(Translated by https://www.hiragana.jp/)
リンパ球 - Wikipedia コンテンツにスキップ

リンパだま

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
リンパだま
Lymphocyte
単一たんいつのヒトリンパだま走査そうさがた電子でんし顕微鏡けんびきょう(SEM)画像がぞう
概要がいよう
表記ひょうき識別しきべつ
ラテン語らてんご lymphocytus
MeSH D008214
TH H2.00.04.1.02002
FMA 62863、84065
解剖かいぼうがく用語ようご

リンパだま(リンパきゅう、えい: lymphocyte)は、脊椎動物せきついどうぶつ免疫めんえきけいにおける白血球はっけっきゅうのサブタイプのひとつである。リンパだまにはナチュラルキラー細胞さいぼう(NK細胞さいぼうとも、自然しぜん免疫めんえき獲得かくとく免疫めんえき細胞さいぼうせい免疫めんえき細胞さいぼう傷害しょうがいせいにおいて機能きのうする)、T細胞さいぼう自然しぜん免疫めんえき獲得かくとく免疫めんえきえきせい免疫めんえき細胞さいぼうせい免疫めんえき細胞さいぼう傷害しょうがいせいにおいて機能きのうする)、B細胞さいぼう獲得かくとく免疫めんえきえきせい免疫めんえき抗体こうたいさんせいになう)がある。これらはリンパなかられる主要しゅよう細胞さいぼうしゅであり、そこからリンパだまばれる。

種類しゅるい

[編集へんしゅう]
赤血球せっけっきゅうかこまれた染色せんしょくされたリンパだま光学こうがく顕微鏡けんびきょうもちいて観察かんさつ

リンパだまの3つの主要しゅよう種類しゅるいは、T細胞さいぼうB細胞さいぼうナチュラルキラー細胞さいぼう(NK細胞さいぼう)である。リンパだまはそれらのおおきなかくによって同定どうていすることができる。

T細胞さいぼうおよびB細胞さいぼう

[編集へんしゅう]

T細胞さいぼう胸腺きょうせんthymus由来ゆらい)およびB細胞さいぼう骨髄こつづいbone marrowあるいはファブリキウス嚢bursa of Fabricius由来ゆらい)は適応てきおう免疫めんえき応答おうとう主要しゅよう細胞さいぼう成分せいぶんである。T細胞さいぼうとB細胞さいぼう機能きのうは、抗原こうげん提示ていじばれる過程かていあいだ特異とくいてきな「自己じこ抗原こうげん認識にんしきすることである。抗原こうげん侵入しんにゅうしゃであると同定どうていされば、これらの細胞さいぼう特定とくてい病原びょうげんたいまたは病原びょうげんたい感染かんせんされた細胞さいぼう最大限さいだいげん排除はいじょするよう仕立したてられた特異とくいてき応答おうとうす。B細胞さいぼうは、大量たいりょう抗体こうたい生産せいさんし、細菌さいきんやウイルスのような異物いぶつ中和ちゅうわすることによって病原びょうげんたい応答おうとうする。病原びょうげんたい応答おうとうして、「ヘルパーT細胞さいぼう」とばれる一部いちぶのT細胞さいぼう免疫めんえき応答おうとう指示しじするサイトカイン生産せいさんするのにたいして、「細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう」とばれるべつのT細胞さいぼう病原びょうげんたい感染かんせん細胞さいぼう誘導ゆうどうする強力きょうりょく酵素こうそふく顆粒かりゅう英語えいごばん生産せいさんする。活性かっせい、B細胞さいぼうとT細胞さいぼうは、「メモリー細胞さいぼう」のかたち自身じしん遭遇そうぐうした抗原こうげん持続じぞくてき遺産いさんのこす。動物どうぶつ一生いっしょうつうじて、これらのメモリー細胞さいぼう遭遇そうぐうした個々ここ特異とくいてき病原びょうげんたいを「記憶きおく」し、その病原びょうげんたいふたた検出けんしゅつされれば強力きょうりょくかつ素早すばや応答おうとう開始かいしすることができる。

