黄色おうしょくから光沢こうたくのあるバラ色ばらいろや葡萄色ぶどういろ、茶色ちゃいろまである[14]。大おおきさは直径ちょっけい6 - 10センチメートル (cm) 、重おもさは100 - 300グラム (g) ほどある[17]。果皮かひは厚あつく、秋あきに熟じゅくすと赤あかく硬かたい外皮がいひが不規則ふきそくに裂さけ、スポンジ状じょうの薄膜うすまくの中なかに赤あかく透明とうめいな多た汁しる性せいの果肉かにく（仮かり種皮しゅひ）の粒つぶが数すう百ひゃく個こ現あらわれる[15][14]。果肉かにく1粒つぶずつの中心ちゅうしんに種子しゅしが存在そんざいする[18][19]。

  • 樹皮
    樹皮じゅひ
  • ザクロの花式図
    ザクロの花はな式しき図ず
  • ザクロの花
    ザクロの花はな
  • 受粉を終えた花
    受粉じゅふんを終おえた花はな
  • 成長過程の果実
    成長せいちょう過程かていの果実かじつ
  • 熟成時期の果実
    熟成じゅくせい時期じきの果実かじつ
  • ザクロの果実
    ザクロの果実かじつ
  • ザクロの食用部分である種衣は、種子を覆う形で発達する
    ザクロの食用しょくよう部分ぶぶんである種たね衣ころもは、種子しゅしを覆おおう形かたちで発達はったつする

冬芽とうがは対生たいせいし、芽め鱗うろこは4 - 6枚まいある[3]。冬芽とうがは小ちいさく、枝えだ先さきの仮かり頂いただき芽めはあまり発達はったつしない[3]。落葉らくよう後ごの葉は痕こんは、半円はんえん形がたで維管束たば痕あとは1個いっこある[3]。

ザクロには多おおくの品種ひんしゅや変種へんしゅがあり、一般いっぱん的てきな赤身あかみザクロのほか、白しろい水晶すいしょうザクロや果肉かにくが黒くろいザクロなどがあり[20]、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではワンダフル、ルビーレッドなど、中国ちゅうごくでは水晶すいしょう石榴ざくろ、剛つよし石榴ざくろ、大だい紅べに石榴ざくろなどの品種ひんしゅが多おおく栽培さいばいされている[21]。日本にっぽんに輸入ゆにゅうされて店頭てんとうにしばしば並ならぶのは、イラン産うぶやカリフォルニア州しゅう産さんが多おおく[22]、輸入ゆにゅう品ひんは日本にっぽん産さんの果実かじつより大おおきい[23]。

分布ぶんぷ・生育せいいく地ち

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西南せいなんアジアや中東ちゅうとうの原産げんさんといわれ[2][24]、原産地げんさんちについては、トルコあるいはイランから北きたインドのヒマラヤ山地さんちにいたる西南せいなんアジアとする説せつ[25][26][5]、南みなみヨーロッパ原産げんさんとする説せつ[25]およびカルタゴなど北きたアフリカ原産げんさんとする説せつなどがある[26]。

栽培さいばい

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世界せかい各地かくちで栽培さいばいされており、トルコから中東ちゅうとうにかけては特とくにポピュラーである。原産地げんさんちは乾燥かんそうした丘陵きゅうりょう地ちであることから、今日きょうの栽培さいばい品種ひんしゅも日にち中ちゅうの暑あつさと夜間やかんの涼すずしさを好このむ[14]。日本にっぽんにおける植うえ栽範囲はんいは東北とうほく地方ちほう南部なんぶから沖縄おきなわまでである。日当ひあたりが良よい場所ばしょを好このむ。増ふやし方かたには、挿さし木き、取とり木き、種たねまきがある。若木わかぎは、果実かじつがつくまでに10年ねん程度ていどを要ようする場合ばあいもある。病虫害びょうちゅうがいには強つよいが、カイガラムシがつくとスス病びょうを併発へいはつする場合ばあいがある[20]。

