煙けむり

煙突えんとつから排出はいしゅつされる煙けむり。

煙けむり（けむり）は、気体きたい中ちゅうに固体こたいまたは液体えきたいの微粒子びりゅうし（10µm程度ていど未満みまん）が浮遊ふゆうしている状態じょうたい。

煙けむりの組成そせいは、燃もやすものによって異ことなる。ただの水蒸気すいじょうきから、ダイオキシンのような有害ゆうがいな微粒子びりゅうしを含ふくむ場合ばあいもあり、産業さんぎょう廃棄はいき物ぶつを野焼のやきで燃もやせない理由りゆうでもある。煙害えんがいなど人体じんたいへの影響えいきょうを考慮こうりょする場合ばあいは、微粒子びりゅうし群ぐんだけでなく微粒子びりゅうしを含ふくむ気体きたいもあわせて考慮こうりょする必要ひつようがある。

火事かじでの死亡しぼう事例じれいの多おおくは、煙けむりを吸すい込こみ、呼吸こきゅう困難こんなんになるため発生はっせいする。煙けむりを排出はいしゅつする設備せつびが排気はいき管かんや煙突えんとつである。一方いっぽうで通信つうしん手段しゅだんとして利用りようされてきたほか、燻蒸くんじょう・燻いぶし煙けむり式しきの殺虫さっちゅう剤ざいなどにも利用りようされている。

定義ていぎ

一般いっぱんに煙けむりは気体きたい中ちゅうに微粒子びりゅうし群ぐん（10µm程度ていど未満みまん）が浮遊ふゆうしている状態じょうたいをいう。その多おおくは熱ねつ分解ぶんかい反応はんのうや燃焼ねんしょう反応はんのうによって生成せいせいされる。ただし、土煙つちけむりは燃焼ねんしょうではなく埃ほこりや砂すなが巻まき上あげられることで発生はっせいする。

霧きりも空気くうき中ちゅうに水みずの粒子りゅうしが浮遊ふゆうしている状態じょうたいであるが、粒子りゅうしが大おおきく（10µm-50µm）、生成せいせい過程かていも大おおきく異ことなるため煙けむりとは呼よばない。しかし、煙霧えんむ質しつと捉とらえると煙けむりと霧きりの区別くべつは明確めいかくにしにくい。

なお、煙けむりの濃度のうどには空間くうかん中ちゅうの粒子りゅうしの質量しつりょうを表あらわす質量しつりょう煙けむり濃度のうどと光ひかりがどの程度ていど遮さえぎられるか減げん光こう係数けいすうで計算けいさんする量りょう光学こうがく的てき濃度のうどがある。

性質せいしつ

化学かがく的てき性質せいしつ

煙けむりは化学かがく的てきには煤すすけ（すす）や常温じょうおんで液体えきたいの物質ぶっしつが一度いちど気化きかしてから冷つめたい空気くうきに触ふれて凝結ぎょうけつした微粒子びりゅうしなどである。

煙けむりの色いろや生成せいせい物ぶつは炎ほのお（焔ほのお）を出だして燃もえる発はつ炎えん燃焼ねんしょう（発はつ焔ほのお燃焼ねんしょう）か燻いぶし焼しょう状態じょうたいかで異ことなる。酸素さんそが十分じゅうぶんに供給きょうきゅうされる発はつ炎えん燃焼ねんしょう（発はつ焔ほのお燃焼ねんしょう）の場合ばあい、熱ねつ分解ぶんかい生成せいせい物ぶつ中ちゅうの可燃かねん性せい物質ぶっしつはほとんど燃もえてしまうが、木材もくざいのようにこれらを含ふくむ物体ぶったいの多おおくは炭素たんそ数かずが多おおいため固体こたい炭素たんそを遊離ゆうりして煤すす（すす）を生しょうじる。そのため火災かさい時じなど発はつ炎えん燃焼ねんしょう（発はつ焔ほのお燃焼ねんしょう）による煙けむりは黒くろ煙けむりとなる。一方いっぽう、酸素さんそが十分じゅうぶんに供給きょうきゅうされない燻いぶし焼しょう状態じょうたいでは一酸化いっさんか炭素たんそ等とうの熱ねつ分解ぶんかい物ぶつがそのまま放出ほうしゅつされるため、有毒ゆうどくガスの危険きけんもさらに大おおきくなる。火災かさい時じなど木材もくざい等とうの燻いぶし焼しょう状態じょうたいが同時どうじに発生はっせいしているときは、木酢もくさく液えき、木きタール、水みずの粒子りゅうしなどが煙けむりとなって放出ほうしゅつされるため煙けむりの色いろは淡色たんしょくまたは白色はくしょくである。

