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石油せきゆ

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石油せきゆ(せきゆ、えい: Petroleum)とは、炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんとして、ほかに少量しょうりょう硫黄いおう酸素さんそ窒素ちっそなどさまざまな物質ぶっしつふく液状えきじょうあぶらで、鉱物こうぶつ資源しげん一種いっしゅである。地下ちか油田ゆでんから採掘さいくつ、ガス、水分すいぶん異物いぶつなどをおおまかに除去じょきょした精製せいせいまえのものをとく原油げんゆ(げんゆ)とぶ。

原油げんゆ瓶詰びんづ
石油せきゆタンク

概要がいよう

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石油せきゆ」は沈括の『ゆめけい筆談ひつだん』からの言葉ことば[1]英語えいご石油せきゆは「Petroleum」という。これはラテン語らてんごのPetra(岩石がんせき)とOleum(あぶら)を語源ごげんとする。狭義きょうぎには天然てんねん原油げんゆ(crude oil)のことをすが、よりひろ意味いみでは天然てんねんガス固体こたいアスファルトなどをふくめる。さらに、原油げんゆ原料げんりょうとして製造せいぞうされた石油せきゆ製品せいひん石油せきゆ化学かがく製品せいひんをもふくめることがある。また、日常にちじょう生活せいかつでは灯油とうゆを「石油せきゆ」とぶこともおおい。

ふるくはいしのう(せきのうゆ)ともばれた。

また、石油せきゆ製品せいひんれん産品さんぴんばれる。これは原油げんゆ精製せいせいしてガソリン灯油とうゆなどをつく場合ばあい、ある特定とくてい製品せいひんのみをつくることは出来できず、かなら全部ぜんぶ種類しゅるいあぶら生産せいさんされてしまうため、こうばれている。石油せきゆ精製せいせいとは、あぶら性質せいしつちがいでけること分留ぶんりゅう)なので、精製せいせいするもと原油げんゆ種類しゅるいによって、生産せいさんされる製品せいひん割合わりあいとめぶん)がことなってくる。とめぶんなかでも需要じゅようおおいガソリンは、よりおもあぶらあらためしつすることでつくることができる[2]

おも化石かせき燃料ねんりょうとして、世界中せかいじゅうでさまざまな用途ようと使用しようされており、現代げんだい人類じんるい文明ぶんめいささえる重要じゅうよう物質ぶっしつであるが、膨大ぼうだいりょう消費しょうひされており、いずれ枯渇こかつすると危惧きぐされている。

近年きんねんでは、シェールオイルオイルサンドなどに代表だいひょうされる、在来ざいらいがた資源しげんばれる資源しげん注目ちゅうもくあつめている。存在そんざい自体じたいふるくからられていたものの、これまでは掘削くっさく技術ぎじゅつ採算さいさんせいめんから、開発かいはつおこなわれてこなかった。近年きんねん掘削くっさく技術ぎじゅつ進展しんてん原油げんゆ価格かかく高騰こうとうにより、採算さいさんれる見通みとおしとなったことから、2010ねんころからきたアメリカ中心ちゅうしん開発かいはつすすめられている。シェールオイルの資源しげん自体じたい世界中せかいじゅう遍在へんざいし、埋蔵まいぞう資源しげんりょう在来ざいらいがた石油せきゆ資源しげん上回うわまわると見込みこまれていることから、石油せきゆのさらなる安定あんてい供給きょうきゅう資源しげん偏在へんざい解消かいしょう期待きたいされている一方いっぽうで、在来ざいらいがた石油せきゆ資源しげんくら掘削くっさく費用ひようたかく、石油せきゆ価格かかく低迷ていめいには油田ゆでん開発かいはつ低迷ていめいする傾向けいこうがある。

起源きげん

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石油せきゆ起源きげんについての論争ろんそうは、生物せいぶつ由来ゆらいせつ有機ゆうき成因せいいんろん)と生物せいぶつ由来ゆらいせつ無機むき成因せいいんろん)のおおきくふたつにかれる。論争ろんそう起源きげんふるく、確認かくにんできる範囲はんいではともにルネッサンスにまでさかのぼる[3]今日きょうでは生物せいぶつ由来ゆらいせつひろれられている。生物せいぶつ由来ゆらい石油せきゆ炭化たんか水素すいそ)もわずかながら存在そんざいはしているが、全体ぜんたいからするときわめて少量しょうりょう推定すいていされる[4]