歴史れきし

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ザクロは古代こだいから栽培さいばいされ、イラン付近ふきんの原産地げんさんちから中国ちゅうごくやヨーロッパへと広ひろまったといわれる[17]。祖先そせん植物しょくぶつは、数すう千せん年ねん前まえにイランとインド北部ほくぶの間あいだの乾燥かんそうした丘陵きゅうりょう地ちに自生じせいしていた木きとされる[14]。新しん王国おうこく時代じだいにエジプトに伝つたわり、ギリシア時代じだいにはヨーロッパに広ひろく伝つたわったとされる[25]。ザクロは、古代こだいエジプトや古代こだいギリシャの文書ぶんしょ、旧約きゅうやく聖書せいしょ、バビロニア・タルムード、コーランにも頻繁ひんぱんに登場とうじょうする[14]。東方とうほう[要よう曖昧あいまいさ回避かいひ]への伝来でんらいは、前漢ぜんかんの武たけ帝みかどの命いのちを受うけた張ちょう騫が西域せいいきから帰国きこくした際さいに、パルティアからザクロ（安やす石榴ざくろあるいは塗ぬり林りん）を持もち帰かえったとする記述きじゅつが『証あかし類るい本草ほんぞう』（1091年ねん - 1093年ねん）以降いこうの書物しょもつに見みられるため、紀元前きげんぜん2世紀せいきの伝来でんらいであるとの説せつがあるが[25][26][5][27]、今日きょうでは3世紀せいき頃ころの伝来でんらいであると考かんがえられている[26]。日本にっぽんには平安へいあん時代じだいに渡わたったとされ[17]、923年ねん（延長えんちょう元年がんねん）に中国ちゅうごくから渡来とらいした[25]（9世紀せいきの伝来でんらい説せつ、朝鮮半島ちょうせんはんとう経由けいゆの伝来でんらい説せつもある[26][5]）。

保全ほぜん状じょう況きょう評価ひょうか

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人間にんげんとの関かかわり

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語源ごげん

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属ぞく名めいの Punica は「フェニキアの」を意味いみする Poeni に由来ゆらいする。これは古代こだいローマの博物はくぶつ学者がくしゃプリニウスが『博物はくぶつ誌し』を著あらわした当時とうじ、ザクロは「カルタゴのマルス」（mālus pūnica）としてカルタゴ周辺しゅうへんが原産地げんさんちと考かんがえていたためである[26][29]。種たね小名しょうみょうの granatum は「種たねの」や「粒つぶの」を意味いみし、英名えいめいの pomegranate（粒つぶの多おおいリンゴ）は中世ちゅうせいラテン語らてんごの pōmum grānātum、pōma grānāta（種たねの多おおいリンゴ）に由来ゆらいする[26]。

中国ちゅうごく語ご名なの「石榴ざくろ」[30]および「安やす石榴ざくろ」は、パルティアの王朝おうちょうアルサケス（アルシャク：Arshak）を張ちょう騫が「安やす石せき」や「安息あんそく」と音訳おんやくしたものであり、パルティアを意味いみする「安息あんそく国こく」に由来ゆらいする。また、塗ぬり林りんと呼称こしょうした時代じだいもあるが、これはサンスクリットでザクロを意味いみする darim、darima の音訳おんやくである[26]。「榴」は実みが瘤こぶに似にていることに由来ゆらいするという[31]。

日本語にほんごの「ザクロ」は、石榴ざくろ、柘榴ざくろの字音じおんからと考かんがえられており、呉音ごおんでは「ジャク・ル」、漢音かんおんでは「セキ・リュウ」となる[26]。『本草ほんぞう和名わみょう』では「安やす石榴ざくろ、別名べつめい 塗ぬり林りん・若榴ざくろ、和名わみょう 佐久さく呂りょ」とされている[25][26]。また、古代こだいイランと中国ちゅうごくの文化ぶんか交流こうりゅうを研究けんきゅうしたベルトルト・ラウファーは、若榴ざくろの中国語ちゅうごくご読よみの「zak-lau」に由来ゆらいするとの説せつを唱となえている[27]。また、有力ゆうりょくな原産地げんさんちのひとつと考かんがえられるティグリス川がわおよびペルシア湾わんの東方とうほうにそれに平行へいこうしてザグロス山脈さんみゃくがある。ザクロの呼称こしょうは、ザグロス山脈さんみゃくを現地げんち音おんに近ちかい「石榴ざくろ」の字じで音訳おんやくしたともいわれている[31]。

観賞かんしょう用よう

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花木はなきとして愛めでられ、果実かじつが熟じゅくして割われる美うつくしさが好このまれる[2]。日本にっぽんでは庭木にわきや盆栽ぼんさいなど観賞かんしょう用ように栽培さいばいされることが多おおく、矮性わいせいのヒメザクロ（鉢植はちうえにできる）や八重咲やえざきなど多おおくの栽培さいばい品種ひんしゅがある。ただし、果実かじつが結実けつじつするのは一いち重じゅうの花はなである[2]。江戸えど時代じだいの園芸えんげい書しょである『花壇かだん地ち錦にしき抄しょう』などに記載きさいの見みられる古典こてん園芸えんげい植物しょくぶつのひとつでもある[5]。縁起えんぎのよい木きとして昔むかしから庭にわに植うえられ、熟じゅくした果実かじつに多数たすうの赤あかい種子しゅしが入はいっていることから、子孫しそん繁栄はんえいの意味いみをもち、世界せかい的てきにも子宝こだからのシンボルとされる[24]。

