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血管けっかん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
血管けっかん
blood vessel
ヒトおも血管けっかん
ラテン語らてんご vas sanguineum
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血管けっかん(けっかん、blood vessel)は、血液けつえき身体しんたい各所かくしょおく血液けつえき循環じゅんかん通路つうろとなるかん全身ぜんしん酸素さんそ栄養分えいようぶん老廃ろうはいぶつ体温たいおん恒温動物こうおんどうぶつ場合ばあい)、水分すいぶんはこぶ。血管けっかんなか血液けつえき規則きそくてきおくるための筋肉きんにく構造こうぞうがある場合ばあい、これを心臓しんぞうという。血管けっかんちゅう血液けつえきながれる方向ほうこう普通ふつう一定いっていしている。脊椎動物せきついどうぶつ血管けっかん心臓しんぞうから血液けつえきおく動脈どうみゃく心臓しんぞうもど血液けつえきおく静脈じょうみゃく、そしてそれぞれの末端まったんほそ動脈どうみゃくほそ静脈じょうみゃく)をつなぐ毛細血管もうさいけっかんからなる。

解剖かいぼうがくてき観察かんさつ

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動脈どうみゃく静脈じょうみゃく毛細血管もうさいけっかんとう図解ずかい

毛細血管もうさいけっかんでは血管けっかん内皮ないひのみからなる。内皮ないひたんそう扁平へんぺい上皮じょうひちゅう胚葉はいよう由来ゆらいの1そう内皮ないひ細胞さいぼうでできている[1]動脈どうみゃく静脈じょうみゃくかべうちまくちゅうまくそとまくの3そうかれている[2]もっと内側うちがわにあり内皮ないひとわずかな結合けつごう組織そしきからなる。動脈どうみゃくにおいてよく発達はったつしておりうちまく内側うちがわにあって血管けっかん平滑へいかつすじ弾性だんせい線維せんいにかわげん線維せんいからなるなかまく、そのまわりにあり被膜ひまくじょううとせい結合けつごう組織そしきからなるそうそとまく区別くべつされる[1]静脈じょうみゃくではちゅうまくがあまり発達はったつしていない。そとまくには筋肉きんにくそうつながる神経しんけいがある。おおきい血管けっかんであれば栄養えいよう供給きょうきゅうよう毛細血管もうさいけっかん栄養えいよう血管けっかん[2])もある。

ヒト成人せいじん血管けっかんすべっすぐにつなげるとおよそ10まんkm(地球ちきゅう赤道あかみちやく2.5しゅうするするながさ)におよぶ。

生理学せいりがくてき観察かんさつ

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血管けっかん能動のうどうてき血液けつえき輸送ゆそうはしない(感知かんちできるほど蠕動ぜんどう運動うんどうはしない)が、動脈どうみゃく(ある程度ていどなら静脈じょうみゃくも)は自律じりつ神経しんけいによるすじそう収縮しゅうしゅくによってその内径ないけい調節ちょうせつし、下流かりゅう臓器ぞうきへのりょうえることができる。血管けっかん拡張かくちょう血管けっかん狭窄きょうさく体温たいおん調節ちょうせつのようにたがいに拮抗きっこうてきはたらく。

酸素さんそ赤血球せっけっきゅうヘモグロビン結合けつごう)は血液けつえきによってはこばれるもっと重要じゅうよう物質ぶっしつひとつである。はい動脈どうみゃくのぞすべての動脈どうみゃくでは、ヘモグロビンはほとんど(95-100%)酸素さんそ飽和ほうわしている。一方いっぽうはい静脈じょうみゃくのぞすべての静脈じょうみゃくではやく70%ほどに飽和ほうわするが、はい循環じゅんかん経由けいゆでこのもどされる。

血管けっかんける血圧けつあつ通例つうれい水銀柱すいぎんちゅうミリメートルあらわされる。

動脈どうみゃく静脈じょうみゃく

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心臓しんぞうからおくされる血液けつえきとおるのが動脈どうみゃく心臓しんぞうもど血液けつえきとおるのが静脈じょうみゃくである。また、動脈どうみゃくには弾性だんせいがた動脈どうみゃくすじがた動脈どうみゃく存在そんざいする[1]動脈どうみゃく静脈じょうみゃくは、基本きほんてきにはおなじような構造こうぞうであるが、動脈どうみゃくには心臓しんぞうからのつよ圧力あつりょくがかかるため、かべ非常ひじょうあつくなっている。静脈じょうみゃくでは、そのような圧力あつりょくがかからないので、かべうすくなっているほか、逆流ぎゃくりゅうしないようにべんいている。ふと動脈どうみゃくにはおおきい圧力あつりょくがかかっているため、かりきずによって体外たいがいひらいた場合ばあい出血しゅっけつりょう非常ひじょうおおくなり、失血死しっけつし危険きけんおおきい。そのため、大抵たいてい場合ばあい静脈じょうみゃくからだ表側おもてがわとおり、動脈どうみゃくはより内側うちがわとおる。

