PRTR制度せいど

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PRTR制度せいど(ぴーあーるてぃーあーるせいど)は、有害ゆうがいせいうたがわれる化学かがく物質ぶっしつが、どこから、どのくらい、環境かんきょう大気たいき水域すいいき土壌どじょうなど)ちゅう排出はいしゅつされているか(排出はいしゅつりょう)、廃棄はいきぶつなどとして移動いどうしているか(移動いどうりょう)を把握はあくし、集計しゅうけい公表こうひょうする仕組しくみ。事業じぎょうしゃ化学かがく物質ぶっしつ管理かんり促進そくしんしたり、化学かがく物質ぶっしつリスクコミュニケーションの基礎きそ資料しりょうとなったりして、環境かんきょうちゅう化学かがく物質ぶっしつのリスク低減ていげん目的もくてきとする。

PRTRとはPollutant Release and Transfer Registerのりゃくであり、化学かがく物質ぶっしつ排出はいしゅつ移動いどうりょう届出とどけで制度せいど環境かんきょう汚染おせん物質ぶっしつ排出はいしゅつ移動いどう登録とうろく制度せいどなどとやくされている。

各国かっこく[編集へんしゅう]

ほん制度せいどは、2006ねん10がつ現在げんざい欧米おうべい韓国かんこくにおいて導入どうにゅうされている。制度せいど趣旨しゅし対象たいしょう物質ぶっしつなどにはくにによってちがいがあり、重視じゅうしする事項じこう環境かんきょうへの影響えいきょうであったり、事業じぎょうしゃによる化学かがく物質ぶっしつ適正てきせい管理かんりであったりする。前者ぜんしゃ欧州おうしゅうがた後者こうしゃ米国べいこくがた表現ひょうげんすることもできよう。なお、日本にっぽんばんほん制度せいど内容ないようは、両者りょうしゃなかあいだてきなものとなっている。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおいては、1999ねんに「特定とくてい化学かがく物質ぶっしつ環境かんきょうへの排出はいしゅつりょう把握はあくとうおよ管理かんり改善かいぜん促進そくしんかんする法律ほうりつ」(PRTRほうかんほう化学かがく物質ぶっしつ排出はいしゅつ把握はあく管理かんり促進そくしんほう)として法制ほうせいされた。なお、この法律ほうりつによって導入どうにゅうされた制度せいどのもうひとつのおおきなはしらSDS制度せいどがある。

日本にっぽんのPRTRにおいては、政令せいれい指定していされた物質ぶっしつ(462種類しゅるい)を年間ねんかん1トン(発癌はつがんせいのある15物質ぶっしつ特定とくていだい1しゅ指定してい化学かがく物質ぶっしつ)については0.5トン)以上いじょうあつか事業じぎょうしょで、業種ぎょうしゅ従業じゅうぎょう員数いんずうなどの要件ようけん合致がっちするものについて、その事業じぎょうしょ事業じぎょうしゃは、指定してい物質ぶっしつ排出はいしゅつりょう移動いどうりょうとどることが義務付ぎむづけられている。くにはその届出とどけで集計しゅうけいするとともに、届出とどけで対象たいしょうがい排出はいしゅつげん対象たいしょう業種ぎょうしゅ小規模しょうきぼ事業じぎょうしょ家庭かてい自動車じどうしゃなど)からの排出はいしゅつりょう推計すいけいし、これを公表こうひょうしている。また、個別こべつ事業じぎょうしょ届出とどけで公表こうひょうされている。

対象たいしょう物質ぶっしつ特定とくてい化学かがく物質ぶっしつ環境かんきょうへの排出はいしゅつりょう把握はあくとうおよ管理かんり改善かいぜん促進そくしんかんする法律ほうりつにおける特定とくてい化学かがく物質ぶっしつ一覧いちらん参照さんしょう

一部いちぶ地方自治体ちほうじちたいにおいても、PRTRほう同等どうとう条例じょうれいなどが制定せいていされ、あるいはその上乗うわのよこおこなわれている。さらに、地方自治体ちほうじちたい独自どくじ集計しゅうけい推計すいけいしたデータの公表こうひょうも、法律ほうりつもとづく義務ぎむではないものの、全国ぜんこくおこなわれている(周知しゅうちつとめることと法律ほうりつさだめられている)。

だい1かい届出とどけで集計しゅうけい結果けっかとして、2001年度ねんど実績じっせき排出はいしゅつりょうデータが2003ねん3がつ公表こうひょうされ、以後いご毎年まいとし公表こうひょうおこなわれている。2006年度ねんど(2005年度ねんど実績じっせき)の届出とどけでにおける国内こくない年間ねんかん排出はいしゅつりょうぜん排出はいしゅつさきについての合計ごうけい)の上位じょうい4物質ぶっしつ以下いかのとおりであり、届出とどけで開始かいし以来いらい順位じゅんいおなじである。

  1. トルエン……106 kt / とし
  2. キシレン……45 kt / とし
  3. 塩化えんかメチレン……22 kt / とし
  4. エチルベンゼン……15 kt / とし

PRTRほう従来じゅうらい公害こうがい関連かんれん法令ほうれいとはことなり、規制きせいという手法しゅほうふくまない。罰則ばっそくもうけているのも、事業じぎょうしゃ届出とどけで義務ぎむ違反いはんした場合ばあいなどであり、排出はいしゅつりょうまたは移動いどうりょう大小だいしょうについては、規定きていじょうなんらの制限せいげんもない。しかし、行政ぎょうせいによる公表こうひょうとその内容ないようたいする市民しみん評価ひょうかといった社会しゃかいてき圧力あつりょくとうにより、結果けっかとして、事業じぎょうしゃ化学かがく物質ぶっしつ管理かんり改善かいぜん、ひいては化学かがく物質ぶっしつのリスクの低減ていげんねらいとしている。ただし、ここでうリスクとは、あくまで「物質ぶっしつ環境かんきょうリスク」であって、日常にちじょう会話かいわ使つかわれる意味いみでのリスクとはかならずしもおなじでない。

PRTRほう対象たいしょうとする物質ぶっしつは、詳細しょうさいリスク評価ひょうかいまだなされていないものもある(ダイオキシンるいなどの一部いちぶ物質ぶっしつのぞく。)。その理由りゆうは、「リスクの不明ふめい無数むすう物質ぶっしつへの対策たいさくもする」というかんがかたがあるため。基本きほんてきなリスク評価ひょうか終了しゅうりょうし、かつ問題もんだいのある物質ぶっしつについて、環境かんきょう基準きじゅんなどを制定せいていするなどの対応たいおうられている。また、放射ほうしゃせい物質ぶっしつ法令ほうれいによる規制きせいがあるため、PRTRほう対象たいしょうがいである。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

(PRTRおよびそのデータ)

化学かがく物質ぶっしつデータ)