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プルームテクトニクス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
地球ちきゅう構造こうぞうさい外部がいぶうす地殻ちかくした上部じょうぶマントル下部かぶマントルがある。中心ちゅうしんしろ部分ぶぶんかく。プルームテクトニクスでは外部がいぶ内部ないぶマントルにおける変動へんどうあつかう。
プルームテクトニクス

プルームテクトニクス (plume tectonics) は、1990年代ねんだい以降いこう地球ちきゅう物理ぶつりがくあたらしい学説がくせつマントルうちだい規模きぼ対流たいりゅう運動うんどうプルーム (plume) とび、この変動へんどうをプルームテクトニクスと命名めいめいされた。

プレートテクトニクス理論りろん地球ちきゅう表面ひょうめん存在そんざいするプレートあつやく100km)の変動へんどうテクトニクス)をあつかうのにたいし、このせつではふかさ2,900kmにたっするマントル全体ぜんたいうごきを検討けんとうする。日本にっぽん深尾ふかお良夫よしおもと東京大学とうきょうだいがく地震じしん研究所けんきゅうじょ)や丸山まるやま茂徳しげのり東京工業大学とうきょうこうぎょうだいがく地球ちきゅう生命せいめい研究所けんきゅうじょ)が提唱ていしょうしている。

地震じしんトモグラフィー調しらべると、マントル内部ないぶ上昇じょうしょうりゅうとみられる高温こうおん領域りょういき下降かこうりゅうとみられる低温ていおん領域りょういき確認かくにんでき、こうしたつつじょう上下じょうげながれ(プルーム)がマントルの対流たいりゅう相当そうとうするとかんがえられる。

マントルプルーム

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太平洋たいへいようにおけるホットプルーム、コールドプルームおよびホットスポット
下部かぶマントルにおけるスーパープルームの概念がいねん

プルームとは(羽毛うもうのようにがる)「けむり」を意味いみする。マントルは半径はんけいやく6,357kmの地球ちきゅうなかで、ふかすうじゅうkm - やく2,900kmまでの範囲はんいめているが、そのなか下降かこうするプルーム(コールドプルーム)と上昇じょうしょうするプルーム(ホットプルーム)が存在そんざいする。プルームの上昇じょうしょう下降かこうとも、通常つうじょうふかさ670kmのところでいったん停滞ていたいする。この部分ぶぶん上部じょうぶマントル下部かぶマントル境目さかいめたり、マントルを構成こうせいする鉱物こうぶつがこの位置いち温度おんど圧力あつりょくさかいあい変化へんかするため、この上下じょうげでマントルの密度みつどかたさがおおきく変化へんかすると想定そうていされている。プルームがふかさ670km付近ふきんおおきく上昇じょうしょう、あるいは下降かこうしたものをスーパープルームという。

コールドプルーム

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コールドプルームとは、周辺しゅうへんのマントルより温度おんどひくく、マントル表層ひょうそうから中心ちゅうしんかって下降かこうするプルーム。コールドプルームのちはプレートテクトニクスとふか関係かんけいがある。大陸たいりくプレート衝突しょうとつした海洋かいようプレート海溝かいこうからマントルちゅうしずみ、しずんだプレートは徐々じょじょ周辺しゅうへんのマントルと一体化いったいかしていくが、だい部分ぶぶん比較的ひかくてき低温ていおんのまま、外部がいぶマントルと内部ないぶマントルの境目さかいめふかさ670kmの部分ぶぶんでいったん滞留たいりゅうしたのち、さらに内部ないぶマントルのそこ目指めざしてしずんでいく。なにかのきっかけで下降かこうりゅう複数ふくすうあつまった場合ばあいには、つよおおきな下降かこうりゅう発生はっせいする。これはスーパーコールドプルームばれ、現在げんざいユーラシア大陸たいりくアジア大陸たいりくがわした存在そんざいしている。スーパーコールドプルームは周辺しゅうへんのプレートをせるため、陸地りくちを1かしょあつめてちょう大陸たいりく形成けいせいする原動力げんどうりょくにもなる。

浴槽よくそうかべてせんいたときを想像そうぞうすると理解りかいしやすい。みずいたみずせんうえせられてあつまるが、地球ちきゅうでは比重ひじゅうちいさい大陸たいりく地殻ちかくがスーパーコールドプルームにせられる。現在げんざいではインド大陸たいりくアジア衝突しょうとつし、アフリカ大陸たいりくオーストラリア大陸たいりくもアジアに接近せっきんしつつある。いま太平洋たいへいようによってへだてられているアメリカ大陸あめりかたいりくもアジアにかって移動いどうしており、やく2おくねんにはほとんどの大陸たいりく合体がったいしたちょう大陸たいりくアメイジア大陸たいりく)がまれると想定そうていされている。(これとはぎゃくに、将来しょうらいてきあらたなコールドプルームがユーラシア西部せいぶ出来できることで、大西おおにしひろしふたた縮小しゅくしょうてんじ、アメリカ大陸あめりかたいりくがユーラシア、アフリカ大陸たいりく西岸せいがん接近せっきん合体がったいするというシナリオもあり、これをパンゲア・ウルティマ大陸たいりくせつぶ)

