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ケシ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ポピーシードから転送てんそう
ケシクロンキスト体系たいけい
ケシ(ソムニフェルムしゅ
分類ぶんるい
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperm
階級かいきゅうなし : 真正しんしょうそう子葉しようるい Eudicots
: キンポウゲ Ranunculales
: ケシ Papaveraceae
ぞく : ケシぞく Papaver
たね : ケシ P. somniferum
学名がくめい
Papaver somniferum
L.
和名わみょう
ケシ(芥子からし
英名えいめい
Opium poppy

ケシ芥子からし罌粟げし、Opium poppy、学名がくめい Papaver somniferum)は、ケシケシぞくぞくするいちねんくさ植物しょくぶつ

日本語にほんごの「ケシ」は英語えいごの「poppyポピー」と同義どうぎとされる[よう検証けんしょう]が、英語えいごではたんに「poppy」といえばイギリス各地かくち自生じせいしており、園芸えんげいしゅとしてもさかんに栽培さいばいされているヒナゲシcorn poppyコーン・ポピー)をす。一方いっぽう日本語にほんごたんにケシといった場合ばあい、それがたね指定していをも包含ほうがんしている場合ばあいはもっぱらほんたねす。英語えいごではほんたねを「opium poppyオピウム・ポピー」とび「poppy」とは明確めいかく区別くべつしている。日本語にほんごでも、園芸えんげいようケシぞく植物しょくぶつ区別くべつするため、とくほんたね阿片あへんケシ(アヘンケシ)とぶことがあり、学会がっかいなどではたね小名しょうみょうもちソムニフェルムしゅぶ。このソムニフェルムしゅリンネの『植物しょくぶつたね』(1753ねん) で記載きさいされた植物しょくぶつしゅひとつでもある[1]

芥子からしという表記ひょうき本来ほんらいカラシナ言葉ことばであるが、ケシの種子しゅしとカラシナの種子しゅしがよくていることから、室町むろまち時代ときよ中期ちゅうき誤用ごようされて定着ていちゃくしたものであるとされる。

日本にっぽんでは「opium poppy」など「opiumさんせい植物しょくぶつアヘンほう栽培さいばい禁止きんしされているたね指定していされており、政府せいふ許可きょかずして栽培さいばいしてはならない。「opium」とはアヘン麻薬まやく意味いみである。

分布ぶんぷ

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地中海ちちゅうかい地方ちほうまたはひがしヨーロッパ原産げんさんともわれているが、野生やせいにある原種げんしゅ発見はっけんされていないため確証かくしょうはない。

形態けいたい

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ケシ坊主けしぼうず果実かじつ)にきずをつけて樹脂じゅし採取さいしゅする

草丈くさたけは1-2メートル程度ていどで、かたちちょう楕円だえんちょうたまごがたで、うえほどちいさくなる。

かんしてケシぞくとは、

  • 葉柄ようへいがなくくきいだく。のケシぞく葉柄ようへいがある。
  • みがあさえん波打なみうつ。のケシぞくふかこまかくけるものがおおい。
  • いろがロウでおおわれたようなみどり灰色はいいろである。のケシぞくみどり鮮明せんめいなものがおおい。
  • ひょううらもほとんどである。かぎらず、ほんしゅはほぼである。

