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ナチュラルキラー細胞さいぼう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ナチュラルキラー細胞さいぼう(ナチュラルキラーさいぼう、えい: natural killer cellNK細胞さいぼう)は、自然しぜん免疫めんえき主要しゅよう因子いんしとしてはたら細胞さいぼう傷害しょうがいせいリンパだまの1しゅであり、とく腫瘍しゅよう細胞さいぼうやウイルス感染かんせん細胞さいぼう拒絶きょぜつ重要じゅうようである[1]細胞さいぼうころすのにT細胞さいぼうとはことなり事前じぜんかんじさくさせておく必要ひつようがないということから、まれつき(natural)の細胞さいぼう傷害しょうがいせい細胞さいぼう(killer cell)という意味いみ名付なづけられた。形態けいたいてき特徴とくちょうから大形おおがた顆粒かりゅうリンパだまばれることもある。

特性とくせい

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NK細胞さいぼうは、T細胞さいぼう受容じゅようたい(TCR)、T細胞さいぼう普遍ふへんてきマーカーであるCD3、まく免疫めんえきグロブリンであるB細胞さいぼう受容じゅようたい発現はつげんしていない大型おおがた顆粒かりゅうせいリンパだまであり、通常つうじょうヒトではCD16(FcγがんまRIII)とCD56、マウスではNK1.1/NK1.2という表面ひょうめんマーカーを発現はつげんしている。

NK細胞さいぼう定常ていじょう状態じょうたいでも活性かっせいした細胞さいぼう傷害しょうがいせいリンパだま特徴とくちょうてき形態けいたいおおきなサイズ、しょう胞体細胞さいぼうしつ顆粒かりゅうなど)をしており、あらたなタンパク質たんぱくしつ合成ごうせいさい構成こうせいをほとんどせずに、そのままで細胞さいぼう傷害しょうがいせいしめす。したがって迅速じんそく応答おうとうできる。

発見はっけん

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NK細胞さいぼうは1970年代ねんだいはじめに、T細胞さいぼう以前いぜん免疫めんえきされた腫瘍しゅよう細胞さいぼう溶解ようかいする能力のうりょくについての研究けんきゅう最中さいちゅう発見はっけんされた。一連いちれん実験じっけんで、研究けんきゅうしゃたちは一貫いっかんして「ナチュラルな」反応はんのう観察かんさつしていた。すなわち、リンパだまのうちのある集団しゅうだんは、まえもって腫瘍しゅよう細胞さいぼうへの認識にんしきのうたかめておかなくてもその腫瘍しゅよう細胞さいぼう溶解ようかいすることが出来できるのである。これは当時とうじ確立かくりつしていたモデルにそぐわなかったため、当初とうしょ人為じんいてき結果けっかだとかんがえられていた。しかし1973ねんまでにこの'natural killing'活性かっせいたねえて確立かくりつされ、この能力のうりょくった特別とくべつ系譜けいふ細胞さいぼう存在そんざい仮定かていされた。モノクローナル抗体こうたいもちいた実験じっけんにより、'natural killing'活性かっせいおおきな顆粒かりゅうせいリンパだまにあることがしめされ、これがNK細胞さいぼうばれるようになった。

missing-selfせつ

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NK細胞さいぼう抗原こうげん認識にんしきせずに細胞さいぼうころすといっても、正常せいじょう自己じこ細胞さいぼう攻撃こうげきしない。ではなに認識にんしきしているのかが問題もんだいになるが、1986ねんにKarreらが提唱ていしょうしたのがmissing-selfせつである。これは、NK細胞さいぼうMHCクラスI分子ぶんし発現はつげんレベルがひく細胞さいぼう認識にんしきするというものである。MHCクラスI分子ぶんし自己じこのマーカーであり、すべてのからだ細胞さいぼう表面ひょうめん発現はつげんしているはずのものである。そこでMHCクラスI分子ぶんしがない細胞さいぼうがあれば、それは自己じこせい喪失そうしつ(missing self)した異常いじょう細胞さいぼうであるとなして攻撃こうげきしてもいとかんがえられる。