生物せいぶつ由来ゆらいせつ有機ゆうき成因せいいんろん

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現在げんざい学説がくせつ主流しゅりゅうである。ひゃくまんねん以上いじょう長期間ちょうきかんにわたってあつ土砂どしゃ堆積たいせきそう埋没まいぼつした植物しょくぶつなどの生物せいぶつ遺骸いがいは、高温こうおんこうあつあぶらははケロジェン) という物質ぶっしつわり、いで液体えきたいやガスの炭化たんか水素すいそへと変化へんかする[5]。これらは岩盤がんばんない隙間すきま移動いどうし、貯留ちょりゅうそうばれる砂岩さがん石灰岩せっかいがんなど多孔たこうしつ岩石がんせき捕捉ほそくされて油田ゆでん形成けいせいする。この由来ゆらいから、石炭せきたんとともに化石かせき燃料ねんりょうともばれる。

有機ゆうき成因せいいんろん根拠こんきょひとつとして石油せきゆちゅうふくまれるバイオマーカー存在そんざいがある。光合成こうごうせい生物せいぶつみどりたい由来ゆらいするポルフィリンかく生物せいぶつ生産せいさんするステロールコレステロールなど)に由来ゆらいするステラン同様どうよう細菌さいきん生産せいさんするホパノイド由来ゆらいするホパン、あるいは酵素こうそ関与かんよしない化学かがく反応はんのうでは生成せいせい困難こんなん光学こうがく活性かっせいをもつ有機ゆうき化合かごうぶつなどがバイオマーカーとして石油せきゆふくまれている[5][6]。これらバイオマーカーの組成そせい石油せきゆ熟成じゅくせいには関連かんれんせい見出みいだされている。また、石油せきゆちゅうふくまれる炭化たんか水素すいそ炭素たんそ同位どういたいかんして、炭素たんそすうすくない炭化たんか水素すいそほど質量しつりょうかる炭素たんそ同位どういたいふく割合わりあいおおくなるという傾向けいこうが、ねつ分解ぶんかいによる炭化たんか水素すいそ生成せいせい傾向けいこうおなじであることがられている[よう出典しゅってん]。この結果けっかは、メタンのような炭素たんそすうすくない炭化たんか水素すいそ重合じゅうごうによって石油せきゆ生成せいせいしたとする無機むき成因せいいんせつとは矛盾むじゅんする。

地球ちきゅう物理ぶつり学者がくしゃ石井いしい吉徳よしのりは「2.25おくねんまえちょう大陸たいりくパンゲア次第しだい分離ぶんり現在げんざい姿すがたになるまでの過程かていで2おくねんまえさんじょう(Triassic)以後いご存在そんざいしたテチスうみ(Tethys)が地球ちきゅう史上しじょう石油せきゆ生成せいせいきわめて特異とくいだった。中生代ちゅうせいだい二酸化炭素にさんかたんそ濃度のうどいまより10ばいたかく、気温きおんは10℃もたかかった。つまり地球ちきゅう温暖おんだんで、植物しょくぶつ光合成こうごうせいきわめて活発かっぱつであった。しかもこのテチスうみ赤道あかみち付近ふきん停滞ていたいし、海水かいすいは攪拌されずながさんかけ状態じょうたいつづいた。このため有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいされず、石油せきゆ熟成じゅくせい好条件こうじょうけんであったことが中東ちゅうとう油田ゆでんはじまりである。石油せきゆさがせばまだまだあるという単純たんじゅん発想はっそう地球ちきゅうからただしくない。」と有限ゆうげんせい強調きょうちょうしている[7]

また、2021ねん石油せきゆ同等どうとう炭化たんか水素すいそ合成ごうせいする植物しょくぶつプランクトンのDicrateria rotunda (D. rotunda)が発見はっけんされた。このプランクトンの合成ごうせいする一連いちれん飽和ほうわ炭化たんか水素すいそ炭素たんそすうは10から38までであり、これはガソリン(炭素たんそすう10-15)、ディーゼル炭素たんそすう16-20)、燃料ねんりょう炭素たんそすう21以上いじょう)に相当そうとうする[8][9]

生物せいぶつ由来ゆらいせつ無機むき成因せいいんろん

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石油せきゆ無機むき由来ゆらいせつは、1940年代ねんだいBP(ブリティッシュペトロリアム)の研究所けんきゅうじょないでは、無機むき生成せいせいぶつであることが主要しゅよう理論りろんであったが、市場いちば戦略せんりゃくてき理由りゆう機密きみつあつかいにしていた[よう出典しゅってん]。1850年代ねんだい以降いこうロシア帝国ていこく化学かがくしゃメンデレーエフなどが提唱ていしょうして、きゅう東側ひがしがわ諸国しょこくでは従来じゅうらいから定説ていせつとされていた学説がくせつである[よう出典しゅってん]きゅう西側にしがわ諸国しょこくでも、天文てんもん物理ぶつり学者がくしゃであるトーマス・ゴールドなどが無機むき由来ゆらいせつとなえた[10]

