主要 しゅよう 組織 そしき 適合 てきごう 遺伝子 いでんし 複 ふく 合体 がったい (しゅようそしきてきごういでんしふくごうたい、major histocompatibility complex; MHC )は、免疫 めんえき 反応 はんのう に必要 ひつよう な多 おお くのタンパク の遺伝子 いでんし 情報 じょうほう を含 ふく む[1] [2] 、細胞 さいぼう 膜 まく 表面 ひょうめん にある糖 とう タンパク質 たんぱくしつ である。研究 けんきゅう の当初 とうしょ 、MHCは遺伝子 いでんし として同定 どうてい されてきたが、のちに糖 とう タンパク質 たんぱくしつ として意味 いみ が置 お き換 か わって行 い った[3] 。
(糖 とう タンパクか遺伝子 いでんし かの)区別 くべつ のために糖 とう タンパク質 たんぱくしつ であることを明記 めいき ・強調 きょうちょう したい場合 ばあい には、日本 にっぽん では「MHC抗原 こうげん 」、「MHC分子 ぶんし 」、「MHCタンパク質 たんぱくしつ [4] [5] 」などと表現 ひょうげん するのが一般 いっぱん 的 てき である。
いっぽう、遺伝子 いでんし 領域 りょういき においてMHCをコードする遺伝子 いでんし のこととして明記 めいき したい場合 ばあい には、「MHC領域 りょういき 」[6] 、「MHC遺伝子 いでんし 」[7] などと表現 ひょうげん する場合 ばあい もある。
MHC分子 ぶんし は、ほとんどの脊椎動物 せきついどうぶつ が細胞 さいぼう に持 も ち、ヒトのMHCはヒト白血球 はっけっきゅう 型 がた 抗原 こうげん (HLA)、マウスのMHCはH-2 (histocompatibility-2)、ニワトリではB遺伝子 いでんし 座 ざ (B locus) と呼 よ ばれる。
MHCは免疫 めんえき に関 かか わるが、MHC分子 ぶんし そのものの存在 そんざい 箇所 かしょ は免疫 めんえき 細胞 さいぼう だけではなく、ほぼすべての有 ゆう 核 かく 細胞 さいぼう にもMHC分子 ぶんし は存在 そんざい する。また、MHC分子 ぶんし は糖 とう タンパク質 たんぱくしつ である。
正確 せいかく には、MHC分子 ぶんし には主 おも に2種類 しゅるい あり、クラスIとクラスIIという2種類 しゅるい が主要 しゅよう で、このうちMHCクラスIが、核 かく のあるすべての細胞 さいぼう に存在 そんざい ・発現 はつげん している。(なお、じつはMHC遺伝子 いでんし には、補 ほ 体 たい 系 けい をコードする遺伝子 いでんし 領域 りょういき としてMHCクラスIIIがある[8] 。) MHCクラスIIは、B細胞 さいぼう ・樹 き 状 じょう 細胞 さいぼう ・マクロファージに存在 そんざい ・発現 はつげん している[9] 。
このMHC分子 ぶんし は抗原 こうげん 提示 ていじ を行 おこな うことで細菌 さいきん やウイルス などの感染 かんせん 病原 びょうげん 体 たい の排除 はいじょ や、がん 細胞 さいぼう の拒絶 きょぜつ 、臓器 ぞうき 移植 いしょく の際 さい の拒絶 きょぜつ 反応 はんのう などに関与 かんよ し、免疫 めんえき にとって非常 ひじょう に重要 じゅうよう な働 はたら きをする。その他 た 、ペプチドの輸送 ゆそう に関与 かんよ するTAP (transporter associated with antigen processing) やプロテアソーム に関与 かんよ するLMP (low-molecular-weight protein) といった、免疫 めんえき に関 かん するさまざまなタンパク群 ぐん もこのMHCにコードされている。
なお、あまり正確 せいかく ない方 いかた ではないかしれないが、T細胞 さいぼう 側 がわ の、MHCと結合 けつごう する受容 じゅよう 体 たい のことを「T細胞 さいぼう 受容 じゅよう 体 たい 」(TCR)という。つまり、T細胞 さいぼう 側 がわ の、MHCにとってのリガンド (ある受容 じゅよう 体 たい にとっての結合 けつごう 相手 あいて 側 がわ の別 べつ の受容 じゅよう 体 たい のこと)のことを「T細胞 さいぼう 受容 じゅよう 体 たい 」という。ややこしいことに、T細胞 さいぼう には、MHCと結合 けつごう する受容 じゅよう 体 たい のほかにも多 おお くの受容 じゅよう 体 たい があり、それぞれリガンドも異 こと なるのだが、しかし、「T細胞 さいぼう 受容 じゅよう 体 たい 」という呼 よ び方 かた が慣習 かんしゅう になっている。