ホットプルーム

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ホットプルームとは、コールドプルームとぎゃくに、ふかさ2,900kmのかくとの境目さかいめかくねつけて高温こうおんになったマントル成分せいぶん上昇じょうしょうするものをぶ。現在げんざいはアフリカ大陸たいりくした南太平洋みなみたいへいようスーパーホットプルーム存在そんざいし、だい地溝ちこうたい(グレート・リフト・バレー)が形成けいせいされた原因げんいんであり、南太平洋みなみたいへいよう点在てんざいする火山かざんみなもとであるとかんがえられている。ホットプルームもまた、外部がいぶマントルと内部ないぶマントルの境目さかいめふかさ670kmの部分ぶぶん一旦いったん滞留たいりゅうするため、通常つうじょうでは地上ちじょう激甚げきじん影響えいきょうあたえることはない。しかしだい規模きぼなスーパーホットプルームが直接ちょくせつ地表ちひょうたっすると、非常ひじょうはげしい火山かざん活動かつどう発生はっせいするとかんがえられている。地球ちきゅう生命せいめい史上しじょうもっとおおきな大量たいりょう絶滅ぜつめつ発生はっせいした2.5おくねんまえペルム/さんじょう境界きょうかいP-T境界きょうかい)では史上しじょう最大さいだいきゅう溶岩ようがん噴出ふんしゅつ事件じけんによりシベリア台地だいち玄武岩げんぶがん洪水こうずい玄武岩げんぶがん)が形成けいせいされたが、これはスーパーホットプルームによるものとかんがえられている。この時期じきちょう大陸たいりくパンゲア分裂ぶんれつ開始かいしした時期じき相当そうとうし、プルームの地表ちひょうへの到達とうたつ大陸たいりく分裂ぶんれつについて相関そうかんせい指摘してきされる。

将来しょうらいてきには、つぎちょう大陸たいりくができたときに直接ちょくせつ地表ちひょうたっするだい規模きぼなスーパーホットプルームがこるとかんがえられている。現在げんざいつぎちょう大陸たいりく形成けいせいにはやく2おくねん出現しゅつげんするとかんがえられるアメイジア大陸たいりくせつと、やく2おく5せんまん - 4おくねんにかけて出現しゅつげんするとかんがえられるパンゲア・ウルティマ大陸たいりくせつがある。アメイジア大陸たいりくせつでは現在げんざい太平洋たいへいよう、パンゲア・ウルティマ大陸たいりくせつでは現在げんざい大西おおにしひろしでのだい規模きぼなスーパーホットプルームの発生はっせい推測すいそくされる。

分野ぶんやとの関連かんれん

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プレートテクトニクスでは、大陸たいりくプレートや海洋かいようプレートのうごきから、地球ちきゅう表面ひょうめん発生はっせいしている造山つくりやま運動うんどう地震じしん火山かざんなどの説明せつめいいたったが、プレートが移動いどうする方向ほうこうについて検討けんとうされておらず、ちょう大陸たいりく形成けいせい分裂ぶんれつ説明せつめいすることはできなかった。プルームテクトニクスはこれに説明せつめいをもたらした。また生物せいぶつ大量たいりょう絶滅ぜつめつ原因げんいんについても、地球ちきゅう内部ないぶうごきに起因きいんする大陸たいりく離合りごう集散しゅうさんや、だい規模きぼ火山かざん活動かつどうによる二酸化炭素にさんかたんそ濃度のうど上昇じょうしょうはしはっする気候きこう変動へんどう関連付かんれんづけて、学際がくさいてき研究けんきゅうおこなわれている。

評価ひょうか

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「プルームテクトニクス」というかたり日本にっぽんでは丸山まるやまにより朝日新聞あさひしんぶん紙上しじょう発表はっぴょうされ、ある程度ていど認知にんちされているほか、この理論りろん高等こうとう学校がっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうにおける地学ちがく基礎きそ地学ちがく内容ないようふくまれている[1]ため、履修りしゅうしゃはこの部分ぶぶん学習がくしゅうすることになる(ゆえ大学だいがく入試にゅうしでもわれる)。しかし、日本にっぽん以外いがいではそれほどひろまりをせておらず、「プルーム仮説かせつ」(Plume Hypothesis) とばれている。なおマントルプルーム (Mantle plume) の概念がいねん自体じたい浸透しんとうしている[2][3]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 高等こうとう学校がっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつ文部もんぶ科学かがくしょう”. 文部もんぶ科学かがくしょうホームページ. 2022ねん12月26にち閲覧えつらん
  2. ^ Richard J. Huggett. The natural history of the Earth. Taylor & Francis. ISBN 0415358027. https://books.google.co.jp/books?id=9DYtP7qVJt8C&pg=PA20&redir_esc=y&hl=ja 
  3. ^ Sara E. Pratt「The question of mantle plumes」。2015ねん

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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