食用しょくよう

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ザクロ、仮かり種皮しゅひのみ
100 gあたりの栄養えいよう価か
エネルギー 346 kJ (83 kcal)
18.7 g
糖類とうるい 13.7 g
食物しょくもつ繊維せんい 4.0 g
1.2 g
1.7 g
ビタミン
チアミン (B1)
(6%)
0.07 mg
リボフラビン (B2)
(4%)
0.05 mg
ナイアシン (B3)
(2%)
0.29 mg
パントテン酸さん (B5)
(8%)
0.38 mg
ビタミンB6
(6%)
0.08 mg
葉酸ようさん (B9)
(10%)
38 µg
ビタミンC
(12%)
10 mg
ミネラル
カリウム
(5%)
236 mg
カルシウム
(1%)
10 mg
マグネシウム
(3%)
12 mg
リン
(5%)
36 mg
鉄分てつぶん
(2%)
0.30 mg
亜鉛あえん
(4%)
0.35 mg
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける
成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI) の割合わりあい。
出典しゅってん: USDA栄養えいようデータベース（英語えいご）
イラン のザクロのスープ、アーシェ・アナール

食材しょくざいとしての旬しゅんの時期じきは9 - 11月ごろで、果実かじつの皮かわの赤色あかいろが濃こくて割われていないものが市場いちば価値かちのある良品りょうひんとされる[17]。可か食しょく部ぶは果実かじつの中なかにある赤あかい粒つぶ（種子しゅし）の多た汁しるな外そと種皮しゅひで覆おおっている種たね衣ころもの部分ぶぶんで、生食なましょくされる[17][23]。汁気しるけの多おおい肉質にくしつ種皮しゅひの味あじは甘酸あまずっぱく、かすかに渋しぶみがある[14]。

ザクロは地中海ちちゅうかい西岸せいがんから中東ちゅうとうのイラン、南みなみアジアにかけての広ひろい地域ちいきで親したしまれており[14]、日本にっぽんでは米国べいこくカリフォルニア産さんの輸入ゆにゅう品ひんが多おおい[17]。生せいで食たべるだけでなく加工かこうにも適てきしており、果汁かじゅうをジュースとしたり清涼飲料水せいりょういんりょうすいのグレナディンの原料げんりょうとするほか、以下いかのような料理りょうりなどに用もちいられる[21][32]。ザクロ文化ぶんかを大切たいせつにするイランでは、さまざまな品種ひんしゅのザクロジュースが専せん門もんの屋台やたいで売うられている[14]。

ザクロの可か食しょく部ぶに含ふくまれる栄養素えいようそは右みぎ表ひょうのとおり。栄養えいよう成分せいぶんは、カリウムが比較的ひかくてき多おおく含ふくまれるほか、抗こう酸化さんか作用さようがあるアントシアニンなどのポリフェノール類るいが含ふくまれていて、肌はだを美うつくしく保たもったり生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう予防よぼうによいといわれている[17]。

また、煮詰につめた果汁かじゅうは褐色かっしょくの糖蜜とうみつとなり、イランなどで調味ちょうみ料りょうとして使用しようされ[33]、鶏肉とりにくとクルミのシチュー「ホレシュテ・フェセンジャン」を作つくる[14]。

薬用やくよう

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ザクロは健康けんこうに良よいとされ、古ふるくから下痢げりや赤痢せきりの治療ちりょうや虫下むしくだしに利用りようされている[14]。なお、以下いかの利用りよう方法ほうほう・治療ちりょう方法ほうほうは特記とっきしない場合ばあい、過去かこの歴史れきし的てきな治療ちりょう法ほうであり、科学かがく的てきに効果こうかが証明しょうめいされたものであることを示しめすものではない。

