サフラン

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サフラン
サフラン
分類ぶんるいAPG III
さかい : 植物しょくぶつかい Plantae
階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ angiosperms
階級かいきゅうなし : たん子葉しようるい monocots
: キジカクシ Asparagales
: アヤメ Iridaceae
ぞく : クロッカスぞく Crocus
たね : サフラン C. sativus [1]
学名がくめい
Crocus sativus L. (1753) [1][2]
和名わみょう
サフラン
英名えいめい
saffron crocus

サフランばん紅花べにばな咱夫あい洎夫あい洎夫らんCrocus sativusらん: saffraanえい: saffronふつ: safran)はアヤメ多年草たねんそうおよびそのめしべ乾燥かんそうさせた香辛料こうしんりょうをさす。イラン原産げんさんとされるが諸説しょせつあり[3][4]地中海ちちゅうかいしま発掘はっくつされた壁画へきがによると、青銅器せいどうき時代じだいから栽培さいばいされたとかんがえられる[5]

概要がいよう[編集へんしゅう]

別名べつめい薬用やくようサフランんで、同属どうぞく植物しょくぶつ観賞かんしょうようはなサフランクロッカス)、アルカロイドコルヒチンふくイヌサフランイヌサフラン区別くべつする(国立こくりつ健康けんこう栄養えいよう研究所けんきゅうじょのサイトよりイヌサフランの項目こうもく参照さんしょう[6]

サフランは最大さいだい20 - 30センチメートルに成長せいちょうするとはないちかぶ最大さいだい4つつけ、3ほんずつあるあざやかな深紅しんく柱頭ちゅうとうたんめすしべ先端せんたん[7]はなばしらとともにって乾燥かんそうさせ、おも食品しょくひん調味ちょうみりょう着色ちゃくしょくりょう使用しようする。サフランは重量じゅうりょう単位たんいくらべると世界せかいもっと高価こうかなスパイスのひとつ[8][9][10]遺伝いでんてき単形たんけいクローンである[11]ことから分布ぶんぷ拡大かくだいおそく、ユーラシア全域ぜんいきひろがったのちきたアフリカ、きたアメリカ、およびオセアニアにまれた。

日本にっぽんでは、咱夫あい漢字かんじてる[12]洎夫あい[13]洎夫らんというもちいた表記ひょうきもされる。とまりおっとあいという表記ひょうきられるが、これは「洎」を「はく」とした誤字ごじである。

成分せいぶんは、αあるふぁβべーたγがんまカロテン色素しきそはいとうたいであるクロシン無色むしょく苦味にがみはいとうからだピクロクロシン英語えいごばんpicrocrocin)、精油せいゆ(8 - 10%、テルペンテルペンアルコールエステル)、クロセチンなどをふく[6][14]クロシン水溶すいようせいあぶらにはけない。かおりの主成分しゅせいぶんサフラナールである。

ひとりの労働ろうどうしゃが1キロのサフランを生産せいさんするためにはやく400あいだ労働ろうどう必要ひつようだとするせつもある。サフラン栽培さいばい地域ちいきでは、女性じょせい子供こどもがサフラン収穫しゅうかくのために雇用こようされる場合ばあいおおい。[15]

歴史れきし[編集へんしゅう]

サフラン(「ケーラーの薬用やくよう植物しょくぶつ」より):
  花冠かかん
  雄蕊おしべ
  根茎こんけい
  柱頭ちゅうとう

サフランの語源ごげんには諸説しょせつある。12世紀せいきフランス語ふらんすご safran からたどると、ラテン語らてんご safranum、さらにペルシャ 「ザアファラーン」(zaʻfarān زَعْفَرَان)、あるいはさらにふる言葉ことば zar-parānزرپران)へとさかのぼる可能かのうせいもあるという。アラビア az-za'faranزعفران)が語源ごげんという指摘してきもあるが確認かくにんされていない[16]。サフラン栽培さいばいは3000ねん以上いじょうまえから記録きろくのこ[17]、おそらく原種げんしゅCrocus cartwrightianus から雄蕊おしべながいものを選別せんべつした変異へんいたい C. sativus青銅せいどう時代じだい確立かくりつして以来いらい栽培さいばいつづいたものとかんがえられる[5]調理ちょうりかかわる記述きじゅつにサフランのはじめてあらわれたのは、いまからすうせんねんまえのペルシャ資料しりょうである。

