京都きょうと議定ぎていしょ

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気候きこう変動へんどうかんする国際こくさい連合れんごうわくぐみ条約じょうやく京都きょうと議定ぎていしょ
通称つうしょう略称りゃくしょう 京都きょうと議定ぎていしょ
気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやく京都きょうと議定ぎていしょ
署名しょめい 1997ねん12月11にち
署名しょめい場所ばしょ 日本にっぽん京都きょうと
発効はっこう 2005ねん2がつ16にち
寄託きたくしゃ 国際こくさい連合れんごう事務じむ総長そうちょう
文献ぶんけん情報じょうほう 平成へいせい17ねん1がつ20日はつか官報かんぽう号外ごうがいだい10ごう条約じょうやくだい1ごう
言語げんご アラビア中国ちゅうごく英語えいごフランス語ふらんすご、ロシア、スペイン
おも内容ないよう 先進せんしんこくひとし約束やくそく期間きかんにおいて数量すうりょうされた約束やくそくしたがって温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつ抑制よくせいしまたは削減さくげんすることとうさだめる
関連かんれん条約じょうやく 気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやく
条文じょうぶんリンク 気候きこう変動へんどうかんする国際こくさい連合れんごうわくぐみ条約じょうやく京都きょうと議定ぎていしょ外務省がいむしょう
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気候きこう変動へんどうかんする国際こくさい連合れんごうわくぐみ条約じょうやく京都きょうと議定ぎていしょ(きこうへんどうにかんするこくさいれんごうわくぐみじょうやくのきょうとぎていしょ、えい: Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)は、1997ねん平成へいせい9ねん)12月に京都きょうと国立こくりつ京都きょうと国際こくさい会館かいかんひらかれただい3かい気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやく締約ていやくこく会議かいぎ地球ちきゅう温暖おんだん防止ぼうし京都きょうと会議かいぎ、COP3)で同月どうげつ11にち採択さいたくされた、気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやくかんする議定ぎていしょである。通称つうしょうは、京都きょうと議定ぎていしょ(きょうとぎていしょ、えい: Kyoto Protocol)。以下いか原則げんそくとして京都きょうと議定ぎていしょ表記ひょうきもちいる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

地球ちきゅう温暖おんだん原因げんいんとなる、温室おんしつ効果こうかガス一種いっしゅである二酸化炭素にさんかたんそメタン酸化さんか窒素ちっそハイドロフルオロカーボンるいパーフルオロカーボンるいろくフッ硫黄いおうについて、1990ねん(平成へいせい2ねん)を基準きじゅんとして各国かっこくべつ先進せんしんこくにおける削減さくげんりつさだめ、共同きょうどう約束やくそく期間きかんない目標もくひょう達成たっせいすることがさだめられた。

ただし、京都きょうと議定ぎていしょだい3じょうだい8こうもとづきかく締約ていやくこくは ハイドロフルオロカーボンるい、パーフルオロカーボンるいろくフッ硫黄いおう基準きじゅんねんとして 1995ねん(平成へいせい7ねん)を選択せんたくできることとされている。この規定きてい京都きょうと議定ぎていしょわくないのみである。京都きょうと議定ぎていしょ上位じょうい概念がいねんである気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやくでは、一部いちぶ経済けいざい移行いこうこくのぞき、基準きじゅんねんとして1990ねん(平成へいせい2ねん)しか選択せんたくできないこととされている。このため、直近ちょっきんねん温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう基準きじゅんねん増減ぞうげんりつ気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやく京都きょうと議定ぎていしょことなる発表はっぴょうされることがあるてん留意りゅうい必要ひつようである。日本にっぽん国内こくないではもっぱ京都きょうと議定ぎていしょ基準きじゅんねんとの比較ひかくによる増減ぞうげんりつ提示ていじされる。一方いっぽう締約ていやくこく会議かいぎでは条約じょうやく基準きじゅんねんもちいた増減ぞうげんりつ提示ていじされることがおおい。

