(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ゴム - Wikipedia コンテンツにスキップ

ゴム

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
天然てんねんゴムの原料げんりょうとなるラテックス採取さいしゅ

ゴム護謨ごむオランダ: gom)は、元来がんらい植物しょくぶつからだきずつけるなどしてられる無定形むていけいかつ軟質なんしつ高分子こうぶんし物質ぶっしつ現在げんざいでは、後述こうじゅつ天然てんねんゴムや合成ごうせいゴムのような有機ゆうき高分子こうぶんし主成分しゅせいぶんとする一連いちれん弾性だんせい限界げんかいたか弾性だんせいりつひく材料ざいりょうすなわち弾性だんせいゴムすことがおおい。

概念がいねん

[編集へんしゅう]

国際こくさいてき規格きかく制定せいてい機関きかんであるASTMでは「ゴムとは、おおきい変形へんけいからすみやかに、かつ力強ちからづよもともどることができ、また本質ほんしつてき溶媒ようばいけない状態じょうたい変性へんせいされうるか、あるいは変性へんせいされている物質ぶっしつ」と定義ていぎしている[1]。また、日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく(JIS)では「ベンゼンメチルエチルケトン、エタノール・トルエンどもにえ混合こんごうぶつなどの沸騰ふっとうちゅう溶剤ようざいに、本質ほんしつてきには不溶性ふようせい(しかし、膨潤しる)のあらためただるか,またすであらためただされているエラストマー」と定義ていぎされている[2]

日本語にほんごで「ゴム」と材料ざいりょうには3しゅあるとされ、1.弾性だんせいゴム(ゴム製品せいひんおよびその原料げんりょうゴム)、2.食品しょくひんぞうねばざいのりなどにもちいられる高分子こうぶんし糖類とうるいアラビアゴムなど)、3.チューインガムのベースとなるガム(チクル)があり、通常つうじょうは1の弾性だんせいゴムを[3]

英語えいごでは1の弾性だんせいゴムをrubber、2と3をガム(gum)とんでいる[3]

ゴムはカウチューク(caoutchouc)とばれることがあり、これはアマゾン流域りゅういき原住民げんじゅうみんなみだながという意味いみかたり(caa()とo-chu(なみだながす))に由来ゆらいしている[3][4]。カウチュークがラバー(rubber)とえられるようになったのは、イギリスのジョゼフ・プリーストリーがゴムのしょうせい発見はっけんしたさいをこすりるという意味いみのラブアウト(rub out)とんだことに由来ゆらいし、まもなくロンドンしゴム商品しょうひんされることとなった[3][4]

日本にっぽん歴史れきしじょう最初さいしょ登場とうじょうするのはアラビアゴムとされ、1631ねんには生薬きぐすりとして販売はんばいされていた記録きろくのこ[3]一方いっぽう弾性だんせいゴムは1845ねん正月しょうがつペリー将軍しょうぐん献上けんじょうした電線でんせん被覆ひふくざいとされ、このさい弾性だんせいゴムとアラビアゴムがおな仲間なかま認識にんしきされたことでいちくくりに「ゴム」と表現ひょうげんされるようになったとされる[3]

以下いかでは、弾性だんせいゴムについて詳述しょうじゅつする。

歴史れきし

[編集へんしゅう]

天然てんねんゴム

[編集へんしゅう]

天然てんねんゴムはクリストファー・コロンブスによって1490年代ねんだいにヨーロッパ社会しゃかいつたえられた[5]。1493ねんカリブ海かりぶかいしまったコロンブスはおおきくはずむゴムボールを非常ひじょうおどろいたとつたえられている[6]。コロンブスによってゴムはヨーロッパにつたえられたものの不思議ふしぎ物質ぶっしつとして珍重ちんちょうされたがその200年間ねんかんとく実用じつようされなかった[6]

1736ねん、フランスのシャルル=マリー・ド・ラ・コンダミーヌ南米なんべいおとずれたさい原住民げんじゅうみんがゴムの樹液じゅえきから防水ぼうすいぬのやゴムくつなどをつくっている様子ようす本国ほんごく報告ほうこくしたことからゴムの実用じつようすすめられるようになった[6]