MHC分子 ぶんし は細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に存在 そんざい する細胞 さいぼう 膜 まく 貫通 かんつう 型 がた の糖 とう タンパク分子 ぶんし であり、細胞 さいぼう 内 ない のさまざまなタンパク質 たんぱくしつ の断片 だんぺん (ペプチド )を細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に提示 ていじ する働 はたら きをもつ。
ペプチドについて、(病原 びょうげん 体 たい などの)細胞 さいぼう に感染 かんせん したウイルス や癌 がん 抗原 こうげん 、あるいは樹 き 状 じょう 細胞 さいぼう などの抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう に貪食 どんしょく 処理 しょり された結果 けっか に生成 せいせい するペプチドのことを「抗原 こうげん ペプチド」[10] または「ペプチド抗原 こうげん 」[11] と一般 いっぱん にいう。(なお、「抗菌 こうきん ペプチド 」とは異 こと なる。抗菌 こうきん ペプチドとはディフェンシン などの事 こと 。)
抗原 こうげん ペプチドがMHC分子 ぶんし に結合 けつごう して細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に提示 ていじ されると、それがリンパ球 だま のうちT細胞 さいぼう に抗原 こうげん として認識 にんしき され、引 ひ き続 つづ き免疫 めんえき 反応 はんのう が惹起 じゃっき されてウイルスや癌 がん などを攻撃 こうげき 排除 はいじょ する方向 ほうこう に働 はたら く。
いっぽう、抗原 こうげん の無 な い状態 じょうたい でのMHC自身 じしん の生成 せいせい 時 じ にもMHCに自己 じこ 由来 ゆらい のペプチド(いわゆる「自己 じこ ペプチド」)が結合 けつごう して安定 あんてい 化 か していると考 かんが えられており、抗原 こうげん の侵入 しんにゅう ・発生 はっせい 時 じ には抗原 こうげん 由来 ゆらい のペプチドに置 お き換 か わる仕組 しく みである[12] と、考 かんが えられている。
また、用語 ようご として、MHC分子 ぶんし に上述 じょうじゅつ のペプチドがついた状態 じょうたい であることを明記 めいき したい場合 ばあい 、そのような(MHC分子 ぶんし に上述 じょうじゅつ のペプチドがついた状態 じょうたい の)MHC分子 ぶんし のことを「MHC分子 ぶんし -ペプチド複 ふく 合体 がったい [13] 」または「ペプチド-MHC複 ふく 合体 がったい [14] 」などと呼 よ ぶことがある。
生物 せいぶつ 個体 こたい それぞれは、似 に たような構造 こうぞう のMHC分子 ぶんし の遺伝子 いでんし 情報 じょうほう を何 なん 種類 しゅるい も持 も ち、こうして数種類 すうしゅるい のMHCを同時 どうじ に発現 はつげん させている。さらに数種類 すうしゅるい のMHC全 すべ てを、父親 ちちおや 由来 ゆらい のMHC1組 くみ と母親 ははおや 由来 ゆらい MHC1組 くみ の計 けい 2組 くみ ずつもっている。またMHCは個体 こたい によって非常 ひじょう に多様 たよう 性 せい に富 と み(多 た 型 かた 性 せい polymorphic )、このため2組 くみ のMHCはほとんどの場合 ばあい 異 こと なった種類 しゅるい の組 く み合 あ わせとなる(ヘテロ接合 せつごう 体 たい )。このようにしてそれぞれの個体 こたい は、何 なに 種類 しゅるい ものMHC分子 ぶんし の遺伝子 いでんし 情報 じょうほう をもっており(多 た 遺伝子 いでんし 性 せい polygenic )、このためMHCはさまざまな抗原 こうげん に対応 たいおう できる。また多 た 型 かた 性 せい のため、MHC分子 ぶんし はT細胞 さいぼう が自己 じこ と他者 たしゃ の区別 くべつ をする目印 めじるし にもなる。