木炭もくたん

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白炭しろずみ備長ずみ
オガずみ
活性炭かっせいたん

木炭もくたん(もくたん)は、木材もくざい材料ざいりょうとしてつくすみである。てい酸素さんそ高温こうおん炭化たんかさせてつくり、炭素たんそ以外いがい成分せいぶん揮発きはつ成分せいぶんタール水分すいぶんなど)がのぞかれる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

ほぼ炭素たんそのみの成分せいぶんとなった木炭もくたんやした場合ばあいは、木材もくざいをそのままやす場合ばあいくらべ、可燃かねんせい気体きたい放出ほうしゅつせずほのおがらない特徴とくちょうがある[1]。また燃焼ねんしょうともな煤煙ばいえん健康上けんこうじょう有害ゆうがい揮発きはつ成分せいぶんによるガス発生はっせい比較的ひかくてきすくない[2]

木炭もくたんには、植物しょくぶつちゅうのカリウムに由来ゆらいする炭酸たんさんカリウムふくまれている。この成分せいぶんにより、着火ちゃっかせいく、ひく酸素さんそ濃度のうどちゅうはいなかうずもれるなど)でもえる。ただし水溶すいようせい成分せいぶんであり、木炭もくたんなが流水りゅうすいひたしたものはしてしまい特徴とくちょううしなわれる。

木炭もくたん製造せいぞうには木酢もくさくえきタール発生はっせいする。木酢もくさくえき蒸留じょうりゅう精製せいせいするとメタノール酢酸さくさん、さらに、テレピンクレオソートといったふく生成せいせいぶつることが出来できる。その可燃かねんせいガス英語えいごばん(主成分しゅせいぶんメタン一酸化いっさんか炭素たんそなど)が発生はっせいする。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

炭化たんかさせる素材そざい、および炭化たんか温度おんど焼成しょうせい時間じかんなどの方法ほうほうによって生成せいせいする木炭もくたん性状せいじょうはさまざまとなり、価格かかく用途ようとことなってくる。たとえば黒炭こくたんだけでも、かまつくり、温度おんどかまめまでの時間じかんなどで品質ひんしつおおきく変化へんかする。また炭化たんか不十分ふじゅうぶん場合ばあいけむり水分すいぶん発生はっせいし、ばくとべしやすいすみとなる。

日本にっぽんではナラブナカシクヌギなどの木材もくざい炭化たんかしたものおも使つかわれてきたが、近年きんねんではたけ炭化たんかしたたけずみ注目ちゅうもくされている。また、輸入ゆにゅうずみにはマングローブすみなども存在そんざいする。

オガずみ比較的ひかくてき安価あんかあつかいやすく、備長ずみのような特性とくせいであるため炭火すみびしょう飲食いんしょくてん多用たようされているものの、一般いっぱんへの知名度ちめいどひくく、形状けいじょう印象いんしょうから練炭れんたん誤解ごかいされている場合ばあいもあるが、日本にっぽんにオガずみよう形状けいじょう練炭れんたんい。オガずみふくめた成形せいけい木炭もくたんは、中国ちゅうごくで「せいずみつくえせいすみ)」とばれ、日本にっぽん提携ていけい会社かいしゃ技術ぎじゅつ指導しどうにより、現地げんちだい規模きぼ工場こうじょう製造せいぞうされている。

製造せいぞう[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおける木炭もくたん歴史れきし[編集へんしゅう]

炭焼すみやかま 北海道ほっかいどう札幌さっぽろ厚別あしべつ北海道ほっかいどう開拓かいたくむら」に復元ふくげんされたもの

木炭もくたんには、ずみ(にこずみ=まつぐりなどのやわらかい原料げんりょうとし、ふくずみほう※で作成さくせいするやわらかい木炭もくたん)、あらすみ(あらずみ=くぬぎならかしなどのかた原料げんりょうとし、ふくずみほう炭窯すみがまきで作成さくせいするかた木炭もくたん)、すみ(いりずみ=ずみあらすみきした木炭もくたん)の三種さんしゅがある。