ナチュラルキラー細胞さいぼう

[編集へんしゅう]

NK細胞さいぼう自然しぜん免疫めんえきけい一部いちぶであり、腫瘍しゅようおよびウイルス感染かんせん細胞さいぼうからの宿主しゅくしゅ防御ぼうぎょにおいて主要しゅよう役割やくわりたす。NK細胞さいぼうはMHC(主要しゅよう組織そしき適合てきごう遺伝子いでんしふく合体がったいクラスIばれる表面ひょうめん分子ぶんし変化へんか認識にんしきすることによって、正常せいじょう細胞さいぼうおよび感染かんせん細胞さいぼうから感染かんせん細胞さいぼうおよび腫瘍しゅよう区別くべつする。NK細胞さいぼうインターフェロンばれるサイトカインのファミリーに応答おうとうして活性かっせいされる。活性かっせいされたNK細胞さいぼう細胞さいぼう傷害しょうがいせい顆粒かりゅう放出ほうしゅつし、変化へんかした細胞さいぼう破壊はかいする[1]。「ナチュラルキラー細胞さいぼう」という名称めいしょうは、MHCクラスIを細胞さいぼうころすために事前じぜん活性かっせい必要ひつようとしないことからけられた。

発生はっせい

[編集へんしゅう]
血液けつえき細胞さいぼう発生はっせい

哺乳類ほにゅうるいみき細胞さいぼう骨髄こつづいうち複数ふくすう血液けつえき細胞さいぼうへと分化ぶんかする[2]。この過程かてい造血ぞうけつばれる。すべてのリンパだま共通きょうつうのリンパ前駆ぜんく細胞さいぼう起源きげんである。リンパだま分化ぶんか様々さまざま経路けいろしたがう。リンパだま形成けいせいリンパだま造血ぞうけつ英語えいごばんばれる。B細胞さいぼう鳥類ちょうるいにおけるファブリキウス嚢(ちょうパイエルばん位置いちするとかんがえられている)の等価とうか器官きかん(ヒトでは腸管ちょうかん関連かんれんリンパ組織そしき)においてBリンパだまへと成熟せいじゅくする[3]のにたいして、T細胞さいぼう胸腺きょうせんばれることなる器官きかんへと移動いどうし、成熟せいじゅくする。成熟せいじゅく、リンパだま循環じゅんかんおよび末梢まっしょうリンパけい器官きかんたとえば脾臓ひぞうおよびリンパぶし)へはいり、侵入しんにゅうする病原びょうげんたい腫瘍しゅよう細胞さいぼう検査けんさする。

適応てきおう免疫めんえき関与かんよするリンパだま(すなわちB細胞さいぼうおよびT細胞さいぼう)は、抗原こうげん暴露ばくろされたのちでさらに分化ぶんかし、エフェクターならびにメモリーリンパだま形成けいせいする。エフェクターリンパだまは、抗体こうたい(B細胞さいぼう場合ばあい)、細胞さいぼう傷害しょうがいせい顆粒かりゅう細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう)を放出ほうしゅつすることによって、または免疫めんえきけいほか細胞さいぼうへとシグナルを伝達でんたつする(ヘルパーT細胞さいぼう)ことによって抗原こうげん排除はいじょするために機能きのうする。メモリーT細胞さいぼう末梢まっしょう組織そしきおよび循環じゅんかんけい長期間ちょうきかんまり、将来しょうらいおな抗原こうげん暴露ばくろされたとき応答おうとうするためにそなえる。メモリーT細胞さいぼうすう週間しゅうかんすうねん一生いっしょう生存せいぞんし、これは白血球はっけっきゅうくらべて非常ひじょうなが[よう出典しゅってん]

特徴とくちょう

[編集へんしゅう]
ヒトの正常せいじょう循環じゅんかん血液けつえき走査そうさがた電子でんし顕微鏡けんびきょう画像がぞう赤血球せっけっきゅうリンパだまたんたまこうちゅうだまふく白血球はっけっきゅうおおくのちいさな血小板けっしょうばんしめされている。