パラゴムノキみきから採取さいしゅされるラテックス凝固ぎょうこさせたものはたか弾性だんせい限界げんかい弾性だんせいりつひくさをあわち、後世こうせいヨーロッパで産業さんぎょうようしん素材そざいとして近代きんだい工業こうぎょうかせない素材そざいとして受容じゅようされ、発展はってんすることとなった。そのため、パラゴムノキ以外いがい植物しょくぶつからの同様どうよう性質せいしつのゴムが探索たんさくされ、また同様どうよう性質せいしつ高分子こうぶんし化合かごうぶつ化学かがく合成ごうせい模索もさくされることとなった。この一群いちぐんのゴムを弾性だんせいゴムとび、先述せんじゅつのようにイギリスの科学かがくしゃジョゼフ・プリーストリーが鉛筆えんぴつをこすって (えい: rub) すのにてきすることを報告ほうこくしたこと(しゴムの発祥はっしょう)から、英語えいごではこするものを意味いみするラバー (rubber) ともばれることとなった[6]

また、天然てんねんのゴム類似るいじ物質ぶっしつとしてガタパーチャ(グッタペルカ)がられるようになった。

19世紀せいきまつグッドイヤーによる硫の発見はっけんによってゴム工業こうぎょうだい規模きぼ工場こうじょう生産せいさんへと変化へんかした[7]。さらに1888ねんダンロップによるニューマチックタイヤの特許とっきょ取得しゅとくによりゴム素材そざい自動車じどうしゃようタイヤにもちいられるようになり自動車じどうしゃ工業こうぎょう勃興ぼっこうにもつながった[7]

合成ごうせいゴム

[編集へんしゅう]

天然てんねんゴムの代替だいたいひん合成ごうせいゴム)の研究けんきゅうはじまったのは20世紀せいき初頭しょとうである[7]1913ねんには、アメリカのアールとカイラズが合成ごうせいゴムを発明はつめい[8]だいいち世界せかい大戦たいせんちゅうにはドイツにメチルゴム合成ごうせい工場こうじょうができつき180トン生産せいさんしていた[7]

しかし、合成ごうせいゴムの本格ほんかくてき研究けんきゅうはじまったのは1930年代ねんだいになってからである[7]天然てんねんゴムの主成分しゅせいぶんイソプレンじゅう合体がったいであるが、イソプレン (CH=C(CH3)−CH=CH2) のように2つのじゅう結合けつごうが1つのたん結合けつごうはさんだ構造こうぞうジエン化合かごうぶつ重合じゅうごうたいからゴムさま物質ぶっしつられると予測よそくされており、1930ねんにはアメリカでイソプレン分子ぶんしにおけるメチルもと塩素えんそ原子げんし置換ちかんしたクロロプレン (CH2=CCl−CH=CH2) の付加ふか重合じゅうごうにより、クロロプレンゴム (CR) が開発かいはつされた。1934ねんにはスチレン・ブタジエンゴム(SBR)の商業しょうぎょう生産せいさんはじまった[7]

日本にっぽんにおけるゴム製造せいぞうはじまり

[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおける近代きんだいてきゴム工業こうぎょうは、明治めいじ19ねん(1886ねん)に「土谷つちたに護謨ごむ製造せいぞうしょ(のち三田みたゴム)」によって硫ゴムの生産せいさん成功せいこうしたことにはじまる[9]創業そうぎょうしゃ土谷つちたにしげるりつ(1849-1919、松前まさきはん家老がろう勘定かんじょう奉行ぶぎょう田崎たさきただしじゅん土谷つちたにこま太郎たろう養子ようし) は、松前まさきはん収入しゅうにゅうげんとしていた沈没ちんぼつせん海産物かいさんぶつ採取さいしゅなどをとおして輸入ゆにゅうひんのゴムせい潜水せんすいふくり、明治維新めいじいしんこう上京じょうきょうし、兄弟きょうだいである田崎たさき忠篤ただあつ忠恕ただひろ長国ながくにとともに東京とうきょう浅草あさくさ神吉かみよしまち(げん東京とうきょう台東たいとう東上野ひがしうえの5丁目ちょうめ15番地ばんち)で海産物かいさんぶつ採取さいしゅ潜水せんすいようゴムころも修繕しゅうぜん生業せいぎょうとした[10][11]