紀元前きげんぜんから世界せかい各地かくちでめしべを香辛料こうしんりょう染料せんりょう香料こうりょう薬用やくようとして利用りようしている。古代こだいギリシアではサフランの黄色おうしょく珍重ちんちょうし、王族おうぞくだけが使つかうことをゆるされるロイヤルカラーとされた時代じだいもある[18]

紀元前きげんぜん981ねんからおこなわれているジャイナきょうのゴマテシュワラのまつりは、インドのカルナータカしゅうシュラバナベラゴラで12ねんいちもよおされる。信者しんじゃ特設とくせつ足場あしばから、サフランすいやサフラン・ミルクをたかさ17メートルのゴマテシュワラのぞうそそぐ。[15]

日本にっぽんへは江戸えど時代じだいくすりとしてつたわった。国内こくないでの栽培さいばいは、1886ねん明治めいじ19ねん)、神奈川かながわけん大磯おおいそまちきゅう国府こくふむら)の添田そえた辰五郎たつごろう病気びょうき母親ははおやのため、球根きゅうこん輸入ゆにゅう栽培さいばいこころみたのがはじまり。1897ねん明治めいじ30ねん)に内務省ないむしょう横浜よこはま衛生えいせい試験しけんしょ認定にんていけ、商品しょうひん輸出ゆしゅつされるようになった[19]1903ねん明治めいじ36ねん)には、辰五郎たつごろうから球根きゅうこんゆずけた吉良きら文平ぶんぺいによって大分おおいたけん竹田たけだつたわり、同地どうち名産めいさんになった。現在げんざい日本にっぽん国内こくないやく8 - 9わり竹田たけだ生産せいさんされている[20][21]産地さんち宮城みやぎけん塩竈しおがまなどである。

栽培さいばい[編集へんしゅう]

サフランの収穫しゅうかく女性じょせいつまむサフランはぼうのようにえがかれている。ミノス文明ぶんめいのフレスコより。(サントリーニとう発掘はっくつ

野生やせいではられないサフランの原種げんしゅは、クレタしま自生じせいする Crocus cartwrightianusかんがえられ[11]、あるいは C. thomasiiC. pallasii 原種げんしゅである可能かのうせいがある[22][23]。サフランはさんばいたいつまりゆうせい決定けってい要素ようそによる「自家じか和合わごうせい」をしめし、減数げんすう分裂ぶんれつ異常いじょうにより個別こべつ有性ゆうせい生殖せいしょくにいたらない。そのため根茎こんけい分割ぶんかつしてえつけるなど品種ひんしゅ改良かいりょう手法しゅほう栄養えいよう増殖ぞうしょくする[24][23]C. sativusC. cartwrightianus変異へんいがた場合ばあい遺伝いでんてき改良かいりょうによって、なが年月としつきをかけて細長ほそなが柱頭ちゅうとうのものが選択せんたくてき交配こうはいされ、青銅器せいどうき時代じだい晩期ばんきのクレタとうあらわれたとかんがえられる[5]

サフラン (C. sativus)は8くみ合計ごうけい24くみ染色せんしょくたい[7]はな種子しゅしをつけないことから人工じんこうてき繁殖はんしょくおこない、根茎こんけいりあげて分割ぶんかつえつける。根茎こんけいは1シーズンでれるまでに10前後ぜんこうちいさな根茎こんけいかれ、つぎのシーズンに成長せいちょうする[17]根茎こんけい茶色ちゃいろしょう球体きゅうたい直径ちょっけい5 cm (2.0 in) ほどに成長せいちょう底面ていめんたいらで、繊維せんい平行へいこうならんだ被膜ひまくつつまれる。またうす網状もうじょうまくやく 5 cm にびて[7]