無機むき成因せいいんろん根拠こんきょとしては「石油せきゆ分布ぶんぷ生物せいぶつ分布ぶんぷあきらかにことなる」「化石かせき燃料ねんりょうではかんがえられないほどのちょう深度しんどから原油げんゆがみつかる」「石油せきゆ組成そせいおおくの地域ちいきでおおむね同一どういつである」「ヘリウムウラン水銀すいぎんガリウムゲルマニウムなど、生物せいぶつ起源きげんでは説明せつめいできない成分せいぶんふくまれている」などがげられる[よう出典しゅってん]。また、生物せいぶつ起源きげんろん根拠こんきょとしている、炭素たんそすうすくない炭化たんか水素すいそほど質量しつりょうかる炭素たんそ同位どういたいふく割合わりあいおおくなるという傾向けいこうは、地下ちかから炭化たんか水素すいそ上昇じょうしょうする過程かていで、分子ぶんしねつ運動うんどうによりおも同位どういたい分離ぶんりされたと解釈かいしゃくする[よう出典しゅってん]。この無機むき由来ゆらいせつもとづけば、一度いちどれた油井ゆせいもしばらく放置ほうちすると、ふたた原油げんゆ産出さんしゅつ可能かのうとなる現象げんしょう説明せつめいすることができる[よう出典しゅってん]。またちょう深度しんどさえ掘削くっさくできれば、日本にっぽんはもちろん世界中せかいじゅうどこでも石油せきゆ採掘さいくつできる可能かのうせいがあることになる。

石油せきゆだい部分ぶぶん生物せいぶつ由来ゆらいであるとする仮説かせつは、おおくの地質ちしつがくてきおよび地球ちきゅう化学かがくてき証拠しょうこ矛盾むじゅんしており、今日きょうではみとめられていない[11]生物せいぶつ起源きげん炭化たんか水素すいそ自体じたい存在そんざいするが、そのりょうについては商業しょうぎょうてき有益ゆうえきりょうではまったくない[4]米国べいこく石油せきゆ地質ちしつ学者がくしゃ協会きょうかいのラリー・ネイションは「論争ろんそうは、生物せいぶつ起源きげん石油せきゆ埋蔵まいぞうりょう存在そんざいするかどうかについてではありません」「論争ろんそうは、それらが地球ちきゅう全体ぜんたいてき埋蔵まいぞうりょうにどれだけ貢献こうけんするか、そして地質ちしつ学者がくしゃがそれらをさがすためにどれだけの時間じかん労力ろうりょくついやすべきかについてです。」とべている[12]

石油せきゆ分解ぶんかいきんせつ

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精製せいせいでも内燃ないねん機関きかんうごかすこと出来できほど世界せかいてきにもまれ軽質けいしつ産出さんしゅつする[よう出典しゅってん]静岡しずおかけん相良さがら油田ゆでんでは、有機ゆうき成因せいいんろんとも無機むき成因せいいんろんともことなる、だいさん仮説かせつとなえられている[よう検証けんしょう]。1993ねん当時とうじ京都大学きょうとだいがく大学院だいがくいん今中いまなか忠行ただゆきにより相良さがら油田ゆでんから採取さいしゅした石油せきゆ分解ぶんかいきんOleomonas sagaranensis HD-1かぶ」が嫌気いやけせい条件下じょうけんか炭化たんか水素すいそつくすことを報告ほうこくした[13]。このさい生成せいせいされた石油せきゆは、相良さがら油田あぶらたさん軽質けいしつ性質せいしつ酷似こくじしており、相良さがら油田ゆでん形成けいせいされた一因いちいんとしてとなえられている[よう出典しゅってん]ほか、今中いまなか忠行ただゆきらはこの石油せきゆ分解ぶんかいきんが、メタンハイドレート関係かんけいしていると指摘してきした[よう出典しゅってん]

しかし2002ねん論文ろんぶんでは、この菌株きんしゅ嫌気いやけせい条件じょうけんでの生育せいいくはむしろ否定ひていされている[14]。また、相良さがら油田ゆでん起源きげんについては有機物ゆうきぶつねつ分解ぶんかいとする結論けつろんが2006ねんされている[15]。ちなみに、微生物びせいぶつによる炭化たんか水素すいそ合成ごうせい自体じたいめずらしいことではなく、ひろられている[16][17]

成分せいぶん

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石油せきゆ成分せいぶんのほとんどは炭化たんか水素すいそであり、色々いろいろ炭化たんか水素すいそ混合こんごうぶつから構成こうせいされている。その硫黄いおう化合かごうぶつ窒素ちっそ化合かごうぶつ金属きんぞくるいふくまれている。工業こうぎょうてき有用ゆうよう石油せきゆ製品せいひんつくるためには、分留ぶんりゅうによって成分せいぶんける。精製せいせいすることにより、天然てんねんガスナフサガソリン)、灯油とうゆ軽油けいゆ重油じゅうゆ潤滑油じゅんかつゆアスファルトなどが製品せいひんとしてられる。