といったてん区別くべつできるが、これらの特徴とくちょう品種ひんしゅによってかなりがある。

播種はしゅ後半こうはんとしほどで開花かいかする。通常つうじょう前年ぜんねんあき播種はしゅするので開花かいかは4-6がつごろになる。はなぐき先端せんたんひとつだけき、つぼみのときは下向したむきで開花かいか同時どうじ天頂てんちょうく。また2まいあるがく(がく)開花かいか同時どうじ脱落だつらくする。いちにちはなであり翌日よくじつにはる。おおきさは10-15cm草丈くさたけ比較ひかくしておおきく、悪臭あくしゅうがある。花弁はなびらいちじゅうきの品種ひんしゅでは4まいで、いろ基本きほんしょくとしてべにしろむらさきがありあおはない。単色たんしょく品種ひんしゅおおいが、観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅはこれらのなかあいだや、これらがじった「しぼり」など様々さまざま変化へんか観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅはモルヒネアルカロイドのふくりょう極端きょくたんすくなくまたはふくまなくされており、アヘンアルカロイドの採取さいしゅ不可能ふかのうである。ただ日本にっぽんではモルヒネをふくまない観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅ栽培さいばい禁止きんしされてる。ケシのOpium poppyは基本きほんしょくくことから、ヒナゲシ(poppy)アザミゲシひとしにはおおい、橙色だいだいいろけいはなつくることは不可能ふかのうである。八重咲やえざきの観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅでは花弁はなびらえんほそきれするものがある。なおアヘン採取さいしゅよう薬用やくよう品種ひんしゅ改良かいりょうされたOpium poppyはどれもいちじゅうきである。

種子しゅし

はなれて数日すうじつすると、芥子坊主けしぼうずばれる独特どくとくかたち鶏卵けいらんにぎりこぶしだい果実かじつみのらす。この芥子坊主けしぼうずかたち品種ひんしゅによってしんだまちか球形きゅうけい楕円だえん球形きゅうけいと、様々さまざま変化へんかする。八重咲やえざきなどの観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅ結実けつじつするが、おおきさやモルヒネ含有がんゆうりょう薬用やくようのアヘン採取さいしゅよう品種ひんしゅにはとおおよばず、ほとんどまたはまったふくまれないので採取さいしゅ不可能ふかのうである。だが、どの観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅ未熟みじゅくはて表面ひょうめんあさきずをつけるとしろ乳汁にゅうじゅう滲出しんしゅつする[2]薬用やくよう品種ひんしゅでは麻薬まやく成分せいぶんであるモルヒネをふく白色はくしょく淡紅あわべにしょく乳液にゅうえき浸出しんしゅつし、しばらくすると粘性ねんせいしめくろする。これをへらでかきあつ乾燥かんそうしたものがなまアヘンである。果実かじつじゅくすと植物しょくぶつたい枯死こしし、じゅくした果実かじつ天頂てんちょうあながあき、みち 0.5mmたない微細びさい種子しゅしす(非常ひじょうこまかいものを「ケシ粒けしつぶのような~」と表現ひょうげんするのは、これが由来ゆらい)。種子しゅしじんがたであり、表面ひょうめんには網目あみめ模様もようがあるが、肉眼にくがんでは確認かくにんしにくい。いろ品種ひんしゅによりしろからくろまで変化へんかするが、食用しょくようられているものは象牙ぞうげしょくくろ[注釈ちゅうしゃく 1]おおい。

亜種あしゅおよ品種ひんしゅ

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非常ひじょうふるくから栽培さいばいされているだけあって、すうおおくの亜種あしゅ品種ひんしゅがある。下記かき一部いちぶ[3]

アヘン採取さいしゅ目的もくてき亜種あしゅ

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世界せかい各地かくち気候きこうわせた、以下いか基本きほんろくがたがある。かく亜種あしゅなかにさらに様々さまざま品種ひんしゅがある。

亜熱帯あねったい気候きこうがた
P. somuniferm ssp. indicum
インド系統けいとうしゅともう。アヘン採取さいしゅよう品種ひんしゅはほとんどがしろはなかせるが、このたねあかはなかせる。果実かじつちいさく楕円だえん球形きゅうけい、もしくはこう楕円だえん球形きゅうけい
しょうアジア気候きこうがた
P. somuniferm ssp. anatolicum
トルコ系統けいとうしゅともボスニアたねともう。はなしろか、またはあお紫色むらさきいろびる。果実かじつおおきくひらただまかたち、もしくはたまごがた
中央ちゅうおうアジア気候きこうがた
P. somuniferm ssp. centra-asiaticum
イラン系統けいとうしゅ、イランしゅなどともう。英語えいごでは Persian White などとしょうされる。果実かじつちいさく、球形きゅうけいもしくはたまごがた
天山てんざん気候きこうがた
P. somuniferm ssp. tianshanicum
こう楕円だえん球形きゅうけいおおきな果実かじつみのらす。
北方ほっぽう気候きこうがた
P. somniferm ssp. eurasiaticum
果実かじつおおきくたまごがたもしくは球形きゅうけい
こうむふる気候きこうがた
P. somuniferm ssp. mongolicum
果実かじつおおきく球形きゅうけいもしくはたまごがた日本にっぽん大正たいしょうから昭和しょうわはじめにかけて品種ひんしゅ改良かいりょうされた一貫いっかんしゅもここに分類ぶんるいされる。