C. sativus.

たか 20–30 cm (7.9–11.8 in) に成長せいちょうするとしろを5 - 11まいつけ、このうろこ光合成こうごうせいおこなわない。この器官きかんつつまれたびて緑色みどりいろになり、うすけんじょうはばは1 - 3ミリメートル(<0.12インチ)。開花かいかあるいは開花かいか同時どうじ生長せいちょうする。うろこ生長せいちょうはや段階だんかいによく潅水かんすいした場合ばあい顕著けんちょであるとするせつもある。くきから小包こづつみという特徴とくちょうてき器官きかん発生はっせいし、これをしょう花梗かこう[7]はる休眠きゅうみんつづいて生長せいちょうするは40 cm (16 in) までびるものもある。あきには紫色むらさきいろつぼみあらわれ、10月にほかのたねたねとしたのちかせるはなかおりはあま蜂蜜はちみつており、いろ薄紫うすむらさきからあざやかなむらさき[25]。また、開花かいかたけは30 cm (12 in)にとどまる[26]はなばしらにつくあざやかな深紅しんく雄蕊おしべながさ25–30 mm (0.98–1.18 in)[17]

栄養えいよう生殖せいしょくをほどこしたサフランの根茎こんけい

栽培さいばいてきする環境かんきょう[編集へんしゅう]

サフラン(Crocus sativus)は地中海ちちゅうかい沿岸えんがんられる常緑じょうりょく低木ていぼく地帯ちたい、すなわち北米ほくべいカリフォルニアしゅうなどでられる低木ていぼくりんチャパラル生態せいたいけいおよび同様どうようなつあつ乾燥かんそうしたふうけるはん乾燥かんそう気候きこう繁栄はんえいする。にもかかわらず、-10°C(14°F)という低温ていおんみじか期間きかんしも積雪せきせつふゆさむさをることができる[17][27]湿潤しつじゅん環境かんきょうをのぞくと、カシミールなど年間ねんかん平均へいきん降水こうすいりょう1,000–1,500 mm (3.3–4.9 ft)の地域ちいきでは灌漑かんがい必要ひつよう年間ねんかん500 mm (20 in)のギリシャ、400 mm (16 in)のスペインでは、サフランのおも栽培さいばい地域ちいきイランくらべるとはるかに乾燥かんそうしている。栽培さいばい可能かのうかどうかは雨季うき時期じきにより、はるゆたかなあめなつ乾燥かんそう最適さいてき開花かいか直前ちょくぜんあめるとサフランの収穫しゅうかくび、開花かいかあめさむさ、病気びょうき蔓延まんえん収量しゅうりょう低下ていかむすびつく。作物さくもつがいあたえる高温こうおん多湿たしつくわ[28]球茎きゅうけいこすウサギラットとり、あるいはせんちゅうさびびょうおよび球茎きゅうけい腐敗ふはい脅威きょういである。枯草かれくさきんBacillus subtilis)によって根茎こんけい成長せいちょう増進ぞうしんすると柱頭ちゅうとうのバイオマス収量しゅうりょう増加ぞうか栽培さいばいしゃ有益ゆうえきはたら場合ばあいがある[7]

この植物しょくぶつ成長せいちょうには日陰ひかげ条件じょうけん不利ふりで、さんさんと陽光ようこうそそぐと最適さいてきである。日光にっこうかってけた傾斜地けいしゃちもっともよく(たとえば北半球きたはんきゅうではみなみ傾斜地けいしゃち)、うえ栽の時期じき北半球きたはんきゅうではおもに6月。根茎こんけいふかさ7–15 cm (2.8–5.9 in)にえつけると10がつから2がつにかけてくき発育はついく[8]えるふかさと間隔かんかく気候きこうとあいまって収量しゅうりょう左右さゆうする重要じゅうよう要因よういんである。おやとなる根茎こんけいふかえると品質ひんしつたかいサフランを収穫しゅうかくできるものの、根茎こんけい花芽かがかずすくない。イタリア生産せいさんしゃ収量しゅうりょう最大さいだいにするため、ふかさ2–3 cm (0.79–1.18 in)で間隔かんかく15 cm (5.9 in)にうえ栽。ふかさ8–10 cm (3.1–3.9 in)にするとはな根茎こんけい成長せいちょう最適さいてきだという。ギリシャ、モロッコ、スペインの生産せいさんしゃはそれぞれの条件じょうけんわせてふかさと間隔かんかくめている。