また、京都きょうとメカニズムや、吸収きゅうしゅうげん活動かつどうまれている。

運用うんよう細目さいもくは、2001ねん(平成へいせい13ねん)にひらかれただい7かい気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやく締約ていやくこく会議かいぎにおいてさだめられた。

削減さくげん目標もくひょう[編集へんしゅう]

議定ぎていしょ設定せっていされた各国かっこく温室おんしつ効果こうかガス6しゅ削減さくげん目標もくひょう京都きょうと議定ぎていしょだい3じょうでは、2008ねん(平成へいせい20ねん)から2012ねん(平成へいせい24ねん)までの期間きかんちゅうに、先進せんしんこく全体ぜんたい温室おんしつ効果こうかガス6しゅ合計ごうけい排出はいしゅつりょう1990ねん(平成へいせい2ねん)にくらべてすくなくとも 5%削減さくげんすることを目的もくてきさだめ、つづだい4じょうでは、かく締約ていやくこく二酸化炭素にさんかたんそとそれに換算かんさんしたほか5しゅ以下いか排出はいしゅつりょうについて、以下いか割当わりあてりょうえないよう削減さくげんすることをもとめている。

欧州共同体おうしゅうきょうどうたいきゅう15ヵ国かこく京都きょうと議定ぎていしょだい4じょうした共同きょうどう削減さくげんおこなうことがみとめられている。欧州おうしゅう採択さいたくするバブルでは、欧州共同体おうしゅうきょうどうたい15カ国かこくのそれぞれの削減さくげん目標もくひょうがEU指令しれいさだめられている。このEU指令しれいでは、京都きょうと議定ぎていしょ策定さくてい以前いぜんから技術ぎじゅつのみに依存いぞんするのではなく化石かせき燃料ねんりょう使つかわない方法ほうほう化石かせき燃料ねんりょう由来ゆらい排出はいしゅつりょうらしてきた北欧ほくおう諸国しょこく[1][2][3]などは京都きょうと議定ぎていしょ目標もくひょうゆる設定せっていされており[4]たとえばスウェーデンは +4%がみとめられている[注釈ちゅうしゃく 1]など、具体ぐたいてき成果せいかげているくにについては相応そうおう評価ひょうかがされている。

遵守じゅんしゅ[編集へんしゅう]

気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやくおよび京都きょうと議定ぎていしょによりさだめられた義務ぎむについては、その約束やくそく遵守じゅんしゅされることを担保たんぽするため、罰則ばっそく規定きていのように機能きのうする規定きていもうけられることとなった。 具体ぐたいてきには締約ていやくこく会議かいぎ7および締約ていやくこく会議かいぎ/moP1で決定けっていされ、疑義ぎぎとなえられたさい審議しんぎ判断はんだんおこな遵守じゅんしゅ委員いいんかいもうけられるとともに、遵守じゅんしゅにはつぎのような措置そちられることとなっている。

報告ほうこく義務ぎむ遵守じゅんしゅ [5]
気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやくおよび京都きょうと議定ぎていしょによる温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう管理かんり必要ひつよう各種かくしゅ排出はいしゅつりょうおよび森林しんりん吸収きゅうしゅうりょう変化へんか推計すいけいするための基礎きそてき数値すうちについては、各国かっこく集計しゅうけい報告ほうこくすることとなっている。この報告ほうこく問題もんだいがあった場合ばあいには京都きょうとメカニズムへの参加さんか資格しかく喪失そうしつする。
排出はいしゅつわく遵守じゅんしゅ [6][7]
京都きょうと議定ぎていしょにより約束やくそくした割当わりあてりょうえて排出はいしゅつした場合ばあいには、
  • 超過ちょうかした排出はいしゅつりょうを 3わりぞうにしたうえ次期じき排出はいしゅつわくからく。
  • 排出はいしゅつりょう取引とりひきにおいて排出はいしゅつわく売却ばいきゃくできなくなる。

