署名しょめい

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大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽう上諭じょうゆみぎページの御璽ぎょじ上方かみがたに「むつみじん」と、明治天皇めいじてんのうの「」(いみな)が署名しょめいされている。また、ひだりページには、国務大臣こくむだいじんかんめい爵位しゃくいつづけて、氏名しめい署名しょめいされている。
ジョン・ハンコック署名しょめいは、「アメリカ独立どくりつ宣言せんげん」と「連合れんごう規約きやく」でもっと顕著けんちょである。米国べいこくでは、「ジョン・ハンコック」・「ハンコック」は「署名しょめい」の代名詞だいめいしとなった[1]

署名しょめい(しょめい、英語えいご: sign, signature)とは、行為こういしゃがある行為こういたとえばクレジットカード利用りよう)をするさいに、自己じこ氏名しめい自署じしょすること、また自署じしょしたものである。

印章いんしょうとの関係かんけい[編集へんしゅう]

署名しょめい(サイン)と印章いんしょうとは、ともに自己じこ同一どういつせい証明しょうめいするものとしてよう東西とうざいわず古来こらいひろ使用しようされてきた。花押かおう署名しょめい一種いっしゅ理解りかいされる。

日本にっぽんにおいては、律令りつりょう制度せいど確立かくりつ以降いこう印章いんしょう重視じゅうしされていたが、次第しだい簡便かんべん署名しょめい通用つうようするようになり、中世ちゅうせい以降いこう花押かおう全盛ぜんせいとなる。もっとも、戦国せんごく時代じだいから印章いんしょう使用しよう再度さいどひろまりはじ朱印しゅいんじょうなどが発行はっこうされるようになる。江戸えど時代じだいになると、印章いんしょう使用しようひろがる。明治めいじ時代じだい以降いこう印章いんしょう非常ひじょう重視じゅうしされるようになる。もっとも、閣議かくぎ署名しょめいいまなお花押かおう使用しようされている。なお刑法けいほうにおいては、「印章いんしょうまた署名しょめい」「印章いんしょうしくは署名しょめいとうのように同列どうれつあつかわれており、署名しょめい印章いんしょう偽造ぎぞうとう犯罪はんざいとされている。

西洋せいようにおいても、印章いんしょう署名しょめいとの盛衰せいすいがある。また、他人たにん偽造ぎぞう出来できないよう、特別とくべつかたされる(署名しょめい考案こうあんし、まった同一どういつ筆跡ひっせき出来できよう指導しどうしてくれる業者ぎょうしゃ存在そんざいする)。

記名きめいとのちが[編集へんしゅう]

記名きめいは、(狭義きょうぎには)署名しょめい以外いがい方法ほうほう書類しょるいとう氏名しめい名称めいしょうしるすことをいう。記名きめい必要ひつようとされているのみの場合ばあいは、自署じしょ必要ひつようとしない[2]れい記名きめい証券しょうけん記名きめい証券しょうけん)。一方いっぽう署名しょめい自署じしょ要求ようきゅうされる。

法律ほうりつじょう署名しょめい行為こうい[編集へんしゅう]

通例つうれい意思いし表示ひょうじがあったことをしめすものとされる。

日本にっぽんほうじょう本来ほんらい署名しょめい」とは自署じしょ手書てがきでの記名きめい、いわゆるサイン)をすが、自署じしょえて記名きめい押印おういんもとめられることがおおい。商法しょうほう32じょうは、商法しょうほうじょう署名しょめい記名きめい押印おういんえることができることを規定きていしている。記名きめい押印おういんとは、氏名しめい名称めいしょうしるし(手書てがきにかぎらず、ゴム印ごむいん印刷いんさつとうかまわない)、あわせて印章いんしょう捺印なついん[注釈ちゅうしゃく 1]することをいう。

署名しょめい捺印なついん両方りょうほう必要ひつようとされる場合ばあいには、署名しょめい記名きめい押印おういんえることができない。そのようなれいはごく少数しょうすうであるが、たとえば遺言ゆいごん作成さくせいたっては、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん場合ばあい遺言ゆいごんしゃの、秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごん公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん場合ばあい遺言ゆいごんしゃ証人しょうにん公証こうしょうじんの、それぞれ署名しょめい捺印なついん必要ひつようである(民法みんぽう968じょう969じょう970じょう)。また、戸籍こせきかんする届出とどけで届出とどけでじん証人しょうにん署名しょめい押印おういん必要ひつようとされる(戸籍こせきほうだい29じょう)が、署名しょめいできないときには氏名しめい代書だいしょさせ押印おういん(または拇印ぼいん)することでりる(戸籍こせきほう施行しこう規則きそくだい62じょうしるしっていないときには署名しょめいだけでりる)。そのほか、区分くぶん建物たてもの管理かんり組合くみあいにおける集会しゅうかい議事ぎじろくについては、議長ぎちょうおよび集会しゅうかい出席しゅっせきした区分くぶん所有しょゆうしゃ2人ふたり署名しょめい押印おういんしなければならない(区分くぶん所有しょゆうほう42じょう3こう)。

日本にっぽんほうじょう手形てがた券面けんめんじょう署名しょめいについての解釈かいしゃくろんについては、手形てがた理論りろん手形てがた行為こういひとし項目こうもく参照さんしょう