樹皮じゅひ・根ね皮がわ

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乾燥かんそうさせた樹皮じゅひまたは根ね皮がわは、生薬きぐすり名なとして「石榴ざくろ皮がわ」（ザクロヒ[26][18][34]またはセキリュウヒ[4][19]：Granati Cortex）または「石榴ざくろ根ね皮がわ」（セキリュウコンピ[26][35]）といい、古ふるくから条じょう虫ちゅう（特とくに有ゆう鉤かぎ条じょう虫ちゅう[6]）の駆虫くちゅう薬やくとして用もちいられてきた。ディオスコリデスの『薬物やくぶつ誌し』でも樹皮じゅひが駆虫くちゅう薬やくとして用もちいられている記述きじゅつが見みられる[36]。近代きんだいになり、1884年ねん Schröder によって駆虫くちゅう薬やくとしての有効ゆうこう性せいが科学かがく的てきに証明しょうめいされ[37]、過去かこにはイギリスやアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの薬局方やっきょくほうにも収載しゅうさいされていた。日本にっぽん薬局方やっきょくほうには初版しょはんより「石榴ざくろ根ね皮がわ」として収載しゅうさいされ（後のちにザクロヒ）、第だい7改正かいせいまで収載しゅうさいされていた[26][18]。石榴ざくろ皮がわの主おもな成分せいぶんは、0.3 - 1 % 程度ていどの揮発きはつ性せいアルカロイド（ペレチエリン (pelletierine)、イソペレチエリン (isopelletierine)、プソイドペレチエリン (pseudopelletierine) など）と 23 - 28 % 程度ていどのタンニン（プニカラギン（英語えいご版ばん） など）である[5][18][6][35][38]。通常つうじょう、駆虫くちゅうには乾燥かんそうさせた樹皮じゅひまたは根ね皮がわ30-60 gを300 mLの水みずに 5 - 6時じ間あいだに浸ひたしたものあるいは煎せんじたものを服用ふくようする。多量たりょうに服用ふくようすると中毒ちゅうどくを起おこす場合ばあいがある[4][18][19][38][39]。

また、『和漢わかん三さん才さい図会ずえ』では下痢げり、下しも血ち、脱肛だっこう、崩くずれ漏も、帯おび下かを止とめるのに用もちいるとの記述きじゅつがある[25]。さらに、口内こうない炎えんや扁ひらた桃もも炎えんのうがい薬やくにも用もちいられたという[5]。

漢方薬かんぽうやくとしては、石榴ざくろ根ね皮がわ、苦く楝おうち皮がわ（クレンピ）、檳榔びろう子こからなる「石榴ざくろ根ね湯ゆ」（せきりゅうこんとう）があり、駆虫くちゅうに用もちいられる[35][40][41]。

果皮かひ

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果皮かひを乾燥かんそうさせたもの（石榴ざくろ果皮かひ：せきりゅうかひ）も樹皮じゅひや根ね皮がわと同様どうようの目的もくてきで用もちいられることが多おおく、中国ちゅうごくやヨーロッパでは駆虫くちゅう薬やくとして用もちいた[18][34]。ただし、根ね皮がわに比くらべ揮発きはつ性せいアルカロイドの含有がんゆう量りょうは低ひくく効果こうかも劣おとる[35]。また、回虫かいちゅうの駆除くじょに用もちいられたこともあった[41][39]、犬いぬ回虫かいちゅうを用もちいた実験じっけんでは強つよい活性かっせいはみられなかった[42]。日本にっぽんや中国ちゅうごくでは、下痢げり、下しも血ちに対たいして果皮かひの煎剤せんざいを内服ないふくし、口内こうない炎えんや扁ひらた桃もも炎えんのうがい薬やくにも用もちいられた[25][18][30]。プリニウスは、果皮かひを利尿りにょうに用もちいるとしている[29]。熱ねつがある人ひとには服用ふくようは禁忌きんきとされる[30]。

花はな

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粉末ふんまつにした花はな（石榴ざくろ花はな）は、出血しゅっけつ性せいの傷きずに用もちいられた[5][36]。

種子しゅし

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1964年ねん Sharaf らが種子しゅし油ゆ（酸さん石榴ざくろ[5]）にエストロゲン活性かっせいがあることをマウスを用もちいた実験じっけんで見出みだし[43]、1966年ねん Hefumann らによってこの活性かっせいがエストロンによることが示しめされ[44]、乾燥かんそう種子しゅし 100 g 中ちゅうに 1 mg のエストロンが含ふくまれることが1988年ねん Moneam らによって報告ほうこくされ[45]、更年期こうねんき障害しょうがいや乳癌にゅうがんなどに対たいする効果こうかが期待きたいされた[25][46]が、エストロンの含有がんゆう量りょうが微量びりょうであること、経口けいこう摂取せっしゅではエストロンは肝臓かんぞうで速すみやかに代謝たいしゃされること、また、エストロンの生理せいり活性かっせいはエストラジオールの1⁄10程度ていどであることなどから実質じっしつ的てきな効果こうかは疑問ぎもん視しされている[25][5]。

