天然てんねん更新こうしん

天然てんねん更新こうしん（てんねんこうしん、（natural regeneration）とは、自然しぜんの力ちからを利用りようして林はやしを仕立したてること。森林しんりんの伐採ばっさい後ごにおいて、植うえ栽を行おこなわず、自然しぜんに落下らっかした種子しゅしから樹木じゅもくを育成いくせいさせることで再生さいせいを図はかる場合ばあいを天然てんねん下種げす更新こうしんといい、狭義きょうぎではこれを天然てんねん更新こうしんと呼よぶ。広義こうぎでは，切株きりかぶからの萌芽ほうがが大おおきくなる場合ばあい（萌芽ほうが更新こうしん），下枝しずえが地面じめんにつき発根はっこんして独立どくりつの林はやし木きに生長せいちょうする場合ばあい（伏ふく条じょう更新こうしん），タケの地下茎ちかけいからたけのこが発生はっせいして育そだつ場合ばあい（地下茎ちかけい更新こうしん）も含ふくめられる。また、前生ぜんしょう稚やや樹じゅを利用りようする場合ばあいを前ぜん更さら更新こうしん、実生みしょうや萌芽ほうがなどの後生ごしょう稚やや樹じゅを利用りようする場合ばあいを後こう更さら更新こうしんと呼よぶ。気候きこうや風土ふうどに適てきした樹き種しゅを再生さいせいさせることが可能かのうである。

概要がいよう

樹木じゅもくの種子しゅしは、毎年まいとし、地表ちひょう面めんに大量たいりょうに供給きょうきゅうされているが、多おおくが休眠きゅうみん状態じょうたいとなっている。森林しんりんの伐採ばっさい後ご、地ちこしらえなどにより種子しゅしが発育はついくしやすい環境かんきょうを造成ぞうせいすることで、これらの種子しゅしの発育はついくを促うながし、森林しんりんの再生さいせいを図はかるものである。普通ふつうは発芽はつがしてくるのは、まずパイオニア的てきな植物しょくぶつであり、そこから再ふたたび遷移せんいの系列けいれつをたどるようにして森林しんりんが回復かいふくする。もっとも、土壌どじょうも確保かくほされているから以前いぜんにあった樹き種しゅはすぐに発芽はつが、萌芽ほうがをするので、回復かいふくに要ようする時間じかんは本来ほんらいの遷移せんいよりは早はやい。

ただし、そうやって回復かいふくした森林しんりんが元もとと同おなじか、はまた別べつの問題もんだいである。本州ほんしゅう南部なんぶの平地ひらちや低てい山やまにはシイとアラカシを中心ちゅうしんとする照葉樹しょうようじゅ林りんが多おおく見みかけられるが、これはその多おおくが本来ほんらいはタブ林はやしの立地りっちであるらしい。ところが伐採ばっさいされたときに発芽はつがするのがシイやアラカシの方ほうがはるかに多おおいため、これらが優先ゆうせんする林はやしができやすい。それが本来ほんらいの森林しんりんになるには、もっと多おおくの時間じかんが必要ひつようとされると思おもわれる。

森林しんりんを伐採ばっさいする際さいに、尾根おね筋すじや風上かざかみなど、種子しゅしが拡散かくさんしやすい箇所かしょの樹木じゅもくを数すう本ほん程度ていど意図いと的てきに残のこし、母はは樹じゅとして種子しゅしを供給きょうきゅうさせることもある。

一般いっぱんに、種子しゅしを多おおく付つける広葉樹こうようじゅなどが対象たいしょうとなる。針葉樹しんようじゅには不向ふむきであるといえる。

天然てんねん更新こうしん施ほどこせ業ぎょう

天然てんねん更新こうしんを実施じっしするにあたっては、周囲しゅういの林はやし分ぶんからの種子しゅし供給きょうきゅうを考慮こうりょしつつ、林はやし分ぶん内ないの前生ぜんしょう稚やや樹じゅの生立おいたつ状況じょうきょうや、埋うめ土ど種子しゅしの発芽はつが、萌芽ほうがの状況じょうきょうをその密度みつどや大おおきさから判断はんだんした上うえで、天然てんねん更新こうしんによる成なり林りん（針はり広こう混交こんこう林りん化か、広葉樹こうようじゅ林りん化か）を目指めざす。

なお、埋うめ土ど種子しゅしから発芽はつがする樹き種しゅはほとんど先駆せんく樹じゅ種しゅであり、高木たかぎ性せい樹じゅ種しゅの多おおくはシードバンクを形成けいせいしないため、高木たかぎ樹いつきの更新こうしんを埋うめ土ど種子しゅしに期待きたいすることは避さけるべきである。

天然てんねん下種げす更新こうしん

上方かみがた下種げす更新こうしんと、側がわ方かた下種げす更新こうしんがある。散布さんぷされる種子しゅしの量りょうに大おおきく影響えいきょうを受うけるため、豊凶ほうきょうの予測よそくが重要じゅうようとなる。また、確実かくじつに実生みしょうを定着ていちゃくさせ、競合きょうごう植生しょくせいに打うち勝かつためには、かき起おこしや火入ひいれといった更新こうしん補助ほじょ作業さぎょうが必要ひつようとなる。