有機物ゆうきぶつ含有がんゆうりょうおおみずはけの粘土ねんど石灰せっかいしつ土壌どじょうこのみ、もろくて保温ほおんせいたかねばたびひくくてよく灌漑かんがいした土地とちてきしており、伝統でんとうてきにはあげゆか採用さいようして排水はいすいうながしてきた。歴史れきしてき手法しゅほうでは肥料ひりょうを1ヘクタールたり20–30 t (44,000–66,000 lb)くわえて土壌どじょう有機物ゆうきぶつ含有がんゆうりょうやし、根茎こんけいうえ栽後は肥料ひりょうあたえない[29]なつあいだ休眠きゅうみん出芽しゅつが初秋しょしゅうほそばすと花期かきとしいちだけあきなかばにられる。夜明よあけに開花かいかしたはなはすぐにはじめるため、収穫しゅうかくかなら迅速じんそくおこなわなければならないうえに[11]花期かきは1 – 2週間しゅうかん集中しゅうちゅうする[12]

等級とうきゅう国際こくさい規格きかく[編集へんしゅう]

ピクロクロシンの構造こうぞう[30]
  βべーたD-グルコース誘導体ゆうどうたい
  サフラナール部分ぶぶん
クロセチンゲンチオビオースエステルαあるふぁ - クロシンの構成こうせい要素ようそ
  βべーたD-ゲンチオビオース
  クロセチン

サフランには産地さんちによる等級とうきゅうのほか、クロシンいろ)、ピクロクロシン(風味ふうみ)ならびにサフラナール香味こうみかおり)の成分せいぶん分析ぶんせき検査けんさ国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこうISO 3632 認証にんしょうける制度せいどがあり[31]、2010 – 2011ねん規格きかく強化きょうかされた[32]。しかしながらパッケージに等級とうきゅうしめさない商品しょうひんおお取引とりひきされ、イギリスの市場いちば出回でまわるサフランはほぼISO認証にんしょう表示ひょうじしていないため、消費しょうひしゃ購入こうにゅうする場合ばあい価格かかく品質ひんしつ判断はんだんする情報じょうほう不足ふそくしている。

雄蕊おしべ以外いがい植物しょくぶつ部位ぶい含有がんゆうりつ異物いぶつ混入こんにゅう英語えいごその条件じょうけんはISO 3632認証にんしょう取得しゅとくのキーポイントである[注釈ちゅうしゃく 1]規格きかく決定けっていする国際こくさい標準ひょうじゅん機構きこう ISO とは規格きかくおよ品質ひんしつ要件ようけんについて管轄かんかつする国家こっか機関きかんあつまりで、ISO 3632 の対象たいしょうはサフラン限定げんてい規格きかくは III るい最下さいかきゅう)、II るい、I るいさい高級こうきゅう)の3つにかれ以前いぜんは III るいしたに IV るいもうけた時期じきがあった。サンプルを提出ていしゅつすると分光ぶんこうはかいろほうもちいてクロシンとピクロクロシンの成分せいぶん含有がんゆうりつ分析ぶんせき。サフラナールの場合ばあいあつかいがややことなり規格きかくべつに閾値をもうけるわりに、規定きていは20から50の範囲はんい

ISO の承認しょうにん検査けんさ機関きかん世界中せかいじゅうにあり、分光ぶんこうはかいろほうもちいて報告ほうこくしょ作成さくせいする。吸光クロシン、ピクロクロシン、サフラナール単位たんいりょうあたりの濃度のうど、すなわちいろごとのつよさをしめす。クロシンの吸光通常つうじょうは80未満みまん(IV るい)から200ちょう(I るい)の範囲はんい最高さいこう品質ひんしつのサフランとは、もっとも状態じょうたいのよいはなから収穫しゅうかく選別せんべつした雄蕊おしべあかみがかった栗色くりいろ、吸光250ちょう、IV るいじつに3ばいである。市場いちば価格かかくには ISO 認証にんしょう直接ちょくせつ反映はんえいし、サルゴルとクーペはISO 3632 I るい、プシャールとマンチャの品質ひんしつはおおむね II るいである。市場いちば出回でまわるサフランのだい部分ぶぶんはラベルに ISO 3632 認証にんしょう染色せんしょく能力のうりょく(クロシン含有がんゆうりょう)をしめしていない。