ライト染色せんしょくされた末梢まっしょう塗抹とまつ標本ひょうほん英語えいごばん顕微鏡けんびきょうてきると、正常せいじょうなリンパだま大型おおがたで、くら染色せんしょくされたかくち、こう酸性さんせい細胞さいぼうしつ皆無かいむかそれにちかい。正常せいじょう状態じょうたいでは、リンパだまあらく、みつかく赤血球せっけっきゅうおおきさにちかい(直径ちょっけいやく7 μみゅーm)[2]一部いちぶのリンパだまかく周囲しゅういにクリアなかく近傍きんぼう領域りょういき(ハロ)をしめすか、かく片側かたがわちいさくクリアな領域りょういきしめす。ポリリボソームはリンパだまにおける際立きわだった特徴とくちょうであり、電子でんし顕微鏡けんびきょう使つかってることができる。リボソームタンパク質たんぱくしつ合成ごうせい関与かんよし、これらの細胞さいぼうにおける大量たいりょうサイトカインおよび免疫めんえきグロブリン生成せいせい可能かのうにする。

末梢まっしょう塗抹とまつ標本ひょうほんにおいてT細胞さいぼうとB細胞さいぼう区別くべつすることは不可能ふかのうである[2]通常つうじょうフローサイトメトリー検査けんさ特定とくていのリンパだますう計数けいすう使つかわれる。フローサイトメトリーをもちいることで、免疫めんえきグロブリンまたは分化ぶんか抗原こうげんぐん(CD)マーカーといった特異とくいてき細胞さいぼう表面ひょうめんタンパク質たんぱくしつ固有こゆう組合くみあわせをふくむリンパだままたは特有とくゆうタンパク質たんぱくしつたとえば、細胞さいぼうないサイトカイン染色せんしょく使用しようしてサイトカイン)を生産せいさんするリンパだま割合わりあい特異とくいてき決定けっていすることができる。リンパだま生成せいせいするタンパク質たんぱくしつもとづいてリンパだま機能きのう研究けんきゅうするため、ELISPOT英語えいごばん分泌ぶんぴつ測定そくてい英語えいごばんのような手法しゅほう使つかうことができる[1]

リンパだま典型てんけいてき識別しきべつマーカー[4]
分類ぶんるい 機能きのう 比率ひりつ 表現ひょうげんがたマーカー
NK細胞さいぼう ウイルス感染かんせん細胞さいぼうおよび腫瘍しゅよう細胞さいぼう溶解ようかい 7% (2-13%) CD16CD56、しかしCD3陰性いんせい
ヘルパーT細胞さいぼう 免疫めんえき細胞さいぼう制御せいぎょするサイトカインおよび成長せいちょう因子いんし放出ほうしゅつ 46% (28-59%) TCRαあるふぁβべーたCD3CD4
細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう ウイルス感染かんせん細胞さいぼう腫瘍しゅよう細胞さいぼう同種どうしゅ移植いしょくへん溶解ようかい 19% (13-32%) TCRαあるふぁβべーたCD3CD8
γがんまδでるたT細胞さいぼう 免疫めんえき制御せいぎょ細胞さいぼう傷害しょうがい 5% (2%-8%) TCRγがんまδでるたCD3
B細胞さいぼう 抗体こうたい分泌ぶんぴつ 23% (18-47%) MHCクラスIICD19CD21

循環じゅんかんけいにおいて、リンパだまリンパぶしからリンパぶしへと移動いどうする。これは、むしろリンパぶしからうごかないマクロファージ対照たいしょうてきである。

リンパだま病気びょうき

[編集へんしゅう]

リンパだま計数けいすう大抵たいてい末梢まっしょうぜん血球けっきゅう計算けいさん一部いちぶであり、計数けいすうされた白血球はっけっきゅう総数そうすうたいするリンパだまのパーセンテージであらわされる。