つまり、T細胞 さいぼう は自己 じこ のMHC分子 ぶんし を発現 はつげん する細胞 さいぼう から抗原 こうげん 提示 ていじ を受 う けるが、自己 じこ と異 こと なるMHC分子 ぶんし を異物 いぶつ と見 み なし、攻撃 こうげき 排除 はいじょ しようとする。しかし、個体 こたい によって持 も つMHCが異 こと なるということは、MHCによって結合 けつごう できる抗原 こうげん が異 こと なるため、MHCの違 ちが いにより病気 びょうき のなりやすさが異 こと なることがある。例 たと えばMHCの違 ちが いによってAIDS の進行 しんこう が違 ちが ってくる[15] 。逆 ぎゃく にいうとこの多様 たよう 性 せい によって、病原 びょうげん 体 たい に対 たい して種 たね の絶滅 ぜつめつ を防 ふせ ぐことができるようになっている。
MHC分子 ぶんし には大 おお きく分 わ けてクラスIとクラスIIの2つの種類 しゅるい がある。MHCクラスI分子 ぶんし は細胞 さいぼう 内 ない の内因 ないいん 性 せい 抗原 こうげん を結合 けつごう し、MHCクラスII分子 ぶんし はエンドサイトーシス で細胞 さいぼう 内 ない に取 と り込 こ まれて処理 しょり された外来 がいらい 性 せい 抗原 こうげん を結合 けつごう して提示 ていじ する[16] 。つまり、ウイルスのように感染 かんせん した細胞 さいぼう 内 ない で増殖 ぞうしょく する病原 びょうげん 体 たい に対 たい して、あるいはがん細胞 さいぼう 内 ない で産 さん 生 む されるがん抗原 こうげん に対 たい しては、MHCクラスIを介 かい した抗原 こうげん 提示 ていじ により免疫 めんえき 反応 はんのう をおこし、いっぽう、細菌 さいきん など細胞 さいぼう 外 がい で増殖 ぞうしょく する病原 びょうげん 体 たい や毒素 どくそ に対 たい して、あるいは結核 けっかく 菌 きん のようにマクロファージ 等 ひとし の抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう に感染 かんせん する病原 びょうげん 体 たい に対 たい しては、抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう のMHCクラスIIを介 かい した抗原 こうげん 提示 ていじ により免疫 めんえき 反応 はんのう をおこす。ただしこの2つ経路 けいろ は絶対 ぜったい 的 てき なものではなく、外来 がいらい 抗原 こうげん もMHCクラスIによる抗原 こうげん 提示 ていじ 経路 けいろ にも入 はい りうる(クロスプライミング cross-priming またはクロスプレゼンテーション cross-presentation )。
MHCクラスIに結合 けつごう するペプチドの長 なが さと、MHCクラスIIに結合 けつごう するペプチドの長 なが さは違 ちが っていることが分 わ かっており、MHCクラスIIに結合 けつごう するペプチドのほうが長 なが い。MHCクラスIに結合 けつごう するペプチドのアミノ酸 あみのさん の長 なが さは、およそ8〜10塩基 えんき である。いっぽう、MHCクラスIIに結合 けつごう するペプチドのアミノ酸 あみのさん の長 なが さはおよそ10〜30塩基 えんき である[17] 。
MHCクラスI分子 ぶんし 。α あるふぁ 1 〜α あるふぁ 3 の3つの細胞 さいぼう 外 がい 領域 りょういき と細胞 さいぼう 膜 まく 貫通 かんつう 領域 りょういき 、細胞 さいぼう 内 ない 領域 りょういき からなる重 じゅう 鎖 くさり と、β べーた 2 -ミクログロブリンからなる。
MHCクラスI分子 ぶんし はほとんどすべての有 ゆう 核 かく 細胞 さいぼう と血小板 けっしょうばん の細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に存在 そんざい する糖 とう タンパクであり、内因 ないいん 性 せい 抗原 こうげん を抗原 こうげん 提示 ていじ する働 はたら きをもつ。MHCクラスI分子 ぶんし はさらに古典 こてん 的 てき クラスI分子 ぶんし (クラスIa)と非 ひ 古典 こてん 的 てき クラスI分子 ぶんし (クラスIb)に分 わ けられる。古典 こてん 的 てき クラスI分子 ぶんし には、ヒトではHLA-A 、HLA-B、HLA-Cの3種類 しゅるい が、マウスではH-2K、H-2D、H-2Lの3種類 しゅるい がある。非 ひ 古典 こてん 的 てき クラスI分子 ぶんし にはヒトではHLA-E 、HLA-F 、HLA-G が、マウスではH-2Qa、H-2Tlaがある[18] 。