ずみおも製鉄せいてつ冶金やきんに、あらすみすみ暖房だんぼう炊事すいじのほか、防腐ぼうふ防湿ぼうしつ飲料いんりょうすい濾過ろかにも利用りようされていた(いずれのすみも、現在げんざいでも同様どうようもちいられている)。

ふくずみほう 木材もくざいかさねてをつけたのちに、をかけてきにする方法ほうほう

考古学こうこがく研究けんきゅう成果せいかによって、日本にっぽん列島れっとうにおいてはしん石器せっき時代じだいころから木炭もくたんもちいられていたと推定すいていされている。

平安へいあん時代じだいには山林さんりん中心ちゅうしん炭焼すみやきがひろおこなわれて商品しょうひんされた(『本朝ほんちょう題詩だいし』、大原女おはらめ参照さんしょう荘園しょうえんなどの年貢ねんぐとしても徴収ちょうしゅうされた。

すみ平安へいあん時代じだい登場とうじょうした比較的ひかくてきあたらしいすみで、火付ひつきわるいがなが燃焼ねんしょうするのが特徴とくちょうであった(漢方薬かんぽうやくいて、生薬きぐすりすみになるまでったものもすみという)。

あらすみかまがい消火しょうかほう炭焼すみやきの最後さいご段階だんかいで、釜口かまぐちおおきくけて空気くうきれ、高温こうおんにしてからそとし、はいをかけてす)による白炭しろずみ主流しゅりゅうであったが、長持ながもちはするものの硬質こうしつ火付ひつきわるいのが特徴とくちょうであった。

室町むろまち時代ときよ後期こうきから江戸えど時代じだいにかけて、かまない消火しょうかほうかまえてからそとす)による、軟質なんしつ火付ひつき黒炭こくたんされた。ただし、白炭しろずみ黒炭こくたん区別くべつ確立かくりつしたのは近代きんだい以後いごであるとわれている[3]

にちちゅう戦争せんそう拡大かくだい局面きょくめんになると、木炭もくたん生産せいさん流通りゅうつう停滞ていたいし、市民しみん生活せいかつ支障ししょうきたすようになった。

1939ねんからは農林省のうりんしょう文部省もんぶしょうだい日本にっぽん青年せいねんだんにより木炭もくたん増産ぞうさん報国ほうこく運動うんどうおこなわれ、青年せいねんだん学生がくせいせいずみ現場げんばおもむ勤労きんろう動員どういんおこなわれるようになった[4]同年どうねん12がつ29にちからは木炭もくたん配給はいきゅう統制とうせい規則きそく制定せいていされ、木炭もくたんにも公定こうてい価格かかく設定せってい、やがて配給はいきゅうせい物品ぶっぴんひとつとなった。

1940ねん3がつには、木炭もくたん需給じゅきゅう調節ちょうせつ特別とくべつ会計かいけいほう昭和しょうわ15ねん3がつ30にち法律ほうりつだい73ごう)が公布こうふ木炭もくたん国家こっか管理かんりとなり、沖縄おきなわけんのぞ都道府県とどうふけん木炭もくたん事務所じむしょ設置せっちされた。木炭もくたん事務所じむしょでは、木炭もくたんかいづけうれはらい保管ほかんかんする事項じこう所掌しょしょうし、木炭もくたん需給じゅきゅう調節ちょうせつかんする事務じむ分掌ぶんしょうした[5]だい世界せかい大戦たいせんちゅう配給はいきゅう体制たいせいでは、生産せいさんしゃ価格かかく全国ぜんこく統一とういつとされたが、消費しょうひしゃ価格かかくはちだい消費しょうひ東京とうきょう神奈川かながわけん埼玉さいたまけん愛知あいちけん京都きょうと大阪おおさか兵庫ひょうごけん福岡ふくおかけん)において、一般いっぱん消費しょうひよりもかず%割増わりましされた価格かかくとなった[6]木炭もくたん流通りゅうつう統制とうせいは、戦後せんご1950ねん3がつまでつづいた[7]