締約ていやくじょうきょう[編集へんしゅう]

発効はっこう条件じょうけん[編集へんしゅう]

発効はっこう条件じょうけんは、以下いか両方りょうほう条件じょうけんたす必要ひつようがある(京都きょうと議定ぎていしょ25じょう[8]

  • 55かこく以上いじょうくに締結ていけつ
  • 締結ていけつした附属ふぞくしょIこく先進せんしんこく積極せっきょくてき参加さんかした諸国しょこく)の合計ごうけい二酸化炭素にさんかたんそ1990ねん排出はいしゅつりょうが、ぜん附属ふぞくしょIこく合計ごうけい排出はいしゅつりょうの55%以上いじょう

後者こうしゃ条件じょうけんについて、世界せかいだい温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつこくであるアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国内こくない事情じじょうにより締結ていけつ見送みおくっている。

経済けいざい発展はってんをおこなう以上いじょう多量たりょう二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつせねばならないとかんがえられたため発展はってん途上とじょうこく自発じはつてき参加さんか見送みおくられ、当初とうしょ推進すいしんしていたアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのちれを拒否きょひ[注釈ちゅうしゃく 2][9]ロシア連邦れんぽうれの判断はんだん見送みおくっていたため、2004ねんごろまでは議定ぎていしょ発効はっこうおこなわれていない状況じょうきょうであった。

2004ねんに、ロシア連邦れんぽう批准ひじゅんしたことにより、2005ねん2がつ16にち発効はっこうした。日本にっぽんにおいても、2005ねん1がつ26にち公布こうふおよ告示こくじされ(平成へいせい17ねん条約じょうやくだい1ごうおよ外務省がいむしょう告示こくじだい58ごう)、同年どうねん2がつ16にちから効力こうりょく発生はっせいしている。

先進せんしん諸国しょこくなか京都きょうと議定ぎていしょ批准ひじゅんしていないアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふは、産業さんぎょうかい自己じこ経済けいざい利益りえきのみを追求ついきゅうするかんがかたもとづきみを拒否きょひしているとの非難ひなん国内外こくないがいからびている[10]同様どうよう批准ひじゅんしていなかったオーストラリアでは世論せろんたかまりをけてそう選挙せんきょにより政権せいけん交代こうたいし、直後ちょくごの 2007ねん12月3にち批准ひじゅんした[11]

なお、日本にっぽんでは2002ねん5月31にち国会こっかい承認しょうにんされ、2002ねん6月4にち国際こくさい連合れんごう受諾じゅだくしょ寄託きたくした。

署名しょめい締約ていやくこくすう[編集へんしゅう]

以下いかに、署名しょめい締約ていやくこくすう[12][13]しめす。

各国かっこく批准ひじゅん状況じょうきょうしめした
(2012ねん2がつ時点じてん
: 数値すうち目標もくひょうをもつ締約ていやくこくおも先進せんしんこく
: 数値すうち目標もくひょうをもたない締約ていやくこくおも発展はってん途上とじょうこく
: 態度たいど未定みてい不明ふめい
: 批准ひじゅん拒否きょひしているくに
: 議定ぎていしょ離脱りだつしたくに
  • 署名しょめいくに:83かこく
  • 締約ていやくこく:192かこく

なお、批准ひじゅん拒否きょひしている米国べいこくにおいては、219都市とし独自どくじ京都きょうと議定ぎていしょ批准ひじゅんしている[よう出典しゅってん]

京都きょうとメカニズム[編集へんしゅう]

国内こくないでのたんなる排出はいしゅつりょう削減さくげんのぞ植林しょくりん活動かつどうや、国外こくがいでの活動かつどう削減さくげんりょう国家こっかあいだ取引とりひきなど、温室おんしつ効果こうかガス削減さくげんをより容易よういにするための規定きていで、柔軟じゅうなんせい措置そちともばれる。一般いっぱんに、クリーン開発かいはつ排出はいしゅつりょう取引とりひき共同きょうどう実施じっしの 3つのメカニズムを[14]が、これに吸収きゅうしゅうげん活動かつどうふくめることもある。

