アニス (過 か 泥 どろ 子 こ [6] ・遏泥子 こ [7] 、英 えい : anise、学名 がくめい : Pimpinella anisum )は、セリ科 か の一 いち 年 ねん 草 くさ 。古 ふる くから香料 こうりょう や薬草 やくそう として利用 りよう されてきた。原産地 げんさんち はアナトリア半島 はんとう 、ギリシア 、エジプト といった地中海 ちちゅうかい 東部 とうぶ 地域 ちいき である。
開花 かいか 期 き には花茎 かけい が伸 の びて高 たか さ50 cm ほどの高 たか さにまで成長 せいちょう する。種 たね のように見 み える果実 かじつ をアニス果 はて (別名 べつめい :アニシード 、aniseed)と呼 よ び、香辛料 こうしんりょう として用 もち いる。西洋 せいよう 茴香 ういきょう (セイヨウウイキョウ)と表示 ひょうじ されることもある。香 かお りの主成分 しゅせいぶん はアネトール であり、同 おな じ成分 せいぶん を持 も つフェンネル シード(ウイキョウ)、甘草 かんぞう (カンゾウ )と似 に た甘 あま い香 かお りがある。シキミ科 か の八角 はっかく (スターアニス)も同 おな じアネトールを含 ふく むが、アニスと植物 しょくぶつ 学 がく 上 うえ の類縁 るいえん 関係 かんけい にはない。八角 はっかく はアニスと似 に た味 あじ と香 かお りを持 も ち、より安価 あんか であるため、アニスの代 だい 用品 ようひん として使用 しよう されることがある。
果実 かじつ は長 なが さ5 mm程度 ていど で2つに結合 けつごう した心 しん 皮 がわ からなる双 そう 懸 かか 果 はて であり、強 つよ い芳香 ほうこう を持 も つ。地上 ちじょう に出 で ている部分 ぶぶん は若 わか いうちは野菜 やさい として食用 しょくよう にされる。茎 くき はセロリ と食 しょく 感 かん が似 に ており、香 かお りはアニシードよりもずっと弱 よわ い。
原産地 げんさんち は、アジア西部 せいぶ からヨーロッパ東部 とうぶ の地域 ちいき 。古代 こだい エジプト や古代 こだい ギリシア 、古代 こだい ローマ の時代 じだい から栽培 さいばい されていたといわれる。古代 こだい エジプトではミイラ を作 つく る際 さい の臭 にお い消 け しの一 ひと つとして用 もち いられた。エジプト最古 さいこ の医薬 いやく 書 しょ エーベルス・パピルス にもアニスが記載 きさい されている。
アニスは古代 こだい ギリシア の時代 じだい には主 しゅ として薬草 やくそう として扱 あつか われ、母乳 ぼにゅう の分泌 ぶんぴつ を促進 そくしん する、あるいは分泌 ぶんぴつ 期間 きかん を延 の ばすものと信 しん じられてきた。ローマ人 じん は胃 い のもたれを解消 かいしょう するため、アニスケーキを食 くえ した。そのほか、健胃剤 けんいざい 、駆虫 くちゅう 剤 ざい 、去痰 きょたん 剤 ざい 、歯磨 はみが き粉 こ の成分 せいぶん として使 つか われてきた。イーストン聖書 せいしょ 辞典 じてん (1897年 ねん )によると、新約 しんやく 聖書 せいしょ の「マタイによる福音 ふくいん 書 しょ 」23章 しょう 23節 せつ に出 で てくる「アニス」は、現在 げんざい ではイノンド(英名 えいめい ・ディル dill )と呼 よ ばれる植物 しょくぶつ を指 さ している。
ヨーロッパでは、カール大帝 たいてい が各地 かくち に作 つく った香料 こうりょう 植物 しょくぶつ 園 えん で9世紀 せいき 頃 ごろ から栽培 さいばい が始 はじ まっている。しかし、原産地 げんさんち から遠 とお いイギリス では栽培 さいばい が普及 ふきゅう せず、ヨーロッパから輸入 ゆにゅう されていた。その希少 きしょう さから1305年 ねん には特別 とくべつ な課税 かぜい の対象 たいしょう となった。集 あつ まった税金 ぜいきん はロンドン橋 きょう の修理 しゅうり のための資金 しきん となった。やがて、エジプトから種子 しゅし が入 はい るようになると、15-16世紀 せいき にはイギリスでも一般 いっぱん 家庭 かてい で栽培 さいばい され始 はじ めた[9] 。