MHCクラスI分子 ぶんし は、糖 とう 鎖 くさり が付加 ふか した分子 ぶんし 量 りょう 45 kDa の重 じゅう 鎖 くさり (α あるふぁ 鎖 くさり )と、分子 ぶんし 量 りょう 12 kDaのβ べーた 2 -ミクログロブリン軽 けい 鎖 くさり の2つが非 ひ 共有 きょうゆう 結合 けつごう した二 に 量 りょう 体 たい であり、これにペプチド抗原 こうげん が結合 けつごう して三 さん 量 りょう 体 たい として細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に発現 はつげん する。非 ひ 古典 こてん 的 てき クラスI分子 ぶんし の中 なか には、発現 はつげん にβ べーた 2 -ミクログロブリンを必要 ひつよう としないものもある。クラスI重 じゅう 鎖 くさり はα あるふぁ 1 〜α あるふぁ 3 の3つの細胞 さいぼう 外 がい 領域 りょういき と、細胞 さいぼう 膜 まく 貫通 かんつう 領域 りょういき 、細胞 さいぼう 内 ない 領域 りょういき からなる。α あるふぁ 1 領域 りょういき とα あるふぁ 2 領域 りょういき の間 あいだ に大 おお きな溝 みぞ 状 じょう の構造 こうぞう (「ペプチド収容 しゅうよう 溝 みぞ 」[19] )があり、MHCはこのペプチド収容 しゅうよう 溝 みぞ に抗原 こうげん を結合 けつごう しT細胞 さいぼう に提示 ていじ する。
MHCクラスI分子 ぶんし はほとんど全 すべ ての有 ゆう 核 かく 細胞 さいぼう および血小板 けっしょうばん の細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に発現 はつげん するが、発現 はつげん の程度 ていど には差異 さい がある[20] 。甲状腺 こうじょうせん 、副 ふく 甲状腺 こうじょうせん 、下垂 かすい 体 たい の内分泌 ないぶんぴつ 細胞 さいぼう や膵臓 すいぞう ランゲルハンス島 とう 、胃 い 粘膜 ねんまく 、心筋 しんきん 、骨格 こっかく 筋 すじ 、肝 かん 細胞 さいぼう では発現 はつげん が弱 よわ く、中枢 ちゅうすう 神経 しんけい ,末梢 まっしょう 神経 しんけい には発現 はつげん がない[20] [21] 。また、精子 せいし 細胞 さいぼう は精巣 せいそう にある間 あいだ はMHCクラスI分子 ぶんし を発現 はつげん しているが、精巣 せいそう 上体 じょうたい (副 ふく 睾丸 こうがん )に移動 いどう すると発現 はつげん がなくなる[20] 。
悪性 あくせい 腫瘍 しゅよう においても、さまざまな悪性 あくせい 腫瘍 しゅよう で16〜50%程度 ていど にMHCクラスI分子 ぶんし の発現 はつげん の低下 ていか ・欠 かけ 失 しつ がみられる[22] 。さらに、原発 げんぱつ 巣 す よりも転移 てんい 巣 す において発現 はつげん 低下 ていか ・欠 かけ 失 しつ の頻度 ひんど が高 たか く、MHCクラスI発現 はつげん は腫瘍 しゅよう の予 よ 後 ご ,免疫 めんえき 治療 ちりょう の効果 こうか [23] 等 ひとし と関連 かんれん することから,MHCクラスI分子 ぶんし の発現 はつげん 低下 ていか ・欠 かけ 失 しつ により腫瘍 しゅよう 細胞 さいぼう は免疫 めんえき 監視 かんし 機構 きこう から逃避 とうひ していると考 かんが えられている[24] 。
ウイルスのように感染 かんせん した細胞 さいぼう 内 ない で増殖 ぞうしょく する病原 びょうげん 体 たい や、あるいはがん細胞 さいぼう 内 ない で産 さん 生 む されるタンパクなど、細胞 さいぼう 質 しつ 内 ない のタンパクはユビキチン 化 か された後 のち 、プロテアソーム によって5〜15アミノ酸 あみのさん 程度 ていど のペプチドにまで分解 ぶんかい される。分解 ぶんかい されたペプチドは、小 しょう 胞体 (ER) 膜 まく 上 じょう にあるTAP (transporter associated with antigen processing) というATP駆動 くどう 型 がた トランスポーター によって小 しょう 胞体 (ER) 内部 ないぶ に輸送 ゆそう される。なおTAPの構造 こうぞう は、膜 まく 貫通 かんつう 型 がた であり、TAP1とTAP2からなるヘテロ二 に 量 りょう 体 たい である。なお一般 いっぱん にABC輸送 ゆそう 体 たい と呼 よ ばれるATP駆動 くどう 型 がた トランスポーターは膜 まく 貫通 かんつう 型 がた である。TAPを、ABC輸送 ゆそう 体 たい の一種 いっしゅ として分類 ぶんるい することもある。