現実げんじつには、ISO 規格きかく成分せいぶん分析ぶんせきにかけない生産せいさんしゃ流通りゅうつう業者ぎょうしゃ消費しょうひしゃおおい。科学かがく分析ぶんせきではなく、ベテランのワインの鑑定かんていのようにあじかおり、かわきすぎていないなど、サフランのサンプルの特徴とくちょう経験けいけん知識ちしきもとづく判断はんだんまかせるべきだとかんがえるひとすくなくない[35]。ISO 3632 認証にんしょうおよび吸光表示ひょうじがあれば、消費しょうひしゃはわざわざブランドことなるサフランを数種類すうしゅるいもとめて自分じぶん判断はんだんするのではなく、一目いちもく品質ひんしつ確認かくにんできる。つきつめると、サフランの種類しゅるいによって吸光おおきながあるという知識ちしきて、おもさと価格かかくではなく、ISO 3632 認証にんしょう価格かかくくらべて品質ひんしつ見極みきわめることができるのである。

サフランの品質ひんしついろかおりは一律いちりつではない。貯蔵ちょぞう期間きかんのほか、収穫しゅうかくぶつふくまれるあか雌蕊めしべ黄色きいろえるはなばしら割合わりあい左右さゆうされる。あか雌蕊めしべいろかおりが濃縮のうしゅくすることから、はなばしら割合わりあいおおいほど1グラム単位たんいいろかおりはうすい。イラン[36]スペインカシミール[36]には独自どくじ等級とうきゅう制度せいどがあり、あか黄色おうしょくのバランスを目安めやすまっている。

イランさん
等級とうきゅう 呼称こしょう 雄蕊おしべいろ 特徴とくちょう
さい高級こうきゅう サルゴル 全量ぜんりょう赤色あかいろ sargol
上級じょうきゅう プシャル(プシャリ) 赤色あかいろ黄色おうしょく少量しょうりょうこんじる pushal、pushali
中級ちゅうきゅう たば 赤色あかいろ黄色おうしょくはなばしらおお混入こんにゅうちいさなたばにまとめて流通りゅうつう bunch
下級かきゅう コンゲ 全量ぜんりょう黄色おうしょくはなばしらかおりはあるといってもかすかで、染色せんしょくよう konge
スペインさん
等級とうきゅう 呼称こしょう 雄蕊おしべいろ 特徴とくちょう
さい高級こうきゅう クーペ かおりといろもっとい。イランさんサルゴルに相当そうとう coupé
上級じょうきゅう マンチャ イランさんプシャルに相当そうとう mancha
中級ちゅうきゅう リオ 以下いか等級とうきゅうがるとかおりといろうす rio
なみ スタンダード 一般いっぱんよう standard
下級かきゅう シエラ sierra

ただし「スペインさんマンチャきゅう」とひとくちにっても使つかかたが2種類しゅるいあり、「一般いっぱんよう」を場合ばあいと「スペイン国内こくない特定とくてい産地さんちれたさい高級こうきゅう」を意味いみする場合ばあいがある。純粋じゅんすいのスペイン国産こくさんサフランを「ラ・マンチャ」とび、パッケージには EU の原産地げんさんち名称めいしょう保護ほご制度せいど (PDO)認証にんしょうしょうけている。認証にんしょう獲得かくとくはスペインの生産せいさんしゃにとって、純粋じゅんすいラ・マンチャきゅうのサフランをまもろうとした長年ながねん努力どりょく成果せいかであり、イランさん輸入ゆにゅうひん産地さんち偽装ぎそうした「スペインさんマンチャきゅうサフラン」の普及ふきゅうへの対抗たいこうさくである。

