海洋かいよう汚染おせん

汚染おせんされている海うみ

漂着ひょうちゃくしたゴミ

海洋かいよう汚染おせん（かいようおせん）とは、海域かいいきや海水かいすいが人間にんげんの活動かつどうによって排出はいしゅつされた物質ぶっしつ（廃棄はいき物ぶつ）で汚染おせんされることをいう。このような廃棄はいき物ぶつには、有毒ゆうどくな元素げんそや化学かがく物質ぶっしつだけでなく、一般いっぱん家庭かていから排出はいしゅつされる油脂ゆしやとぎ汁じるなどのすべての有機物ゆうきぶつ、ペットボトルなど様々さまざまな容器ようき、農業のうぎょう用よう資材しざい、ビニール袋ぶくろなどの腐食ふしょくしにくいゴミ、近代きんだいの農業のうぎょうに不可欠ふかけつな化学かがく肥料ひりょう、など多種たしゅ多様たようなものがある。

定義ていぎ

国連こくれん海洋かいよう法ほう条約じょうやくでは「生物せいぶつ資源しげん及および海洋かいよう生物せいぶつに対たいする害がい、人ひとの健康けんこうに対たいする危惧きぐ、海洋かいよう活動かつどうに対たいする障害しょうがい、海水かいすいの利用りようによる水質すいしつの悪化あっか及および快適かいてき性せいの減少げんしょうというような有害ゆうがいな結果けっかをもたらし又またはもたらす恐おそれのある物質ぶっしつ又またはエネルギーを人間にんげんが直接的ちょくせつてき又または間接かんせつ的てきに海洋かいよう環境かんきょうに持もち込こむこと」とされている。

原因げんいん

人ひとによる汚染おせん

大だい規模きぼな環境かんきょう破壊はかいに通つうじる例れいとして、戦争せんそうによる石油せきゆ関連かんれん施設しせつの破壊はかい、悪天候あくてんこうや人為じんい的てきミスによるタンカーの座礁ざしょうによる原油げんゆ流出りゅうしゅつ事故じこ がある。また、一見いっけんすると無害むがいに思おもえるが汚染おせんが長期ちょうき的てきである有機物ゆうきぶつと栄養えいよう塩しおは、特定とくていの水生すいせい生物せいぶつの絶滅ぜつめつという決定的けっていてきな破壊はかいを引ひき起おこしており、人口じんこう増加ぞうかに比例ひれいして汚染おせん量りょうが増ふえ続つづけるという問題もんだいを抱かかえている。現在げんざいでは、ほとんど全すべての国際こくさい主要しゅよう河川かせんの河口かこう部ぶで、富とみ栄養えいよう化かによる赤潮あかしおや青あお潮うしおが頻繁ひんぱんに起おこっており、漁業ぎょぎょうに大おおきな被害ひがいが出でている。また、汚染おせんによるヘドロの堆積たいせきと藻も場じょうの減少げんしょうという問題もんだいは、海洋かいよう生物せいぶつの産卵さんらん場所ばしょの減少げんしょうを意味いみし、海洋かいよう生態せいたい系けいに深刻しんこくな影響えいきょうを及およぼしている。 福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこでは対策たいさく後ごの汚染おせん水すいが海うみに流出りゅうしゅつした。2013年ねん6月がつには10000リットルあたり1100ベクレルのトリチウムが検出けんしゅつされ、汚染おせんされた地下水ちかすいが海うみへ流出りゅうしゅつしていることが判明はんめい、7月がつには東京電力とうきょうでんりょくもこの事実じじつを認みとめた。

化学かがく物質ぶっしつによる汚染おせん

「海洋かいようの水銀すいぎん汚染おせん」も参照さんしょう

全ぜん地球ちきゅう的てきな海洋かいよう汚染おせんとなっているもののひとつに、環境かんきょう中ちゅうに放出ほうしゅつされた特定とくていの有害ゆうがい物質ぶっしつ（有機ゆうき水銀すいぎん、PCB、殺虫さっちゅう剤ざいBHC などが有名ゆうめいである）がある。これらは、水みずに溶とけて海うみへ流出りゅうしゅつした時点じてんでは低てい濃度のうどであっても、プランクトンなどの海洋かいよう生物せいぶつの体内たいないに取とり込こまれると食物しょくもつ連鎖れんさによって次々つぎつぎと生物せいぶつ濃縮のうしゅくが起おこり、連鎖れんさの頂点ちょうてんにいるマグロや鯨くじらなどには高こう濃度のうどに蓄積ちくせきする。このような生物せいぶつを多量たりょうに食たべると健康けんこう被害ひがいや知能ちのうの低下ていかを引ひき起おこすと言いわれている。