動脈どうみゃくとお血液けつえき動脈血どうみゃくけつ静脈じょうみゃくとお血液けつえき静脈じょうみゃくという。例外れいがい心臓しんぞうからはいへのはい動脈どうみゃくはいから心臓しんぞうへはいるはい静脈じょうみゃく場合ばあいはい循環じゅんかん)であり、はい動脈どうみゃく静脈じょうみゃくとおり、はい静脈じょうみゃく動脈血どうみゃくけつとおる。 陸上りくじょう脊椎動物せきついどうぶつにおいてこのふたつのちがいは、おも酸素さんそ含有がんゆうりょうであり、動脈血どうみゃくけつ酸素さんそおおふくみ(酸素さんそヘモグロビンのりつたかく)、血液けつえきあざやかな赤色あかいろをしている。静脈じょうみゃく酸素さんそうしなっているため、かぎりなくくろちか赤色あかいろになっている。

血管けっかんけい

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おおくの動物どうぶつでは、血管けっかん全身ぜんしんわたってたがいにつながり、血管けっかんけいあるいは循環じゅんかんけいをなす。血管けっかんけい動物どうぶつ分類ぶんるいぐんにより構成こうせいことなり、開放かいほう血管けっかんけい閉鎖へいさ血管けっかんけいの2種類しゅるいがある。

開放かいほう血管けっかんけい

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動脈どうみゃく静脈じょうみゃくからなる。心臓しんぞうからつながる動脈どうみゃくからだ各部かくぶびて、そこでくちひらく。動脈どうみゃくからなが血液けつえきは、直接ちょくせつ細胞さいぼうあいだ経由けいゆし(毛細血管もうさいけっかんがない)、静脈じょうみゃくもどる。昆虫こんちゅうなどの節足動物せっそくどうぶつ軟体動物なんたいどうぶつなどの動物どうぶつぐんにみられる。

たんそう扁平へんぺい血管けっかん内皮ないひ裏打うらうちされる。

閉鎖へいさ血管けっかんけい

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動脈どうみゃく静脈じょうみゃく毛細血管もうさいけっかんからなる。動脈どうみゃくからなが血液けつえきは、毛細血管もうさいけっかん静脈じょうみゃくもどる。血液けつえき血管けっかんないじこめられている。血漿けっしょうリンパだま血管けっかんかべからて、周囲しゅうい細胞さいぼう細胞さいぼうとのあいだめる組織そしきえきとして、血液けつえき細胞さいぼうとのあいだ物質ぶっしつ運搬うんぱんなどをになう。脊索せきさく動物どうぶつ(ただし一部いちぶはらさく動物どうぶつのぞく)、たまきがた動物どうぶつられる。当然とうぜんながらヒトも閉鎖へいさ血管けっかんけいである。

血管けっかんかんする医学いがく

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血管けっかん外傷がいしょう様々さまざま疾患しっかん見舞みまわれ、外傷がいしょうによる大量たいりょう出血しゅっけつ重要じゅうよう血管けっかん破裂はれつまたはふさがせん狭窄きょうさく死亡しぼうにつながることもある(のう血管けっかん障害しょうがい大動脈だいどうみゃく解離かいりなど)。循環じゅんかんよりさらにとくした血管けっかんもうけている医療いりょう機関きかんもある[3]

内圧ないあつひく破裂はれつこしにくいため関連かんれん疾患しっかんはほとんどの場合ばあい、その狭窄きょうさくかんするものである。静脈じょうみゃく圧迫あっぱくする典型てんけいてき原因げんいん大動脈だいどうみゃく拡張かくちょう妊娠にんしんによる子宮しきゅう拡大かくだい腹部ふくぶ悪性あくせい腫瘍しゅよう大腸だいちょうがんじん細胞さいぼうがん卵巣らんそうがん)がある。まれに排便はいべんのいきみで下大しもおお静脈じょうみゃくりゅうわるくなり失神しっしんすることがある[4]