物理ぶつり的てき性質せいしつ

煙けむりの粒子りゅうしは沈降ちんこう、凝集ぎょうしゅう、拡散かくさんする性質せいしつがある。煙けむりの粒子りゅうしの密度みつどは空気くうき密度みつどよりも大おおきいため、煙けむりの粒子りゅうしは終端しゅうたん速度そくどという一定いっていの速度そくどで漸次ぜんじ沈降ちんこうする。また、長ながく浮遊ふゆうする煙けむりの粒子りゅうしは半径はんけい1µm以下いかの粒子りゅうしで、これらの特とくに小ちいさい粒子りゅうしはブラウン運動うんどうにより互たがいに凝集ぎょうしゅうし、半径はんけい1µmより大おおきくなると漸次ぜんじ沈降ちんこうする。煙けむりの粒子りゅうしには小ちいさいほど急速きゅうそくに拡散かくさんする性質せいしつもあり壁かべなどに付着ふちゃくする。

光学こうがく的てきには光ひかりはその波長はちょうと同大どうだいかそれ以下いかの煙けむりの粒子りゅうしにあたると散乱さんらんする性質せいしつがある。光ひかりの散乱さんらんは透明とうめい物質ぶっしつの煙けむりでも発生はっせいし、物体ぶったい遮蔽しゃへい能力のうりょくは不透明ふとうめい液体えきたい粒子りゅうしよりも透明とうめい液体えきたい粒子りゅうしのほうが大おおきい。

煙けむりの利用りよう

発煙はつえん筒とうの使用しよう例れい

エアレースでの使用しよう例れい

利用りよう法ほうとしては、狩猟しゅりょうや殺虫さっちゅうのための煙けむり、通信つうしんのための狼煙のろし、また喫煙きつえんのための煙けむりがある。

• 煙けむり花火はなび（煙けむり玉だま）のように色いろの付ついた煙けむりを楽たのしむ場合ばあいもある。
• 発煙はつえん筒とうも通信つうしんのために使つかわれる煙けむりの一種いっしゅである。原理げんりはかつて使つかわれた狼煙のろしと同おなじで、山岳さんがくや海上かいじょうでの遭難そうなんの際さいなどに、煙けむりによって遠方えんぽうからの被ひ視認しにん性せいを高たかめるために用もちいられる。なお、車くるまや列車れっしゃが事故じこを起おこしたときや故障こしょうで停止ていししてしまったとき、危険きけんを周囲しゅういに知しらせるために使用しようされる器具きぐとして、発はつ炎えん筒とうおよび信号しんごう炎えん管かんがある。同おなじ発音はつおんになるため混同こんどうされることがあるが、こちらは明あかるい赤色あかいろの火炎かえんによって危険きけんを知しらせるもので、同時どうじに煙けむりも発生はっせいするもののごく少量しょうりょうである。煙けむりが多量たりょうに発生はっせいすると、遠方えんぽうからの視認しにん性せいは高たかまるとしても、風向かざむきや現場げんばの環境かんきょう（トンネル内ないなど）によっては周囲しゅういの車両しゃりょうの視界しかいが悪わるくなってしまう可能かのう性せいがあるため、煙けむりではなく炎ほのおの光ひかりを信号しんごうとして用もちいている。
• 喫煙きつえんされる嗜好しこう品ひんは多おおく、タバコ、大麻たいまなどが一般いっぱん的てきである。
• 燻製くんせいを作つくる場合ばあいには煙けむりの独特どくとくの匂においが利用りようされる。
• 軍事ぐんじ面めんや防犯ぼうはん面めんでは、煙幕えんまくを使つかうことで、戦闘せんとう時じに自分じぶんの姿すがたを消けしたり敵てきの視界しかいを奪うばうと言いった欺瞞ぎまんの手段しゅだんの1つとして古ふるくから使つかわれてきた。現在げんざいでは画像がぞう誘導ゆうどうミサイルや、レーザーによって追尾ついびされるレーザー誘導ゆうどうミサイルと言いったものから身みを守まもる手段しゅだんとしても使つかわれている。これらについての詳細しょうさいは煙幕えんまくを参照さんしょう。
• 航空こうくうショーや特撮とくさつ映画えいがの演出えんしゅつとして煙けむりが使つかわれるのは、パラフィンや油あぶらなどを燃焼ねんしょう・蒸発じょうはつ・霧きり化かさせた煙けむりである。
• 演劇えんげきの舞台ぶたいでも演出えんしゅつとして煙けむりが使つかわれることがあるが、この場合ばあいは観客かんきゃくや役者やくしゃが近ちかくにいるため、燃焼ねんしょうによる煙けむりではなく、ドライアイスによって空気くうきが冷ひやされ、空気くうき中ちゅうの水蒸気すいじょうきが水滴すいてきとして析出せきしゅつしたもの、すなわち湯気ゆげである。舞台ぶたいや避難ひなん訓練くんれん用ようには持もち運はこびできるスモークマシンが利用りようされる。