日本にっぽん木炭もくたん生産せいさんりょうは、1950ねん年間ねんかんやく200まんトンを記録きろくしていたが、そのはエネルギー利用りよう変化へんかにより、1970ねんにはやく28まんトン、1980ねんにはやく7まんトンと急激きゅうげき減少げんしょうした[8]当時とうじ様子ようすとしては、「炭焼すみやきがわるるなんてかんがえられなかった。」「あっというあいだ出来事できごと。どれだけすみいてもいつかなかった時代じだいうそのようにおもえた。」といった証言しょうげんのこされている[9]

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

日本にっぽん木炭もくたん[編集へんしゅう]

あないタイプのオガずみ
黒炭こくたんななりん岩手いわてナラずみ
着火ちゃっかざい塗布とふされ、簡単かんたん着火ちゃっかできる成形せいけい木炭もくたん

日本にっぽん木炭もくたんは、400℃あたりの温度おんど炭化たんかすすめたのち精錬せいれん工程こうていとしてこまかな「ネラシ」がはいるのが特徴とくちょうである。白炭しろずみ空気くうきれて炭化たんか成分せいぶんばすネラシをおこない、黒炭こくたん密閉みっぺいしたない時間じかんをかけて炭化たんかげるネラシをおこなう。

※ネラシ=炭化たんかわりに炭窯すみがま温度おんどげてすみなかのガスぶんき、同時どうじめること。

  • 白炭しろずみカシけいかた木材もくざい使つかわれる。たたくとてつきんのような金属きんぞくおんがするのが特徴とくちょう炭窯すみがまぐち燃料ねんりょうとなるたきぎやし、かま全体ぜんたい温度おんどげ、そのぐちじてかま内部ないぶを400℃あたりで5日間にちかんほど熟成じゅくせいさせる。このあいだ、ほとんど酸素さんそ供給きょうきゅうされなくてもカシの可燃かねん成分せいぶんがガスとして徐々じょじょて、かまない温度おんど維持いじされる。かまけむりからは酢酸さくさんふくんだつよ刺激しげきしゅうるが、そのにおいやいろ工程こうてい見極みきわめる要素ようそひとつでもある。その炭窯すみがまぐち徐々じょじょひらいて炭化たんか成分せいぶんばし、すみ温度おんどを1000℃ - 1200℃まで上昇じょうしょうさせたのち、すみ数時間すうじかんかけてかまそとして、随時ずいじすみやかに「」(はいぜてみずふくませたもの)をかけ、1にちかけてやす。これによりかためられ、炭素たんそ純度じゅんどたかく、はいによりしろっぽい外見がいけんとなる。これら一連いちれん作業さぎょうには、伝統でんとうてき手作業てさぎょうによる技法ぎほう場合ばあいおよそ2週間しゅうかんようする。これらの作業さぎょう工程こうていによって燃焼ねんしょうしゅう非常ひじょうすくなく、長時間ちょうじかん安定あんていした火力かりょく持続じぞくする白炭しろずみ出来上できあがる。白炭しろずみはその特性とくせいから飲食いんしょくてんなど業務ぎょうむ用途ようと需要じゅようたかく、また白身しろみぎょなど素材そざい本来ほんらいかおりが重視じゅうしされる調理ちょうりにもく。
    • 備長ずみ紀伊きい国田こくた商人しょうにん備中びっちゅうちょう左衛門さえもん(備長)が販売はんばいしたことが名前なまえ由来ゆらいである。
  • 黒炭こくたんナラけい木材もくざいおお使つかわれる。400℃あたりで熟成じゅくせいさせたのち炭窯すみがまけむりどうじ、徐々じょじょに700℃あたりまで温度おんど上昇じょうしょうさせ、つぎぐちけむり出口でぐちじて炭窯すみがま全体ぜんたい密閉みっぺいし、さんかけ状態じょうたい時間じかんをかけて鎮火ちんか自然しぜん冷却れいきゃくおこな完成かんせいする。白炭しろずみよりも炭素たんそ以外いがい成分せいぶんおおのこっていることから火力かりょくと、燻製くんせいのような芳香ほうこうがはっきりあり、比較的ひかくてき着火ちゃっかしやすく燃焼ねんしょう時間じかんも1〜2時間じかん以内いない程度ていどなので、バーベキュー(パーティー)などにく料理りょうりく。
  • 成形せいけい木炭もくたん
    • オガずみ…オガクズを加熱かねつ圧縮あっしゅくして製造せいぞうされた成型せいけいたきぎオガライト」を炭化たんかさせたもの。形状けいじょう性質せいしつ製品せいひんごとに均質きんしつであり、白炭しろずみ特性とくせいでありながら比較的ひかくてき安価あんかで、ばくとべ危険きけんせいすくなく、飲食いんしょくぎょう多用たようされている。密閉みっぺいした炭窯すみがまを1200℃ちかくまで熟成じゅくせいさせたあと、仕上しあげの最後さいごに、一気いっき空気くうきれて(またはがいして)炭化たんか成分せいぶんばし、急冷きゅうれいさせめる(ネラす)。製法せいほうとしては白炭しろずみちかく、性質せいしつ白炭しろずみる。オガずみおおくは、コストの関係かんけいから日本にっぽん企業きぎょう中国ちゅうごく東南とうなんアジアの現地げんち法人ほうじんなどで製造せいぞうされており、それらのだい規模きぼ生産せいさん工場こうじょうでは一連いちれん作業さぎょうをオートメーションしている場合ばあいおおい。
  • たけずみ
  • 活性炭かっせいたん