クリーン開発かいはつメカニズム[編集へんしゅう]

クリーン開発かいはつメカニズム (CDM: Clean Development Mechanism) とは、先進せんしんこく開発途上国かいはつとじょうこく技術ぎじゅつ資金しきんひとし支援しえんおこな温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう削減さくげん、または吸収きゅうしゅうりょう増幅ぞうふくする事業じぎょう実施じっしした結果けっか削減さくげんできた排出はいしゅつりょう一定いっていりょう先進せんしんこく温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう削減さくげんぶん一部いちぶ充当じゅうとうすることができる制度せいどである。

先進せんしんこくすくないコストで削減さくげん可能かのうとなり、途上とじょうこく技術ぎじゅつ資金しきん供与きょうよといった対価たいかのぞめるなどの効果こうかがある。

排出はいしゅつりょう取引とりひき[編集へんしゅう]

排出はいしゅつりょう取引とりひき (ET: Emissions Trading) とは、下記かき 4種類しゅるい炭素たんそクレジット取引とりひきする制度せいどである[15]。「排出はいしゅつけん取引とりひき」「排出はいしゅつ許可きょかしょう取引とりひき」「排出はいしゅつしょう取引とりひき」ともばれる。

  • AAUえーゆー (Assigned Amount Unit) - 各国かっこくてられる排出はいしゅつわく
  • RMU (Removal Unit) - 吸収きゅうしゅうげん活動かつどうによる吸収きゅうしゅうりょう
  • ERU (Emission Reduction Unit) - JI で発行はっこうされるクレジット
  • CER (Certified Emission Reduction) - CDM で発行はっこうされるクレジット

これらの炭素たんそクレジットを 1t-CO2 単位たんい取引とりひきする。排出はいしゅつりょう排出はいしゅつわくないおさえたくに事業じぎょう発生はっせいしたクレジットを、排出はいしゅつわくえて排出はいしゅつしてしまったくにることで、排出はいしゅつわく遵守じゅんしゅしたと做されるものである。 温室おんしつ効果こうかガス削減さくげん容易よういではないくにすくない費用ひよう削減さくげん可能かのうとなり、削減さくげん容易よういくに対価たいかもとめて大量たいりょう削減さくげんのぞめるという、2つの効果こうか念頭ねんとういている。

京都きょうと議定ぎていしょ国家こっかあいだでの排出はいしゅつりょう取引とりひきのみをさだめているが、より効果こうかてき温室おんしつ効果こうかガスの削減さくげん可能かのう国内こくないでの排出はいしゅつりょう取引とりひきおこなわれつつある。しかしながら、排出はいしゅつりょう上限じょうげん最初さいしょにどのように公平こうへいるかが問題もんだいであり、一律いちりつると、すでしょうエネを徹底てっていしていた企業きぎょうそんをするという問題もんだいがある。このため、オークション方式ほうしき排出はいしゅつけん購入こうにゅうする方式ほうしきひろまりつつあるが、当初とうしょ購入こうにゅう資金しきん負担ふたんとなることや、価格かかく変動へんどうによる経営けいえいリスクがしょうじることが問題もんだいとされている。

なお、2001ねんのマラケシュ合意ごういでは、排出はいしゅつじょう権利けんりあたえるものではないとしており、欧州おうしゅう連合れんごう排出はいしゅつ権利けんりとはみとめていない。本来ほんらいこの制度せいどは、排出はいしゅつりょう削減さくげんによる取引とりひきじょう利益りえきにより、さらなる削減さくげん意欲いよくしょうじさせることを意図いとしたものであるが、ぎゃく排出はいしゅつわく設定せってい方法ほうほうによっては過去かこ排出はいしゅつりょう既得きとく権益けんえきのようになってしまったり、炭素たんそクレジットの市場いちば価格かかく化石かせき燃料ねんりょうから再生さいせい可能かのうエネルギーへのえやしょうエネルギーひとしによる排出はいしゅつりょう削減さくげんにかかる費用ひようよりも割安わりやすになってしまった場合ばあいに、本来ほんらい必要ひつよう努力どりょくげんじさせるおそれもあると指摘してきされている。