天然てんねんガス

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天然てんねんガスは、沸点ふってんが30℃までであり、常温じょうおんよりも沸点ふってんひくいため、ガスとして分離ぶんりする。おも構成こうせい成分せいぶんは、メタン・エタン・プロパン・ブタン・ペンタンなど。ただしプロパンおよびブタンは、液化えきか石油せきゆガス(LPG)として販売はんばいされる。

  • CH4メタン、 methane) - 沸点ふってん -108℃
  • C2H6エタン、 ethane) - 沸点ふってん -67℃
  • C3H8プロパン、 propane) - 沸点ふってん -43℃
  • C4H10ブタン、 butane) - 沸点ふってん -18℃

ナフサ沸点ふってんが30 - 200℃程度ていど炭化たんか水素すいそであり、粗製そせいガソリンともばれる。主成分しゅせいぶん炭素たんそすう5 - 12のアルカンである。 炭素たんそすう5 - 7のナフサは、軽質けいしつナフサばれ、透明とうめい蒸発じょうはつしやすく、溶媒ようばいやドライクリーニングの溶剤ようざい、あるいはそのはや乾性かんせい製品せいひんもちいられる。炭素たんそすうが6 - 12のナフサは、じゅうしつナフサばれ、水素すいそ精製せいせい接触せっしょくあらためしつなどをてから配合はいごう調整ちょうせいされガソリンとして精製せいせいされる。ベンジンホワイトガソリンはナフサからつくられる石油せきゆ製品せいひんである。

灯油とうゆ軽油けいゆ

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炭素たんそすう10 - 15の範囲はんい炭化たんか水素すいそからケロシンつくられジェット燃料ねんりょうもちいられる。炭素たんそすう10 - 20の範囲はんいからディーゼル燃料ねんりょう軽油けいゆ)と灯油とうゆ精製せいせいされる。

重油じゅうゆ

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沸点ふってん320℃以上いじょう蒸留じょうりゅうで、船舶せんぱくのエンジンやボイラーもちいられる重油じゅうゆ精製せいせいされる。これらの石油せきゆ製品せいひんは、常温じょうおん液体えきたいである。

ざん

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つねあつ蒸留じょうりゅう蒸留じょうりゅうできないざんは、減圧げんあつ蒸留じょうりゅう真空しんくう蒸留じょうりゅう)する。潤滑油じゅんかつゆはん固体こたい油脂ゆしワセリンふくむ)は、炭素たんそすう16から炭素たんそすう20の範囲はんいである。

炭素たんそすう20以上いじょうくさりじょう炭化たんか水素すいそ固体こたいであり、パラフィンワックスを皮切かわきりに、タールアスファルトじゅんである。


つねあつ蒸留じょうりゅうとめぶん名称めいしょう沸点ふってん(℃)をしめす:

石油せきゆエーテル (petrol ether) :40 - 70℃ (溶媒ようばいよう
けいガソリン (light petrol) :60 - 100℃ (自動車じどうしゃ燃料ねんりょう
じゅうガソリン (heavy petrol) :100 - 150℃ (自動車じどうしゃ燃料ねんりょう
けいケロシン (light kerosene) :120 - 150℃ (家庭かていよう溶媒ようばい燃料ねんりょう
ケロシン (kerosene):150 - 300℃ (ジェット燃料ねんりょう
ガス (gas oil):250 - 350℃ (ディーゼル燃料ねんりょう/軽油けいゆ/灯油とうゆ
潤滑油じゅんかつゆ:> 300℃ (エンジン・オイル)
残留ざんりゅうぶんタールアスファルト残余ざんよ燃料ねんりょう

公害こうがい環境かんきょう問題もんだい

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歴史れきし

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ぜん近代きんだい

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地下ちかからえるみず存在そんざいは、古代こだいから各地かくちられていた。産地さんち燃料ねんりょう照明しょうめいもちいたれいおおい。たとえば4世紀せいきには中国ちゅうごく大陸たいりく石油せきゆ採掘さいくつおこなわれたという記録きろくがある。ビザンティン帝国ていこくにはギリシャ火薬かやくばれる火炎かえん放射ほうしゃ、あるいは焼夷弾しょういだん兵器へいきがあった。ギリシャ火薬かやく製法せいほう現在げんざいではうしなわれているが、原料げんりょうのひとつとして石油せきゆ使用しようされていたとかんがえられる。また1691ねんには現在げんざい石油せきゆ生産せいさんおこなわれているルーマニアモレニ油田ゆでんから石油せきゆ採掘さいくつされ、産出さんしゅつされた石油せきゆ品質ひんしつてんあぶらよりいとされていた。しかし、大量たいりょう生産せいさんはずっとのことであった。