下大しもおお静脈じょうみゃく閉塞へいそくまれであるが、いのちにかかわり緊急きんきゅうせいたかいとされる。深部しんぶ静脈じょうみゃく血栓けっせんしょうかん移植いしょく大腿だいたい静脈じょうみゃくカテーテルなどの医療いりょう器具きぐ閉塞へいそくこすことがある[5]

人工じんこう血管けっかん

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動脈どうみゃく硬化こうかしょうなどにより機能きのうしなくなった血管けっかんえ、血管けっかんバイパス手術しゅじゅつのために人工じんこう血管けっかん開発かいはつされており、1950年代ねんだいからヒトの治療ちりょう実用じつようされている[6]

ステントグラフト

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ステントグラフトとは、19世紀せいきのイギリスの歯科しかCharles R. Stent由来ゆらいし、ステントといわれるバネじょう金属きんぞくけた人工じんこう血管けっかんである。それをもちいたステントグラフトない挿術は、大動脈だいどうみゃくこぶ大動脈だいどうみゃく解離かいり治療ちりょう方法ほうほうの1つである。この治療ちりょう特徴とくちょうは、必要ひつよう切開せっかいちいさくすることができ、所要しょよう時間じかんみじかい。そのため、手術しゅじゅつ患者かんじゃ身体しんたいにかかる負担ふたんおさえられる。しかし、術後じゅつごからエンドリークという血液けつえき血漿けっしょう漏出ろうしゅつによるこぶないながれる現象げんしょう出現しゅつげんすることがある。[7]エンドリークには、早急そうきゅう治療ちりょう必要ひつようとするものもあり、綿密めんみつなフォローアップが重要じゅうようである。ステントグラフトの素材そざいは、うす加工かこうができるかつ強度きょうどたもたれるポリエステルおお使用しようされる。[8]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c 岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』p.399d「血管けっかん
  2. ^ a b 『カラー図解ずかい 人体じんたい解剖かいぼう基本きほんがわかる事典じてん』p.140
  3. ^ 血管けっかんへようこそ 国立こくりつ研究けんきゅう開発かいはつ法人ほうじん国立こくりつ循環じゅんかんびょう研究けんきゅうセンター(2022ねん6がつ17にち閲覧えつらん
  4. ^ Brophy CM, Evans L, Sumpio BE. Defecation syncope secondary to functional inferior vena caval obstruction during a Valsalva maneuver. Ann Vasc Surg. 1993 Jul;7(4):374-7. PMID 8268080.
  5. ^ Geehan DM, Inferior Vena Caval Thrombosis, emedicine.com, URL: http://www.emedicine.com/med/topic2718.htm, Accessed: August 3, 2005.
  6. ^ 【Tech X】大動脈だいどうみゃく手術しゅじゅつ1かい半減はんげん テルモ、「混合こんごうがた人工じんこう血管けっかんで『日経にっけい産業さんぎょう新聞しんぶん』2022ねん6がつ7にち16めん
  7. ^ 腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃくこぶのステンドグラフト治療ちりょう,『杏林きょうりん会誌かいし』,p176
  8. ^ 人工じんこう血管けっかん進歩しんぽ人工じんこう臓器ぞうき-人工じんこう臓器ぞうき進歩しんぽ-』,p177

参考さんこう文献ぶんけん

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  • いわおいさお倉谷くらたにしげる斎藤さいとうしげる也・塚谷つかたに裕一ひろいち へん岩波いわなみ生物せいぶつがく辞典じてん』(だい5はん岩波書店いわなみしょてん、2013ねんISBN 4-00-080314-X 
  • 竹内たけうち修二しゅうじ 監修かんしゅう『カラー図解ずかい 人体じんたい解剖かいぼう基本きほんがわかる事典じてん西東さいとうしゃ、2012ねんISBN 978-4-7916-1834-7 
  • 幸田こうだ洋二郎ようじろう岡田おかだ健次けんじ人工じんこう血管けっかん進歩しんぽ人工じんこう臓器ぞうき-人工じんこう臓器ぞうき進歩しんぽ-』』2021ねん、175-178ぺーじ 
  • 布川ふかわ雅雄まさお腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃくこぶのステンドグラフト治療ちりょう杏林きょうりん会誌かいし』』2015ねん、173-180ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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