消けしゴム

左ひだり：製図せいず用よう消けしゴム
右みぎ：一般いっぱん的てきなプラスティック消けしゴム

鉛筆えんぴつと消けしゴムと鉛筆えんぴつ削けずり。

消けしゴム（けしゴム、英えい:eraser）とは、主おもに鉛筆えんぴつなどで書かかれたものを消去しょうきょするときに使つかう文房具ぶんぼうぐ。従来じゅうらいは天然てんねんゴムが主成分しゅせいぶんだったためそう呼よばれる。現在げんざいはプラスチック製せいが主流しゅりゅうのため字じ消けし（じけし）とも呼よばれるが、慣用かんよう的てきに消けしゴムと呼よばれている。英語えいごではrubber（ラバー、《米べい》eraser《イレイサー》）である。直方体ちょくほうたいのものが最もっとも一般いっぱん的てきであるが、ボールペンのような形かたちのノック式しきの消けしゴムなども販売はんばいされている。また、色調しきちょうは一般いっぱんに白色はくしょくのものが多おおいが黒色こくしょくなど色いろ付つきのものもある。

歴史れきし

かつてはパンが使つかわれていたが1770年ねん、イギリスのジョゼフ・プリーストリーが、ブラジル産さんのゴムに紙かみに書かいた鉛筆えんぴつの字じを消けし去さる性質せいしつがあることを発見はっけんしたのが消けしゴムの始はじまりである。発見はっけん日びとされる4月がつ15日にちはRubber Eraser Dayとされている。1772年ねん頃ころにはロンドンで市販しはんされており、「rub out（こするもの）」と呼よばれた。これが、今日きょうゴム一般いっぱんを意味いみする英単語えいたんごラバー（rubber）の語源ごげんである。なお、現在げんざいでもパンが消けしゴムとして用もちいられることはある。

日本にっぽんでは、明治めいじ初頭しょとうの1886年ねんに東京とうきょうの町まち工場こうじょうで製造せいぞうが始はじまった。そのころは消去しょうきょ性能せいのうがよいといえなかったが、その後ご改良かいりょうが加くわえられ、1959年ねん、日本にっぽんのシードゴム工業こうぎょう（現在げんざいの株式会社かぶしきがいしゃシード）がより消去しょうきょ性せいに優すぐれたプラスチック字じ消けしを開発かいはつし、以後いごその性能せいのうから市場いちばの主流しゅりゅうとなる。天然てんねんゴムは後述こうじゅつの特殊とくしゅ用途ようとの品しなを除のぞき、原材料げんざいりょうとして現在げんざいはほとんど使用しようされていない。

なお、消けしゴムが存在そんざいする前まえの時代じだい、パンを使つかっていた当時とうじは字じ消けしのパンを「消けしパン」、そして食事しょくじのためのパンを「食しょくパン」と呼よんでおり、それが現在げんざいの「食しょくパン」の語源ごげんとなっているといわれているが、これは俗説ぞくせつである。消けしゴムは1770年代ねんだいにはすでに製品せいひんとして存在そんざいしていた。少すくなくとも日本にっぽんに鉛筆えんぴつという語かたりができた時代じだいには、すでに消けしゴムもあったのである。そして、パンを字じ消けしとして使用しようした時代じだいでも、わざわざ字じ消けし専用せんようにパンが製造せいぞうされたわけではなく、製造せいぞう後ご時間じかんが経過けいかして食味しょくみに劣おとったパンを使用しようしていた。現在げんざいでも、木炭もくたんデッサンにおいて消けしゴムは紙かみを痛いためるため、油分ゆぶんの少すくないパンを用もちいて描線を消去しょうきょすることがある。

呼称こしょう

一般いっぱん的てきには原材料げんざいりょうのいかんにかかわらず「消けしゴム」という名称めいしょうが使用しようされるものの、消けしゴムメーカーの業界ぎょうかい団体だんたいである日本にっぽん字じ消しょう工業こうぎょう会かいをはじめ、メーカー側がわの表記ひょうきとしては「字じ消けし」が用もちいられている。

これは日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく（JIS）のプラスチック字じ消けしの規格きかく（JIS S 6050）に、名称めいしょうとして「プラスチック字じ消けし」「Plastic eraser」「プラスチック」などと表示ひょうじしなければならないとされているためである。なお、天然てんねんゴムを使用しようした消けしゴムの規格きかくであったJIS S 6004は1999年ねん、廃止はいしされている。

原理げんり

消けしゴムで字じを消けすようす

練ねり消けしゴム

鉛筆えんぴつで書かいた線せんが消きえる原理げんりは単純たんじゅんなものである。まず、鉛筆えんぴつで書かいた部分ぶぶんには黒鉛こくえん（鉛筆えんぴつの芯しんの成分せいぶん）が付着ふちゃくする。消けしゴムでこれをこすると、ゴムが紙かみに付着ふちゃくした黒鉛こくえんを剥はがし取とりながら、消けしゴム本体ほんたいより消けしくずとして削けずれ落おちる。さらにその消けしくずが紙かみから黒鉛こくえんを剥はがし取どりつつ、包つつみ込こんで取とり除のぞく。紙かみからは完全かんぜんに黒鉛こくえんが除去じょきょされて消けしくずに移行いこうし、消けしゴムには新あたらしい表面ひょうめんが露出ろしゅつする。以上いじょうのサイクルで消けしゴムが減へり、消けしくずが出でて字じが消きえる。