なお、世界せかい最古さいこ石油せきゆ製品せいひん石器せっき時代じだいにはすで接着せっちゃくざいとして利用りようされていた天然てんねんアスファルトとされている[18]紀元前きげんぜん3000ねんのころ、メソポタミアでは、地面じめんからしみしていた天然てんねんアスファルトが、建造けんぞうぶつ接着せっちゃくミイラ防腐ぼうふ水路すいろ防水ぼうすいなどに使つかわれていた。紀元前きげんぜん1世紀せいきごろの記録きろくでは、石油せきゆ傷口きずぐちにぬってめたり、発熱はつねつをおさえるなどの万能ばんのうやくとしてもちいられていたとしるされている。

日本にっぽんでは天智てんじねん(668ねん)、日本書紀にほんしょきえつくにから「もえゆる」と「もえゆるみず」が近江おうみ大津おおつみや献上けんじょうされたという記録きろくのこっている。江戸えど時代じだいになると石油せきゆは「くそうず」(においすいくさ生水なまみずなどと表記ひょうき)とばれていた。

このように石油せきゆ発見はっけん自体じたい非常ひじょうふるく、産地さんちにおいてその存在そんざい有史ゆうし以前いぜんからられていたものの、積極せっきょくてき利用りようされていたとはがたく、それどころかおおくのくに利用りよう禁止きんしさえされていたこともある。その理由りゆうについては宗教しゅうきょう迷信めいしんふくめて様々さまざまだが、やはりもっとおおきい理由りゆうとしてげられるのは燃焼ねんしょうとう発生はっせいする有毒ゆうどくガスの危険きけんせいであると推測すいそくされる。

精製せいせいされた現在げんざい石油せきゆ製品せいひんでさえその危険きけんせい皆無かいむではなく、精製せいせい石油せきゆいたっては比較ひかくにならないほどリスクがたかい。そのため石油せきゆ産地さんちにおけるごく小規模しょうきぼ利用りようにとどまり、積極せっきょくてき実用じつようにはいたらなかった。

19世紀せいき

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オケマ(オクラホマ)の油井ゆせいやぐら、1922

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは1855ねんネイティブ・アメリカン薬用やくようにしていた黒色こくしょくあぶら精製せいせいしたところ、鯨油げいゆよりも照明しょうめいてきしていることがかり、油田ゆでん開発かいはつがスタートした[19]需要じゅようびるにつれ、原油げんゆ採掘さいくつ必要ひつようせいたかまったところ、機械きかいりの油井ゆせい出現しゅつげんが、石油せきゆ生産せいさん一大いちだいをなした。

エドウィン・ドレーク(ドレーク大佐たいさ)が1859ねん8がつに、ペンシルベニアしゅうタイタスビルのちかくのオイル・クリークで採掘さいくつはじめたのが世界せかい最初さいしょわれる。しかし、べつのところでもっとはやくあったとするせつもある。19世紀せいき後半こうはんには、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくルーマニアロシア帝国ていこくコーカサス地方ちほう石油せきゆ産地さんちであった。

1863ねんジョン・D・ロックフェラーオハイオしゅうクリーブランド石油せきゆ精製せいせいぎょうし、1870ねんスタンダード石油せきゆ設立せつりつした。同社どうしゃ事業じぎょう統合とうごうかさね、1884ねんにはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく全体ぜんたい石油せきゆ精製せいせい能力のうりょくの77%、石油せきゆ販売はんばいシェアは80-85%にたっした。そのあまりに巨大きょだいしたスタンダード石油せきゆたいし、世論せろん反発はんぱつき、1890ねん成立せいりつしたシャーマンはんトラストほうにより、同社どうしゃは34の会社かいしゃ解体かいたいされた。ただし、消滅しょうめつしたわけではなく、分割ぶんかつされただけである。スタンダード石油せきゆ前身ぜんしんとなって、今日きょうエクソンモービルシェブロンなどのきゅう7だいメジャーができた。

1858ねんには、最初さいしょ実用じつよう内燃ないねん機関きかんとして、石炭せきたんガスで動作どうさするルノアール・エンジン発明はつめいされ、1876ねんにドイツ帝国ていこくニコラウス・オットーが、4ストローク機関きかんオットーサイクル発明はつめいした。1870ねんごろには石油せきゆから灯油とうゆったのちのこるガソリンは、産業さんぎょう廃棄はいきぶつとして廃棄はいきされていたが、1883ねんゴットリープ・ダイムラーが、液体えきたい燃料ねんりょうであるガソリンをもちいられる内燃ないねん機関きかん開発かいはつ1885ねんにダイムラーによる特許とっきょされる。同年どうねん、ドイツ帝国ていこくカール・ベンツは、ダイムラーとはべつにエンジンを改良かいりょうした[20]自動車じどうしゃ動力どうりょくげんには、蒸気じょうき機関きかん電気でんきもちいられていたが、20世紀せいきはじめまでにこれらは衰退すいたいした。このような技術ぎじゅつ革新かくしんにより、19世紀せいき後半こうはん以降いこう石油せきゆ普及ふきゅう促進そくしんされた。