木炭もくたん規格きかく[編集へんしゅう]

1940ねん昭和しょうわ15ねん)、日本にっぽんでは全国ぜんこくなな大都市だいとしにおいて木炭もくたん配給はいきゅう制度せいどはじめることとし、木炭もくたん規格きかくすすめられた。しかし東京とうきょうだけでも流通りゅうつうしている木炭もくたん種類しゅるいは10700しゅ、4等級とうきゅうわかれ、形状けいじょうまるわり大丸だいまる中丸なかまるほそまるなど多岐たきにわたることから混迷こんめいきわめた。結果けっかてきすみしゅ白炭しろずみ黒炭こくたんべつ)、等級とうきゅうべつ一等いっとうとう等外とうがい)、銘柄めいがらクヌギナラマツ一般いっぱんてき白炭しろずみ黒炭こくたん)、産地さんちべつ東北とうほく関東かんとう北陸ほくりくなど)の基準きじゅんから木炭もくたん規格きかくおこなわれた。配給はいきゅう統制とうせいするがわ消費しょうひしゃにはかりやすくなった反面はんめん蒲焼かばやなどにもちいる備長ずみや(ちゃようの)さくらずみ従前じゅうぜんきょく上品じょうひんあつかいができなくなる[10]など混乱こんらんしょうじた。

外国がいこくさんすみ[編集へんしゅう]

  • 欧米おうべいの)バーベキューずみ
  • マングローブすみ格安かくやすのバーベキューずみおおく、安価あんかである。
  • ヤシガラすみ…ヤシから木炭もくたんしたもの。ヤシからなまのままでは強固きょうこ繊維せんいしつおおいため、乾燥かんそう木炭もくたんしたあと粉砕ふんさいし、粉炭ふんたんをタピオカ澱粉でんぷんなどで各種かくしゅ形状けいじょうかためて燃料ねんりょうとして販売はんばいされている(「ラウンドストーブ」など)。オガずみのようなあないた棒状ぼうじょう成形せいけいされたものは「オガずみ」という名称めいしょう販売はんばいされている場合ばあいもある。

用途ようと[編集へんしゅう]

木炭もくたん自動車じどうしゃ 1937ねんがたビュイック(2010ねん11月27にち撮影さつえい
木炭もくたん(デッサンよう
チャコールペンシル

燃料ねんりょうよう[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは戦後せんご石油せきゆ都市としガスなどが普及ふきゅうするまでは、産業さんぎょう分野ぶんや都心としん一般いっぱん家庭かていでも普通ふつうもちいられる燃料ねんりょうであった。自動車じどうしゃ燃料ねんりょうとしてもちいられた時期じきもある(木炭もくたん自動車じどうしゃたたらなど古来こらい製鉄せいてつ木炭もくたんによるものだったが、西洋せいようしき製鉄せいてつほう流入りゅうにゅうによって一部いちぶのぞ石炭せきたんってわられた。

