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ナチュラルキラーT細胞さいぼう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ナチュラルキラーT細胞さいぼう(ナチュラルキラーティーさいぼう、NKT細胞さいぼう)は、T細胞さいぼうなかでも、T細胞さいぼうナチュラルキラー細胞さいぼう(NK細胞さいぼう)の両方りょうほう特徴とくちょうぐんのことである。おおくのものは自己じこ、または他家たけ由来ゆらい脂質ししつとう脂質ししつ結合けつごうする抗原こうげん提示ていじ分子ぶんしであるCD1d認識にんしきする。NKT細胞さいぼう末梢まっしょうちゅうのT細胞さいぼうのわずか0.1%程度ていどである[1]

命名めいめい

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「NK T細胞さいぼう」という表現ひょうげん最初さいしょ、マウスのT細胞さいぼうのうち、NK細胞さいぼう関連かんれんマーカーであるNK1.1 (CD161) を発現はつげんしているぐん定義ていぎするためにもちいられた。現在げんざいではマウスやヒトでみられる、T細胞さいぼう受容じゅようたい(TCR)のうちVαあるふぁくさり不変ふへん(インバリアント)なセミインバリアントTCRをつものや、NK細胞さいぼうマーカーをつものをふくむ、CD1d拘束こうそくせいT細胞さいぼう集団しゅうだん単語たんごとして「NKT細胞さいぼう」という表現ひょうげん一般いっぱんてきもちいられる[2]

表面ひょうめん分子ぶんし

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NKT細胞さいぼうはT細胞さいぼう一種いっしゅであり、αあるふぁβべーたTCRを発現はつげんしているが、さらにほかにも数々かずかずのNK細胞さいぼう典型てんけいてきなNK1.1などの分子ぶんしマーカーを発現はつげんしている。もっともよくられたNKT細胞さいぼう集団しゅうだん定型ていけいてきなT細胞さいぼうと、TCRの多様たようせいかぎられているというてんことなっている(インバリアントNKT細胞さいぼう、もしくは1がたNKT細胞さいぼう)。1がたNKT細胞さいぼうのCD1d拘束こうそくせいT細胞さいぼう(2がたNKT細胞さいぼう)はペプチド-MHCふく合体がったいより、抗原こうげん提示ていじ分子ぶんしぐんの1つ、CD1ファミリーにぞくすCD1d分子ぶんしにより提示ていじされる脂質ししつとう脂質ししつ認識にんしきする(これがCD1d拘束こうそくせいといわれる理由りゆうである)。そのため、NKT細胞さいぼう結核けっかくきんのような微生物びせいぶつ由来ゆらいするとう脂質ししつ認識にんしきするじょう重要じゅうようである。NKT細胞さいぼう当初とうしょはNK1.1を発現はつげんするT細胞さいぼうとして名付なづけられたが、現在げんざい定義ていぎじょうはNK1.1が陽性ようせいのものも陰性いんせいのものもふくみ、CD4CD8についても陽性ようせい陰性いんせい両方りょうほうのものをふくむ。また、CD16、CD56を発現はつげんし、グランザイムさんせいするなど、NKT細胞さいぼうはNK1.1のほかにもNK細胞さいぼう共通きょうつう特徴とくちょう[3][4]。1がたNKT細胞さいぼうはPLZFを大量たいりょう発現はつげんしており、かつ1がたNKT細胞さいぼう分化ぶんかはPLZFに依存いぞんしている[5][6]

分類ぶんるい

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NKT細胞さいぼうは3つの集団しゅうだん分類ぶんるいできる。[2]

1がたNKT細胞さいぼう 2がたNKT細胞さいぼう NKTさま細胞さいぼう
別称べっしょう 古典こてんてきNKT細胞さいぼう
インバリアントNKT細胞さいぼう (iNKT細胞さいぼう)
Vαあるふぁ14i NKT細胞さいぼう (マウス)
Vαあるふぁ24i NKT細胞さいぼう (ヒト)
古典こてんてきNKT細胞さいぼう
多様たようNKT細胞さいぼう
NK1.1+ T細胞さいぼう
CD3+ CD56+ T細胞さいぼう
拘束こうそく分子ぶんし CD1d CD1d MHC、その?
αあるふぁ-GalCer
反応はんのうせい
+ - -
TCRレパートリー Vαあるふぁ14-Jαあるふぁ18:
Vβべーた8.2, 7, 2(マウス)
Vαあるふぁ24-Jαあるふぁ18:
Vβべーた11 (ヒト)
多様たよう 多様たよう

iNKT細胞さいぼう

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もっともよくられたCD1d拘束こうそくせいのNKT細胞さいぼうはインバリアントなTCRαあるふぁくさりっている。上述じょうじゅつとおり、これらの細胞さいぼうは1がたNKT細胞さいぼう、もしくはiNKT細胞さいぼう表現ひょうげんされる。これらの細胞さいぼうはヒトとマウスのあいだ保存ほぞんされており、おおくの免疫めんえきがくてきプロセスに関与かんよしている。マウスの実験じっけんにおいて初期しょき発生はっせいにおける微生物びせいぶつ暴露ばくろ欠損けっそんはiNKT細胞さいぼう不足ふそくまねき、免疫めんえき異常いじょうこすことがしめされている[7]

