地殻ちかく変動へんどう

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関東かんとうだい地震じしんによる地盤じばん変動へんどう

地殻ちかく変動へんどう(ちかくへんどう、英語えいご: diastrophism)とは、地殻ちかく応力おうりょくくわわることで、長期間ちょうきかんにわたり地殻ちかく位置いち年間ねんかんすうmmからすうcm程度ていど移動いどうする現象げんしょうである。地殻ちかく構成こうせいするプレート運動うんどう断層だんそう運動うんどう密接みっせつ関係かんけいしている。地殻ちかく変動へんどう地殻ちかく変動へんどう結果けっかとしてこされる地震じしん火山かざん活動かつどうなど地殻ちかくないこるすべての現象げんしょう地殻ちかく活動かつどう[1]

陸上りくじょうでは水準すいじゅん測量そくりょう三角さんかく測量そくりょうGPSみずかん傾斜けいしゃけい石英せきえいかん伸縮しんしゅくけいによって長期間ちょうきかんにわたり観測かんそくされている。近年きんねんでは音波おんぱもちいて海底かいていでも観測かんそくはじまっている。地殻ちかく変動へんどう観測かんそく地震じしん研究けんきゅう予知よちやプレート運動うんどう研究けんきゅうなどにかされている。

メカニズム[編集へんしゅう]

地球ちきゅうじょうこるほとんどすべての地殻ちかく変動へんどうはプレート運動うんどう関連かんれんがあるといっても過言かごんではない。局地きょくちてき地殻ちかく変動へんどうは、プレートあいだ相対そうたい運動うんどう断層だんそう運動うんどう火山かざん活動かつどうによってしょうじている。

地殻ちかくでは、場所ばしょによって応力おうりょく強弱きょうじゃく方向ほうこう依存いぞんせい最大さいだいぬし応力おうりょく最小さいしょうぬし応力おうりょく)がまれると、ひずみ(ひずみ)しょうじる。これが地震じしん地殻ちかく変動へんどうとなってあらわれる。

陸上りくじょう観測かんそく[編集へんしゅう]

水準すいじゅん測量そくりょう[編集へんしゅう]

各地かくち設置せっちされている基準きじゅん測量そくりょうてん定期ていきてき測定そくていすることによって、地殻ちかく水平すいへい移動いどうおよ垂直すいちょく移動いどう調査ちょうさする方法ほうほう基準きじゅん測量そくりょうてんは、かく等級とうきゅうべつ分類ぶんるいされている。なお、日本にっぽん全体ぜんたい基準きじゅんてん日本にっぽん水準すいじゅん原点げんてんである。

なお、水準すいじゅんてんおおすぎることと、地殻ちかく変動へんどうとらえるためには、定期ていきてき測量そくりょう必要ひつようであるが、予算よさん人員じんいん都合つごうなどによって、近年きんねん後述こうじゅつのGPS測量そくりょうなどによっておこなわれている。ただしいまなおGPSにくらべて精度せいどたか利点りてんがあるため、東海とうかい地震じしん想定そうてい震源しんげんいきちか静岡しずおかけん御前崎おまえざきや、主要しゅよう火山かざん周辺しゅうへんでは定期ていきてき実施じっしされている。

三角さんかく測量そくりょう[編集へんしゅう]

ただし測定そくてい精度せいど限界げんかいがあること、おおくの予算よさん人員じんいん必要ひつようなことから、日本にっぽんでは国土こくど地理ちりいんによる電子でんし基準きじゅんてんあみ設置せっち三角さんかく測量そくりょう必要ひつようせいうすれている。

傾斜けいしゃけいひずみけい[編集へんしゅう]

みずかん傾斜けいしゃけいによって傾斜けいしゃを、石英せきえいかん伸縮しんしゅくけいによってひずみ測定そくていする方法ほうほうである。原理げんり簡単かんたんなことから歴史れきしふるいが、機器きき固有こゆう誤差ごさ測定そくてい精度せいど限界げんかいがある、維持いじ費用ひようがかかる、データがひろ公開こうかいされていないなどの問題もんだいもあり、地殻ちかく変動へんどう調しらべる手段しゅだんとして一般いっぱんてきでない。

傾斜けいしゃけいおよ伸縮しんしゅくけいによる観測かんそくは、日本にっぽん全国ぜんこくでもあまりおこなわれていない。松代まつだい群発ぐんぱつ地震じしんとらえた、気象庁きしょうちょう松代まつだい地震じしん観測かんそくしょひとしかぎられた場所ばしょのみで実施じっしされているためである。最大さいだい理由りゆうは、地殻ちかく変動へんどうとらえるためには、ある程度ていどながさを水平すいへい3方向ほうこうられたトンネルが必要ひつようなためである。なお、はいこうとなった鉱山こうざん利用りようするなどの方法ほうほうもあるが、鉱山こうざん周辺しゅうへんには、かつ断層だんそうすくないため、観測かんそくするメリットはすくないのである。

