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アレルゲン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

アレルゲンドイツ: Allergen)とは、アレルギー疾患しっかんっているひと抗体こうたい特異とくいてき反応はんのうする抗原こうげんのこと。一般いっぱんには、そのアレルギー症状しょうじょうこす原因げんいんとなる物質ぶっしつう。かんさくはされているが具体ぐたいてき症状しょうじょうがあるわけではないひとにおいても、その抗体こうたい反応はんのうする抗原こうげんについてもアレルゲンとぶ。さらに広義こうぎには、それにたいするアレルギー患者かんじゃおおいなど、アレルギーの原因げんいんによくなり物質ぶっしつのこと。「アレルばら[1]」や「アレルげん」と誤記ごきされることもある。

正確せいかくには抗体こうたい反応はんのうしてアレルギーをこす物質ぶっしつ抗原こうげん)そのものをすが、その抗原こうげんふくんだ物質ぶっしつ食品しょくひんなど)をすこともおおい。たとえばスギ花粉かふんしょうにおけるアレルゲンは Cry j 1(クリジェイワン)などの花粉かふんふくまれるタンパク質たんぱくしつ同定どうていされているが、一般いっぱんにはスギ花粉かふんしょうのアレルゲンはスギ花粉かふんとして認識にんしきされている。

アレルギー物質ぶっしつともいう(とくに、上記じょうきの「アレルギーの原因げんいんによくなり物質ぶっしつ」のことや、「アレルゲンをふくんだ物質ぶっしつ」のでそうばれる)。

免疫めんえき反応はんのうのひとつである抗原こうげん抗体こうたい反応はんのうにおける抗体こうたいをアンチボディ (antibody)、抗原こうげんをアンチゲン (antigen) というが、アレルゲンとはアンチゲンとアレルギーとを合成ごうせいした造語ぞうごである。アレルギーという疾患しっかんメカニズム)の提唱ていしょうしゃであるオーストリア小児科しょうにかフォン・ピルケーがそのようにんだ。

種類しゅるい分類ぶんるい

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アレルギーとアレルゲンの関係かんけいつぎように I から V がた分類ぶんるいされる。

アレルギー反応はんのう分類ぶんるい(GellとCoombs)[2]
反応はんのうがた 同義語どうぎご 抗体こうたい 抗原こうげん ディエーターサイトカイン 受身うけみ伝達でんたつ 皮膚ひふ反応はんのう 代表だいひょう疾患しっかん
Iがた反応はんのう 即時そくじがた
アナフィラキシーがた
IgE
IgG4(?)
外来がいらいせい抗原こうげん ヒスタミン
ECF-A
ロイコトリエン
PAFなど
血清けっせい 即時そくじがた 15-20ふん最大さいだい発赤はっせきと膨疹 アナフィラキシーショック、アレルギあれるぎせい鼻炎びえん結膜炎けつまくえん気管支きかんし喘息ぜんそく蕁麻疹じんましん、アトピーせい皮膚ひふえん(?)
IIがた反応はんのう 細胞さいぼう障害しょうがいがた
細胞さいぼう融解ゆうかいがた
IgG
IgM
外来がいらいせい抗原こうげん(ハプテン)
  • ペニシリンなどの薬剤やくざい

自己じこ抗原こうげん

  • 細胞さいぼうまく基底きていまく抗原こうげん
体系たいけい 血清けっせい 不適合ふてきごう輸血ゆけつによる溶血ようけつせい貧血ひんけつ自己じこ免疫めんえきせい溶血ようけつせい貧血ひんけつ特発とくはつせい血小板けっしょうばん減少げんしょうせい紫斑しはんびょう薬剤やくざいせい溶血ようけつせい貧血ひんけつ顆粒かりゅうだま減少げんしょうしょう血小板けっしょうばん減少げんしょうしょうグッドパスチャー症候群しょうこうぐん
IIIがた反応はんのう 免疫めんえきふく合体がったいがた
Arthusがたアルサス反応はんのう
IgG
IgM
外来がいらいせい抗原こうげん
  • 細菌さいきん薬剤やくざい異種いしゅ蛋白たんぱく

自己じこ抗原こうげん

  • 変性へんせいIgG、DNA
体系たいけい
リソソーム酵素こうそ
おそはつがた 3-8あいだ最大さいだいべにむら浮腫ふしゅ 血清けっせいびょうSLEリウマチいと球体きゅうたいじんえん過敏かびんせい肺炎はいえん(III+IV ?)、ABPA(I+III+IV ?)
IVがた反応はんのう 遅延ちえんがた
細胞さいぼうせい免疫めんえき
ツベルクリンがた
かんさくT細胞さいぼう 外来がいらいせい抗原こうげん
  • 細菌さいきんきん