MHCクラスIα あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 2 ミクログロブリンは小 しょう 胞体(ER)内 ない で合成 ごうせい され、小 しょう 胞体(ER)内 ない でMHCクラスIα あるふぁ 鎖 くさり 、β べーた 2 ミクログロブリン、そしてペプチドの3つが結合 けつごう してMHC-ペプチド複 ふく 合体 がったい を作 つく る[25] 。その後 ご 、MHC-ペプチド複 ふく 合体 がったい は、より小 ちい さな小 しょう 胞体の内部 ないぶ に置 お かれて、小 しょう 胞輸送 ゆそう によって細胞 さいぼう 膜 まく を目指 めざ して運 はこ ばれる途中 とちゅう でゴルジ体 たい を通 とお り、糖 とう 鎖 くさり 修飾 しゅうしょく を受 う けた後 のち 、細胞 さいぼう 膜 まく 上 じょう に到達 とうたつ して発現 はつげん する。
T細胞 さいぼう には、主 おも にキラーT細胞 さいぼう やヘルパーT細胞 さいぼう という2種類 しゅるい があるが、MHCクラスI分子 ぶんし の抗原 こうげん と反応 はんのう するのはキラーT細胞 さいぼう のほうである。
詳細 しょうさい にいうと、CD8陽性 ようせい T細胞 さいぼう (キラーT細胞 さいぼう )は、細胞 さいぼう 膜 まく 上 じょう に発現 はつげん したMHCクラスI分子 ぶんし と抗原 こうげん を認識 にんしき し、活性 かっせい 化 か する。そしてその抗原 こうげん を発現 はつげん している細胞 さいぼう 、例 たと えばウイルス感染 かんせん 細胞 さいぼう やがん細胞 さいぼう を傷害 しょうがい するようになる(細胞 さいぼう 傷害 しょうがい 性 せい T細胞 さいぼう )。ただしCD8陽性 ようせい T細胞 さいぼう は、自己 じこ と同 おな じMHCクラスI分子 ぶんし に結合 けつごう した抗原 こうげん のみ認識 にんしき し、自己 じこ と異 こと なるMHC分子 ぶんし は異物 いぶつ と見 み なし攻撃 こうげき する。
MHCクラスI分子 ぶんし は、NK細胞 さいぼう の細胞 さいぼう 傷害 しょうがい 活性 かっせい を抑制 よくせい する働 はたら きももつ。NK細胞 さいぼう は細胞 さいぼう 表面 ひょうめん にKIR(キラー細胞 さいぼう 免疫 めんえき グロブリン様 さま 受容 じゅよう 体 たい killer cell immunoglobulin-like receptor )とよばれる受容 じゅよう 体 たい を持 も っており、このKIRが古典 こてん 的 てき MHCクラスI分子 ぶんし 、あるいはヒト非 ひ 古典 こてん 的 てき MHCクラスI分子 ぶんし のうちHLA-Gを認識 にんしき すると、NK細胞 さいぼう はその細胞 さいぼう を傷害 しょうがい しなくなる。またヒト非 ひ 古典 こてん 的 てき MHCクラスI分子 ぶんし であるHLA-Eは、NK細胞 さいぼう がもつ受容 じゅよう 体 たい のひとつであるNKG2A (natural killer group 2A) を介 かい してNK細胞 さいぼう の傷害 しょうがい 活性 かっせい を抑制 よくせい する。逆 ぎゃく にNK細胞 さいぼう はMHCクラスI分子 ぶんし を持 も たない細胞 さいぼう を攻撃 こうげき する(Missing Self説 せつ [26] )。例 たと えばヒトでは胎児 たいじ 由来 ゆらい の胎盤 たいばん 細胞 さいぼう はHLAクラスI分子 ぶんし の発現 はつげん がないが、HLA-Gを発現 はつげん して母親 ははおや 由来 ゆらい のNK細胞 さいぼう から胎児 たいじ を守 まも っている[27] 。
つまり、MHCクラスI分子 ぶんし は自己 じこ と他者 たしゃ を区別 くべつ する標識 ひょうしき であり、自己 じこ のCD8陽性 ようせい T細胞 さいぼう に抗原 こうげん を提示 ていじ して病原 びょうげん 体 たい や癌 がん などを排除 はいじょ しつつ、NK細胞 さいぼう の攻撃 こうげき から身 み を守 まも る働 はたら きをしている。