観賞かんしょう目的もくてき園芸えんげい品種ひんしゅ

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ボタンゲシ
ボタンゲシ
P. somniferum var. paeoniflorum
P. somniferum var. laciniatum
八重咲やえざきの品種ひんしゅで、ボタン非常ひじょうはなやかなはなかせる。日本にっぽんにはアヘン採取さいしゅようのケシとどう時期じき渡来とらいし、浮世絵うきよえなどにもこのんでえがかれた。
var. paeoniflorum と var. laciniatum では形態けいたいことなり、後者こうしゃ花弁はなびらいとのようにほそけるが、日本にっぽんではあへんほうにより栽培さいばい禁止きんしされ、園芸えんげいしゅとしての命脈めいみゃくえたこともあるので、和名わみょうでは区別くべつしていないようである。
日本にっぽん国外こくがいではたね小名しょうみょうsomniferumりゃくして販売はんばいするところもあるので、海外かいがい旅行りょこうさい、あるいはインターネットとうによる通販つうはんらずに種子しゅし購入こうにゅうし、栽培さいばいにあへんほう違反いはん摘発てきはつされる(発見はっけんした警察官けいさつかんり・焼却しょうきゃく処分しょぶんめいじられる)ことがおお品種ひんしゅでもある。
デニッシュフラッグ Danish Flag
日本にっぽん国外こくがい観賞かんしょうよう品種ひんしゅ改良かいりょうされ開発かいはつされた品種ひんしゅで、赤地あかじしろ十字じゅうじ模様もようはいった花弁はなびらえんほそけるといった、ったいちじゅうはなかせる。その様相ようそうデンマークの国旗こっきるので、この品種ひんしゅめいいたものとおもわれる。ただし P. somniferum であるため、日本にっぽんでは栽培さいばいできない。観賞かんしょうよう品種ひんしゅはアヘンアルカロイド、モルヒネ物質ぶっしつ含有がんゆうりょうすくなくされ、採取さいしゅ不能ふのうであるが、一般いっぱん見分みわけがむずかしいのと、敗戦はいせんあさ(あさ)マリファナをふくむので、繊維せんいよう栽培さいばいしてたがGHQに指摘してきされたため、すべ栽培さいばい禁止きんしする約束やくそくとなったので、それまでは栽培さいばいされて観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅ(モルヒネはすくなく採取さいしゅ不能ふのう品種ひんしゅ)も栽培さいばい禁止きんしすることになった。

人間にんげんとの関係かんけい

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用途ようと

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医薬品いやくひん麻薬まやく原料げんりょう

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ほんしゅ未熟みじゅくはてきずをつけるとてくる乳液にゅうえきからアヘンれ、それから精製せいせいされるモルヒネや、モルヒネを化学かがくてき変化へんかさせたヘロイン法律ほうりつじょう麻薬まやく指定していされている。ヘロインは完全かんぜん違法いほう麻薬まやくだが、医療いりょう麻薬まやくのモルヒネは鎮痛ちんつう鎮静ちんせいざいとして医学いがく薬学やくがくてき重要じゅうようで、とくがん患者かんじゃ激痛げきつう緩和かんわ麻酔ますいペインクリニックでの治療ちりょう不可欠ふかけつであり、医師いし処方しょほう適切てきせつ使用しようもとづけば依存いぞんしょうおちいることもない。麻薬まやくとは本来ほんらい医療いりょうよう医薬品いやくひんである。