また、近年きんねん関心かんしんたかまりをけて第三者だいさんしゃ機関きかん認証にんしょうする排出はいしゅつ削減さくげんりょう (VER: Verified Emissions Reduction) が民間みんかん取引とりひきされるようになったが(カーボンオフセットグリーン電力でんりょく証書しょうしょなどを参照さんしょう)これらは一般いっぱん京都きょうとメカニズムの枠外わくがいおこなわれる取引とりひきである。

共同きょうどう実施じっし[編集へんしゅう]

共同きょうどう実施じっし (JI: Joint Implementation) とは、投資とうし先進せんしんこく出資しゅっしをするくに)がホスト先進せんしんこく事業じぎょう実施じっしするくに)で温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう削減さくげんし、そこでられた削減さくげんりょう (ERU: Emission Reduction Unit) を取引とりひきする制度せいど。つまり、先進せんしんこく全体ぜんたいそう排出はいしゅつりょう変動へんどうしない。

吸収きゅうしゅうげん活動かつどう[編集へんしゅう]

吸収きゅうしゅうげん活動かつどうとは、1990ねん以降いこう植林しょくりんなどで CO2吸収きゅうしゅうげん増加ぞうかしたぶんを、温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう削減さくげん換算かんさん算入さんにゅうするもの。また、吸収きゅうしゅうげんである森林しんりん同年どうねん以降いこう都市とし農地のうちなどでうしなわれたぶん排出はいしゅつりょう増加ぞうかとして算入さんにゅうされる。京都きょうと議定ぎていしょ だい3じょうさだめられており、土地とち利用りよう土地とち利用りよう変化へんかおよ林業りんぎょう部門ぶもん (LULUCF: Land Use, Land Use Change and Forestry) 活動かつどうともばれる。

具体ぐたいてきにはつぎ活動かつどう規定きていされている(京都きょうと議定ぎていしょ 3じょう3こう[16]

  • 新規しんき植林しょくりん(Afforestation、過去かこ50年間ねんかん森林しんりんがなかった土地とち植林しょくりん
  • さい植林しょくりん (Reforestation、1990ねんよりまえには森林しんりんであったが同日どうじつ時点じてんでは森林しんりんではなかった土地とち植林しょくりん
  • 森林しんりん減少げんしょう(Deforestation、森林しんりん用途ようと転換てんかん

これらのえい頭文字かしらもじって ARD活動かつどう ともばれる。

これにくわえ、マラケシュ合意ごういでは「森林しんりん管理かんり」「放牧ほうぼく管理かんり」「植生しょくせい管理かんり」を利用りようすることも許容きょようされた(京都きょうと議定ぎていしょ 3じょう4こう)。このため、既存きそん森林しんりんについても 1990ねん以降いこう適切てきせつ管理かんりおこなうことで、その森林しんりん吸収きゅうしゅうぶんとして算入さんにゅうできるようになった。これは、義務ぎむ達成たっせいむずかしいとかんがえ、しかもみどりりつ比較的ひかくてきたかくにである日本にっぽん、カナダが主張しゅちょうし、採用さいようされたものである。

日本にっぽん目標もくひょう達成たっせいじょうきょう[編集へんしゅう]

