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T細胞さいぼう受容じゅようたい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
TCR-αあるふぁとTCR-βべーたから構成こうせいされるT細胞さいぼう受容じゅようたい中央ちゅうおうあか)と補助ほじょ分子ぶんしであるCD3あお部分ぶぶんがITAM。
識別子しきべつし
Pfam PF11628
InterPro IPR021663
OPM superfamily 261
OPM protein 2hac
利用りよう可能かのう蛋白質たんぱくしつ構造こうぞう:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
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T細胞さいぼう受容じゅようたい(ティーさいぼうじゅようたい)、以下いかTCR (T cell receptor) とはT細胞さいぼう細胞さいぼうまくうえ発現はつげんしている抗原こうげん受容じゅようたい分子ぶんしである。構造こうぞうてきB細胞さいぼうさんせいする抗体こうたいのFabフラグメント[ちゅう 1]非常ひじょう類似るいじしており、MHC分子ぶんし結合けつごうした抗原こうげん分子ぶんし認識にんしきする。成熟せいじゅくT細胞さいぼうつTCR遺伝子いでんし遺伝子いでんしさい編成へんせいているため、いち個体こたい多様たようせいんだTCRをち、様々さまざま抗原こうげん認識にんしきすることができる。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

TCRとHLA class IIの結晶けっしょう構造こうぞう
赤色あかいろがTCRのαあるふぁくさりで、橙色だいだいいろがTCRのβべーたくさりである。

TCRはαあるふぁくさりβべーたくさり、あるいはγがんまくさりδでるたくさりりょうたいから構成こうせいされる。前者ぜんしゃわせからなるTCRをαあるふぁβべーたTCR、後者こうしゃわせからなるTCRをγがんまδでるたTCRとび、それぞれのTCRをつT細胞さいぼうαあるふぁβべーたT細胞さいぼう[ちゅう 2]γがんまδでるたT細胞さいぼうばれる。TCRはさらに細胞さいぼうまく存在そんざいする可変かへんCD3分子ぶんし結合けつごうふく合体がったい形成けいせいする。CD3は細胞さいぼうない領域りょういきにITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif) とばれるアミノ酸あみのさん配列はいれつち、このモチーフが細胞さいぼうないのシグナル伝達でんたつ関与かんよする[1]

それぞれのTCRくさり可変かへん (V) と定常ていじょう (C) から構成こうせいされ、定常ていじょう細胞さいぼうまく貫通かんつうしてみじか細胞さいぼうしつ部分ぶぶんつ。可変かへん細胞さいぼうがい存在そんざいして、抗原こうげん-MHCふく合体がったい結合けつごうする。可変かへんにはちょう可変かへん、あるいは相補そうほせい決定けってい領域りょういき (CDR) とばれる領域りょういきが3つ存在そんざいし、この領域りょういき抗原こうげん-MHCふく合体がったい結合けつごうする。3つのCDRはそれぞれCDR1、CDR2、CDR3とばれるが、TCRの場合ばあい、このうちCDR1とCDR2はMHCと結合けつごうし、CDR3が抗原こうげん結合けつごうするとかんがえられている。

TCRは免疫めんえきグロブリンスーパーファミリーにぞくするタンパク質たんぱくしつであり、上記じょうきのような構造こうぞう抗体こうたいのそれと非常ひじょうによくているが、抗体こうたいことなり、細胞さいぼうがい分泌ぶんぴつされることはない。

TCRの発現はつげん[編集へんしゅう]

免疫めんえきグロブリンじゅうくさりの V(D)J さい編成へんせい概観がいかん

TCRの構成こうせい免疫めんえきグロブリンとしてられるB細胞さいぼう受容じゅようたい過程かていている。αあるふぁβべーたTCRの遺伝子いでんしさい編成へんせいではまず、βべーたくさりのVDJさい編成へんせいおこなわれ、つづいてαあるふぁくさりのVJさい編成へんせいおこなわれる。αあるふぁくさりさい編成へんせいおこなわれるさいδでるたくさり遺伝子いでんし染色せんしょくたいじょうからかけしっするため、αあるふぁβべーたTCRをつT細胞さいぼうγがんまδでるたTCRを同時どうじつことはない。ぎゃくγがんまδでるたTCRをつT細胞さいぼうではこのTCRをかいしたシグナルがβべーたくさり発現はつげん抑制よくせいするため、γがんまδでるたTCRをつT細胞さいぼうαあるふぁβべーたTCRを同時どうじつこともない。