現在げんざい日常にちじょう家庭かていよう燃料ねんりょうとしての用途ようとよりも、キャンプバーベキューなどのレジャーもちい、またとり蒲焼かばやき焼肉やきにくなどで、「炭火すみび」をこだわりとする飲食いんしょくてんなど業務ぎょうむよう使用しようされることおおい。

注意ちゅういてん[編集へんしゅう]

ばくとべ[編集へんしゅう]

ねっせられた木炭もくたん突然とつぜんぜることをばくとべ(ばくちょう)という。ひどい場合ばあい木炭もくたん爆発ばくはつてき破砕はさいと「パーン」という鉄砲てっぽうでもったようなだい音量おんりょう周囲しゅういひびわたるので注意ちゅうい必要ひつようである。これは木炭もくたん繊維せんいしつめられた水分すいぶん揮発きはつぶんが、急激きゅうげき高温こうおんでガス膨張ぼうちょうし、それが可燃かねんせい揮発きはつぶん繊維せんいしつないでのしょう爆発ばくはつこすことが発生はっせい原理げんりである。

ばくとべ原因げんいんとしては、木炭もくたん吸湿きゅうしつした水分すいぶんによるものがもっともおおい。これは木炭もくたん乾燥かんそうざいえ、あついビニールぶくろ外気がいきはいらないよう密封みっぷう保存ほぞんすると、ある程度ていどふせぐことが出来できる。店舗てんぽ長期間ちょうきかんかれた、だんボールや紙袋かみぶくろりの木炭もくたんばくとべこりやすいとえるので、なるべくなら窯元かまもとからの直販ちょくはん購入こうにゅうし、出荷しゅっか短期間たんきかんのうちに使つかるのがこのましい。

備長ずみ場合ばあい硬質こうしつであるためむしろ危険きけんで、金属きんぞくおんともなってばくとべし、あつねっせられた木炭もくたんへんなどにむと重傷じゅうしょうとなるため要注意ようちゅういである。これをふせぐには、すでおこっている燃焼ねんしょうちゅう木炭もくたんちかくにいて(ちょうななりん場合ばあいえんうえに備長ずみならべてもいい)、15-20ふんほど予熱よねつ乾燥かんそうさせて、着火ちゃっかする方法ほうほう有効ゆうこうである。

なお、オガずみ加工かこうヤシガラずみ、ハイカロずみのような成形せいけい木炭もくたん場合ばあいは、原料げんりょう繊維せんいしつこまかく裁断さいだんされているため、ばくとべはほとんどこらない。

燃焼ねんしょうガス[編集へんしゅう]

木炭もくたんは、練炭れんたんとはことなり硫黄いおう鉱物こうぶつしゅうはしないものの、同様どうよう一酸化いっさんか炭素たんそなど有害ゆうがい燃焼ねんしょうガスを多量たりょう発生はっせいするので、室内しつないでのななりんや、囲炉裏いろりなど、煙突えんとつともなわない屋内おくない燃焼ねんしょう器具きぐ使用しようは、とくに換気かんきけなければならない[11][12]日常にちじょうてき厨房ちゅうぼう使用しようする場合ばあいは、ガスコンロと同様どうよう位置いち設置せっち換気扇かんきせん稼働かどうさせたほうがよい(炭火すみびとりてんおおくはそのようになっている)。

着火ちゃっかざい[編集へんしゅう]

燃焼ねんしょうちゅう着火ちゃっかざい投入とうにゅうすると、おもわぬ火災かさいとなる危険きけんせいがある。また、バーベキューなど食品しょくひんちょくいて調理ちょうりする場合ばあいに、安価あんか簡単かんたん着火ちゃっか可能かのうなワックスけい使用しようするとそのにおいが食品しょくひん付着ふちゃくあじかおりを劣化れっかさせる可能かのうせいがあり、かみ使用しようした場合ばあいはそのえカスの紙片しへん食品しょくひん付着ふちゃくしてしまう。とくに、燃焼ねんしょう安全あんぜんせい考慮こうりょしていないインクで印刷いんさつされたかみ使用しようすると、当然とうぜんその影響えいきょうけることになる。

美術びじゅつよう[編集へんしゅう]