MHCクラスII分子 ぶんし 。α あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 鎖 くさり からなり、それぞれ2つの細胞 さいぼう 外 がい 領域 りょういき および膜 まく 貫通 かんつう 領域 りょういき 、細胞 さいぼう 内 ない 領域 りょういき からなる。
T細胞 さいぼう には、主 おも にキラーT細胞 さいぼう やヘルパーT細胞 さいぼう という2種類 しゅるい があるが、MHCクラスII分子 ぶんし の抗原 こうげん と反応 はんのう するのはヘルパーT細胞 さいぼう のほうである。
MHCクラスII分子 ぶんし は、マクロファージ や樹 き 状 じょう 細胞 さいぼう 、活性 かっせい 化 か T細胞 さいぼう 、B細胞 さいぼう などの抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう を含 ふく め、限 かぎ られた細胞 さいぼう にのみ発現 はつげん している。クラスII分子 ぶんし はα あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 鎖 くさり の2つの重 じゅう 合体 がったい であり、それぞれ2つの細胞 さいぼう 外 がい 領域 りょういき および膜 まく 貫通 かんつう 領域 りょういき 、細胞 さいぼう 内 ない 領域 りょういき からなる。MHCクラスII分子 ぶんし はヒトではHLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPの3種類 しゅるい があるが、DRのβ べーた 鎖 くさり は2種類 しゅるい あることが多 おお く、これがDRα あるふぁ 鎖 くさり と結合 けつごう するためDR分子 ぶんし は2種類 しゅるい あることになる。つまり、ヒトでは4種類 しゅるい のMHCクラスII分子 ぶんし をもつことが多 おお い。マウスMHCクラスII分子 ぶんし にはH-2A、H-2Eの2種類 しゅるい がある。
エンドサイトーシス により抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう に取 と り込 こ まれた外来 がいらい 抗原 こうげん は、抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう 内 ない のエンドソーム でタンパク分解 ぶんかい 酵素 こうそ により消化 しょうか され、ペプチド断片 だんぺん に分解 ぶんかい される。MHCクラスII分子 ぶんし に結合 けつごう するペプチドはクラスI分子 ぶんし に結合 けつごう するペプチドよりも長 なが く、15〜24アミノ酸 あみのさん 程度 ていど である。ペプチド断片 だんぺん はその後 ご CPL (compartment for peptide loading) と呼 よ ばれる小 しょう 胞に移動 いどう する。小 しょう 胞体 (ER) で合成 ごうせい されたMHCクラスIIα あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 鎖 くさり はゴルジ体 たい を通 とお ってCPL内 ない に移動 いどう し、このCPL内 ない でペプチドとMHCクラスII複 ふく 合体 がったい が生成 せいせい される。そして細胞 さいぼう 表面 ひょうめん に発現 はつげん し、CD4 陽性 ようせい T細胞 さいぼう (ヘルパーT細胞 さいぼう )に抗原 こうげん を提示 ていじ して活性 かっせい 化 か させる。活性 かっせい 化 か したCD4陽性 ようせい 細胞 さいぼう は細胞 さいぼう 傷害 しょうがい 性 せい T細胞 さいぼう やB細胞 さいぼう 、その他 た の免疫 めんえき 細胞 さいぼう を活性 かっせい 化 か して異物 いぶつ を攻撃 こうげき する。