食用しょくよう

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種子しゅしせんじるとこうばしく、あんパンケーキけたり、七味唐辛子しちみとうがらしぜたりするなどして使つかわれる。和菓子わがしけしもち松風まつかぜには必須ひっす材料ざいりょうである。中央ちゅうおうヨーロッパからひがしヨーロッパではポピーシードでつくったあんじょうのペーストをシュトゥルーデルシュトレンパイハマンタッシェンなどの菓子かしのフィリングとしてよくもちいる。モルヒネのふくまれていない品種ひんしゅとくポーランド料理りょうりではマコヴィエツポーランドばんなどのパンやケーキに大量たいりょうもちいられることがひろられている。ひがしインドでは、種子しゅしをすりつぶして煮込にこ料理りょうりくわえるほか、ケシのチャツネつくられる。

栽培さいばい品種ひんしゅにもよるが、種子しゅしにはモルヒネがふくまれていないか、ふくまれていてもごく微量びりょうである。長年ながねんにわたって食用しょくようきょうされてきた歴史れきしがあるため、普通ふつうどのくににおいてもポピーシードは規制きせい対象たいしょうとなっていない。日本にっぽんにおいても、あへんほうでは種子しゅししまりの対象たいしょうからはずされており、ゆえに所持しょじしていても法的ほうてきには問題もんだいにならない。しかし発芽はつがするとほうれるので、日本にっぽん販売はんばいされているケシの種子しゅしは、加熱かねつによる発芽はつが防止ぼうし処理しょりほどこされている。

例外れいがいとしてシンガポールのように、微量びりょうであってもモルヒネがふくまれていることを問題もんだいし、ポピーシードの使用しようそのものを禁止きんししているくにもある。またアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくには、ポピーシードを材料ざいりょうもちいた食品しょくひんべたあとに、尿にょう検査けんさ陽性ようせい反応はんのう解雇かいこされた、という事例じれいがある[4]

また、種子しゅしには多量たりょう油分ゆぶんふくまれているため、これをしぼった芥子からし英語えいごばん(ポピーシードオイル)も食用しょくよう石鹸せっけん製造せいぞう油彩ゆさい描画びょうが使つかわれる。けし植物しょくぶつとしてはかなり高価こうか部類ぶるいはいるので、一般いっぱんてきには食用しょくようよりはむしろ描画びょうがとして使用しようされる。

栽培さいばい

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栽培さいばいほう

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ケシは移植いしょくすることができないので、直播じきまきしなければならない。あぜはば50cmにつくり、9がつ下旬げじゅん、10アールたり180ml割合わりあい種子しゅしく。よくはるあいだして株間かぶまやく10cmとする。5月じょう中旬ちゅうじゅん開花かいか花弁はなびら落下らっか数日すうじつ子房しぼう十分じゅうぶん発育はついくしたころ子房しぼうたてたかしせん沿ってあさきずをつけ、アヘンを採取さいしゅする。

栽培さいばい歴史れきし

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栽培さいばい植物しょくぶつとしての歴史れきしふるく、紀元前きげんぜん5000ねんごろかんがえられるスイス遺跡いせきからほんしゅ種子しゅし発見はっけんされている[注釈ちゅうしゃく 2]よんだい文明ぶんめいおこったころにはすで薬草やくそうとして栽培さいばいされていたとされ、シュメール楔形文字くさびがたもじいたにもほんしゅ栽培さいばい記録きろくがある。ほんしゅ薬用やくよう利用りようはそこから古代こだいエジプト古代こだいギリシアつたわったとかんがえられ、マ帝国まていこくヨーロッパ全土ぜんどひろまった。そのあいだ帝国ていこく退廃たいはいうつして利用りようほう麻薬まやくようへと変貌へんぼうげ、だい航海こうかい時代じだいアヘン原料げんりょうとして世界せかい各地かくちひろまった。とくイギリス植民しょくみんであったインドほんたね大々的だいだいてき栽培さいばいおこない、生産せいさんされたアヘンをきよし輸出ゆしゅつして莫大ばくだい利益りえきをあげた。