日本にっぽん削減さくげんりょう6%については、1990ねん代替だいたいフロンについては1995ねん)を基準きじゅんとしている。また、京都きょうと議定ぎていしょ目標もくひょう達成たっせい計画けいかくで、それぞれの温暖おんだん対策たいさく要素ようそごとに削減さくげん目標もくひょうさだめている。どう計画けいかくでは、温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう基準きじゅんねん -1.8%から -0.8%に抑制よくせいし、森林しんりん吸収きゅうしゅうりょう基準きじゅんねん3.8%程度ていど確保かくほし、のこりを京都きょうとメカニズムの活用かつよう見込みこんでいた。しかし2008年度ねんどから2012年度ねんど国内こくない排出はいしゅつりょう平均へいきんぎゃく基準きじゅんねんたいして1.4%上回うわまわった[17]。これに森林しんりんとう吸収きゅうしゅうりょう基準きじゅんねん3.9%相当そうとう)と京都きょうとメカニズムクレジット(基準きじゅんねん5.9%相当そうとう)を考慮こうりょすると、基準きじゅんねん-8.4%となり、目標もくひょう達成たっせいした[18]

各国かっこく取組とりくみ状況じょうきょう[編集へんしゅう]

削減さくげん義務ぎむくに地域ちいき附属ふぞくしょIこく)の、1990ねんからだいいち約束やくそく期間きかんにかけての温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう増減ぞうげん割合わりあい下表かひょうしめ[19]緑色みどりいろ目標もくひょう達成たっせい赤色あかいろ目標もくひょう達成たっせいあらわしている。

くに地域ちいき 2008ねんから2011ねん温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう平均へいきん

京都きょうと議定ぎていしょ基準きじゅんねんからの変化へんかりつ吸収きゅうしゅうげん活動かつどうのぞく)

2012ねんまでの
EU域内いきない目標もくひょう
議定ぎていしょ削減さくげん義務ぎむ
2008-2012ねん
欧州連合の旗 EU -11.4% - -8%
ドイツの旗 ドイツ -24.0% -21%
フランスの旗 フランス -9.6% ±0%
イギリスの旗 イギリス -24.1% -12.5%
アイルランドの旗 アイルランド +11.7% +13%
スペインの旗 スペイン +26.0% +15%
ポルトガルの旗 ポルトガル +22.6% +27%
ギリシャの旗 ギリシャ +13.6% +25%
スウェーデンの旗 スウェーデン -13.5% +4%
デンマークの旗 デンマーク -12.5% -21%
ノルウェーの旗 ノルウェー +7.7% - +1%
ロシアの旗 ロシア -33.1% - ±0%
ウクライナの旗 ウクライナ -57.3% - ±0%
日本の旗 日本にっぽん +0.2% - -6%
オーストラリアの旗 オーストラリア +0.4% - +8%
ニュージーランドの旗 ニュージーランド +17.2% - ±0%

京都きょうと議定ぎていしょかんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

地球ちきゅう温暖おんだん対策たいさく京都きょうと議定ぎていしょかたについては、多種たしゅ多様たよう議論ぎろんがある。なかでも、温室おんしつ効果こうかガスの削減さくげん具体ぐたいてき手法しゅほう数値すうち目標もくひょうについては、各国かっこく意見いけん対立たいりつするれいおおく、個人こじんレベルでも議論ぎろんがある。また、京都きょうと議定ぎていしょ必要ひつようせい効果こうかについては、懐疑かいぎろん疑問ぎもんする意見いけん)が展開てんかいされることもすくなくないが、そのなかには信頼しんらいせいとぼしいものもおおふくまれている。

メカニズムにかんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

日本にっぽん国内こくないでの議論ぎろん[編集へんしゅう]