美術びじゅつ世界せかいいて、鉛筆えんぴつほどのほそさのえだ炭化たんかしたものを、デッサンや木炭もくたん油絵あぶらえなどの下書したがきに使用しようする。木炭もくたん粉末ふんまつ粘土ねんどぜたものをしんにしたチャコールペンシル(鉛筆えんぴつがた)もあり、これもまた、木炭もくたんデッサンなどに使用しようする。

※チャコールペンシルは、略称りゃくしょうとして”チャコペン”とばれることがおおい。ぎゃくに”チャコール”と単体たんたい場合ばあいは、「あおみのかったくろ」といういろ名前なまえになる。なお、裁縫さいほう道具どうぐにもおな名前なまえのものがあり、ぬの目印めじるしをつけるさい利用りようされるが、いろしろあおあか主流しゅりゅうであり、くろいものはかなりめずらしい。

はなずみばれるはなをそのまま炭化たんかし、かたちたのしむインテリアが500ねん以上いじょうまえから日本にっぽん存在そんざいする。また、木炭もくたんこけなどをわせたものが近年きんねんたんアート」として販売はんばいされている。

漆器しっき金工きんこうなどではふるくから研磨けんま使用しようされている。とぎずみにはほおずみ駿河するがすみ蝋色ろいろずみなどの種類しゅるいがある。

農業のうぎょうよう[編集へんしゅう]

木炭もくたん土壌どじょう改良かいりょうざいとしても利用りようされ、農業のうぎょう用途ようとにおいてはいぶしずみ(くんたん)またはバイオずみえい: biochar、バイオチャー)ともばれる。木炭もくたんには透水とうすいせい改善かいぜん効果こうかみとめられているほか、研究けんきゅう途上とじょうであるが、土壌どじょうへの炭素たんそ貯留ちょりゅう期待きたいされるほか[13]原料げんりょう処理しょりほうによっては保水ほすいせいこえせいイオン交換こうかん容量ようりょう)が付与ふよ可能かのうであるとかんがえられている[14][15]

日本にっぽんにおけるすみ農業のうぎょう利用りようは、1697ねん元禄げんろく10ねん)にかれた宮崎みやざき安貞やすさだの『農業のうぎょう全書ぜんしょ』にしるされた「火糞ほくそ(やきごえ)」にさかのぼることができる[16]。「いぶしずみ」という呼称こしょうひろめたのは、明治めいじ33ねんに「いぶしずみ肥料ひりょう」(いぶしずみ糞尿ふんにょう馴染なじませた肥料ひりょう)を発明はつめいした小柳津おやいづ勝五郎かつごろうわれる[17]現代げんだいでは、地力じりき増進ぞうしんほうもとづく政令せいれい指定してい土壌どじょう改良かいりょう資材しざいとして木炭もくたん植物しょくぶつせいからすみふくむ)が指定していされ[18]土壌どじょう透水とうすいせい改善かいぜんしゅたる効果こうかとしてうたうことがみとめられている[19]前述ぜんじゅついぶしずみ肥料ひりょう肥料ひりょう取締とりしまりほうにおいて特殊とくしゅ肥料ひりょう指定していされているが、現代げんだいではほとんどもちいられない[17][20]

日本にっぽん国外こくがいにおいては、ブラジル先住民せんじゅうみん集落しゅうらくあとにみられるテラプレータばれる人為じんい改良かいりょうされた土壌どじょうバイオマス由来ゆらいすみふくんでおり、通常つうじょう熱帯ねったい土壌どじょうより土壌どじょう肥沃ひよくたかいことが2000年代ねんだい注目ちゅうもくされ、これをバイオずみんでその利用りよう研究けんきゅうさかんになった[21][22]

その[編集へんしゅう]