通常つうじょう、ボールペンなどのインクで書かかれた線せんは、インクが紙かみに染しみ込こむために通常つうじょうの消けしゴムで消けすことはできないが、砂すな消けしゴムは、ゴムに研磨けんま砂すなを配合はいごうしてあり、インクを紙かみごと削けずることによりこれを消けすことを目的もくてきにした製品せいひんである。 消けせるボールペンとして、書かいてすぐには紙かみに染しみ込こまない高こう粘ねば度たびインクを利用りようした、筆記ひっき後ご短時間たんじかんなら通常つうじょうの消けしゴムで消けせる筆記用具ひっきようぐも実用じつよう化かされている。

プラスチック消けしゴムは、ポリ塩化えんかビニルにフタル酸さん系けい可塑かそ剤ざいや炭酸たんさんカルシウム、安定あんてい剤ざいを加くわえて軟質なんしつに固かためたもので、消けしくずがすみやかに出でるため消けし字じ性能せいのうが高たかい。プラスチック消けしゴムやその消けしくずを、CDケースなどのプラスチック製品せいひんと長期間ちょうきかん接触せっしょくさせておくと、プラスチック消けしゴムに大量たいりょうに含ふくまれている可塑かそ剤ざいが移行いこうし、溶とけて融合ゆうごうしてしまうことがある。消けしゴムを覆おおうスリーブ（紙かみケース）は、消けしゴムを長時間ちょうじかん入いれておくとプラスチック製せい筆箱ふでばこなどがこの作用さようで溶とかされてしまうことを防ふせぐためのものでもある。またプラスチック消けしゴムはポリ塩化えんかビニルを使用しようしているので、燃もやすとダイオキシンが発生はっせいするなど環境かんきょう負荷ふかが大おおきい（これは学校がっこうなどで焼却しょうきゃく炉ろが使用しようされた時代じだいで問題もんだいとされたが、現代げんだい日本にっぽんの高度こうどなごみ焼却しょうきゃくでは影響えいきょうは少すくないとされる）。

前述ぜんじゅつの欠点けってんを克服こくふくし環境かんきょう負荷ふかを軽減けいげんする商品しょうひんとして、合成ごうせいゴム系けいなどの非ひ塩化えんかビニル（non PVC、PVCフリー）の消けしゴムも多おおくのメーカーで製品せいひん化かされており、プラスチック消けしゴムに近ちかい消しょう字じ率りつ90%台だいも実現じつげんされている。

種類しゅるい

プラスチック字じ消けし

プラスチック消けしゴムとも。プラスチック（主しゅとして、ポリ塩化えんかビニル）から生成せいせいした消けしゴムで、最近さいきんの主流しゅりゅうである。まとまるタイプ（まとまるくんなど）やハードタイプなど、配合はいごうにより様々さまざまなものが作つくられる。

ゴム字じ消けし

ラバー消けしゴムとも。古典こてん的てきには天然てんねんゴムやファクチスを主成分しゅせいぶんとして、加か硫で弾力だんりょくが与あたえられた消けしゴム。新あたらしいものではスチレン系けいやオレフィン系けいの合成ごうせいゴム（熱ねつ可塑かそ性せいエラストマー）も使つかわれる。シャープペンシルのキャップ内部ないぶや鉛筆えんぴつの頭部とうぶなどに付つけられる消けしゴムには、減へりが少すくなく強つよくて折おれにくいゴム字じ消けしが用もちいられる。

砂すな消けしゴム（砂すな消けし）

珪砂けいしゃなどの研磨けんま剤ざいを含ふくんだ消けしゴムで、インクの浸透しんとうした部分ぶぶんを紙かみごと削けずることによって消けす。最近さいきんでは修正しゅうせい液えきや修正しゅうせいテープを使用しようすることが多おおい。砂すな消けしゴムも研磨けんま砂すなを担持する接着せっちゃく力りょくと紙かみを削けずる機械きかい強度きょうどを要求ようきゅうされるため、天然てんねんゴムで作つくられる。欠点けってんとして、インクを削けずり取とるというと特性とくせい上じょう、同おなじ箇所かしょに対たいして1度どに使用しよう出来できる回数かいすうは少すくないといったことが挙あげられる。

練ねり消けしゴム（ねりけし）

美術びじゅつのデッサンやパステル画がで使用しようされる消けしゴム。柔やわらかく紙かみを傷いためない反面はんめん、消しょう字じ性せいは劣おとる。押おし付つけて消けしたり、変形へんけいさせて利用りようすることができ、消けしくずが出でない。ゴム材料ざいりょうに加か硫せずに作つくられる。

電動でんどう字じ消けし器き

主おもに製図せいずなどに用もちいられるものとして、先端せんたんに専用せんようの円柱えんちゅう状じょうの小ちいさな消けしゴムを取とり付つけて電気でんきによる振動しんどうや回転かいてんによって字じを消けす電動でんどう字じ消けし器きがある。