光波こうははか[編集へんしゅう]

2てんあいだ距離きょりはか方法ほうほう。かつては静岡しずおかけん伊豆半島いずはんとう御前崎おまえざきあいだや、愛知あいちけん三河湾みかわわん周辺しゅうへんなどで実施じっしされていたが、GPS測量そくりょう普及ふきゅうしてから衰退すいたいした。

海底かいてい観測かんそく[編集へんしゅう]

海上かいじょうとの音波おんぱ交信こうしん[編集へんしゅう]

海底かいてい機器きき設置せっちし(海底かいていきょく)、海上かいじょうとの音波おんぱ交信こうしんとおして海上かいじょうきょく海底かいていきょくとの距離きょり測定そくていする方法ほうほう。これによって、海底かいてい地形ちけい変化へんかとらえられる。まず海上かいじょうきょく船舶せんぱくブイ)の位置いちをGPSとう決定けっていするため、GPSの精度せいどえて測定そくていすることはできない。さらに海洋かいようちゅう音速おんそく構造こうぞうによって結果けっかおおきく左右さゆうされる。日本にっぽんでは海上保安庁かいじょうほあんちょう名古屋大学なごやだいがく東北大学とうほくだいがくによって精度せいど向上こうじょう方法ほうほう研究けんきゅうされている。海底かいていきょく多数たすう設置せっちするのは、ひろ海洋かいようではむずかしいため、熊野灘くまのなだ駿河湾するがわん三陸海岸さんりくかいがんおきなど一部いちぶ地域ちいきかぎっておこなわれている。

海洋かいよう観測かんそくせんによる音波おんぱ探査たんさおこなわれている。これは、海洋かいよう観測かんそくせんから音波おんぱ海底かいてい発射はっしゃし、海底かいていからの反射はんしゃ測定そくていすることによって、海底かいていまでの距離きょり測定そくていする方法ほうほう。ただし連続れんぞく観測かんそくかず、精度せいどもよくない。深海しんかい潜水せんすいていしんかい6500)の母船ぼせん地球ちきゅう観測かんそくせんちきゅう」などに搭載とうさいされている。

水圧すいあつけい[編集へんしゅう]

海底かいてい地震じしんけい付随ふずいして、もしくは単独たんどく設置せっちされる水圧すいあつけいによる方法ほうほう水圧すいあつけいにはそのうえ海水かいすい圧力あつりょくがかかるため、これを測定そくていすることで海底かいていふかさを調しらべることができる。ただしデータの収集しゅうしゅうには陸上りくじょうとケーブルで接続せつぞくするか、すべての観測かんそく回収かいしゅうする必要ひつようがある。現在げんざいではおもに後者こうしゃ採用さいようされているため、リアルタイム実現じつげんされていない。日本にっぽんでは東海とうかい地震じしん警戒けいかいいき海底かいていなどに設置せっちされている。

(Note.)2007年度ねんど平成へいせい18年度ねんど)から、東海とうかい地震じしん警戒けいかいいき水圧すいあつけいはリアルタイム観測かんそくえがはじまる予定よていである。中央ちゅうおう防災ぼうさい会議かいぎ決定けっていにより、今後こんご30ねん以内いないこる可能かのうせいたかいとされる、東海とうかいひがし南海なんかい地震じしんけた対策たいさく一環いっかんである。

航空こうくう衛星えいせい観測かんそく[編集へんしゅう]

レーダー[編集へんしゅう]

航空機こうくうきから立体りったい方法ほうほうにて撮影さつえいされた地形ちけいによって、地殻ちかく変化へんかとらえる方法ほうほう近年きんねんは、地球ちきゅう観測かんそく衛星えいせい活用かつようされている。レーザー高度こうどけいやレーダ高度こうどけいなど、高度こうど機器ききもちいて精密せいみつ測定そくてい可能かのうになりつつある。「合成ごうせい開口かいこうレーダー」も参照さんしょう

GPS[編集へんしゅう]

国土こくど地理ちりいんによる電子でんし基準きじゅんてん設置せっちは、地殻ちかく変動へんどう観測かんそく代表だいひょうてき手法しゅほうとなっている。連続れんぞくしてデータを収集しゅうしゅうできる、基準きじゅんてん設置せっち維持いじ観測かんそくにかかる費用ひようすくないなどの利点りてんがある。また地震じしん直後ちょくごこう変動へんどう調査ちょうさでは、一時いちじてき多数たすうのGPS受信じゅしん設置せっちして観測かんそくおこなう「キャンペーン観測かんそく」がさかんにおこなわれている。ただし鉛直えんちょく成分せいぶん観測かんそくでは水準すいじゅん測量そくりょうたいして精度せいどおとるため、現在げんざい両者りょうしゃ併用へいようされている場合ばあいもある。「測量そくりょう#GNSS測量そくりょうきゅう GPS測量そくりょう」「グローバル・ポジショニング・システム」を参照さんしょう