実際じっさい腫瘍しゅようやウイルスに感染かんせんした細胞さいぼうなどでは、MHCクラスI分子ぶんし発現はつげん低下ていかしていることがある。これは、細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう(キラーT細胞さいぼう)の抗原こうげん認識にんしきにMHCクラスI分子ぶんし必要ひつようなことと関係かんけいがある。MHCクラスI分子ぶんし発現はつげんしている腫瘍しゅよう細胞さいぼうはキラーT細胞さいぼうによって攻撃こうげきされるが、もし遺伝子いでんし異常いじょうによりMHCクラスI分子ぶんし発現はつげん低下ていかするとキラーT細胞さいぼう攻撃こうげきからのがれることができる。そこでキラーT細胞さいぼうからのがれた細胞さいぼうをNK細胞さいぼう攻撃こうげきするという相補そうほてき関係かんけいにあるとかんがえられた。

このせつはその、MHCクラスI分子ぶんし認識にんしきする抑制よくせいせい受容じゅようたい発見はっけんされたことで、一部いちぶのNK細胞さいぼうについてはただしいことがしめされた。ただし、研究けんきゅうようなど、特殊とくしゅ選別せんべつけた異常いじょうなNK細胞さいぼうが、MHCクラスIを発現はつげんするがん細胞さいぼう攻撃こうげきしにくくなることが証明しょうめいされたにぎない。野生やせいがたのNK細胞さいぼうは、活性かっせいたかければどのようながん細胞さいぼうでも攻撃こうげきするが、そもそも単一たんいつ物質ぶっしついち種類しゅるいのセンサーだけで相手あいて正体しょうたい見極みきわめるのは不可能ふかのうである。

その研究けんきゅうによって、NK細胞さいぼうまれながらになんじゅう種類しゅるいものKARやKIRとばれるセンサーぐんをもち、これらをわせて使つかうことでがんを認識にんしきしていることが判明はんめいした。MHCクラスIを認識にんしき攻撃こうげき抑制よくせい信号しんごうはっするセンサーは実際じっさい存在そんざいするものの、それはいくつも種類しゅるいがあるKIRのうちひとつにぎず、さらにMHCクラスIに反応はんのうするKIRをもたないNK細胞さいぼうおお存在そんざいする。また、MHCクラスIに反応はんのうして抑制よくせい信号しんごうはっするKIRをつNK細胞さいぼうであっても、活性かっせいたかければ多種たしゅ大量たいりょうのKARが発現はつげんし、これらがはっする攻撃こうげき信号しんごうがKIRのはっする攻撃こうげき抑制よくせい信号しんごう圧倒あっとうするため、標的ひょうてき細胞さいぼうがMHCクラスIをもっていても、相手あいてががん細胞さいぼうであれば攻撃こうげきすることができる。

活性かっせい機構きこう

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NK細胞さいぼうつよ細胞さいぼう傷害しょうがいのうがあり、また自己じこ攻撃こうげきする可能かのうせいがあることから、その活動かつどう厳密げんみつ制御せいぎょされている。NK細胞さいぼう様々さまざまかたち活性かっせいシグナルをけなければならないが、なかでもつぎしめすものがもっと重要じゅうようである。

サイトカイン
IFNαあるふぁ/βべーたがNK細胞さいぼう活性かっせい必須ひっすである。これらはストレス分子ぶんしであり、ウイルス感染かんせん細胞さいぼうから放出ほうしゅつされるため、NK細胞さいぼうにとってはウイルスせい病原びょうげんたい存在そんざいしめすシグナルとなる。遍在へんざいてき活性かっせい因子いんしであるIL-2IFNγがんまもNK細胞さいぼう活性かっせいすることができる。
Fc受容じゅようたい
NK細胞さいぼうマクロファージやその細胞さいぼうしゅ同様どうようFc受容じゅようたい抗体こうたいのFc部位ぶい結合けつごうする活性かっせい受容じゅようたい)を発現はつげんしている。これにより、NK細胞さいぼうは、えきせい免疫めんえきによりかんさくされた細胞さいぼう標的ひょうてきにした抗体こうたい依存いぞんせい細胞さいぼう傷害しょうがい(ADCC)をおこなう。
活性かっせい受容じゅようたい抑制よくせいせい受容じゅようたい
NK細胞さいぼうはFc受容じゅようたい以外いがいにも、細胞さいぼう傷害しょうがい活性かっせい活性かっせいしたり抑制よくせいしたりする様々さまざま受容じゅようたい発現はつげんしている。これらは標的ひょうてき細胞さいぼうじょう様々さまざまなリガンドに結合けつごうし、NK細胞さいぼう応答おうとう制御せいぎょするのに重要じゅうようである。