ゴムころもやゴムホースはすべて輸入ゆにゅうひんであったため兄弟きょうだいでゴムの研究けんきゅうはじめ、明治めいじ16ねんにゴムのりをつくることに成功せいこうした[10]当初とうしょはアメリカから輸入ゆにゅうしたパラゴム(天然てんねんゴム)をこまかくって揮発きはつひたして膨潤させ、硫黄いおうかわやリサージなどをくわえて長時間ちょうじかんることでゴムのりをつくり、それをさらうつしてかわかし、綿棒めんぼうでのばしてゴムシートにしていた[10][12]

その独自どくじねつ硫方ほう考案こうあんし、明治めいじ19ねん土谷つちたに土谷つちたに護謨ごむ製造せいぞうしょ創立そうりつ明治めいじ23ねんごろには田崎たさき長国ながくに)が東京とうきょう職工しょっこう学校がっこう手島てじま精一せいいち教授きょうじゅ米国べいこく視察しさつ同行どうこうし、原動機げんどうきによるゴムりや蒸気じょうきによる加熱かねつかた使用しようについての知見ちけん[13]明治めいじ25ねんには土谷つちたにゴムを改組かいそして、土谷つちたに田崎たさきさん兄弟きょうだい意味いみする「三田みた護謨ごむ製造せいぞう合名ごうめい会社かいしゃ」に改称かいしょう東京とうきょう本所ほんじょ中ノ郷なかのごう業平橋なりひらばし(げん東京とうきょう墨田すみだ業平橋なりひらばし)にロールを保有ほゆうする本格ほんかくてき工場こうじょう稼働かどうさせた[10]防水ぼうすいゴムぬののほか、ホースやエボナイトなどの工業こうぎょう製品せいひん、ゴム玩具おもちゃやゴムくつ製造せいぞうし、にちしん戦争せんそうにち戦争せんそうはじまると軍需ぐんじゅひん製造せいぞう発展はってんした[13]

明治めいじ33ねんには、明治めいじ護謨ごむ製造せいぞうしょげん明治めいじゴム化成かせい)が設立せつりつされた[13]

原料げんりょうとなるゴムの栽培さいばいは、1875ねん明治めいじ8ねんごろから原産地げんさんち南米なんべいからインドシンガポールためしうえされはじめ、そのマレまれ半島はんとうなどで栽培さいばいされるようになった[14]日本にっぽんでは、1897(明治めいじ30)ねん以降いこう台湾たいわんへの移植いしょくこころみられ、1902(明治めいじ35)ねんには、マレーにおけるゴムえん経営けいえいはじめて日本人にっぽんじん進出しんしゅつし、1903(明治めいじ36)ねんマレまれ半島はんとうスレンバン付近ふきん笠田かさだ直吉なおきち中川なかがわ菊蔵きくぞうがゴムえん買収ばいしゅうしたのが、日本人にっぽんじん南方なんぽうでのゴム栽培さいばい嚆矢こうしであるとされている[14]

その南方なんぽう在住ざいじゅう日本人にっぽんじん商人しょうにん日本にっぽんからの企業きぎょうなどがし、米国べいこく自動車じどうしゃ産業さんぎょうきゅう成長せいちょうにより1910ねん明治めいじ43ねんごろにゴム相場そうば急騰きゅうとうすると、日本人にっぽんじんによるゴム栽培さいばい事業じぎょう本格ほんかくした[14]。これ以前いぜんよりマレー連邦れんぽう政府せいふ国籍こくせきわずゴムうえづけ助成じょせいきん貸付かしつけなど栽培さいばい支援しえんをしており、またジョホールおうms:Sultan Johor)が日本人にっぽんじんのゴム栽培さいばい業者ぎょうしゃたいしてとく好意こういてきであったことも進出しんしゅつ拍車はくしゃをかけた[14]三菱みつびし財閥ざいばつけいさん公司こうし筆頭ひっとうに、三井みつい藤田ふじた古河ふるかわ森村もりむらなどの財閥ざいばつ企業きぎょう進出しんしゅつし、1911ねんにはマレーでの日本人にっぽんじん経営けいえいのゴムえんは79をかぞえたが、だいいち大戦たいせんこうゴム価格かかく急落きゅうらくし、そのおおくが撤退てったいした[14]