VLBI[編集へんしゅう]

ちょうちょう基線きせん電波でんぱ干渉かんしょうほうともいい、各地かくち設置せっちされた電波でんぱ望遠鏡ぼうえんきょうによる一定いっていクェーサーからの電波でんぱ測定そくていすることによって電波でんぱ望遠鏡ぼうえんきょうあいだ距離きょり測定そくていする方法ほうほう日本にっぽんではJCNETとばれるVLBI観測かんそくもうにて実施じっししている。精度せいどすうmmまでたっしているが、観測かんそくもうあらいためGPS観測かんそくによる測定そくてい結果けっか国土こくど地理ちりいんから公表こうひょうされている。

地震じしんとの関連かんれん[編集へんしゅう]

地殻ちかく変動へんどう地震じしんぜん段階だんかい現象げんしょうとして地震じしん予知よちとともにあつかわれる場合ばあいおおい。とく茂木もき清夫すみお1944ねんひがし南海なんかい地震じしん直前ちょくぜん水準すいじゅん測量そくりょうデータを検証けんしょうし、地震じしんまえには異常いじょう地殻ちかく変動へんどう発生はっせいすると指摘してきしてから、日本にっぽんでは地震じしん予知よち目的もくてきとした地殻ちかく変動へんどう観測かんそくさかんにおこなわれるようになった。

地殻ちかく変動へんどう地震じしん関連かんれんせいかんしては、プレート境界きょうかい地震じしんげられる(詳細しょうさいは「プレートテクトニクス」を参照さんしょう)。かくプレート境界きょうかいでは、地殻ちかくのせりがりやしずみにともなう、地殻ちかくひずみ蓄積ちくせきしやすい環境かんきょうとなっている。この地殻ちかくひずみ臨界りんかいてんえるようなとき、もしくはなんらかの原因げんいん地殻ちかくひずみ開放かいほうされるとき地震じしんこることがかっている。

かつ断層だんそうばれる箇所かしょは、プレートの伸縮しんしゅくによってしょうじた地表ちひょうちかいびつ表面ひょうめんあらわれた箇所かしょとの仮説かせつもあり、これも地震じしん原因げんいんとなりうる場合ばあいおおい。よって、地殻ちかくひずみ観測かんそくすることによって、地震じしん予知よち早期そうき警報けいほう研究けんきゅういますすめられている。

ただし、地震じしん体積たいせきモデルとばれるものがあり、その臨界りんかいりょうがどれだけのりょうなのか、あるいはどのような地質ちしつ構造こうぞう場合ばあいどれだけのひずみ地震じしんこるのかとうについては現在げんざい研究けんきゅうすすめられている。なお、ハザードマップ地震じしん指定してい地域ちいきばれるものは、過去かこすう世紀せいきあいだ間歇かんけつてき地震じしんしょうじた箇所かしょを、将来しょうらい30ねん程度ていどしょうじるかくりつ表現ひょうげんしたものであり、いつこってもおかしくはないとされる。とくに、空白くうはくいきばれる箇所かしょは、有史ゆうし以来いらい地震じしん記録きろくのこっていないが、地殻ちかくじょう断層だんそうのこっているため、危険きけん箇所かしょとして、おおくの地震じしん学者がくしゃ危険きけんしている箇所かしょでもある。

地震じしんこう変動へんどうばれる地殻ちかく変動へんどう数日すうじつからすうヶ月かげつあいだこることがおおく、そのはプレート運動うんどうともな定常ていじょうてき変動へんどうのみとなる。

地殻ちかく変動へんどう情報じょうほう公表こうひょう[編集へんしゅう]

日本にっぽん国土こくど地理ちりいんは、「だいち2ごう」のデータを利用りようして、火山かざん活動かつどう地盤じばん沈下ちんかなどを表示ひょうじした変動へんどう分布ぶんぷ公表こうひょうを2023ねん3がつ28にちからはじめた[2]

比喩ひゆ表現ひょうげんとしての「地殻ちかく変動へんどう[編集へんしゅう]

ある事柄ことがら構造こうぞう情勢じょうせいなどのおおきな変化へんかうごきを「地殻ちかく変動へんどう」と表現ひょうげんする場合ばあいがある[3]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]