16世紀 せいき のイギリスの本 ほん 草書 そうしょ である「バンクスの本 ほん 草書 そうしょ 」には「アニスは肝臓 かんぞう の機能 きのう 停止 ていし を防 ふせ ぎ、不快 ふかい なガスの排出 はいしゅつ を促 うなが し、主要 しゅよう な体液 たいえき の流 なが れを促進 そくしん する」とある。また、アニスを携帯 けいたい していれば邪 よこしま 視 し による災難 さいなん を避 さ けられる、といった魔 ま よけとしての効能 こうのう も持 も つと信 しん じられてきた[10] 。植民 しょくみん 地 ち 時代 じだい のアメリカ には、リウマチ の痛 いた みが収 おさ まるまでタバコにアニス油 ゆ とローズマリー 油 あぶら を混 ま ぜてパイプ で吹 ふ かすという、民間 みんかん 療法 りょうほう があった。
日本 にっぽん へは明治 めいじ 初年 しょねん に入 はい ったが、栽培 さいばい は見本 みほん 程度 ていど のものだと考 かんが えられている。
植物 しょくぶつ 学 がく 的 てき な特徴 とくちょう [ 編集 へんしゅう ]
一 いち 年生 ねんせい 草本 そうほん 。草丈 くさたけ は50センチメートル (cm) ほどになる。根 ね 出 で 葉 は は単葉 たんよう で、長 なが さ5 cmほどの長柄 ながえ があり、葉 は 身 み は円形 えんけい で不規則 ふきそく な鋸歯 きょし がある。根 ね 出 で 葉 は はセリ科 か 香辛料 こうしんりょう 野菜 やさい のなかでも唯一 ゆいいつ の例外 れいがい である。花茎 かけい につく葉 は は形 かたち が異 こと なり、葉脈 ようみゃく が2 - 3回 かい 分岐 ぶんき して、葉脈 ようみゃく にそって細長 ほそなが い葉 は 身 み がつき、先端 せんたん の葉 は は3出 で 複葉 ふくよう になる。複 ふく 散 ち 形 かたち 花序 かじょ をつけ、十 じゅう 数 すう 個 こ の白 しろ い小 しょう 花 はな をつけた小 しょう 散 ち が10個 こ ぐらいからなる。花 はな の花弁 はなびら は反 はん 巻 まき する。分 ぶん 果 はて は長 なが さ5ミリメートル (mm) ほどの長円 ちょうえん 筒 とう 形 がた で灰 はい 褐色 かっしょく をしている。
地中海 ちちゅうかい 沿岸 えんがん 、中部 ちゅうぶ ヨーロッパ 、小 しょう アジア 、インド 、メキシコ などの地域 ちいき で栽培 さいばい がおこなわれている。栽培 さいばい 適温 てきおん は20度 ど 前後 ぜんこう で、春 はる まき で育 そだ て、3月 がつ まきで100日 にち 前後 ぜんこう 、4 - 5月まきで70日 にち ほどで開花 かいか する。6月 がつ ごろにまくと、開花 かいか はするが果実 かじつ 不良 ふりょう になりやすい。播種 はしゅ は直播 じきまき し、間 あいだ 引 び き しながら育 そだ て、株間 かぶま を20 cm程度 ていど にする。苗 なえ をつくって移植 いしょく することも可能 かのう で、育苗 いくびょう 箱 ばこ に種 たね をまいて本 ほん 葉 は が2枚 まい 出 で たときに育苗 いくびょう ポット に鉢 はち 上 あ げし、本 ほん 葉 は が4枚 まい 揃 そろ った苗 なえ を定植 ていしょく する。ただし、他 た のセリ科 か 植物 しょくぶつ と同様 どうよう に移植 いしょく には弱 よわ いほうなので、大苗 おおなえ にならないようにする。開花 かいか が始 はじ まったころには支柱 しちゅう を立 た てて、倒伏 とうふく 防止 ぼうし とする。果実 かじつ の収穫 しゅうかく 時期 じき は、果実 かじつ が淡 あわ 褐色 かっしょく になってから行 おこな う。