果汁かじゅう

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果汁かじゅうにエストロゲンが含ふくまれるとして1999年ねんから2000年ねん頃ごろにブームとなったが、流通りゅうつうしているザクロジュースやエキス錠剤じょうざい等とう10銘柄めいがらを用もちいた国民こくみん生活せいかつセンターの分析ぶんせきでは、いずれもエストロゲンは検出けんしゅつされなかった[22][47]。

その他たの利用りよう

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石榴口ざくろぐちつき銭湯せんとう

ザクロの実じつは、銅鏡どうきょうの曇くもりを防止ぼうしするために磨みがく材料ざいりょうとして用もちいられた。江戸えど時代じだいの銭湯せんとうは湯船ゆぶねの熱気ねっきを逃のがさないよう、背せの低ひくい出入口でいりぐちを設もうけていた。この出入口でいりぐちは「石榴口ざくろぐち」と呼よばれていたが、これは「屈こごみ入はいる」と「鏡かがみ鋳いる」（鏡かがみを磨みがくこと）とを掛かけたものともいう[25]。

古代こだいローマでは、ザクロの果皮かひは皮革ひかくをなめすのに用もちいられた[29]。

木質もくしつは硬かたく、床柱とこばしらや装飾そうしょく用ようの柱はしらに用もちいられる[4]。

文化ぶんか

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フィリッポ・リッピ『聖母子せいぼしとマリア誕生たんじょうの物語ものがたり』1452年ねん頃ごろ[48][49]

神話しんわ

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  • エジプト神話しんわでは、戦場せんじょうで敵てきを皆殺みなごろしにするセクメトに対たいし、太陽たいよう神しんラーは7,000 の水差みずさしにザクロの果汁かじゅうで魔法まほうの薬くすりを作つくった。セクメトはこれを血ちと思おもい込こんで飲のみ、酩酊めいていして殺戮さつりくを止とめたという[25]。
  • ギリシア神話しんわの女神めがみペルセポネーは、冥めい王おうハーデースに攫さらわれ、6つのザクロを口くちにしたことで、6か月げつ間あいだを冥界めいかいで過すごすこととなり、母はは・デーメーテールはその期間きかん嘆なげき悲かなしむことで冬ふゆとなり、穀物こくもつが全まったく育そだたなかったが、ペルセポネーが戻もどると花はなが咲さき、木々きぎには実みがついたという。このため、多産たさんと豊穣ほうじょうの象徴しょうちょうとされている[25]。
  • ローマ神話しんわでは、地上ちじょうの女神めがみプロセルピナと冥界めいかいの神かみプルトンとの結婚けっこんの逸話いつわにザクロが登場とうじょうする。プロセルピナの父ちち、太陽たいよう神しんユピテルは、プロセルピナをプルトンの妻つまに決きめた。ユピテルの妻つまで豊穣ほうじょうの女神めがみであるケレースはそれが気きに入いらず、地上ちじょうに降おりてしまう。プロセルピナも悲かなしみのあまり食たべ物ものを口くちにしなくなった。困惑こんわくしたユピテルは、プルトンに結婚けっこんを諦あきらめてくれと頼たのんだ。しかし、プルトンは一計いっけいを案あんじ、プロセルピナにザクロを一いち粒つぶ食たべさせることができた。そして、結婚けっこんに成功せいこう。プロセルピナは1年ねんの半分はんぶんをオリュンポスで、残のこりの半分はんぶんを冥界めいかいで暮くらさなければならなくなった。ざくろは、「地獄じごくの果実かじつ」とも呼よばれている[51]。

宗教しゅうきょう

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 米倉よねくら浩司こうじ・梶田かじた忠ただし (2003-). “Punica granatum L. ザクロ（標準ひょうじゅん）”. BG Plants 和名わみょう−学名がくめいインデックス（YList）. 2023年ねん1月がつ25日にち閲覧えつらん。
  2. ^ a b c d e f g h i 田中たなか 2011, p. 79.
  3. ^ a b c d e f g 鈴木すずき, 高橋たかはし & 安やす延のべ 2014, p. 124.
  4. ^ a b c d 高木たかぎ国保くにやす『薬草やくそう百科ひゃっか 採取さいしゅと保存ほぞん＆利用りよう方法ほうほう』小林こばやし正夫まさお 監修かんしゅう、立たて風ふう書房しょぼう、1987年ねん6月がつ、86頁ぺーじ。ISBN 4-651-86004-4。 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 後藤ごとう實みのる「生活せいかつの中なかの生薬きぐすり205：石榴ざくろ」『活かつ』第だい44巻かん第だい12号ごう、2002年ねん12月、183頁ぺーじ。 
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参考さんこう文献ぶんけん

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