自己じこ抗原こうげん

リンホカイン
IL-2
IFN-r
サイトカイン
T細胞さいぼう おそはつがた 24-72あいだ最大さいだいべにむらかたゆい 接触せっしょくせい皮膚ひふえんアレルギあれるぎせい脳炎のうえん、アトピーせい皮膚ひふえん(?)、過敏かびんせい肺炎はいえん(III+IV?)、移植いしょく拒絶きょぜつ反応はんのう結核けっかくせい空洞くうどうるい上皮じょうひ細胞さいぼうせい肉芽にくがしゅ

これらのうちで代表だいひょうてきなものは、花粉かふんしょう原因げんいんとなる花粉かふん通年つうねんせいアレルギあれるぎせい鼻炎びえん気管支きかんし喘息ぜんそくアトピーせい皮膚ひふえん原因げんいんとなる室内しつないちりハウスダスト)などである。とくに気管支きかんし喘息ぜんそくにおいてはきん重要じゅうようである。アナフィラキシーショックこしやすいなど深刻しんこく状態じょうたいになりやすいのは、食品しょくひんアレルギーにおける蕎麦そばや、はち(のどく)などがよくられている。

アレルゲンとしてよくられたものでなくとも、職業しょくぎょうじょう事情じじょうなどにより、その物質ぶっしつ長期間ちょうきかんせっするなどすれば、だんだんとかんさくすすみ、いずれアレルギーを発症はっしょうすることもあるという。

しかしながら、アレルゲンとなるのは上記じょうきのような物質ぶっしつちゅうふくまれるタンパク質たんぱくしつまたはとうタンパクであることがほとんどで、それが人体じんたい構成こうせいするタンパク質たんぱくしつとは異質いしつ異種いしゅタンパク質たんぱくしつぶ)であるため、排除はいじょ原理げんりはたらいて抗体こうたいさんされ、それによって過剰かじょう免疫めんえき反応はんのうであるアレルギー症状しょうじょうこすとかんがえられている。その意味いみでは、体内たいないはいっても異物いぶつとして認識にんしきされないものは、アレルゲンにもなりないとかんがえられている。たとえばみずしおなどは抗原こうげんにもアレルゲンにもなりない(下記かきのハプテンになりるものはのぞく)。

食物しょくもつアレルギーでは、牛肉ぎゅうにく大豆だいず、ピーナッツなど多様たようである。日本にっぽんでの調査ちょうさでは、ぜん年齢ねんれい食物しょくもつアレルギーの原因げんいん食物しょくもつ鶏卵けいらん38.7%、牛乳ぎゅうにゅう20.9%、小麦こむぎ12.1%、ピーナッツ4.8%、さかなたまご4.3%、果物くだもの4%、甲殻こうかくるい3.9%、魚類ぎょるい2.5%、ソバ2.4%、1.7%、大豆だいず1.5%であり、0歳児さいじではたまご55.6%、牛乳ぎゅうにゅう27.3%、小麦こむぎ9.6%で大半たいはんめるがそのたいせい獲得かくとくすることもおおく、20さいでは小麦こむぎ23.3%、甲殻こうかくるい22.2%、果物くだものるい18.9%、魚類ぎょるい12.2%とその内容ないよう変化へんかする[3]

アレルギー疾患しっかん患者かんじゃにおいては、こうした環境かんきょうちゅうのアレルゲンを排除はいじょするなどして、できるだけ接触せっしょくしないようにすることが重要じゅうようとされている。かんさくはしていても実際じっさいにアレルギーの発症はっしょうこしていないならば無理むりける必要ひつようはないともいわれるが、予防よぼう原則げんそく立場たちばからは若干じゃっかん議論ぎろんのこるところではある。

交差こうさ反応はんのう

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たとえば各種かくしゅのイネ植物しょくぶつ花粉かふんにおいては、ふくまれる抗原こうげん特徴とくちょうがきわめてているため、1種類しゅるい花粉かふんのみにかんじさくされていても、同種どうしゅのイネ花粉かふんにアレルギー反応はんのうこすことがられている。こうしたことを交差こうさ反応はんのうという。すなわち、ことなる抗原こうげんもアレルゲンになりる。交差こうさ抗原こうげんせいがあるという。

また、そうした花粉かふんしょう患者かんじゃのうち、花粉かふんではないものに反応はんのうする患者かんじゃもいる。カバノキ花粉かふんしょう患者かんじゃによくみられる口腔こうくうアレルギー症候群しょうこうぐんがそれで、リンゴモモなどバラ果物くだものべるとかゆみやしびれなどをかんじる。これら果物くだもの症状しょうじょうがないうちは問題もんだいないとおもわれるが、かゆみとうてきた場合ばあいひどくなると呼吸こきゅう困難こんなんとういたりアナフィラキシーショックをこすこともあるので注意ちゅうい必要ひつようである。医療いりょう機関きかん果物くだもののアレルギー検査けんさもできる。業務ぎょうむじょうゴム製品せいひんせっすることのおおひとにみられるラテックスゴム)アレルギーがあるが、これはアボカドバナナクリなどの食品しょくひん交差こうさ抗原こうげんせいがある。ラテックス・フルーツ症候群しょうこうぐんという。