日本にっぽんでも明治めいじ初期しょきには、輸入ゆにゅうランプよう灯油とうゆ普及ふきゅうし、文字もじどおり「あかりのあぶら」としてひろ利用りようされるようになった[21]

だい世界せかい大戦たいせんまで

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19世紀せいきまつ自動車じどうしゃ商業しょうぎょう実用じつよう、20世紀せいきはじめの飛行機ひこうき発明はつめいは、ガソリンエンジンはなしてはかんがえられない。船舶せんぱく重油じゅうゆ汽缶きかんボイラー)の燃料ねんりょうにするようになった。

石油せきゆ自体じたいめずらしくないが、大量たいりょう生産せいさんできる油田ゆでんすくなく、発見はっけん困難こんなんであったため、石油せきゆ産地さんち地理ちりてきかたよった。戦車せんしゃ軍用ぐんよう軍艦ぐんかんなどの燃料ねんりょうでもあったことから、20世紀せいきなかばから後半こうはんにかけて、石油せきゆ戦略せんりゃく資源しげんとなった。

20世紀せいき前半ぜんはんには、ベネズエラインドネシア石油せきゆ輸出ゆしゅつくわわった。この当時とうじ世界せかい石油せきゆ生産せいさんはアメリカ、ソ連それん、そしてベネズエラおおめていた。そのなかでもアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくやく70パーセントをめていた。

だい世界せかい大戦たいせん

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だい世界せかい大戦たいせん石油せきゆあらたな用途ようととして、すで戦前せんぜん登場とうじょうしていた化学かがく繊維せんいプラスチックが、あらゆる工業こうぎょう製品せいひん素材そざいとして利用りようされるようになった。また、発電はつでんしょ燃料ねんりょうとしても石油せきゆ利用りようされた。

また、中東ちゅうとうあらたなだい規模きぼ油田ゆでん相次あいついで発見はっけんされた。中東ちゅうとう良質りょうしつすぐれた油田ゆでんおおいだけでなく、人口じんこうおおくなく現地げんち消費しょうひりょうかぎられているため、今日きょうまで世界せかい最大さいだい石油せきゆ輸出ゆしゅつ地域ちいきとなっている。

石油せきゆ探査たんさには莫大ばくだい経費けいひたか技術ぎじゅつ必要ひつようとなるが、成功せいこう見返みかえりもまた莫大ばくだいである。必然ひつぜんてき石油せきゆ産業さんぎょうでは企業きぎょう巨大きょだいすすんだ。独自どくじ採掘さいくつする技術ぎじゅつ資本しほんたないくにでは、巨大きょだい資本しほんった欧米おうべい少数しょうすう石油せきゆ会社かいしゃ独占どくせん採掘さいくつけんわたした。これによって石油せきゆ開発かいはつ集中しゅうちゅうはさらにすすみ、石油せきゆメジャーわれる巨大きょだい国籍こくせき企業きぎょう誕生たんじょうした。大量たいりょう産出さんしゅつによって安価あんかになった石油せきゆはエネルギーげん主力しゅりょくとなった。この変化へんかエネルギー革命かくめいばれた。

しかし1970年代ねんだい資源しげんナショナリズムつよまると、石油せきゆ国有こくゆうする国家こっか相次あいついだ。1973ねんから1974ねんには、だいよん中東ちゅうとう戦争せんそうアラブ石油せきゆ輸出ゆしゅつこく機構きこうイスラエル支持しじこくへの石油せきゆ輸出ゆしゅつ削減さくげんするうごきをみせ、オイルショック世界せかいてききょうをもたらした。

現在げんざい

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ほかにも北海ほっかいメキシコわんなど、世界せかい各地かくち石油せきゆ採掘さいくつされるようになると、原油げんゆ供給きょうきゅう中東ちゅうとう集中しゅうちゅうしていた状況じょうきょう改善かいぜんされ、石油せきゆ戦略せんりゃくせい低下ていかしていった。しかし今日きょうでも石油せきゆ重要じゅうようせい低下ていかしておらず、原油げんゆ価格かかく変動へんどうが、世界せかい経済けいざいあたえる影響えいきょう依然いぜんとしておおきい。