日本にっぽんでは、室町むろまち時代ときよ南蛮なんばん貿易ぼうえきによってケシのたねがインドから津軽つがる地方ちほう現在げんざい青森あおもりけん西部せいぶ)にもたらされ、それが「ツガル」というケシの俗称ぞくしょうとなったという伝承でんしょうがある[5]。その現在げんざい山梨やまなしけん和歌山わかやまけん大阪おおさか付近ふきんなどで少量しょうりょう産出さんしゅつされたがいずれも少量しょうりょう高価こうかであり、用途ようと医療いりょうようかぎられていた。明治めいじなかば、大阪おおさか農民のうみんはん長音ちょうおんぞうがケシ栽培さいばい政府せいふ建白けんぱく地元じもと大阪おおさか三島みしまぐんだい規模きぼ生産せいさんすとともに、品種ひんしゅ改良かいりょう尽力じんりょくし、モルヒネ含有がんゆうりょう既存きそんしゅすうばいたっする一貫いっかんしゅばれる優良ゆうりょう品種ひんしゅ作出さくしゅつした。日本にっぽん台湾たいわん統治とうち開始かいし台湾たいわんにおいてアヘンの製造せいぞう消費しょうひ一大いちだい産業さんぎょうになっていることをった。台湾たいわん総督そうとく衛生えいせい顧問こもんだった後藤ごとう新平しんぺい台湾たいわんのケシ栽培さいばい課税かぜい対象たいしょうとし、段階だんかいてき課税かぜい厳格げんかくすることで、40ねんをかけ台湾たいわんのケシ生産せいさん消滅しょうめつさせた一方いっぽう内地ないちでははん長音ちょうおんぞうのケシ栽培さいばい積極せっきょくてき後援こうえんし、日本にっぽん国内こくないのアヘンの生産せいさん台湾たいわんへの輸出ゆしゅつ販売はんばい台湾たいわん総督そうとく専売せんばいせいとし、莫大ばくだい利益りえきた。1935ねんごろには全国ぜんこく作付さくづけが100haたっし、5月の開花かいかには広大こうだいなケシはたけ雪白せっぱくはなひろがり、非常ひじょう壮観そうかんていした。当時とうじのアヘン年間ねんかん生産せいさんりょうは15tたっし、全国ぜんこく産額さんがくの50%は和歌山わかやまけん有田ありたぐんで、40%が大阪おおさか三島みしまぐんがそれぞれめた。昭和しょうわはいると日本にっぽん日本にっぽん統治とうち時代じだい朝鮮ちょうせんまんしゅう一部いちぶねつかわしょう現在げんざい河北かほくしょう遼寧りょうねいしょう内モンゴル自治うちもんごるじち一部いちぶ)でケシ栽培さいばい奨励しょうれいし、だい世界せかい大戦たいせんちゅうまんしゅうこくこうむ聯合れんごう自治じち政府せいふ南京なんきん国民こくみん政府せいふなどでだい規模きぼ栽培さいばいおこない、生成せいせいされたアヘンに高額こうがくぜいをかけ戦費せんぴ調達ちょうたつした[6]太平洋戦争たいへいようせんそうの1946ねん連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれいかんそう司令しれい(GHQ)がモルヒネ物質ぶっしつすくなく採取さいしゅ不能ふのう観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅふくめてケシの栽培さいばい禁止きんし命令めいれいし、国内こくない生産せいさん観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅ栽培さいばい途絶とだえた。さらにあへんほうが1954ねん制定せいていされ、よく1955ねんから薬用やくよう研究けんきゅうよう栽培さいばい再開さいかいされた。しかし戦前せんぜんのようなだい規模きぼ栽培さいばい復活ふっかつすることなく、現在げんざい栽培さいばいりょう実験じっけんしつレベルにとどまっている。モルヒネ物質ぶっしつをほとんどふくまず、採取さいしゅ不能ふのう観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅ栽培さいばいも、そのまま禁止きんしされたままである。