京都きょうと議定ぎていしょ削減さくげん義務ぎむたいしては、日本にっぽん国内こくない下記かきのような議論ぎろんられる。

  • 京都きょうと会議かいぎ議長ぎちょうこくであった日本にっぽんには、会議かいぎ成功せいこうさせるという、国内外こくないがい世論せろんによるプレッシャーがかかっていた。会議かいぎをまとめやすくするという外務省がいむしょう思惑おもわくと、国内こくない温暖おんだん対策たいさく加速かそくさせるという環境省かんきょうしょう思惑おもわくとがあった[20]
  • 日本にっぽん数値すうち目標もくひょうが-6%になった経緯けいい日米にちべいおう非公式ひこうしき会合かいごうでの政治せいじてき合意ごういによるものであり、アメリカ日本にっぽん足並あしなみをそろえたのは、途上とじょうこく参加さんかうながすためであったが、べい上院じょういんバード・ヘーゲル決議けつぎ英語えいごばん採択さいたくしていたので、途上とじょうこく参加さんかしない場合ばあいなど、3こうてはまる場合ばあいは、上院じょういん議定ぎていしょ批准ひじゅんしないことがまっていた。また、欧州おうしゅうロシア米国べいこくは、それぞれのくにエネルギー事情じじょうから、数値すうち目標もくひょう達成たっせい可能かのうかどうかや、経済けいざいあたえる影響えいきょうをあらかじめシミュレーションしていたが、日本にっぽんは6%にたいして、うらづけがないまま合意ごういいたっている。[21]
  • 日本にっぽん達成たっせいむずかしいとささやかれはじめた 2007ねんごろになって、京都きょうと議定ぎていしょ自体じたい欧米おうべい諸国しょこくによる政治せいじてき圧力あつりょくであるという陰謀いんぼうろんが、一部いちぶ評論ひょうろんすじ個人こじん論評ろんぴょうなどで、にわかにとなえられはじめるようになった[よう出典しゅってん]
  • ポスト京都きょうと議定ぎていしょ協議きょうぎはじまるようになると、温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつりょう削減さくげん必要ひつようせいみとめながらも、「GDPのCO₂排出はいしゅつりょうは、日本にっぽんを1とすると、EU(25カ国かこく)は1.7、アメリカは2.1、中国ちゅうごくは10.8である」「日本にっぽんのエネルギー効率こうりつたかいことから削減さくげん余地よちすくない」「エネルギー効率こうりつ反映はんえいされかつ技術ぎじゅつてき合理ごうりせいのある衡平こうへい枠組わくぐみもとめるべき」といった主張しゅちょうが、日本にっぽん経済けいざい団体だんたい連合れんごうかいよりされた[22]

効果こうかかんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

京都きょうと議定ぎていしょ効果こうかたいしては、下記かきのような議論ぎろんられる。

げん段階だんかいから米国べいこく参加さんかしても、温度おんど上昇じょうしょうを 2100ねんまでに0.15改善かいぜんしたり、2.5cm海面かいめん上昇じょうしょうおさえたりする程度ていど効果こうかであり「地球ちきゅう温暖おんだんを 6ねん程度ていどおくらせるほどの効果こうかである」[23]京都きょうと議定ぎていしょ保守ほしゅてきまもられた仮定かていでも効果こうか限定げんていてき」との指摘してきもあるものの、一定いってい成果せいかであるといった評価ひょうかがされている。

地球ちきゅう温暖おんだん問題もんだいたいする懐疑かいぎろん[編集へんしゅう]

地球ちきゅう温暖おんだんたいしてはその信頼しんらいせい影響えいきょうについて様々さまざま懐疑かいぎろんられる。

京都きょうと議定ぎていしょ世界せかい[編集へんしゅう]

京都きょうと議定ぎていしょさだめる2012ねん以降いこう枠組わくぐみについては、「ポスト京都きょうと議定ぎていしょ」という通称つうしょう国際こくさいてきはないがもたれ、「カンクン合意ごうい」として結実けつじつした。

だい約束やくそく期間きかん設定せってい[編集へんしゅう]

2012ねん12月にカタールドーハ開催かいさいされた京都きょうと議定ぎていしょだい8かい締約ていやくこく会合かいごう(CMP8)において、京都きょうと議定ぎていしょ改正かいせいあん採択さいたくされた[24]。 2013ねんから2020ねんまでの7年間ねんかんだい約束やくそく期間きかんとすること、排出はいしゅつりょうを1990ねん水準すいじゅんからすくなくとも18%削減さくげんすること、あらたにさんフッ窒素ちっそ(NF3)が削減さくげん対象たいしょうのガスに追加ついかされること、約束やくそく期間きかん途中とちゅう数値すうち目標もくひょう上乗うわのせができることなどがまれた。