2020ねん3月、産油さんゆこくによる協調きょうちょう減産げんさん体制たいせい終了しゅうりょうしたところに新型しんがたコロナウイルス流行りゅうこうともな景気けいき減速げんそくかさなり、原油げんゆ価格かかくが1バレル20ドルだい暴落ぼうらく生産せいさん費用ひよう後述こうじゅつ)が比較的ひかくてきたかいシェールオイル関連かんれん業者ぎょうしゃは、おおきな打撃だげきけた[22]。2020ねん4がつ1にち大手おおてシェールオイル開発かいはつ会社かいしゃの「ホワイティング・ペトロリアム」が破綻はたんし、2020ねん3がつ9にち原油げんゆ価格かかく暴落ぼうらく以来いらいニューヨーク証券しょうけん取引とりひきしょ上場じょうじょうする石油せきゆ会社かいしゃとしてははつ連邦れんぽう倒産とうさんほうだい11しょう適用てきようとなった[23][24]。6月28にちにはアメリカの石油せきゆ生産せいさん1 %、天然てんねんガス生産せいさん2 %をになっていた「チェサピーク・エナジー」が資金繰しきんぐりの悪化あっかから破綻はたんした[25]。シェールオイル関連かんれん企業きぎょう社債しゃさい一種いっしゅである「ハイイールドさい」とばれる信用しんようりょくひくいが利回りまわたか債券さいけん(ハイリスク・ハイリターン商品しょうひん)を発行はっこうして、資金しきん調達ちょうたつしているが、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいによる金融きんゆう市場いちば混乱こんらんともな金利きんり急上昇きゅうじょうしょうし、資金繰しきんぐりがくるしくなっている。

石油せきゆ代替だいたいひんとして、アンモニア水素すいそから直接ちょくせつつくりだす合成ごうせい燃料ねんりょう研究けんきゅうおこなわれている[26]

日本にっぽん石油せきゆ事情じじょう

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日米にちべい貿易ぼうえきは1853ねん日米にちべい和親わしん条約じょうやくはじまったが、石油せきゆについては、1879ねんにアメリカじん商船しょうせんJ. A.トムソンの船長せんちょうチャールズ・ロジャースが知人ちじんたのまれ日本にっぽん物産ぶっさん購入こうにゅうするさいあらたな市場いちばとしての日本にっぽん貨物かもつとして原油げんゆ精製せいせいした石油せきゆとどけている[27]

現在げんざいでは、新潟にいがたけん秋田あきたけん日本海にほんかい沿岸えんがん、および北海道ほっかいどう勇払平野ゆうふつへいや)でごくわずかではあるが原油げんゆ採掘さいくつされている。生産せいさんりょう年間ねんかんで63まんキロリットル(2014年度ねんど)で、国内こくない消費しょうひりょう全体ぜんたいめる比率ひりつは0.3%にぎない[28]あらたに釧路くしろ平野へいや原油げんゆ存在そんざい予測よそくされており、経済けいざい産業さんぎょうしょうあらたに鉱区こうく設定せっていした。

一方いっぽう原油げんゆ輸入ゆにゅうりょう国内こくない消費しょうひりょう全体ぜんたいの99.7%、1おく9,104まんキロリットル(2016年度ねんど[29]である。輸入ゆにゅう相手あいてこく上位じょういよりサウジアラビアアラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽうカタールイランクウェートと、中東ちゅうとう地域ちいきからが全体ぜんたいの87%をめている(2016年度ねんど[29]

日本にっぽん石油せきゆ会社かいしゃ

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国際こくさい石油せきゆ資本しほん(メジャー)のような海外かいがい大手おおて石油せきゆ会社かいしゃは、石油せきゆ探鉱たんこう生産せいさん輸送ゆそう精製せいせい元売もとうりまでを一貫いっかんしてがける垂直すいちょく統合とうごうおこなっているため、日本にっぽん石油せきゆ会社かいしゃ精製せいせい元売もとうり(これを下流かりゅう事業じぎょうという)のみから、上流じょうりゅう事業じぎょう探鉱たんこう開発かいはつ生産せいさん)をがけるようになってきた。上流じょうりゅう事業じぎょう専業せんぎょうとする日本にっぽん有力ゆうりょく石油せきゆ会社かいしゃには国際こくさい石油せきゆ開発かいはつみかどせき石油せきゆ資源しげん開発かいはつ三井みつい石油せきゆ開発かいはつがあり、下流かりゅう事業じぎょう有力ゆうりょく会社かいしゃとしては以下いかのグループがある。

国内こくない石油せきゆ会社かいしゃ

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日本にっぽん石油せきゆ諸税しょぜい

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日本にっぽん消費しょうひされる石油せきゆには段階だんかいにわたってさまざまな税金ぜいきんがかかっている。これを石油せきゆ諸税しょぜいう。