物理ぶつりてき特徴とくちょう

[編集へんしゅう]

弾性だんせいゴムはこう弾性だんせい材料ざいりょうである。ここでう「こう弾性だんせい」とは弾性だんせい限界げんかいおおきいことを[15][16]。なお、弾性だんせいかんする指標しひょうには弾性だんせい限界げんかいのほかに弾性だんせいりつとうがあって、ゴムの場合ばあいには弾性だんせい限界げんかいおおきいが弾性だんせいりつちいさい(つまり、こう弾性だんせい限界げんかいであるがてい弾性だんせいりつである)。

ゴム弾性だんせい構造こうぞう

[編集へんしゅう]

分子ぶんしあいだ共有きょうゆう結合けつごう結合けつごうし、さん次元じげん網目あみめ構造こうぞう形成けいせいする高分子こうぶんしは、ガラス転移てんい温度おんど以上いじょうではゴム弾性だんせいという特殊とくしゅ性質せいしつしめゴム状態じょうたいとなる。ゴム弾性だんせいとは、ゴムのようにはず性質せいしつではなく、一見いっけんやわらかく塑性そせい変形へんけいこしやすそうにえるが、もともど応力おうりょくおおきく、変形へんけいしにくいといった性質せいしつし、つぎのような特徴とくちょうつ。

これはゴムの弾性だんせいエントロピー弾性だんせいばれる、固体こたいとはことなる機構きこう実現じつげんしているからである(固体こたいではエネルギー弾性だんせいという)。ゴムの弾性だんせいは、本来ほんらい規則きそく構造こうぞうたない(あきらしつ分子ぶんし配列はいれつが、外部がいぶからのちからにより規則きそくてき結晶けっしょう組織そしき)になり、これがもと不規則ふきそく配列はいれつもどろうとするときのちからによるもので、ねつ力学りきがくてきには応力おうりょくによるエントロピー低下ていかギブス自由じゆうエネルギー増加ぞうか)がもともどろうとするちからによる弾性だんせいである。

その物理ぶつりてき特徴とくちょう

[編集へんしゅう]

ゴムはねば弾性だんせいつ。ねばたび測定そくていにはムーニーねばたび英語えいごばんはかムーニーねばたびけい英語えいごばんやキャピラリーレオメータ英語えいごばんもちいられる。

実用じつようじょうに、たい摩耗まもうせい耐寒たいかんせい(ガラス転位てんい温度おんど)、たい熱性ねっせいたいこうせい(たい日光にっこう、オゾン)、耐油たいゆせい溶解ようかいパラメーター)などが重視じゅうしされる[17]

劣化れっか老化ろうか

[編集へんしゅう]

ゴムは時間じかんとともに性質せいしつ変化へんかし、れつしょうじたり、硬化こうか軟化なんかあるいはべとついたりする。これは、酸化さんか分子ぶんし切断せつだんなどがしゅ要因よういんとしてげられ、ひかり温度おんどみず存在そんざいとうによって加速かそくされる[18][19]使用しようちゅうだけでなく、貯蔵ちょぞうちゅうにもこる現象げんしょうである[18]。これは一般いっぱんてき劣化れっか現象げんしょうであり、高分子こうぶんし材料ざいりょうであればけられない。ゴムの劣化れっかについて、とく老化ろうかとも[18][19]老化ろうか防止ぼうしするため、ゴム製品せいひんには各種かくしゅ老化ろうか防止ぼうしざい使用しようする。

種類しゅるい

[編集へんしゅう]