おもちゃ

また、消けすことに主しゅ目的もくてきを置おかない消けしゴムもある。例れいとしてはスーパーカー消けしゴムや漫画まんがのキャラクター（キン肉マンきんにくまん、ケシカスくんなど）、へんてこキャラクター（かみつきばあちゃん）、食たべ物ものなどを模もした消けしゴムが挙あげられる。これらのものには、成形せいけいディテールを優先ゆうせんするために可塑かそ剤ざいを減量げんりょうして強度きょうどを増ましたことにより、字じ消けしとしての性能せいのうが犠牲ぎせいになっているものがある。それらは文房具ぶんぼうぐというより、文具ぶんぐ流通りゅうつうを利用りようした、学校がっこうに持もち込こめるおもちゃという側面そくめんが強つよい。

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  頂点ちょうてんを多おおく設もうけた消けしゴム（カドケシ）
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  鉛筆えんぴつ先端せんたんのゴム字じ消けし
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  砂すな消けしゴム
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  練ねり消けしゴム
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  電動でんどう字じ消けし器き
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  消けしゴムのおもちゃ

日本にっぽんの主おもなメーカー

• トンボ鉛筆とんぼえんぴつ - MONO消けしゴムシリーズ
• シード - レーダーシリーズ
  • コクヨ
  • ライオン事務じむ器き（以前いぜんまでは田口たぐちゴム工業こうぎょうのOEMだった）
  • ※トンボ鉛筆とんぼえんぴつ（以前いぜんまではシードのOEMだった）
• ヒノデワシ - まとまるくんシリーズ
  • PLUS
  • 三菱鉛筆みつびしえんぴつ
• ラビット - フォームイレーザーシリーズ
  • パイロット
  • サクラクレパス（ラビットの親会社おやがいしゃである）
• ぺんてる - Ainシリーズ
• ホシヤ - Keep消けしゴムシリーズ
• ナカバヤシ - Logicalシリーズ

• アミン - オリジナル消けしゴム、キャラクター消けしゴムなど

• ヤジマ - オリジナル消けしゴム、キャラクター消けしゴムなど

• イワコー - オリジナル消けしゴム、キャラクター消けしゴムなど

三菱鉛筆みつびしえんぴつ、パイロット（上記じょうきでインデントされている企業きぎょう）といったいくつかの用品ようひんメーカーは自社じしゃ製造せいぞうせずOEM供給きょうきゅうを受うけている。日本にっぽん字じ消しょう工業こうぎょう会かいの加盟かめいメーカーの製造せいぞう品ひんであれば、パッケージ上じょうのクリーンマーク番号ばんごうで個別こべつの製造元せいぞうもとが確認かくにんできる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 新谷しんたに全ぜん利り「消けしゴム」『日本にっぽんゴム協会きょうかい誌し』第だい68巻かん第だい10号ごう、日本にっぽんゴム協会きょうかい、1995年ねん、714-719頁ぺーじ、doi:10.2324/gomu.68.714。 

関連かんれん項目こうもく

• 字じ消しょう板いた - 狭せまい部分ぶぶんだけを消けしたいときは、「字じ消けし板いた」を使つかう。これは色々いろいろな形かたちの穴あなの開ひらいた薄うすい金属きんぞく板いたで、穴あなの下したに消けしたい部分ぶぶんがくるようにしてから消けしゴムをかける。
• フリクション (筆記具ひっきぐ) - 字じ消けし用ようのゴムが付ついているが、消けす原理げんりは消けしゴムと異ことなり摩擦まさつ熱ねつによる。
• 黒板こくばん消けし - 板書ばんしょ用ようの消けし具ぐ。
• 修正しゅうせい液えき、修正しゅうせいテープ、インク消けし - インク用ようの修正しゅうせい具ぐ、消けし具ぐ。
• 打うち消けし線せん、訂正ていせい印しるし - 公文こうぶん書しょなどで用もちいられる、加筆かひつによる訂正ていせい方法ほうほう（見みえ消けし）。
• 訂正ていせい紙し - タイプライターの文字もじを覆おおい隠かくし、再ふたたびタイプライターで文字もじを打うち込こむことができるようにしたもの。

外部がいぶリンク

• 消けしゴム博物館はくぶつかん, シード - 消けしゴムのしくみと歴史れきし、製造せいぞう工程こうていなど。
• 「消けしゴムができるまで」 - 大阪おおさか府ふ東大阪ひがしおおさか市しにあるラビット（サクラクレパスグループ）の工場こうじょうを取材しゅざいして、原料げんりょうから消けしゴムができるまでの間あいだの工程こうていの流ながれを説明せつめいしている（全ぜん14分ふん） 2003年ねん サイエンスチャンネル
• 日本にっぽん字じ消しょう工業こうぎょう会かい
• JIS S 6050 プラスチック字じ消けし, 経済けいざい産業さんぎょう省しょう 日本にっぽん産業さんぎょう標準ひょうじゅん調査ちょうさ会かい