リンパだまかず一般いっぱんてき増加ぞうかリンパだまぞうしょうばれる。それにたいして低下ていかリンパだま減少げんしょうしょうである。

たかいリンパだま濃度のうど

[編集へんしゅう]

リンパだま濃度のうど増加ぞうか大抵たいてい、ウイルス感染かんせん兆候ちょうこうである(まれではあるが、リンパだますう異常いじょう増加ぞうかから白血病はっけつびょうつかることがある)。たかいリンパだますうひくこうちゅうだまかずリンパ腫りんぱしゅによってこされているかもしれない。以前いぜんはリンパだま増加ぞうか促進そくしん因子いんしばれていた百日咳ひゃくにちぜき毒素どくそはリンパぶしへのリンパだま流入りゅうにゅう低下ていかさせ、これによってリンパだま増加ぞうかしょうばれる症状しょうじょうぜんリンパだますう大人おとなでは >4,000/μみゅーL、子供こどもでは >8,000/μみゅーL)がもたらされる。これは、おおくの細菌さいきん感染かんせんではわりにこうちゅうだま優位ゆういしめされるというてん特有とくゆうである。

ひくいリンパだま濃度のうど

[編集へんしゅう]

ひくいリンパだま濃度のうどは、外科げか手術しゅじゅつあるいは外傷がいしょう感染かんせんリスクの増大ぞうだい関連かんれんしている。

ひくいT細胞さいぼうリンパだまひとつの原因げんいんは、ヒト免疫めんえき不全ふぜんウイルス(HIV)がT細胞さいぼうとくにTリンパだまCD4+サブグループ)に感染かんせん破壊はかいしたときこる。これらのT細胞さいぼう提供ていきょうする重要じゅうよう防御ぼうぎょなしでは、人体じんたい日和見ひよりみ感染かんせんしやすくなる。HIVの進行しんこう程度ていど患者かんじゃ血液けつえきちゅうのCD4+ T細胞さいぼう割合わりあい計測けいそくすることによって決定けっていされる。HIV感染かんせん最終さいしゅうてきには後天こうてんせい免疫めんえき不全ふぜん症候群しょうこうぐん(AIDS)へと進行しんこうする。そののウイルスまたはリンパだま疾患しっかん影響えいきょうは、血液けつえきちゅう存在そんざいするリンパだまかずかぞえることによって見積みつもることもできる。

腫瘍しゅよう浸潤しんじゅんせいリンパだま

[編集へんしゅう]

一部いちぶのがん(たとえばメラノーマ大腸だいちょうがん)では、リンパだま腫瘍しゅようへと移動いどうし、攻撃こうげきすることができる。これによって原発げんぱつ腫瘍しゅよう退すさちぢみこされうる。

血液けつえき成分せいぶん

[編集へんしゅう]
白血球はっけっきゅう血液けつえき検査けんさ参考さんこう基準きじゅん。リンパだまあおしめされている。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b Janeway, Charles; Paul Travers; Mark Walport; Mark Shlomchik (2001). Immunobiology; Fifth Edition. New York and London: Garland Science. ISBN 0-8153-4101-6. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?call=bv.View..ShowTOC&rid=imm.TOC&depth=10 .
  2. ^ a b c Abbas AK; Lichtman AH (2003). Cellular and Molecular Immunology (5th ed.). Saunders, Philadelphia. ISBN 0-7216-0008-5 
  3. ^ Kumar, Abbas Fausto. Pathologic Basis of Disease (7th ed.) 
  4. ^ Berrington, J. E.; Barge, D; Fenton, AC; Cant, AJ; Spickett, GP (May 2005). “Lymphocyte subsets in term and significantly preterm UK infants in the first year of life analysed by single platform flow cytometry”. Clin Exp Immunol 140 (2): 289–292. doi:10.1111/j.1365-2249.2005.02767.x. PMC 1809375. PMID 15807853. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1809375/. 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]