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細胞傷害性T細胞 - Wikipedia コンテンツにスキップ

細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう(さいぼうしょうがいせいTさいぼう、えい: cytotoxic T lymphocyte or cytotoxic T cell; TcまたはCTL)とは、リンパだまT細胞さいぼうのうちの一種いっしゅで、宿主しゅくしゅにとって異物いぶつになる細胞さいぼう移植いしょく細胞さいぼうウイルス感染かんせん細胞さいぼうがん細胞さいぼうなど)を認識にんしきして破壊はかいする。キラーT細胞さいぼうえい: killer T cell)ともばれる[1]。キラーとばれる由縁ゆえんは、病原びょうげんたいころころということから。

概要がいよう[編集へんしゅう]

分化ぶんかのT細胞さいぼうは、ヘルパーT細胞さいぼう必要ひつようなCD4分子ぶんしと、キラーT細胞さいぼう必要ひつようCD8分子ぶんし両方りょうほう発現はつげんしている(ダブルポジティブ、DP)。しかし、やがてT細胞さいぼう成熟せいじゅくするにつれ、分化ぶんかをしていき、CD4とCD8のどちらか一方いっぽうしか発現はつげんしなくなり(シングルポジティブ、SP)[2]最終さいしゅうてきにヘルパーT細胞さいぼうまたはキラーT細胞さいぼうへと分化ぶんかすることになる。

CTLは表面ひょうめんCD8分子ぶんし発現はつげんしているT細胞さいぼうから分化ぶんかしてくる。このような理由りゆうから、細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼうのことを「CD8陽性ようせいT細胞さいぼう」や「CD8+T細胞さいぼう」と場合ばあいもある。

CTLとヘルパーT細胞さいぼう関係かんけいについては、表面ひょうめんにCD4分子ぶんし表出ひょうしゅつするヘルパーT細胞さいぼう(helper T cell; Th)のうちTh1細胞さいぼうおもにCTLのはたらきをIL-2およびIFN-γがんまさんせいすることで補助ほじょしている。

CTLは活性かっせいされてはじめて細胞さいぼう傷害しょうがい活性かっせいつ。細胞さいぼう傷害しょうがい活性かっせいたないナイーブCD8陽性ようせいT細胞さいぼう(まだ抗原こうげん刺激しげきけていないキラーT細胞さいぼう)において、そのT細胞さいぼう受容じゅようたい(TCR; T cell receptor)が抗原こうげん提示ていじ細胞さいぼう(APC)のクラスI主要しゅよう組織そしき適合てきごう抗原こうげんMHC-class I)ととも提示ていじされた異物いぶつの「抗原こうげんペプチド」を認識にんしきし(ウイルスや細菌さいきんなどの抗原こうげん分解ぶんかいしたペプチドのことを一般いっぱんに「抗原こうげんペプチド」という)、同時どうじきょう刺激しげき分子ぶんしからのシグナルがはいることで、ナイーブCD8陽性ようせいT細胞さいぼう異物いぶつ抗原こうげんペプチド提示ていじする細胞さいぼうたいする特異とくいてき細胞さいぼう傷害しょうがい活性かっせいつCTLとなり、攻撃こうげきするようになる。

このさい、CD4陽性ようせいT細胞さいぼう(ヘルパーT細胞さいぼう)よりもつよ補助ほじょ刺激しげき必要ひつようとするため、じょう細胞さいぼうのみが単独たんどくでこの活性かっせいおこなうことができる。その抗原こうげん提示ていじ細胞さいぼう(APC)によって活性かっせいされるためには、ナイーブCD8 T細胞さいぼうがCD4 T細胞さいぼう同一どういつのAPCに結合けつごうすることが必要ひつようである。この場合ばあいには、CD4 T細胞さいぼうによるAPCの活性かっせいかいしたB7分子ぶんし発現はつげん、またはAPCによるCD4 T細胞さいぼう活性かっせいかいしたIL-2分泌ぶんぴつによりナイーブCD8 T細胞さいぼう活性かっせいされる[3]

CTLは細胞さいぼう傷害しょうがい物質ぶっしつであるパーフォリングランザイムTNF(tumor necrosis factor)などを放出ほうしゅつしたり、ターゲット細胞さいぼうFas刺激しげきしてアポトーシスおちいらせることで異物いぶつ攻撃こうげきする。

CTLの一部いちぶメモリーT細胞さいぼうとなって、異物いぶつたいする細胞さいぼう傷害しょうがい活性かっせい維持いじしたまま宿主しゅくしゅない記憶きおくされ、つぎおな異物いぶつ曝露ばくろした場合ばあい対応たいおうできるようそなえる。

臨床りんしょうてきには、がんたいしてがん細胞さいぼう特異とくいてき抗原こうげんたいするCTLを誘導ゆうどうすることで治療ちりょうしようという免疫めんえき療法りょうほうなどが研究けんきゅうされている。

アレルギーとT細胞さいぼう[編集へんしゅう]

細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう過剰かじょう反応はんのうすることにより、アレルギーこすことがある。そのトリガー(引金ひきがね)になるのは、個人こじん体質たいしつによる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 宮坂みやさか昌之まさゆき ほか編集へんしゅう標準ひょうじゅん免疫めんえきがく』、医学書院いがくしょいん、2016ねん2がつ1にち だい3はん だい2さつ、154ページ、上段じょうだん
  2. ^ 宮坂みやさか昌之まさゆき ほか編集へんしゅう標準ひょうじゅん免疫めんえきがく』、医学書院いがくしょいん、2016ねん2がつ1にち だい3はん だい2さつ、154ページ、本文ほんぶん冒頭ぼうとう段落だんらく
  3. ^ Parham, Peter『エッセンシャル免疫めんえきがくささがつ健彦たけひこ、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2007ねん 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]