日本にっぽんだい約束やくそく期間きかん数値すうち目標もくひょうがない。

この改正かいせい発効はっこうするには締約ていやくこく(192かこく)の4ぶんの3(144かこく以上いじょう受諾じゅだく手続てつづきをませる必要ひつようがある。2020ねん10がつ28にちに147かこく受諾じゅだく[25]同年どうねん12がつ31にち発効はっこう

だい約束やくそく期間きかん数値すうち約束やくそく以下いかとおり。

欧州おうしゅう連合れんごう27かこくとクロアチア、アイスランドのけい29かこく京都きょうと議定ぎていしょだい4じょうした共同きょうどう削減さくげんおこなうこと(バブル)がみとめられている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ スウェーデンの数値すうちはEU域内いきないてた目標もくひょうである。なお、同国どうこくではそうしたEU諸国しょこく理解りかいあまんじることなく、たとえば南部なんぶのベクショーでは 2010ねんまでに 1993ねん50%削減さくげんといった目標もくひょうを、コミューン独自どくじかかげてむといった努力どりょくつづけられている。[よう出典しゅってん]
  2. ^ アル・ゴアふく大統領だいとうりょう批准ひじゅん推進すいしんするも、自動車じどうしゃ電力でんりょく米国べいこくでの発電はつでんにはいまだに石炭せきたんおお使つかわれている)など産業さんぎょうかいからの反対はんたいクリントン大統領だいとうりょう批准ひじゅん断念だんねんいで大統領だいとうりょう選挙せんきょのぞんだブッシュ削減さくげん義務ぎむれをうったえて当選とうせんするが、のちにこれをくつがえし、京都きょうと議定ぎていしょ拒絶きょぜつした(後述こうじゅつべいWGBH報道ほうどう番組ばんぐみ詳説しょうせつ)。とく世界せかい最大さいだい排出はいしゅつこくである米国べいこくのブッシュ政権せいけん強硬きょうこう反対はんたいしていたため、国内こくない世論せろんおよびEUなど削減さくげんつとめるきから批判ひはんされていたが、最近さいきんようやくその政策せいさく変化へんかはじめたと指摘してきするき(つぎ参考さんこう記事きじなど)もある。[よう出典しゅってん]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 飯田いいだ (2000) [ようページ番号ばんごう]
  2. ^ ノルゴーら (2002) [ようページ番号ばんごう]
  3. ^ [グリーンタイムズ 6かん5ごう]、NEDO
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  11. ^ ラッドごう首相しゅしょうはつ仕事しごと京都きょうと議定ぎていしょ批准ひじゅん 新内しんないかく発足ほっそく朝日新聞あさひしんぶん、2007ねん12月 3にち
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • いし弘光ひろみつ環境かんきょうぜいとはなにか』岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ新書しんしょ〉、1999ねんISBN 4-00-430600-0 
  • 石井いしい孝明たかあき京都きょうと議定ぎていしょ実現じつげんできるのか』平凡社へいぼんしゃ、2004ねんISBN 4-582-85218-1 
  • ノルゴー, ヨアン・S.、クリステンセン, ベンテ・L.『エネルギーとわたしたちの社会しゃかい - デンマークにまな成熟せいじゅく社会しゃかい飯田いいだ哲也てつややくしん評論ひょうろん、2002ねん原著げんちょ1982ねん)。ISBN 4-7948-0559-4 
  • 広瀬ひろせたてなり京都きょうと議定ぎていしょのゆくえ」『空海くうかいとアインシュタイン』PHP研究所けんきゅうじょ〈PHP新書しんしょ〉、2006ねんISBN 4-569-64782-0 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]