果実 かじつ は独特 どくとく の甘 あま い香 かお りがあり、ケーキ やクッキー などの菓子 かし 類 るい やパン 、アブサン やウーゾ やイエーガーマイスター などのリキュール のほか、カレー や魚介 ぎょかい 類 るい 、鶏 にわとり などの料理 りょうり 、クリームスープ、ピクルス 、ソースにも使用 しよう される。時 とき には息 いき の香 かお りを良 よ くするためや、消化 しょうか 剤 ざい としてや、咳 せき や頭痛 ずつう を鎮 しず めるためにも用 もち いられる。
果実 かじつ は3%程度 ていど の精油 せいゆ を含 ふく み、水蒸気 すいじょうき 蒸留 じょうりゅう することで揮発 きはつ 性 せい のアニス油 ゆ が得 え られ、香料 こうりょう としてリキュールに加 くわ えたり、他 た の飲料 いんりょう に用 もち いたりする。そのほか、少量 しょうりょう を腹 はら の張 は りや子供 こども の疝痛 せんつう (発作 ほっさ 性 せい の腹痛 はらいた )の治療 ちりょう 薬 やく として使 つか うことがある。アニス油 ゆ は沸点 ふってん 210℃の黄色 おうしょく の液体 えきたい で、成分 せいぶん は90%程度 ていど がアネトール である。そのほか、メチャビルコール 、アニスケトン 、カビコール 、アニスアルデヒド 、アニス酸 さん 、テルペン などを含 ふく む。
生葉 いくは も香 かお りがよいので、サラダ などに利用 りよう する。
食用 しょくよう 以外 いがい ではポプリ の作成 さくせい や入浴 にゅうよく 剤 ざい 、狩猟 しゅりょう 犬 けん の訓練 くんれん 、ネズミ捕 ねずみと り の餌 えさ などに利用 りよう される。
^ 米倉 よねくら 浩司 こうじ 『高等 こうとう 植物 しょくぶつ 分類 ぶんるい 表 ひょう 』(重版 じゅうはん )北 きた 隆 たかし 館 かん 、2010年 ねん 。ISBN 978-4-8326-0838-2 。
^ 大場 おおば 秀章 ひであき (編著 へんちょ )『植物 しょくぶつ 分類 ぶんるい 表 ひょう 』(第 だい 2刷 さつ )アボック社 しゃ 、2010年 ねん 。ISBN 978-4-900358-61-4 。
^ a b c 米倉 よねくら 浩司 こうじ ・梶田 かじた 忠 ただし (2003-). “Pimpinella anisum L. ”. BG Plants 和名 わみょう −学名 がくめい インデックス(YList) . 2012年 ねん 7月 がつ 3日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Missouri Botanical Garden . “Pimpinella anisum L. ”. Tropicos . 2012年 ねん 7月 がつ 3日 にち 閲覧 えつらん 。
^ IPNI . “Pimpinella anisum L. ”. 2012年 ねん 7月 がつ 3日 にち 閲覧 えつらん 。
^ 平凡社 へいぼんしゃ 編 へん 「アニス」『大 だい 辞典 じてん 』第 だい 一 いち 巻 かん 、平凡社 へいぼんしゃ 、1994年 ねん 、415頁 ぺーじ 。
^ 三省堂 さんせいどう 百科 ひゃっか 辞書 じしょ 編輯 へんしゅう 部 ぶ 編 へん 「アニス」『新 あたらし 修 おさむ 百科辞典 ひゃっかじてん 』 三省堂 さんせいどう 、1934年 ねん 、65頁 ぺーじ 。
^ 武政 たけまさ 三男 みつお 『スパイス&ハーブ辞典 じてん 』、文園 ふみぞの 社 しゃ 、1997年 ねん 、pp31-33
^ マーガレット・B・フリーマン著 ちょ 遠山 とおやま 茂樹 しげき 訳 やく 『西洋 せいよう 中世 ちゅうせい ハーブ事典 じてん 』、八坂 やさか 書房 しょぼう 、2009年 ねん 、pp50-51
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