原料げんりょうによる分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

ゴムにはゴムノキ樹液じゅえきラテックス)によってつくられる天然てんねんゴムと、人工じんこうてき合成ごうせいされる合成ごうせいゴム存在そんざいする。

天然てんねんゴム

[編集へんしゅう]
天然てんねんゴムの構造こうぞう

天然てんねんゴム (NR) はゴムノキ樹液じゅえきふくまれる cis-ポリイソプレン [(C5H8)n] を主成分しゅせいぶんとする物質ぶっしつであり、生体せいたいないでの付加ふか重合じゅうごう生成せいせいしたものである。樹液じゅえきちゅうでは水溶液すいようえき有機ゆうき成分せいぶん分散ぶんさんしたラテックスとして存在そんざいし、これをあつめて精製せいせい凝固ぎょうこ乾燥かんそうさせたものをなまゴムという。なまゴムも弾性だんせい材料ざいりょうとしてしゴムなどに使つかわれるが、硫黄いおうによるにより架橋かきょうさせるとひろ温度おんど範囲はんい軟化なんかしにくい弾性だんせい材料ざいりょうとなる。この硫法による弾性だんせい改良かいりょうチャールズ・グッドイヤーにより1839ねん発見はっけんされた[5]硫黄いおうほか炭素たんそ微粉びふんカーボンブラック)をくわえて硫すると特性とくせい非常ひじょう改善かいぜんされ、その含有がんゆうりょうによってかたさが変化へんかする。おおくの硬質こうしつゴム製品せいひんはこの炭素たんそのために黒色こくしょくをしている。くろくないゴム製品せいひんにはカーボンのわりに湿式しっしきシリカ二酸化にさんかケイ素けいそ微粉びふん)をくわえる。このためシリカは炭素たんそ(carbon)をふくまないにもかかわらずホワイトカーボンともばれる。

なおイソプレンを化学かがくてき重合じゅうごうさせたポリイソプレンは合成ごうせいゴムの一種いっしゅであるが、天然てんねんゴムのポリイソプレンとはいくらかの構造こうぞうてきちがいがある。まず合成ごうせいポリイソプレンでは現在げんざいのところ100%シスたいることはできず、少量しょうりょうのトランスたいふくまれている。また天然てんねんゴムはポリイソプレンのほか微量びりょうタンパク質たんぱくしつ脂肪酸しぼうさんふくむが、合成ごうせいポリイソプレンにはそのような不純物ふじゅんぶつはない。

天然てんねんゴムはほとんどシスがたのポリイソプレンから出来できているが、その一方いっぽうトランスがたのポリイソプレンから出来できているものをガタパーチャまたはグッタペルカとう。ガタパーチャは東南とうなんアジアに野生やせいするアカテツ常緑じょうりょく高木たかぎグッタペルカノキ (palaquium gutta) などのラテックスからつくられる天然てんねん樹脂じゅしひとつであり、天然てんねんゴム、ガタパーチャ双方そうほうともポリイソプレンから出来できているが、天然てんねんゴムはたか弾性だんせい限界げんかいしめし、グッタペルカはしめさない。この弾性だんせい限界げんかいちがいは幾何きか異性いせいたい性質せいしつによるものである。すなわち、シスがたのポリイソプレンは分子ぶんしくさりがった構造こうぞうをとって不規則ふきそくかたちりやすく、分子ぶんしくさり分子ぶんしくさりあいだおおくの隙間すきましょう分子ぶんしあいだりょく比較的ひかくてきちいさくなるため分子ぶんし同士どうし結晶けっしょうこらずやわらかな性質せいしつつようになるが、それにたいしてトランスがたのポリイソプレンは分子ぶんしくさり直線ちょくせん構造こうぞうをとりやすく、分子ぶんしくさり分子ぶんしくさり距離きょりちかくなるため分子ぶんしあいだりょくつよ作用さよう分子ぶんしあいだほろ結晶けっしょうこし、かた樹脂じゅしじょう物質ぶっしつとなる。

ただし、シスがたであることは弾性だんせい限界げんかい増大ぞうだい十分じゅうぶん条件じょうけんではない。ポリイソプレンにおいてはがわくさりであるメチルもと影響えいきょうもありたか弾性だんせい限界げんかいつのはシスがたであるが、たとえばクロロプレンゴムはトランスがたであるがたか弾性だんせい限界げんかいゆうする。