ヒトMHC (HLA) 遺伝子 いでんし は6番 ばん 染色 せんしょく 体 たい 短 たん 腕 うで 上 じょう に、マウスMHC (H-2) は17番 ばん 染色 せんしょく 体 たい 上 じょう に存在 そんざい し、ヒトでは224もの遺伝子 いでんし (128の機能 きのう 的 てき 遺伝子 いでんし と96の偽 にせ 遺伝子 いでんし )を含 ふく む360万 まん 塩基 えんき 対 たい にも及 およ ぶ巨大 きょだい な複 ふく 合 あい 的 てき 遺伝子 いでんし 領域 りょういき である[28] 。1999年 ねん にヒトMHC遺伝子 いでんし の全 ぜん 塩基 えんき 配列 はいれつ と遺伝子 いでんし 地図 ちず が解読 かいどく された[28] 。
ヒトMHC遺伝子 いでんし の分類 ぶんるい は、3つの領域 りょういき に分 わ けられ、クラスI領域 りょういき 、クラスII領域 りょういき 、クラスIII領域 りょういき に分 わ けられている。染色 せんしょく 体 たい のテロメア 側 がわ (末端 まったん 側 がわ )からセントロメア 側 がわ (中心 ちゅうしん 側 がわ )に向 む かって、クラスI領域 りょういき 、クラスIII領域 りょういき 、クラスII領域 りょういき が存在 そんざい する。クラスIII領域 りょういき のうち、腫瘍 しゅよう 壊死 えし 因子 いんし (TNF) スーパーファミリーなど炎症 えんしょう に関 かか わる遺伝子 いでんし 群 ぐん の領域 りょういき はクラスIV領域 りょういき と分類 ぶんるい されることもある[29] 。マウスMHCは転 てん 座 ざ がおこっているためクラスI領域 りょういき が2つに分断 ぶんだん されており、テロメア側 がわ からクラスI領域 りょういき 、クラスIII領域 りょういき 、クラスII領域 りょういき 、小 ちい さなクラスI領域 りょういき となっている。
MHCクラスI領域 りょういき には3種類 しゅるい のクラスI分子 ぶんし α あるふぁ 鎖 くさり 、つまりヒトではHLA-A、B、C、マウスではH-2K、D、Lの3種類 しゅるい のクラスI分子 ぶんし α あるふぁ 鎖 くさり がコードされている。β べーた 2 -ミクログロブリン遺伝子 いでんし はMHCにはなく、ヒトでは15番 ばん 染色 せんしょく 体 たい (15q21-q22.2) に[30] 、マウスでは2番 ばん 染色 せんしょく 体 たい (2 F1-F3; 2 69.0 cM) に[31] 存在 そんざい する。MHCクラスII領域 りょういき にはクラスII分子 ぶんし α あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 鎖 くさり 、つまりヒトではHLA-DQ、DR、DPのα あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 鎖 くさり が、マウスではH-2AとEのα あるふぁ 鎖 くさり とβ べーた 鎖 くさり がコードされている。その他 た 2つのTAP (TAP1、TAP2) 遺伝子 いでんし 、LMP (low-molecular-weight protein) 遺伝子 いでんし 、タパシン (tapasin) 遺伝子 いでんし もクラスII領域 りょういき にある[2] 。ヒトMHCクラスIII領域 りょういき にはC4、C2、B因子 いんし などの補 ほ 体 たい や、TNF などのサイトカイン の遺伝子 いでんし が存在 そんざい する。
MHC遺伝子 いでんし には、免疫 めんえき と関係 かんけい のない遺伝子 いでんし も存在 そんざい する。たとえば、クラスIB領域 りょういき にあるHFe 遺伝子 いでんし は腸管 ちょうかん の細胞 さいぼう の鉄 てつ 代謝 たいしゃ に関与 かんよ しており、クラスII領域 りょういき の21- 水酸化 すいさんか 酵素 こうそ はステロイド 合成 ごうせい に関与 かんよ している。
MHC遺伝子 いでんし はほとんどの脊椎動物 せきついどうぶつ にみられる遺伝子 いでんし 領域 りょういき であるが、遺伝子 いでんし の構成 こうせい や配置 はいち は種 しゅ によってさまざまである。例 たと えばニワトリ は最 もっと も小 ちい さいMHC遺伝子 いでんし をもつ種 たね のひとつであり、ヒトMHC遺伝子 いでんし の約 やく 20分 ぶん の1、全長 ぜんちょう 92,000塩基 えんき で19の遺伝子 いでんし しか持 も たない[32] が、一方 いっぽう ほとんどのほ乳類 にゅうるい はヒトとよく似 に た構成 こうせい のMHCをもつ。ニワトリMHC遺伝子 いでんし の19全 すべ ての遺伝子 いでんし に相当 そうとう する遺伝子 いでんし がヒトにも存在 そんざい し、これは必要 ひつよう 最低限 さいていげん のMHCであるといえるかもしれない[32] 。