自然しぜん環境かんきょうの変化へんかに連動れんどうした汚染おせん

海洋かいよう汚染おせんのひとつに土砂どしゃの流入りゅうにゅうもある。人間にんげんが山やまの木きを大量たいりょう伐採ばっさいしたあとに大雨おおあめが降ふると、自然しぜん状態じょうたいとは数すう桁けた違ちがう大量たいりょうの土砂どしゃが河川かせんに流ながれ込こむため、産卵さんらん場所ばしょとしての藻も場じょうや、珊瑚礁さんごしょうのような微妙びみょうな生態せいたい系けいに大おおきな影響えいきょうを与あたえることになる。沖縄おきなわに大雨おおあめが降ふって海うみに土砂どしゃが流ながれ込こむと、珊瑚礁さんごしょうにオニヒトデが異常いじょう発生はっせいすることが知しられている。

人間にんげん活動かつどうに伴ともなう汚染おせん

このアホウドリのひなは、親鳥おやどりによりプラスチックが混入こんにゅうした餌えさを与あたえられたとみられる

さらに近年きんねん、漂着ひょうちゃくごみによる海岸かいがんへの悪影響あくえいきょうが深刻しんこくな問題もんだいとなりつつあり、太平洋たいへいようゴミベルトといわれるゴミの山やまが渦巻うずまく海域かいいきを生うんでいる。中なかでもプラスチックの樹脂じゅしは水みずに溶とけにくく形状けいじょうを保持ほじする性質せいしつがあるため、海うみにおいても生態せいたい系けいに悪影響あくえいきょうを及およぼす。米べいジョージア大学だいがくの研究けんきゅう結果けっかでは、海うみに流出りゅうしゅつしたプラスチックの量りょうが、2010年ねんの1年間ねんかんだけで480万まんトンから最大さいだい1,270万まんトンにのぼると推計すいけいした。200種しゅ以上いじょうの海洋かいよう生物せいぶつがプラスチックを誤あやま飲いん、摂食せっしょくしていると懸念けねんされている。ウミガメや大型おおがた魚類ぎょるい、鳥とりなどがビニール袋ぶくろをクラゲなどのエサと勘違かんちがいして食たべ、消化しょうか管かんが詰つまって死しに至いたるという問題もんだいも起おこっている。プラスチックは海水かいすい中ちゅうでも物質ぶっしつとして存続そんぞくしやすいため、海流かいりゅうや波なみ、風ふうによって長ながい間あいだ漂流ひょうりゅう、循環じゅんかんする傾向けいこうがある。直径ちょっけい5mm以下いかのマイクロプラスチックなど小ちいさく砕くだけて動物どうぶつプランクトン、さらにそれを食たべる魚さかななど、食物しょくもつ連鎖れんさにしたがって体内たいないに入はいり込こみ、生態せいたい系けいに悪影響あくえいきょうを与あたえている。これらのプラスチック片へんにはPCBなどの有害ゆうがい物質ぶっしつを付着ふちゃくし脂肪しぼうに濃縮のうしゅくされていることがある。このため2018年ねん頃ころから、化学かがくメーカーや大手おおて小売こうりチェーンなどがストローなどのプラスチック製品せいひんを生産せいさん・使用しようしない企業きぎょうポリシーを打うち出だし始はじめた。

また、上記じょうきのような汚染おせんだけではなく、漁獲ぎょかく資源しげんの乱獲らんかくによる海洋かいよう生態せいたい系けいの崩壊ほうかいも問題もんだいになっており、これもまた広義こうぎの海洋かいよう汚染おせんとして認識にんしきされつつある。 1960年代ねんだいからの大だい規模きぼなトロール業ごうの開始かいしと、魚さかな群ぐん探知たんち機きなどに代表だいひょうされる行いき過すぎた漁業ぎょぎょう技術ぎじゅつの進歩しんぽにより、現在げんざいでは多おおくの大型おおがた魚類ぎょるい資源しげんがかつての量りょうの10%以下いかとなっており、絶滅ぜつめつも心配しんぱいされている。この結果けっか、主要しゅような小型こがた魚ぎょ種しゅの不安定ふあんてい的てきな資源しげん量りょう変動へんどうが生しょうじ、海洋かいよう生態せいたい系けいを構成こうせいする生態せいたい系けいピラミッドの改変かいへん（クラゲやヒトデなどの大だい発生はっせいに代表だいひょうされる、いわゆる「海うみのスライム化か」）の要因よういんのひとつと考かんがえられている。