記憶きおく免疫めんえきさまNKT細胞さいぼう

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記憶きおく免疫めんえきさまNKT細胞さいぼうは、CD1d発現はつげん細胞さいぼう誘導ゆうどうにより免疫めんえき記憶きおく機能きのうつようになったNKT細胞さいぼうである。2014ねん理化学研究所りかがくけんきゅうしょ藤井ふじい眞一郎しんいちろうらのチームの成果せいかとして公表こうひょうされた。記憶きおく免疫めんえきさまNKT細胞さいぼうはいでは9カ月かげつ以上いじょう長期ちょうきにわたって存在そんざいし、KLRG1英語えいごばん接着せっちゃく分子ぶんしCD49d英語えいごばんグランザイムAなどを発現はつげんしている。また、NK細胞さいぼうやマクロファージの活性かっせいやT細胞さいぼう分化ぶんかなど、自然しぜん免疫めんえき獲得かくとく免疫めんえき関与かんよこう腫瘍しゅよう効果こうかしめすサイトカインIFN-γがんまさんせいりょうおおい。この細胞さいぼう発見はっけんにより、NKT細胞さいぼう長期ちょうきこう腫瘍しゅよう効果こうかしめすのは免疫めんえき記憶きおく機能きのう獲得かくとくできるからだと理研りけんのプレスリリースでは推測すいそくされている[8]

機能きのう

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活性かっせいさいし、NKT細胞さいぼう多量たりょうIFN-γがんまIL-4顆粒かりゅうだまマクロファージコロニー刺激しげき因子いんし大量たいりょうさんせいすることができる。ほかにも様々さまざまサイトカインケモカインさんし、たとえばIL-2、IL-13、IL-17IL-21TNF-αあるふぁなどがこれにあたる。

分化ぶんか

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NKT細胞さいぼうのT細胞さいぼう同様どうように、胸腺きょうせん分化ぶんか成熟せいじゅくする[9]。NKT細胞さいぼうおおくはCD4+CD8+ダブルポジティブ胸腺きょうせん細胞さいぼうから分化ぶんかするが、一部いちぶはCD4-CD8-ダブルネガティブ胸腺きょうせん細胞さいぼうから分化ぶんかする[10]

意義いぎ

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NKT細胞さいぼう不足ふそく機能きのう障害しょうがいにより、自己じこ免疫めんえき疾患しっかんがんこすことがしめされていることから、NKT細胞さいぼう免疫めんえきにおける重要じゅうよう側面そくめんになっているようである。近年きんねんNKT細胞さいぼうがヒトの喘息ぜんそく進行しんこう関連かんれんしていることがあきらかになっている[11]

NKT細胞さいぼう迅速じんそくなサイトカイン(たとえばIL-2、IFN-γがんま、TNF-αあるふぁ、IL-4など)の分泌ぶんぴつおこなうことができ、これにより様々さまざま免疫めんえき機能きのう活性かっせいしたり、ぎゃく抑制よくせいしたりすることができるため、臨床りんしょう応用おうよう可能かのうせいがある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Jerud, ES; Bricard G, Porcelli SA (2006). “Natural Killer T cells: Roles in Tumor Immunosurveillance and Tolerance”. Transfus. Med. Hemother. 33 (1): 18–36. doi:10.1159/000090193. 
  2. ^ a b Godfrey, DI; MacDonald HR, Kronenberg M, Smyth MJ, Van Kaer L (2004). “NKT cells: what’s in a name?”. Nat. Rev. Immunol. 4 (3): 231. doi:10.1038/nri1309. PMID 15039760. 
  3. ^ Van der Vliet, HJ; Nishi N, Koezuka Y, Peyrat MA, Von Blomberg BM, Van den Eertwegh AJ, Pinedo HM, Giaccone G, Scheper RJ (1999). “Effects of alphagalactosylceramide (KRN7000), interleukin-12 and interleukin-7 on phenotype and cytokine profile of human Va24+ Vb11+ T cells”. Immunology 98 (4): 557–563. doi:10.1046/j.1365-2567.1999.00920.x. PMC 2326955. PMID 10594688. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2326955/. 
  4. ^ Vivier, E; Anfossi N (2004). “Inhibitory NK-cell receptors on T cells. Witness of the past, actors of the future.”. Nat Rev Immunol 4 (3): 190–198. doi:10.1038/nri1306. PMID 15039756. 
  5. ^ Kovalovsky D, Uche OU, et al. (Sep 2008). “The BTB-zinc finger transcriptional regulator PLZF controls the development of invariant natural killer T cell effector functions.”. Nature Immunology 9 (9): 1055–64. doi:10.1038/ni.1641. PMC 2662733. PMID 18660811. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2662733/. 
  6. ^ Savage AK, Constantinides MG, et al. (Sep 2008). “The transcription factor PLZF directs the effector program of the NKT cell lineage.”. Immunity 29 (3): 391–403. doi:10.1016/j.immuni.2008.07.011. PMC 2613001. PMID 18703361. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2613001/. 
  7. ^ Olszak, et al. (2012). “Microbial Exposure During Early Life Has Persistent Effects on Natural Killer T Cell Function”. Science. doi:10.1126/science.1219328. 
  8. ^ 記憶きおく免疫めんえき機能きのうつナチュラルキラーT(NKT)細胞さいぼう発見はっけん』(プレスリリース)理化学研究所りかがくけんきゅうしょ、2014ねん8がつ19にちhttp://www.riken.jp/pr/press/2014/20140819_2/2017ねん3がつ15にち閲覧えつらん 
  9. ^ Pellici, et al. (2020). “Thymic development of unconventional T cells: how NKT cells, MAIT cells and γがんまδでるた T cells emerge”. Nature Reviews Immunology. doi:10.1038/s41577-020-0345-y. 
  10. ^ Dashtsoodol, et al. (2017). “Alternative pathway for the development of Vαあるふぁ14+ NKT cells directly from CD4-CD8- thymocytes that bypasses the CD4+CD8+ stage”. Nature Immunology. doi:10.1038/ni.3668. 
  11. ^ Cromie, William J. Researchers uncover cause of asthma Archived 2006ねん4がつ5にち, at the Wayback Machine. Harvard University Gazette, March 16, 2006.

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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