仮性かせいアレルゲン

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アレルゲンそのものではないが、アレルギー発症はっしょうのメカニズムに関与かんよするケミカルメディエーター同様どうよう物質ぶっしつふくむなどにより、おお摂取せっしゅすると症状しょうじょう悪化あっかさせるとかんがえられている物質ぶっしつ仮性かせいアレルゲンとぶ。とくに食物しょくもつアレルギーにおいて、以下いかのようなものがあるとかんがえられている(鮮度せんどによってことなる場合ばあいがあるので、必要ひつようおそれぬこと)。食物しょくもつアレルギー以外いがいにはほとんど影響えいきょうしないとかんがえられている。実際じっさい症状しょうじょうへの影響えいきょうにおいて、これらをけることを疑問ぎもんする見方みかたもあるが、アレルギー患者かんじゃではなくとも鮮度せんどちた食材しょくざいによってヒスタミン中毒ちゅうどくなどの食中毒しょくちゅうどくこすことはある。

ハプテンとアジュバント

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分子ぶんしりょうちいさいためにあらたにそれにたいする抗体こうたいつくることはないとされているが、既存きそん抗体こうたい反応はんのうする物質ぶっしつがある。こうした物質ぶっしつをハプテンとぶ。不完全ふかんぜん抗原こうげん部分ぶぶん抗原こうげんともいう。アレルギー発症はっしょうにかかわるメカニズムとしては、タンパク質たんぱくしつむすびつくことがかんがえられており、こうしたはたらきをするタンパク質たんぱくしつをキャリアとぶ。一部いちぶ金属きんぞくアレルギーにおいて、その金属きんぞくタンパク質たんぱくしつとがむすくことによってアレルゲンとなり、アレルギーを発症はっしょうするメカニズムがかんがえられている。

また、アレルゲンのアレルゲンせいたかめる、すなわちIがたアレルギーであればIgEのさんせい能力のうりょくたかめる作用さよう物質ぶっしつもあるとかんがえられており、それをアジュバントぶ。くわしいメカニズムはあきらかになっていない。広義こうぎではアレルギー症状しょうじょう増悪ぞうあくさせ物質ぶっしつのことをもアジュバントとぶことがあるが、広義こうぎすぎるきらいがある。増悪ぞうあく物質ぶっしつ刺激しげき物質ぶっしつなどとかんがえるべきであろう。

アレルゲンのしつかつ

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上記じょうきのようにアレルゲンのおおくはタンパク質たんぱくしつであり、その性質せいしつからいって加熱かねつすると構造こうぞう変化へんかし、アレルゲンせいうしなったりよわくなったりすることがある。たとえばたまごなまよりも加熱かねつ調理ちょうりしたもののほうがアレルギーをこすちからよわいことがられている。果物くだものなども同様どうようであり、口腔こうくうアレルギー症候群しょうこうぐん患者かんじゃにおいて、せいのリンゴはべられないが加熱かねつしたり缶詰かんづめなどであれば症状しょうじょうこさないなどのこともある。しかしながら、こうした感受性かんじゅせい個人こじんによりことなるので、注意ちゅうい必要ひつようである。

補足ほそく

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現在げんざいでは、食品しょくひん衛生えいせいほうにもとづき、食品しょくひんパッケージ原材料げんざいりょう表示ひょうじに、アレルギー物質ぶっしつとして えび、かに、くるみ、小麦こむぎ、そば、たまごちち落花生らっかせい(ピーナッツ)がふくまれる場合ばあい使用しようしているむね表示ひょうじしなくてはならないようにさだめられている。詳細しょうさいは、特定とくてい原材料げんざいりょう参照さんしょう

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 毎日新聞まいにちしんぶん 校閲こうえつセンター (2018ねん7がつ4にち). “きょうのなおし「アレルばら”. 毎日まいにちことばplus. 毎日新聞まいにちしんぶん. 2023ねん11月26にち閲覧えつらん
  2. ^ 平成へいせい22年度ねんどリウマチ・アレルギー相談そうだんいん養成ようせい研修けんしゅうかいテキスト だい1しょう アレルギー総論そうろん 厚生こうせい労働省ろうどうしょう (PDF)
  3. ^ 厚生こうせい労働ろうどう科学かがく研究けんきゅう事業じぎょう食物しょくもつアレルギーの発症はっしょう要因よういん解明かいめいおよびたいせいかんする研究けんきゅう (PDF) 」p.3

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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