NK細胞さいぼうがサイトカインに応答おうとうすることで、感染かんせん排除はいじょできる抗原こうげん特異とくいてき細胞さいぼう傷害しょうがいせいT細胞さいぼう獲得かくとく免疫めんえき応答おうとうによりしょうじるまでのあいだ、ウイルス感染かんせんをコントロールするのに役立やくだつ。NK細胞さいぼう患者かんじゃヘルペスウイルス感染かんせん初期しょきこう感受性かんじゅせいしめす。

抑制よくせいせい受容じゅようたい

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抑制よくせいせい受容じゅようたいは、MHCクラスI分子ぶんし認識にんしきしており、これによりなぜNK細胞さいぼうがMHCクラスI分子ぶんし発現はつげんひく細胞さいぼうころすのか説明せつめいできる。NK細胞さいぼう受容じゅようたいのタイプは構造こうぞうてき分化ぶんかしている。

  1. CD94:NKG2(ヘテロりょうからだ
    かじるい霊長れいちょうるい保存ほぞんされているCタイプレクチンファミリー受容じゅようたいで、HLA-Eのような典型てんけいてき(かつがたてき)なMHC I分子ぶんし認識にんしきする。HLA-Eの細胞さいぼう表面ひょうめんでの発現はつげん典型てんけいてきがたてき)なMHCクラスI分子ぶんしのリーダーペプチドの存在そんざい依存いぞんしているため、間接かんせつてきにではあるが、これは典型てんけいてきHLA分子ぶんし発現はつげんりょう検出けんしゅつする手段しゅだんになっている。
  2. Ly49(ホモりょうからだ
    比較的ひかくてき由来ゆらいふるいCタイプレクチンファミリー受容じゅようたいで、マウスでは複数ふくすう遺伝子いでんしがあるがヒトはにせ遺伝子いでんしが1つあるだけである。典型てんけいてきがたてき)なMHCクラスI分子ぶんし受容じゅようたい
  3. KIR(Killer cell Immunoglobulin-like Receptors)
    最近さいきん進化しんかしたIgさま細胞さいぼうがいドメインを受容じゅようたい遺伝子いでんしぞくぞくする。霊長れいちょうるいでは、典型てんけいてきなMHCクラスI分子ぶんしHLA-A, -B, -C)と典型てんけいてきHLA-G両方りょうほうたいする主要しゅよう受容じゅようたいである。特定とくていのHLAサブタイプに特異とくいてきなKIRもある。
  4. ILTまたはLIR(leucocyte inhibitory receptors)
    最近さいきん発見はっけんされたIg受容じゅようたいファミリーのメンバー。

細胞さいぼう傷害しょうがい機構きこう

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NK細胞さいぼう細胞さいぼうしつ顆粒かりゅうには、パーフォリングランザイムなどのタンパク質たんぱくしつふくまれており、これが細胞さいぼう傷害しょうがい活性かっせい中心ちゅうしんてき役割やくわりになう。パーフォリンは傷害しょうがいする細胞さいぼうのごくちかくで放出ほうしゅつされ、細胞さいぼうまくあなけてグランザイムや関連かんれん分子ぶんしなかれるようにする。グランザイムはセリンプロテアーゼであり、標的ひょうてき細胞さいぼう細胞さいぼうしつアポトーシス誘導ゆうどうする[2]免疫めんえきがくにおいてアポトーシスと細胞さいぼう溶解ようかい区別くべつ重要じゅうようである。ウイルスに感染かんせんした細胞さいぼう溶解ようかいするとウイルス粒子りゅうし放出ほうしゅつされてしまうが、アポトーシスならば内部ないぶのウイルスを破壊はかいすることができるからである。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Yong Ho Ku, KMD, PhD, Jae Hui Kang, KMD, PhD, Hyun Lee, KMD, PhD,."Effects of Phellinus linteus extract on immunity improvement: A CONSORT-randomized, double-blinded, placebo-controlled trial". Medicine (Baltimore).2022 Aug 26; 101(34): e30226, PMID 36042633
  2. ^ NK細胞さいぼう - 健康けんこう用語ようご基礎きそ知識ちしき”. 健康けんこう用語ようご基礎きそ知識ちしき. 2024ねん1がつ19にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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