皆みな伐き施ほどこせ業ぎょう

皆みな伐き後のちの天然てんねん下種げす更新こうしんは、伐採ばっさい地ちの周囲しゅういに存在そんざいする母はは樹じゅから種子しゅしが供給きょうきゅうされるため側がわ方かた下種げす更新こうしんに分類ぶんるいされる。簡便かんべんで低ていコストというメリットがあるが、光ひかり環境かんきょうの良よい場所ばしょを好このむ陽ひ樹じゅ以外いがいには不向ふむきであり、土壌どじょうの劣化れっかや土壌どじょう侵食しんしょく、雑ざつ灌木の繁茂はんもが起おこりやすいなどの点てんが問題もんだいとなる。一時いちじ的てきな裸はだか地ちができることによる生態せいたい系けいへの影響えいきょうを抑おさえるため、樹高きだか程度ていどの幅はばで帯状おびじょうに伐採ばっさいする帯状おびじょう皆みな伐きや、0.1ha程度ていどの面積めんせきでパッチ上じょうに伐採ばっさいする群ぐん状じょう皆みな伐きなどが行おこなわれることもある。

保ほ残ざん伐き施ほどこせ業ぎょう

更新こうしん地上ちじょうに母はは樹じゅを残のこして伐採ばっさいする方法ほうほうで、上方かみがた下種げす更新こうしんに分類ぶんるいされる。アカマツ林りんの造成ぞうせいで行おこなわれることがある。似にた施ほどこせ業法ぎょうほうとして、保持ほじ林業りんぎょうがある。これは保持ほじした木きを永続えいぞく的てきに残のこす伐採ばっさい方法ほうほうで、北米ほくべいや北欧ほくおうの温帯おんたい林りんや北方ほっぽう林りんを中心ちゅうしんに行おこなわれている。

傘かさ伐き施ほどこせ業ぎょう

傘かさ伐き（さんばつ）は、段階だんかい的てきに数すう回かいに分わけて伐採ばっさいする方法ほうほうで、上方かみがた下種げす更新こうしんによって更新こうしんする。通常つうじょう３回かいに分わけて伐採ばっさいされるため、三さん伐うとも呼よばれる。はじめに、予よ備伐といって結実けつじつを促進そくしんさせるなど更新こうしんの準備じゅんびとしての間伐かんばつを行おこなう。次つぎに落下らっか種子しゅしの発芽はつが・成長せいちょうを促進そくしんするための下種げす伐きを行おこない、最後さいごに稚やや樹じゅが成長せいちょうしたのちに母はは樹じゅを伐採ばっさいする後のち伐きを行おこなう。

択よ伐き施ほどこせ業ぎょう

利用りよう目的もくてきに適てきした木きを選択せんたくして伐採ばっさいする方法ほうほうで、上方かみがた下種げす更新こうしんによって更新こうしんする。幅広はばひろい樹齢じゅれいの立木たちきから構成こうせいされる択よ伐き林はやし型がたを維持いじする。間伐かんばつと主おも伐きを明確めいかくに区別くべつせず、高こう頻度ひんどで収穫しゅうかくがあることから収入しゅうにゅうが安定あんていする。大だい径みち材ざいの生産せいさんに向むいており、伐採ばっさい時じの土壌どじょうの劣化れっかが少すくなく、気象きしょう害がい・病害虫びょうがいちゅうにも強つよいなどのメリットがある。一方いっぽう、伐採ばっさい木きの選定せんていや、他たの木きを傷いためないような伐き倒たおせ・集しゅう材ざいに高たかい技術ぎじゅつ力りょくが必要ひつようとなることや、高密度こうみつど路ろ網もうが必要ひつようなこと、収穫しゅうかく予想よそうが困難こんなんなことなどがデメリットとして挙あげられる。ドイツやオーストリアでは択よ伐き施ほどこせ業ぎょうが盛さかんに行おこなわれている。

萌芽ほうが更新こうしん

詳細しょうさいは「萌芽ほうが更新こうしん」を参照さんしょう

更新こうしん完了かんりょう基準きじゅん

施ほどこせ業ぎょう後ごの初期しょき (5年ねん以内いない）の稚やや樹じゅ密度みつどで更新こうしん完了かんりょうの判定はんていを行おこなう更新こうしん完了かんりょう基準きじゅんが多おおくみられる。

しかし、稚やや樹じゅの生育せいいくに伴ともなって密度みつどは低下ていかするため、ごく初期しょきの段階だんかいの密度みつどだけで成なり林りんの成否せいひまでを判定はんていするには不十分ふじゅうぶんな可能かのう性せいが指摘してきされている。

日本にっぽんにおける天然てんねん更新こうしんの問題もんだい点てん

日本にっぽんにおいて天然てんねん更新こうしん施ほどこせ業法ぎょうほうを適用てきようする際さいの問題もんだい点てんとしては、目的もくてき樹じゅ種しゅを更新こうしんすることが困難こんなんであることが挙あげられる。日本にっぽんの主要しゅよう造林ぞうりん樹じゅ種しゅであるスギ・ヒノキは強度きょうど撹乱かくらんに依存いぞんした更新こうしんを行おこなう。そのため、天然てんねん更新こうしんには強つよい地表ちひょう撹乱かくらんなどの更新こうしん補助ほじょ作業さぎょうが必要ひつようとなるが、この作業さぎょうは同時どうじに土壌どじょう侵食しんしょくなどを引ひき起おこす恐おそれがあり、コストも高たかくなってしまう。また、高温こうおん多湿たしつな気象きしょう条件じょうけんにより、ササなどの競合きょうごう植生しょくせいが繁茂はんもしやすく、稚やや樹じゅの成長せいちょうが抑制よくせいされることがある。実際じっさい、東北とうほく地方ちほうのブナ林りんの天然てんねん更新こうしんの現場げんばにおいてもササの密生みっせいにより更新こうしんが失敗しっぱいした例れいが見みられる。

関連かんれん項目こうもく

• 萌芽ほうが更新こうしん
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