天然てんねんゴムにふくまれる微量びりょうタンパク質たんぱくしつ脂肪酸しぼうさんはポリイソプレンくさり末端まったん結合けつごうしているとかんがえられている。このタンパク質たんぱくしつアレルゲンとなることがある[20]

合成ごうせいゴム

[編集へんしゅう]

合成ごうせいゴムには、ポリブタジエンけい、ニトリルけいクロロプレンけいなどがある。いずれも付加ふか重合じゅうごうまたはきょう重合じゅうごうによってられる。以下いかにJISによる分類ぶんるいべつしめ[5]

用途ようとによる分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

ゴムは用途ようとにより自動車じどうしゃタイヤよう汎用はんようゴム(一般いっぱんようゴム)とそれ以外いがい特殊とくしゅ性能せいのう特殊とくしゅゴムにけられる[7][21]

形状けいじょうによる分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

ゴムは形状けいじょうにより固形こけいゴム、液状えきじょうゴム、粉末ふんまつゴムにけられる[7]。また、原料げんりょうポリマーの形状けいじょうによりドライラバーやラテックスにけられる[7]

工業こうぎょうてき利用りよう

[編集へんしゅう]

生産せいさん

[編集へんしゅう]

天然てんねんゴムの世界せかい生産せいさんりょうは70%がマレーシアインドネシアタイめられている。日本にっぽんはインドネシア、タイから輸入ゆにゅうしている。

国際こくさいてき流通りゅうつうしている天然てんねんゴムとしては、ゴムノキから採取さいしゅされたもと状態じょうたいちかいラテックス、ならびにラテックスから加工かこうされるRSSとTSRがある。以下いか解説かいせつする。

RSS(えい: ribbed smoked sheet
日本語にほんごでは、英語えいごめいやくした「いぶしけむり(くんけむり)シート」や、TSRとの対比たいひとして「視覚しかくてき格付かくづけゴム」とばれる。ラテックスをシートじょう凝固ぎょうこさせ燻製くんせいさせたもの。いぶしけむり目的もくてきとして、出荷しゅっか運送うんそう保管ほかんちゅうぼうカビ・防腐ぼうふ効果こうかるというものがある[22]視覚しかく格付かくづ[23]おこなわれ、しつのいいものから1Xごう、1ごう、2ごう、...、5ごう分類ぶんるいされる[22][24][25]
TSR(えい: technically specitied rubber
日本語にほんごでは、英語えいごめいやくした「技術ぎじゅつてき格付かくづけゴム」とばれる。ラテックスとう原料げんりょう目標もくひょう格付かくづけによりことなる)を、異物いぶつのぞ目的もくてき機械きかいてき粉砕ふんさいほそだん水洗みずあらいしたのち熱風ねっぷう乾燥かんそうし、プレス成型せいけいしたもの。技術ぎじゅつてき規格きかくもとづき格付かくづけされる[22][25]

これらのなか流通りゅうつうりょうおおいのがRSS3とTSR20といわれる等級とうきゅうである。貿易ぼうえき流通りゅうつうしているRSS3はタイでのみ生産せいさん日本にっぽん国内こくない流通りゅうつうのRSS3とTSR20のは1:2である。RSS3を上場じょうじょうしている取引とりひきしょ東京とうきょう商品しょうひん取引とりひきしょ[26]上海しゃんはい交易こうえきしょ、SGX(Singapore Exchange Ltd) など。 TSR20を上場じょうじょうしている取引とりひきしょ東京とうきょう商品しょうひん取引とりひきしょ[26]、SGX(Singapore Exchange Ltd)など。

加工かこう

[編集へんしゅう]