収穫しゅうかくりょうすくないくに地域ちいきでは品質ひんしつ等級とうきゅうとくさだめておらず、どれもおな等級とうきゅうとして流通りゅうつうする場合ばあいがある。ヨーロッパとニュージーランドの高級こうきゅうひんそだてる生産せいさんしゃ[注釈ちゅうしゃく 2]とく上品じょうひんのみ出荷しゅっか手間てまをかけたぶん経費けいひ価格かかく反映はんえいさせている。

偽造ぎぞう問題もんだい[編集へんしゅう]

黄色きいろはなばしら目立めだつサフラン(イランさん
こう品質ひんしつあかいサフラン(オーストラリアさん

品質ひんしつ管理かんり標準ひょうじゅんをめぐる指標しひょうさだめても、とく品質ひんしつおとるサフランの品質ひんしつ偽装ぎそう歴史れきしてきかえされ、現代げんだいつづいている[注釈ちゅうしゃく 3]文献ぶんけんによるとヨーロッパの中世ちゅうせいは「サフランのたばほう」 (Safranschou code)を制定せいていぜものをしたサフランの販売はんばい死刑しけい相当そうとうした[41]。その手口てぐちテーブルビートザクロ果皮かひあかめた絹糸けんし混入こんにゅう、あるいはあじかおりもしないサフランのはなばしらやしたのである。あるいはまた、サフランの繊維せんい蜂蜜はちみつ植物しょくぶつけて重量じゅうりょうやす方法ほうほうもあった。しかしさらに品質ひんしつ偽装ぎそううたがわしいのは粉末ふんまつじょうのサフランで、ターメリックパプリカほかの粉末ふんまつでかさしをしたり、等級とうきゅうことなるサフランをぜてごまかしたりした。インドではこう品質ひんしつのカシミールさんサフランにイランさん安価あんか輸入ゆにゅうひんぜた商品しょうひんをしばしばかけるという。純粋じゅんすいなカシミールさんといつわって流通りゅうつうするため、カシミールの生産せいさんしゃ収入しゅうにゅうおびやかされている[42][43]

近年きんねん研究けんきゅう偽造ぎぞう判定はんていする手法しゅほう開発かいはつされつつある。ISO 3632 規格きかくさだめる吸光度こうどと HPLC-DAD 方式ほうしき対比たいひするこころみのほか[44]あたらしいUHPLC-DAD-MSほうとしてコア-シェル粒子りゅうしカラムにもとづくサフラン代謝たいしゃ産物さんぶつCrocus sativus L.)の迅速じんそく分離ぶんり実現じつげんする手法しゅほう開発かいはつ、サフラン由来ゆらい化合かごうぶつぐんとして典型てんけいてきなピクロクロシン誘導体ゆうどうたい11けん検出けんしゅつならびにクチナシ特異とくい化合かごうぶつ混濁こんだくマーカーとしてもちいる典型てんけいてき検出けんしゅつほう可能かのうにしたとされる[45]。また神奈川かながわ県立けんりつ産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究所けんきゅうじょ[46] など、品質ひんしつ試験しけん機関きかんもある。

利用りよう[編集へんしゅう]

めしべを乾燥かんそうさせて、香辛料こうしんりょう生薬きぐすりとしてもちいる。乾燥かんそうさいには、風通かぜとおしのよい室内しつない陰干かげぼしにする。1グラムのサフランをるのに160ほどのはな必要ひつようであり、おさむりつひくいために貴重きちょうで、1グラムあたり500 - 1,000えん程度ていど高価こうかである。

香辛料こうしんりょう[編集へんしゅう]

めしべは独特どくとくかおりをち、みずかすとあざやかな黄色おうしょくていするため、みなみヨーロッパみなみアジア北部ほくぶ中央ちゅうおうアジア西にしアジアきたアフリカにかけて料理りょうり色付いろづけや風味ふうみけのための香辛料こうしんりょうとして使用しようされる。プロヴァンス地方ちほう名物めいぶつ料理りょうりブイヤベーススペイン料理りょうりパエリアミラノふうリゾットモロッコ料理りょうりクスクスインド料理りょうりサフランライスにはかせない。トルコサフランボルではそそいで「サフラン・ティー」としてまれている。