栽培さいばい現状げんじょう

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おおくのくにがケシ栽培さいばいなんらかの規制きせいをかけている一方いっぽうで、園芸えんげいようとしてのケシ栽培さいばいについては規制きせいしていないくにおおい。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではモルヒネ原料げんりょうとなるたねふくむケシの栽培さいばい種子しゅし販売はんばい自由じゆうで、ネット通販つうはん種子しゅし安価あんか購入こうにゅうできる。英国えいこくなどヨーロッパでは、いちめんきほこるケシはたけはる風物詩ふうぶつしになっている。なお、先進せんしんこくにおいては乾燥かんそうさせたほんしゅ植物しょくぶつたい有機ゆうき溶媒ようばいひたしてアルカロイド成分せいぶん浸出しんしゅつさせる方法ほうほう効率こうりつてきにモルヒネを回収かいしゅうしている。原始げんしてきなへらきによる採取さいしゅは、モルヒネの回収かいしゅうりつ効率こうりつなこともあり、かたちとしてアヘンを生産せいさんする必要ひつようのあるアヘン輸出ゆしゅつ可能かのうこくか、非合法ひごうほう生産せいさんでしかおこなわれていない。現在げんざい国際こくさい条約じょうやくでアヘンの輸出ゆしゅつ可能かのう国家こっかはインド、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく日本にっぽん北朝鮮きたちょうせんの4ヶ国かこく限定げんていされているが、現在げんざい輸出ゆしゅつ継続けいぞくしているのはインドのみであるため、国際こくさい条約じょうやくにおいては、インドがほんたね最大さいだい栽培さいばいといえる。このほか国際こくさいてき紛争ふんそうきている地域ちいきで、住民じゅうみんばや現金げんきん収入しゅうにゅうるために国際こくさい条約じょうやく無視むししてほんたね栽培さいばいするケースがおおい。きゅうソ連それん中央ちゅうおうアジアや、長年ながねん内乱ないらんつづいたアフガニスタンカンボジア中米ちゅうべいなどがあらたな非合法ひごうほう栽培さいばい中心ちゅうしんとなっている。このケースにおいて、20世紀せいき非常ひじょう有名ゆうめいだったのが、いわゆる黄金おうごん三角さんかく地帯ちたい(ゴールデントライアングル)としてもられるミャンマータイラオス国境こっきょうにまたがる地域ちいきであるが、2002ねん以降いこうどう地域ちいきでの紛争ふんそう沈静ちんせいし、ようやく同地どうち支配しはいけん確保かくほできた政府せいふによって換金かんきん作物さくもつへの転作てんさく奨励しょうれいされるようになったため、低調ていちょうしている。ミャンマーでは政府せいふ国連こくれん薬物やくぶつ犯罪はんざい事務所じむしょ代替だいたい作物さくもつとしてコーヒー栽培さいばいへの転換てんかんすすめており、仕入しいれなどで外国がいこく企業きぎょう支援しえんしている[7]

21世紀せいきはいってから条約じょうやく無視むし不法ふほうケシ最大さいだい生産せいさんこくはアフガニスタンで、2014ねん時点じてんぜん世界せかい生産せいさんりょうの70%がどう国産こくさんとなっており、タリバンなど同国どうこくはん政府せいふ組織そしき重要じゅうよう資金しきんげんとなっている[8][9]国連こくれん薬物やくぶつ犯罪はんざい事務所じむしょ発表はっぴょうでは、2013ねん世界せかい不法ふほうなケシの作付さくづ面積めんせきやく29まん7000ヘクタールおよ[9]