ゴムは もとり → こんり → 成形せいけい硫 などの加工かこう工程こうてい製造せいぞうされる。

もと
天然てんねんゴムの分子ぶんし分断ぶんだん加工かこうしやすくする工程こうていである。天然てんねんゴムをミキサーに投入とうにゅうるが、このときしゃくかいざいという分子ぶんし分断ぶんだんさせる効果こうかをもつ薬品やくひん添加てんかすることもある。
こん
もとりしたゴムにカーボンブラックはまりょうタルク酸化さんか亜鉛あえん炭酸たんさんカルシウムなど)、硫剤硫黄いおうひとし架橋かきょう物質ぶっしつ)、促進そくしんざいほかの薬品やくひん混入こんにゅう分散ぶんさんさせゴム製品せいひん製造せいぞうできるゴムにする。この工程こうていには1916ねんにF.H. Banburyにより開発かいはつされたバンバリーミキサー英語えいごばんやニーダー(kneader)などがもちいられる。
硫という言葉ことばおもにゴム業界ぎょうかい用語ようごで、正確せいかくには原料げんりょうたいして硫黄いおうなどによる架橋かきょう反応はんのうこさせることである。硫黄いおうねつはたらきでてい分子ぶんしのゴムを「橋渡はしわたし」し、弾性だんせい限界げんかいたかいゴムへとえる。硫黄いおうながむうえでは圧力あつりょく必要ひつようなため、液体えきたい窒素ちっそなどのこうあつガス使つか場合ばあいおおい。ただし、架橋かきょう反応はんのうすすみすぎるとぎゃく弾性だんせい限界げんかいひくくなり、弾性だんせいりつたかくなる。

おう用例ようれい応用おうよう製品せいひん

[編集へんしゅう]

やく75%が自動車じどうしゃようのタイヤおよびチューブにもちいられている(1997ねん[17]