MHC遺伝子 いでんし の多様 たよう 性 せい は遺伝子 いでんし 重複 じゅうふく によるところが大 おお きい。ヒトMHCには多 おお くの偽 にせ 遺伝子 いでんし がちりばめられている。
研究 けんきゅう 当初 とうしょ の歴史 れきし とノーベル賞 しょう など[ 編集 へんしゅう ]
1930年代 ねんだい にPeter Alfred Gorer が、移植 いしょく 片 へん 拒絶 きょぜつ の研究 けんきゅう を本格 ほんかく 的 てき に開始 かいし した。
そして1940年代 ねんだい にアメリカのジョージ・スネル により、同系 どうけい を20代 だい 以上 いじょう かけあわせたマウスをつかった移植 いしょく の研究 けんきゅう によって、1940年代 ねんだい には原因 げんいん 物質 ぶっしつ としてマウスのH-2抗原 こうげん が発見 はっけん された。
1950年代 ねんだい には、フランスのジャン・ドーセ により、頻繁 ひんぱん に輸血 ゆけつ を受 う けた人 ひと の血液 けつえき をもとに得 え られた血清 けっせい に、他人 たにん の白血球 はっけっきゅう を凝集 ぎょうしゅう させる抗原 こうげん があることが発見 はっけん され、HLAの発見 はっけん となった。
MHCの研究 けんきゅう は当初 とうしょ 、ジョージ・スネル 、バルフ・ベナセラフ 、ジャン・ドーセ 、ヒュー・マグデビットなどによって、遺伝子 いでんし が発見 はっけん された。ジョージとバルフとジャンの3人 にん は1980年 ねん にMHCの研究 けんきゅう 業績 ぎょうせき によりノーベル生理学 せいりがく ・医学 いがく 賞 しょう を受賞 じゅしょう した。
その後 ご 、1987年 ねん にはハーバード大学 だいがく で当時 とうじ は研究 けんきゅう 員 いん だったPamela J. Bjorkman によってMHCクラスI抗原 こうげん タンパク質 たんぱくしつ の結晶 けっしょう 化 か に成功 せいこう し、X線 せん で結晶 けっしょう 構造 こうぞう が解析 かいせき された。
1993年 ねん には、ジャック・ストロミンジャー がMHC-ペプチド複 ふく 合体 がったい の溝 みぞ の仕組 しく みを解明 かいめい したことなどの業績 ぎょうせき で、アメリカの医学 いがく 賞 しょう であるラスカー賞 しょう をDon Wiley 、Emil R. Unanue とともに受賞 じゅしょう し、1999年 ねん にはストロミンジャーとWileyが日本 にっぽん 国際 こくさい 賞 しょう を受賞 じゅしょう した。また、1978年 ねん にスイスのロルフ・ツィンカーナーゲル が、T細胞 さいぼう がウイルスを殺害 さつがい する際 さい に抗原 こうげん だけでなくMHCも認識 にんしき する必要 ひつよう があることを発見 はっけん し、これらの業績 ぎょうせき により1996年 ねん にノーベル生理学 せいりがく ・医学 いがく 賞 しょう を受賞 じゅしょう した。
MHCおよびそれと結合 けつごう するTCRは、抗原 こうげん 提示 ていじ 反応 はんのう において中心 ちゅうしん 的 てき な特別 とくべつ 的 てき な役割 やくわり をしていると考 かんが えられている。しかし、MHC・TCR以外 いがい にも抗原 こうげん 提示 ていじ に関 かか わる分子 ぶんし (ここでいう「分子 ぶんし 」とは何 なん らかの細胞 さいぼう 表面 ひょうめん にある特別 とくべつ なタンパク質 たんぱくしつ の意味 いみ )は発見 はっけん されており、CD40(抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう 側 がわ )とそれに接着 せっちゃく するCD154(T細胞 さいぼう 側 がわ )、CD58(抗原 こうげん 提示 ていじ 細胞 さいぼう 側 がわ )とそれに接着 せっちゃく するCD2(T細胞 さいぼう 側 がわ )、などの接着 せっちゃく 分子 ぶんし も発見 はっけん されている。
これら、MHCとTCR以外 いがい の接着 せっちゃく 分子 ぶんし のことを「アクセサリー分子 ぶんし 」[33] または「アクセサリーたんぱく質 しつ 」などという。
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