排水はいすいの規制きせいにより、河川かせん水質すいしつは一定いってい改善かいぜんされたが、閉鎖へいさ性せい水域すいいきの水質すいしつが改善かいぜんされない原因げんいんとして、底そこ質しつ汚染おせんの問題もんだいがあり、底そこ質しつ汚染おせんが水質すいしつ汚染おせんの原因げんいんと一ひとつとなっている。このため、国土こくど交通省こうつうしょうは技術ぎじゅつ的てき資料しりょうや、考かんがえ方かたなどを2007年ねんにとりまとめ、対応たいおうしている。

対策たいさく

• オイルフェンス
• 油あぶら水すい分離ぶんり装置そうち
• The Ocean Cleanup - 海洋かいようゴミ回収かいしゅう非ひ営利えいり団体だんたい
• 環境かんきょう基準きじゅん
• ジャック＝イヴ・クストー - フランスの海洋かいよう学者がくしゃ

海洋かいよう清掃せいそう船せん

海洋かいよう汚染おせんのひとつである、化学かがく物質ぶっしつや原油げんゆ、漂流ひょうりゅう物ぶつを取とり除のぞくことを目的もくてきとして作つくられた船ふねを海洋かいよう清掃せいそう船せんという。日本にっぽんでは、べいくりんなど、国土こくど交通省こうつうしょうと各かく地方ちほう整備せいび局きょくが清掃せいそう船せんを使つかい、港みなとや海うみの汚染おせんを除去じょきょしている。

国連こくれんの持続じぞく可能かのうな開発かいはつ目標もくひょう(SDGs)ターゲット14.1

国連こくれんの持続じぞく可能かのうな開発かいはつ目標もくひょう(SDGS)のターゲット14.1では「2025年ねんまでに、海洋かいよう堆積たいせき物ぶつや富とみ栄養えいよう化かを含ふくむ、特とくに陸上りくじょう活動かつどうによる汚染おせんなど、あらゆる種類しゅるいの海洋かいよう汚染おせんを防止ぼうしし、大幅おおはばに削減さくげんする。」と定さだめており、その防止ぼうしと削減さくげんのプログラムが計画けいかく・実行じっこうされ始はじめている。

法律ほうりつ

国際こくさい

• ロンドン条約じょうやく (1972年ねん)
• 海洋かいよう法ほうに関かんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく
• バーゼル条約じょうやく
• 2009年ねんの船舶せんぱくの安全あんぜんかつ環境かんきょう上じょう適正てきせいな再さい資源しげん化かのための香港ほんこん国際こくさい条約じょうやく(通称つうしょう：シップリサイクル条約じょうやく)
• マルポール条約じょうやく - 海難かいなん事故じこでの海洋かいよう汚染おせん防止ぼうし法ほう
• 残留ざんりゅう性せい有機ゆうき汚染おせん物質ぶっしつに関かんするストックホルム条約じょうやく
• 油あぶらによる汚染おせん損害そんがいの補償ほしょうのための国際こくさい基金ききんの設立せつりつに関かんする国際こくさい条約じょうやく
• 東ひがしアジア海域かいいき環境かんきょう管理かんりパートナーシップ

国こくごと

• Clean Water Act - アメリカ
• Marine Protection, Research, and Sanctuaries Act of 1972 - アメリカ
• 海洋かいよう汚染おせん等とう及および海上かいじょう災害さいがいの防止ぼうしに関かんする法律ほうりつ - 日本にっぽん
• 水質すいしつ汚濁おだく防止ぼうし法ほう - 日本にっぽん
• 海岸かいがん漂着ひょうちゃく物ぶつ処理しょり推進すいしん法ほう - 日本にっぽん

関連かんれん項目こうもく

• 太平洋たいへいようゴミベルト
• 漂流ひょうりゅう・漂着ひょうちゃくごみ
• 水質すいしつ汚染おせん
• 底そこ質しつ汚染おせん
• 石油せきゆ流出りゅうしゅつ
• 環境かんきょう問題もんだい
• 持続じぞく可能かのうな開発かいはつ目標もくひょう
• 世界せかい海洋かいようデー
• プラスチック汚染おせん
• イチイヅタ

外部がいぶリンク

• 国土こくど交通省こうつうしょう - 港湾こうわん
• 環境省かんきょうしょう - 閉鎖へいさ性せい海域かいいき対策たいさく関係かんけい
• 瀬戸内海せとないかい環境かんきょう保全ほぜん協会きょうかい
• 大阪おおさか湾わん再生さいせい推進すいしん協議きょうぎ会かい
• 国連こくれん海洋かいよう法ほう条約じょうやく（海洋かいよう法ほうに関かんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく）（全文ぜんぶん）