日本にっぽんでも、あへんほうによってアヘンやモルヒネにたいする規制きせいがかけられている。どうほう太平洋戦争たいへいようせんそうまえ満州まんしゅう朝鮮ちょうせんだい規模きぼおこなわれた戦費せんぴ調達ちょうたつのためのアヘン生産せいさん反省はんせいもとづき、国内こくないでのだい規模きぼ栽培さいばい例外れいがいなく禁止きんしする意図いともと策定さくていされている。ゆえにその内容ないよう他国たこく比較ひかくして非常ひじょうきびしい。現代げんだい日本にっぽんにおいて、あへんほうもとづく栽培さいばい許可きょかけるには、栽培さいばい周囲しゅういじゅう金網かなあみめぐらせ門扉もんぴには施錠せじょうする、夜間やかんはレーザーセンサーをもちいて警備けいびするといった非常ひじょうきびしい条件じょうけんたさなければならない。ゆえに実際じっさい許可きょか栽培さいばいしているのはくに地方自治体ちほうじちたい研究けんきゅう機関きかんや、薬科やっか大学だいがく総合大学そうごうだいがく薬学部やくがくぶ薬草やくそうえん東京とうきょう薬用やくよう植物しょくぶつえん日本にっぽん大学だいがく薬学部やくがくぶ京都薬科大学きょうとやっかだいがく付属ふぞく薬用やくよう植物しょくぶつえんなど)、およびくに研究けんきゅう機関きかんから委託いたくされて栽培さいばいしているすうけん農家のうか北海道ほっかいどうにあるだけで、国内こくないのアヘン生産せいさんりょう実験じっけんしつレベルにとどまっている。これではとても国内こくない需要じゅようまかなえないため他国たこくからアヘンを輸入ゆにゅうしている。一方いっぽう前述ぜんじゅつした個人こじん輸入ゆにゅう植物しょくぶつ種子しゅし付着ふちゃくして(ケシとはらずに)日本にっぽん栽培さいばい自生じせいしてしまうれいすくなからずある。らずに栽培さいばいされて観賞かんしょうよう園芸えんげい品種ひんしゅはソムニフェルムしゅであっても、モルヒネアルカロイドはほとんどふくまず、採取さいしゅ不能ふのうであり、むしろ野生やせいしたアツミゲシやハカマオニゲシのほうがモルヒネアルカロイドをおおふくむが、日本にっぽんではGHQの命令めいれいからつづ法律ほうりつで、栽培さいばい禁止きんしされたままとなってるので、ポピーの栽培さいばい綺麗きれいたことが場合ばあいはなかたちているのでヒナゲシやオニゲシではくケシの場合ばあいるので、通信つうしん販売はんばい種子しゅし購入こうにゅうする場合ばあいには注意ちゅうい必要ひつようである。

アヘンほうとうにより栽培さいばい禁止きんしされている仲間なかま

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ソムニフェルムしゅほかにはアツミゲシなどのセティゲルムしゅ規制きせい対象たいしょう

アツミゲシ Papaver setigerum
アフリカ原産げんさん。ケシの亜種あしゅかんがえられていたが、染色せんしょくたい調しらべた結果けっか別種べっしゅ判明はんめい。ケシよりは小型こがた1960年代ねんだい渥美半島あつみはんとうはじめて帰化きか確認かくにんされたことから命名めいめいされた。いまでは日本にっぽん全国ぜんこくひろがっている。はな薄紫うすむらさきしょくで、基部きぶ濃紫こむらさきしょくほんしゅからアヘンが生成せいせいされた記録きろくはなかったが、世界せかいにおける栽培さいばい現状げんじょうべられている有機ゆうき溶媒ようばい使用しようした化学かがくてき手法しゅほうによってほんしゅからもアルカロイドの抽出ちゅうしゅつ可能かのうである。
ハカマオニゲシ Papaver bracteatum
ペルシャ原産げんさんはなびらのしたにハカマとよばれるしょうく。はな深紅しんくで、基部きぶくろ斑点はんてんがある。麻薬まやく類似るいじ成分せいぶんであるテバインふくむため、麻薬まやくおよこう精神せいしんやく取締とりしまりほうにより麻薬まやく原料げんりょう植物しょくぶつ定義ていぎされており、栽培さいばい禁止きんしされている。
オニゲシ (P. orientale) によくているが、オニゲシにはな基部きぶおおきなたくはないなどのてん区別くべつできるとされるが、おな特徴とくちょう品種ひんしゅがあるので、見分みわけが非常ひじょうむずかしい。