なお、日本にっぽんにおいて法令ほうれいじょう押印おういんもとめられる場合ばあいでも、外国がいこくじんについては外国がいこくじん署名しょめい捺印なついん及無資力しりょく証明しょうめいせきスル法律ほうりつにより署名しょめいをもってりるものとされている。これは、とくにヨーロッパおよびアメリカでは、個人こじん印章いんしょう慣習かんしゅうがないためである。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい74じょうにより、日本にっぽん法律ほうりつおよ政令せいれいには、主任しゅにん国務大臣こくむだいじん署名しょめいと、内閣ないかく総理そうり大臣だいじん連署れんしょもとめられている。これは法律ほうりつ執行しっこうや、政令せいれい制定せいてい執行しっこう責任せきにん所在しょざいあきらかにするためである[3]

国際こくさいほうじょう署名しょめい[編集へんしゅう]

国際こくさいほうじょう署名しょめいにはつぎの2種類しゅるいがある。

条約じょうやく内容ないよう確定かくていする署名しょめい[編集へんしゅう]

外交がいこう会議かいぎとうにおいて条約じょうやく内容ないよう確定かくていしたときに、全権ぜんけん委任いにんされたかく代表だいひょうだんちょう首席しゅせき代表だいひょう)が条約じょうやく内容ないよう公式こうしき確認かくにんした証拠しょうことして記名きめいすることをす。条約じょうやく内容ないよう署名しょめいによって確定かくていし、以後いご正式せいしき手続てつづきによる場合ばあいのぞいては、内容ないよう修正しゅうせいすることはできない。

たとえば、京都きょうと議定ぎていしょにおいては、条約じょうやく末尾まつび

せんきゅうひゃくきゅうじゅうななねん十二月じゅうにがつじゅういちにち京都きょうと作成さくせいした。
以上いじょう証拠しょうことして、下名かめいは、正当せいとう委任いにんけて、それぞれ明記めいきするにこの議定ぎていしょ署名しょめいした。
以下いか署名しょめいしゃ一覧いちらん表記ひょうき

というぶんされているが、この文中ぶんちゅうでいう署名しょめい条約じょうやく内容ないよう確定かくていする署名しょめい相当そうとうする。

条約じょうやく拘束こうそくされる意思いししめ署名しょめい[編集へんしゅう]

通常つうじょう条約じょうやくは、一定いっていすう国家こっか条約じょうやく拘束こうそくされることへの同意どういしめすことによって効力こうりょく発生はっせいする。このような意思いし表明ひょうめいする方法ほうほうとしては、批准ひじゅん受諾じゅだく承認しょうにん加入かにゅうなどがある。このうち、批准ひじゅん受諾じゅだくとは、条約じょうやく署名しょめいすることによって将来しょうらいてき条約じょうやく拘束こうそくされる意思いしがあることをあらかじ表明ひょうめい条約じょうやく内容ないようたいする基本きほんてき賛意さんい表明ひょうめい)し、その国会こっかいによる承認しょうにんとう所要しょよう国内こくない手続てつづきおこなって、しかるのち条約じょうやく事務じむきょくとう批准ひじゅんしょとう寄託きたくすることによって条約じょうやく拘束こうそくされる手続てつづきのことである。署名しょめいよう不要ふようや、署名しょめい可能かのう期間きかんとう条約じょうやくちゅう規定きていされている。日本にっぽん場合ばあい条約じょうやくへの署名しょめいおこなさいには、事前じぜん閣議かくぎ決定けってい必要ひつようなため、署名しょめいおこなうのは重要じゅうよう条約じょうやくのみにかぎられる傾向けいこうがある。

たとえば、京都きょうと議定ぎていしょだい24じょう1にはつぎのように規定きていされている。

この議定ぎていしょは、条約じょうやく締約ていやくこくである国家こっかおよ地域ちいきてき経済けいざい統合とうごうのための機関きかんによる署名しょめいのために開放かいほうされるものとし、批准ひじゅんされ、受諾じゅだくされまた承認しょうにんされなければならない。この議定ぎていしょは、せんきゅうひゃくきゅうじゅうはちねんさんがつじゅうろくにちからせんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅうねんさんがつじゅうにちまでニュー・ヨークにある国際こくさい連合れんごう本部ほんぶにおいて、署名しょめいのために開放かいほうしておく。この議定ぎていしょは、この議定ぎていしょ署名しょめいのための期間きかん終了しゅうりょうのちは、加入かにゅうのために開放かいほうしておく。批准ひじゅんしょ受諾じゅだくしょ承認しょうにんしょまた加入かにゅうしょは、寄託きたくしゃ寄託きたくする。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 捺印なついん押印おういんおな意味いみであるが、慣例かんれいてきに、記名きめいしるし署名しょめいしるしぶことがおおい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ John Hancock”. Merriam-Webster. 2017ねん10がつ19にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2024ねん3がつ9にち閲覧えつらん
  2. ^ 有斐閣ゆうひかく 法律ほうりつ用語ようご辞典じてん [だい3はん]』法令ほうれい用語ようご研究けんきゅうかい へん有斐閣ゆうひかく、2006ねんISBN 4-641-00025-5
  3. ^ 法制ほうせい執務しつむ研究けんきゅうかい へんとい8」『しんてい ワークブック法制ほうせい執務しつむ だい2はん株式会社かぶしきがいしゃぎょうせい、2018ねん1がつ15にち、30ぺーじISBN 978-4-324-10388-3 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]