生薬きぐすり[編集へんしゅう]

生薬きぐすりとしてはばん紅花べにばな(ばんこうか、しげる紅花べにばなともく)とばれ、鎮静ちんせい鎮痛ちんつうつうけい作用さようがある(日本にっぽん薬局方やっきょくほうだいに「サフラン」の収録しゅうろく)。中国ちゅうごくでは西にし紅花べにばなぞう紅花べにばな生薬きぐすりとして流通りゅうつうしている。

動物どうぶつ実験じっけんでは、サフランの黄色おうしょく色素しきそであるカロテノイド一種いっしゅクロシン」の摂取せっしゅ大腸だいちょうがん予防よぼう効果こうかがあるとする研究けんきゅうもある[47]

安全あんぜんせい[編集へんしゅう]

着色ちゃくしょく風味ふうみけなどの通常つうじょう用途ようとで、食事しょくじから経口けいこう摂取せっしゅするりょうでは安全あんぜんとされている[14]。しかし、以下いか場合ばあいには注意ちゅうい必要ひつようである。

  • 堕胎だたい作用さよう子宮しきゅう収縮しゅうしゅく作用さようつうけい作用さよう注意ちゅうい必要ひつようである。「授乳じゅにゅうちゅう安全あんぜんせいについては充分じゅうぶん情報じょうほうがないため、けたほうがよい」[48]、「にんには禁忌きんきである」[49] との記述きじゅつもみられる。
  • 大量たいりょう摂取せっしゅ危険きけんわれており、5グラム以上いじょう摂取せっしゅするとおもあつ副作用ふくさようる。致死ちしりょうは12 - 20グラムである[48]
  • オリーブぞくオカヒジキぞくドクムギぞく植物しょくぶつ過敏かびんしょうがあるひとはアレルギー症状しょうじょう注意ちゅうい必要ひつようである[50]

2016ねんには日本にっぽんの4つの大学だいがく研究けんきゅうしゃたちが、サフランの色素しきそ成分せいぶんのクロシンには神経しんけい保護ほご作用さよう性質せいしつがあることを発見はっけんしている。また2018ねんにはアテネ国立こくりつカポディストリアン大学だいがくのアティコン大学だいがく病院びょういん血管けっかん外科げか部門ぶもん科学かがくしゃたちが、一連いちれん臨床りんしょう研究けんきゅうから、サフランにはこう炎症えんしょう物質ぶっしつふくまれており、この物質ぶっしつ高血圧こうけつあつ心臓しんぞうびょう主因しゅいんとなる動脈どうみゃくプラークの安定あんてい有効ゆうこうであることを確認かくにんした。[15]

ギャラリー[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 詳細しょうさいはISO 3632-1[33]およびどう2こう試験しけんほう[34]したがう。
  2. ^ Kiwi Saffron NZ しゃはニュージーランド国内こくない有機ゆうき栽培さいばい規格きかく取得しゅとく(オーガニック認定にんてい機関きかんBiogro認証にんしょう C3:生産せいさんしゃ登録とうろく番号ばんごう BG5722)、2014ねん食品しょくひん安全あんぜんほう適格てきかく(Food Safety 2014)を取得しゅとくしているという[37][38]。2018ねんにArtizan Award 認定にんてい応募おうぼ350けんからおわり選考せんこうのこった[39]
  3. ^ ISOでは標準ひょうじゅん機関きかん連携れんけいし、2013ねんのクリスマス休暇きゅうかわせて「ハッシュタグfakesunsafe campaign」としてSNS偽造ぎぞうひん啓発けいはつ運動うんどうおこなった[40]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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参考さんこう資料しりょう[編集へんしゅう]

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関連かんれん資料しりょう[編集へんしゅう]

書籍しょせき[編集へんしゅう]

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論文ろんぶんしゅう[編集へんしゅう]

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