木炭もくたんおも多孔たこうしつのものがおおく、このほそあな微細びさいもの吸着きゅうちゃくすることから脱臭だっしゅうざい濾過ろかざいとして使つかわれることもある。とく活性炭かっせいたんはそれらの能力のうりょくすぐれている。調しらべ湿しめにも利用りようされる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ただし生成せいせいした一酸化いっさんか炭素たんそ表面ひょうめん付近ふきん燃焼ねんしょうえんしょうじる。
  2. ^ ただしどのような燃料ねんりょうおなじく一酸化いっさんか炭素たんそ発生はっせいけられず、ひく酸素さんそ濃度のうどちゅうでは、完全かんぜん燃焼ねんしょうせず放出ほうしゅつされるので、った空間くうかんでは危険きけんであり換気かんき不可欠ふかけつとなる。
  3. ^ 田村たむらけん歴史れきしがく事典じてんだい14かん木炭もくたん」(弘文こうぶんどう
  4. ^ 日本にっぽん労働ろうどう年鑑ねんかん 特集とくしゅうばん 太平洋戦争たいへいようせんそう労働ろうどう運動うんどう だいへん 言論げんろん統制とうせい文化ぶんか運動うんどう だいさんしょう 教育きょういく運動うんどう 法政大学ほうせいだいがく大原おおはら社会しゃかい問題もんだい研究所けんきゅうじょ 2017ねん10がつ7にち閲覧えつらん
  5. ^ 木炭もくたん事務所じむしょ”. アジア歴史れきし資料しりょうセンター. 2020ねん6がつ6にち閲覧えつらん
  6. ^ すみいちひょうきゅうじゅういちえんたきぎ同時どうじ値上ねあげ」『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ22ねん7がつ17にち.2めん
  7. ^ 宿毛すくも近代きんだい現代げんだいへん-林業りんぎょう-木炭もくたん 宿毛すくも 2017ねん10がつ7にち閲覧えつらん
  8. ^ 木炭もくたん関係かんけい資料しりょうp2 1木炭もくたん消費しょうひ生産せいさんとう推移すいい (1)戦後せんご消費しょうひりょう生産せいさんりょう輸入ゆにゅうりょう推移すいい林野庁りんやちょうホームページ)2016ねん8がつ29にち閲覧えつらん
  9. ^ 北日本新聞社きたにっぽんしんぶんしゃ沈黙ちんもくもり 生活せいかつからすみえた 喜多きたしげる 』北日本新聞社きたにっぽんしんぶんしゃ、2005ねん、p47ぺーじ 
  10. ^ 木炭もくたん切符きっぷせいなな大都市だいとし実施じっしまる(昭和しょうわ15ねん8がつ8にち 東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん)『昭和しょうわニュース辞典じてんだい7かん 昭和しょうわ14ねん-昭和しょうわ16ねん』p117 昭和しょうわニュース事典じてん編纂へんさん委員いいんかい 毎日まいにちコミュニケーションズかん 1994ねん
  11. ^ 「いろりたく使用しよう一酸化いっさんか炭素たんそ中毒ちゅうどく注意ちゅうい!」国民こくみん生活せいかつセンター
  12. ^ 東京とうきょう飲食いんしょくぎょう生活せいかつ衛生えいせい同業どうぎょう組合くみあい炭火すみびしょう飲食いんしょくてんにおける一酸化いっさんか炭素たんそ中毒ちゅうどく事故じこ防止ぼうしについて」 Archived 2011ねん3がつ24にち, at the Wayback Machine.
  13. ^ 秋山あきやま博子ひろこ (2014). 論文ろんぶん紹介しょうかい温暖おんだん緩和かんわさくとしてのバイオずみ有効ゆうこうせい. 農業のうぎょう環境かんきょう (農業のうぎょう環境かんきょう技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ) (172). http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/172/mgzn17211.html. 
  14. ^ バイオずみ理化学りかがくてき特徴とくちょう考慮こうりょした畑地はたち基盤きばん改良かいりょう技術ぎじゅつ”. のうけん機構きこう (2015ねん). 2019ねん12月9にち閲覧えつらん
  15. ^ Biochar for environmental management : science, technology and implementation. Johannes, Dr Lehmann, Stephen Joseph, Earthscan from Routledge (Second edition ed.). London. (2015). ISBN 978-1-134-48953-4. OCLC 903930069. https://www.worldcat.org/oclc/903930069 
  16. ^ 土壌どじょう改良かいりょうようバイオずみほどこせよう目安めやす”. 日本にっぽんバイオずみ普及ふきゅうかい (2019ねん12月10にち). 2019ねん12がつ10日とおか閲覧えつらん
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関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]