  • 潤滑油じゅんかつゆ太平洋戦争たいへいようせんそうなか国内こくないでは南方なんぽう還送かんそうなまゴムを原料げんりょうとした潤滑油じゅんかつゆ製造せいぞうされていた。なまゴムを軽油けいゆ混合こんごう溶解ようかいさせ特定とくてい処理しょりをもって精製せいせい、その既存きそん潤滑油じゅんかつゆ調合ちょうごうするなどして目的もくてきとする潤滑油じゅんかつゆていた。とく戦争せんそう末期まっきおお製造せいぞうされ、もっとおお時期じきでは生産せいさんだかにしてどう時期じき原油げんゆ由来ゆらい潤滑油じゅんかつゆいちわりきょうほどと、まとまったりょうつくられた。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ ひのきあきら合成ごうせいゴムの現状げんじょう将来しょうらい」『生産せいさん技術ぎじゅつ』、生産せいさん技術ぎじゅつ振興しんこう協会きょうかい 
  2. ^ 長野ながの悦子えつこまめ知識ちしき33 ゴムの定義ていぎあれこれ」『日本にっぽんゴム協会きょうかい雑誌ざっしだい79かんだい8ごう一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽんゴム協会きょうかい、2006ねん 
  3. ^ a b c d e f 長野ながの悦子えつこまめ知識ちしき3 ゴムとラバーはどうちがう?(ゴムという言葉ことば由来ゆらい」『日本にっぽんゴム協会きょうかい雑誌ざっしだい74かんだい4ごう一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽんゴム協会きょうかい、2001ねん 
  4. ^ a b 野口のぐちとおるまめ知識ちしき6 ゴムの語源ごげん栄誉えいよしゴムとプリーストリ」『日本にっぽんゴム協会きょうかい雑誌ざっしだい74かんだい5ごう一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん日本にっぽんゴム協会きょうかい、2001ねん 
  5. ^ a b c 伊藤いとう眞義まさよし図解ずかい入門にゅうもんよくわかる最新さいしんゴムの基本きほん仕組しくみ』秀和しゅうわシステム、2009ねんISBN 978-4-7980-2425-7 
  6. ^ a b c d 化学かがくはじめて物語ものがたり”. 日本化学工業にほんかがくこうぎょう協会きょうかい. 2020ねん2がつ10日とおか閲覧えつらん
  7. ^ a b c d e f g h i 前田まえだ守一しゅいち配合はいごう設計せっけい (1) 原料げんりょうゴムの種類しゅるい性質せいしつ」『日本にっぽんゴム協会きょうかいだい51かんだい8ごう、632-640ぺーじ 
  8. ^ 下川しもかわ耿史『環境かんきょう年表ねんぴょう 明治めいじ大正たいしょうへん(1868-1926)』p.391 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 2003ねん11月30日刊にっかん 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:20522067
  9. ^ 我国わがくにゴム工業こうぎょう誕生たんじょう発祥はっしょうコレクション、2006ねん7がつ
  10. ^ a b c d 三田土護護製造株式会社のはなし西岡にしおかただしこう日本にっぽんゴム協会きょうかいひすてれしす、だい69かんだい1ごう(1996)
  11. ^ 土谷つちたにしげるりつ(つちやひでたつ)谷中たになか桜木さくらぎ上野公園うえのこうえん路地ろじうら徹底てっていツアー
  12. ^ 創刊そうかん70周年しゅうねん特別とくべつ企画きかく ゴム産業さんぎょう変遷へんせん60ねん 1992~2005ゴムタイム、2016ねん10がつ24にち
  13. ^ a b c 配合はいごう だい1ほう山田やまだひとし日本にっぽんゴム協会きょうかいだい84かん だい11ごう(2011)
  14. ^ a b c d e 戦前せんぜん日本にっぽん企業きぎょう東南とうなんアジアへの事業じぎょう進出しんしゅつ歴史れきし戦略せんりゃく- ゴム栽培さいばい農業のうぎょう栽培さいばい水産すいさんぎょう進出しんしゅつ中心ちゅうしんとして丹野たんのいさお 神奈川大学かながわだいがく 国際こくさい経営けいえい論集ろんしゅう No.51 2015-03-31
  15. ^ こう弾性だんせい 大辞林だいじりん
  16. ^ こう弾性だんせい 大辞泉だいじせん
  17. ^ a b 日本にっぽんゴム協会きょうかい へん『ゴム技術ぎじゅつ入門にゅうもん丸善まるぜん、2004ねんISBN 4-621-07393-1 
  18. ^ a b c カシオ EX-word XD-SF6200収録しゅうろく ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく電子でんし辞書じしょばん老化ろうか(ゴムの)』
  19. ^ a b カシオ EX-word XD-SF6200収録しゅうろく 百科ひゃっか事典じてんマイペディア 電子でんし辞書じしょばん老化ろうか(化学かがく)』
  20. ^ 長岡技術科学大学ながおかぎじゅつかがくだいがく化学かがくけい天然てんねんゴム研究けんきゅう
  21. ^ 1. 1 はじめに”. 東京とうきょう材料ざいりょう. 2020ねん6がつ24にち閲覧えつらん
  22. ^ a b c d 渡辺わたなべさとしこう, 近藤こんどうはじめゴムの工業こうぎょうてき合成ごうせいほう」『日本にっぽんゴム協会きょうかいだい90かんだい4ごう、2017ねん、210-214ぺーじdoi:10.2324/gomu.90.210  アーカイブページ
  23. ^ International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grade というマニュアルによる格付かくづ[22]
  24. ^ TOCOMにTSR上場じょうじょう日本にっぽん発信はっしんする天然てんねんゴムの国際こくさい指標しひょう”. 2019ねん10がつ23にち閲覧えつらん
  25. ^ a b TOCOM、TSR(技術ぎじゅつてき格付かくづけゴム)上場じょうじょう”. 株式会社かぶしきがいしゃポスティコーポレーション. 2019ねん10がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん10がつ23にち閲覧えつらん
  26. ^ a b だい10じょう1ごう : 業務ぎょうむ規程きてい”. 株式会社かぶしきがいしゃ東京とうきょう商品しょうひん取引とりひきしょ. 2019ねん10がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん10がつ23にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 荒木あらき孝二こうじ; 明石あかしみつる; 高原たかはらあつし; 工藤くどう一秋かずあき有機ゆうき機能きのう材料ざいりょう東京とうきょう化学かがく同人どうじん、2006ねんISBN 4807906100 
  • ルシール・H・ブロックウェイ、小出こいで五郎ごろうやく「グリーンウェポン 植物しょくぶつ資源しげんによる世界せかい制覇せいは」 (社会しゃかい思想しそうしゃ 1983ねん) ISBN 4-390-60232-2 C0022

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]