比喩ひゆ

煙けむりは人間にんげん生活せいかつに馴染なじみ深ふかいものであるため、様々さまざまな比喩ひゆやことわざがある。

煙けむに巻まく

煙幕えんまくで身みを隠かくすさまから、自分じぶんの責任せきにんが問とわれているとき、別べつのことや見当けんとう外はずれのことを言いって、なんとかその場ばを逃のがれようとすること。「煙けむりに巻まくようなことをしないでちゃんと話はなしてくれ」など。

狼煙のろしを上あげる

狼煙のろしを目印めじるしに敵陣てきじんに攻撃こうげきを仕掛しかけたことに由来ゆらいし、何なにか大おおきなことを起おこすきっかけを作つくること。「部長ぶちょうの決断けつだんが部下ぶか全員ぜんいんに起死回生きしかいせいの狼煙のろしを上あげた」など。「引ひき金がねを引ひく」「先陣せんじんを切きる」なども同どう意味いみ。

煙けむたい（けむたい）

薪たきぎの煙けむりがかかると、目めが痛いたくなったりせきをしたりする。そのことから、目障めざわりな言動げんどうをする人ひとのことを指さす。「あの人ひとはいつも自分じぶんの自慢じまんばかりしているが、本当ほんとうに煙けむたい人ひとだ」など。

スモーキー

燻製くんせいやウイスキーを作つくる麦芽ばくがを乾燥かんそうさせる際さいにつく残香のこりがを指さす。英語えいごの smoky flavour に相当そうとう。

馬鹿ばかと煙けむりは高たかいところへのぼる

愚おろかな者ものは後先あとさき考かんがえずに高たかいところ(危険きけんな場所ばしょ)へ好すき好このんで行いってしまうこと、またはおだてに乗のりやすいことを、上うえへ上うえへと立たち昇のぼってゆく煙けむりに例たとえたこと。

関連かんれん項目こうもく

• 煙幕えんまく
• 大気たいき汚染おせん
• 粒子りゅうし状じょう物質ぶっしつ（定義ていぎが煙けむりと部分ぶぶん的てきに重かさなる。）
• スモッグ
• 大気たいき汚染おせんモニタリング
• 発煙はつえん筒とう
• 信号しんごう炎えん管かん
• 燻製くんせい
• 雲くも、逆転ぎゃくてん層そう
• リンゲルマン煤煙ばいえん濃度のうど表ひょう(リンゲルマン濃度のうど表ひょう)、比ひ濁にご計けい、エアロゾル質量しつりょう分析ぶんせき

外部がいぶリンク

• Shedding new light on wood smoke
• Chemical constituents of wood smoke
• Health impact of ultrafine particles
• Burning Issues Public Education Site