なお、これ以外いがいヒナゲシなどの観賞かんしょうようのケシは、麻薬まやく成分せいぶんふくまないので栽培さいばいしても問題もんだいい。

見分みわかたなどについては、群馬ぐんまけんHP[10]東京とうきょう健康けんこう安全あんぜん研究けんきゅうセンター[11]など、行政ぎょうせい各所かくしょ説明せつめいおこなわれている。日本にっぽんにおいて、これらケシが自生じせいしているのをつけた場合ばあいかずに厚生こうせい労働省ろうどうしょう麻薬まやく取締とりしまり自治体じちたいくすりつとむ最寄もよりの警察けいさつしょなどに通報つうほうすることとしている[12][13]

ケシをモチーフとした作品さくひん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ただし、英名えいめいでは blue poppy seed とばれ、いろあおということになっている。
  2. ^ どのように利用りようされていたかは不明ふめい

出典しゅってん

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  1. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語らてんご). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 508. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358527 
  2. ^ このしろ乳汁にゅうじゅう滲出しんしゅつする性質せいしつ薬用やくよう品種ひんしゅているので、まりの見分みわけがきにくいので栽培さいばい禁止きんしつづいて
  3. ^ 朝日新聞社あさひしんぶんしゃへん植物しょくぶつ世界せかいだい8,14かん朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、1997ねん9がつISBN 4-02-380010-4
  4. ^ Snopes.com. “Poppy seeds alter drug test results/”. 2018ねん6がつ16にち閲覧えつらん
  5. ^ 「ケシ」/伊澤いさわ一男かずお薬草やくそうカラー図鑑ずかん』(主婦しゅふ友社ともしゃ
  6. ^ NHKスペシャル. “調査ちょうさ報告ほうこく 日本にっぽんぐん阿片あへん”. 2008ねん8がつ17にち閲覧えつらん
  7. ^ 良品計画りょうひんけいかくがミャンマーさんコーヒー ケシはたけからの転換てんかん支援しえん日本経済新聞にほんけいざいしんぶんニュースサイト(2020ねん9がつ28にち)2020ねん10がつ10日とおか閲覧えつらん
  8. ^ AFPニュース. “ケシ栽培さいばいから脱却だっきゃくできないアフガニスタンの農民のうみん”. 2011ねん5がつ3にち閲覧えつらん
  9. ^ a b 世界せかいのケシ栽培さいばい面積めんせき過去かこ最大さいだい国連こくれん報告ほうこく、アフガンも増加ぞうか. 共同通信きょうどうつうしん. 47NEWS. (2014ねん6がつ26にち). http://www.47news.jp/CN/201406/CN2014062601001551.html 2014ねん6がつ26にち閲覧えつらん 
  10. ^ 栽培さいばい禁止きんしされている「ケシ」の見分みわかた - 群馬ぐんまけんホームページ(くすりつとむ)”. www.pref.gunma.jp. 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん
  11. ^ 東京とうきょう健康けんこう安全あんぜん研究けんきゅうセンター » 不正ふせいなケシの見分みわかた”. www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp. 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん
  12. ^ https://www.facebook.com/mainichishimbun.+“野生やせいケシ、京都きょうと急増きゅうぞう 4ねんで4ばい以上いじょう かずに通報つうほうを」”. 毎日新聞まいにちしんぶん. 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん
  13. ^ 大麻たいま」・「けし」を発見はっけんしたときは通報つうほうしてください!”. プレスリリース・ニュースリリース配信はいしんシェアNo.1|PR TIMES (2021ねん4がつ26にち). 2023ねん5がつ19にち閲覧えつらん

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