遺伝子いでんしさい編成へんせいについてはV(D)J遺伝子いでんしさい構成こうせい参照さんしょう

遺伝子いでんしさい編成へんせいはB細胞さいぼう場合ばあい同様どうようリコンビナーゼであるRAG-1とRAG-2に依存いぞんしている。またターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ (TdT) は遺伝子いでんしさい編成へんせいにおいてしょうじる遺伝子いでんし断片だんぺん接合せつごうにN-ヌクレオチドをランダムに挿入そうにゅうすることでTCRの多様たようせい形成けいせい寄与きよする。これらのメカニズムにより1個いっこからだつTCRの多様たようせい総数そうすう計算けいさんじょう1018える。ただし、免疫めんえきグロブリンとことなり、TCR遺伝子いでんし場合ばあいからだ細胞さいぼうだか頻度ひんど突然変異とつぜんへんいしょうじない。また、TdTによるN-ヌクレオチドの挿入そうにゅう結果けっかしょうじる多様たようせい拡大かくだいはCDR3のみに影響えいきょうするため、TCRでは多様たようせいがCDR3に集中しゅうちゅうする。これはCDR3をコードする領域りょういきのみが遺伝子いでんし断片だんぺん接合せつごうふくむためである。

機能きのう[編集へんしゅう]

TCRの役割やくわり抗原こうげん認識にんしきである。CD4陽性ようせい細胞さいぼう(Th細胞さいぼう)の場合ばあい特異とくいてき抗原こうげんがTCRと結合けつごうすると、CD4結合けつごうするLckがCD3のITAMをリン酸化さんかし、これが起点きてんとなって細胞さいぼうないにシグナルが伝達でんたつされる。ナイーブT細胞さいぼう活性かっせいするが、このときにTh細胞さいぼう補助ほじょ刺激しげき因子いんし存在そんざい必要ひつようとする。この補助ほじょ刺激しげき因子いんしB7ばれる分子ぶんしで、TCRが抗原こうげん結合けつごうした状態じょうたいでさらにB7がT細胞さいぼうじょうCD28結合けつごうすると、Th細胞さいぼう活性かっせいみちびかれる。補助ほじょ刺激しげき因子いんし存在そんざいしない場合ばあい、CD4陽性ようせいT細胞さいぼうかつする(これをアネルギーという)[2]

αあるふぁβべーたT細胞さいぼうはMHCじょう存在そんざいするペプチドしか認識にんしきできない。また、べつ個体こたいのMHCじょうのペプチドは認識にんしきできない。これをMHC拘束こうそくせいという。一方いっぽう一部いちぶにはMHC拘束こうそくせいのT細胞さいぼう存在そんざいし、これはナチュラルキラーT細胞さいぼう(NKT細胞さいぼう)とばれる。NKT細胞さいぼうつTCRはMHCじょう抗原こうげんではなく、CD1とくにCD1d)じょう脂質ししつ抗原こうげん抗原こうげん特異とくいてき認識にんしきする。また、γがんまδでるたT細胞さいぼう抗原こうげん提示ていじ細胞さいぼうやMHCの介在かいざいなしに一部いちぶ抗原こうげん直接ちょくせつ反応はんのうする。

補助ほじょ刺激しげき分子ぶんし存在そんざいでTCRと抗原こうげん結合けつごうすると、ナイーブT細胞さいぼう活性かっせいきる。活性かっせいしたT細胞さいぼう細胞さいぼう増殖ぞうしょくIL-2などのサイトカインさんせい細胞さいぼう傷害しょうがい作用さようといった機能きのう発揮はっきできるようになる。細菌さいきん毒素どくそやウイルス感染かんせん細胞さいぼうさんされる、あるしゅ物質ぶっしつはMHC IIと結合けつごうして、特定とくていのサブファミリーにぞくするTCRを非特異ひとくいてき活性かっせいする。この抗原こうげんスーパー抗原こうげんび、T細胞さいぼう過剰かじょう活性かっせいするため、発熱はつねつ発疹はっしん、ショックなどの症状しょうじょうこす[3]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ Yじょう構造こうぞう抗体こうたいの、ほんうで部分ぶぶん可変かへんふくむ。
  2. ^ たんにT細胞さいぼうという場合ばあいはこちらをすことがおおい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ P. Anton van der Merwe & Omer Dushek (2011). “Mechanisms for T cell receptor triggering”. Nat Rev Immunol. 11. doi:10.1038/nri2887. PMID 21127503. 
  2. ^ Oreste Acuto1 & Frédérique Miche (2003). “CD28-mediated co-stimulation: a quantitative support for TCR signalling”. Nat Rev Immunol. 3. doi:10.1126/stke.3772007re2. PMID 14647476. 
  3. ^ 平松ひらまつ啓一けいいち中込なかごめおさむ 編集へんしゅう標準ひょうじゅん微生物びせいぶつがく』(10はん)、2009ねんISBN 978-4-260-00638-5 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • ささがつ 建彦たけひこ 監訳かんやく免疫めんえき生物せいぶつがく』(原書げんしょだい5)、2003ねんISBN 4-524-23522-1 
  • 矢田やた 純一じゅんいちけい免疫めんえきがく』(改訂かいてい11)、2009ねんISBN 978-4-498-10602-4