この結果けっか、たとえばガソリン1リットルには、消費しょうひぜいのぞいてやく56えん税金ぜいきんがかかっている計算けいさんになる。

前記ぜんきかく税金ぜいきんのうち軽油けいゆ引取ひきとぜいだけが地方ちほうぜいで、それ以外いがい税金ぜいきん国税こくぜいである。石油せきゆ諸税しょぜい年間ねんかん税収ぜいしゅうがくは、2004ねん平成へいせい16ねん予算よさんやく4ちょう8,641おくえんとなっている。地方ちほうぜいである軽油けいゆ引取ひきとぜいのぞいた税収ぜいしゅう合計ごうけいは、国税こくぜい収入しゅうにゅうやく12%をめ、所得しょとくぜい法人ほうじんぜい消費しょうひぜいだい4税収ぜいしゅう規模きぼになっている。また、消費しょうひぜい以外いがい石油せきゆ諸税しょぜい目的もくてきぜいとなっており、その84%が道路どうろ整備せいび財源ざいげんとして使つかわれている。そのほか石油せきゆ対策たいさく空港くうこう整備せいびなどに使用しようされている。

日本にっぽん石油せきゆ輸入ゆにゅうさき

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2019年度ねんど 17,304まんkl

  • 1 サウジアラビア 34.1%
  • 2 アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽう 32.7%
  • 3 カタール 9.3%
  • 4 クウェート 8.9%
  • 5 ロシア 4.8%
  • 6 オマーン 1.7%
  • 7 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく 1.6%
  • 8 バーレーン 1.4%
  • 9 エクアドル 1.3%
  • 10 イラク 1.1%

日本にっぽん石油せきゆ備蓄びちく

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(2016ねん3がつまつ現在げんざい)207にちぶん原油げんゆ5.5おくバレル相当そうとう[30]

  • 国家こっか備蓄びちく 4,734まんkl(製品せいひん換算かんさん)122にちぶん
  • 民間みんかん備蓄びちく 3,130まんkl(製品せいひん換算かんさん)81にちぶん
  • 産油さんゆこく共同きょうどう備蓄びちく 134まんkl(製品せいひん換算かんさん)4にちぶん

アメリカの石油せきゆ戦略せんりゃく備蓄びちく

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米国べいこくには2011ねん2がつ現在げんざい17.27おくバレルの石油せきゆ備蓄びちくつ。このなかには米国べいこくない油田ゆでん産出さんしゅつせずに備蓄びちく指定していしているものをふくむ。(日本にっぽん5.5、ドイツ2.8、フランス1.8、オランダ1.4とうだが、ロシア、中国ちゅうごくなどの備蓄びちくりょう不明ふめい

りょう

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石油せきゆ埋蔵まいぞうりょうかんする将来しょうらい予測よそくは、そのとき経済けいざい活動かつどう技術ぎじゅつ動向どうこう状況じょうきょう左右さゆうされており単純たんじゅん自然しぜん科学かがくてき根拠こんきょもとづいているわけではない。20世紀せいきまつからのりょう増大ぞうだい背景はいけいには、原油げんゆ価格かかく上昇じょうしょう技術ぎじゅつ向上こうじょうがある。1973ねんだいいち石油せきゆ危機ききさいにはおおくの石油せきゆ専門せんもんがマスコミに登場とうじょうして「あと30ねん石油せきゆ枯渇こかつする」と主張しゅちょうしていたが、2005ねん段階だんかいでも「現在げんざい発見はっけんされている油田ゆでん埋蔵まいぞうりょうだけでも現在げんざい消費しょうひりょうわれればあと40ねん供給きょうきゅうできる」とされているように、りょう毎年まいとし増大ぞうだいつづけた[31]

年数ねんすう

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年数ねんすう(R/P)とは、ある年度ねんどにおいて埋蔵まいぞう確認かくにんされている石油せきゆのうち、その時点じてんでの技術ぎじゅつ採算さいさんうコストで採掘さいくつ可能かのう埋蔵まいぞうりょう(R)を、その年度ねんど実際じっさい生産せいさんりょう(P)でったである。この意味いみあやまって解釈かいしゃくし、「石油せきゆこうなんねんでなくなる」などと吹聴ふいちょうするものもいるが明確めいかくあやまりである。たとえばBP統計とうけいによれば、1970ねん年数ねんすうやく35ねんであったが、2005ねん石油せきゆ枯渇こかつしたという事実じじつ存在そんざいしないことはあきらかである。ちなみに2007年度ねんどまつ価格かかくでの年数ねんすうは41.6ねんであった。

また安価あんか代替だいたいひん存在そんざいする場合ばあい地中ちちゅうおおくの石油せきゆ残存ざんそんしていても相対そうたいてき採掘さいくつコストがたか生産せいさんりたなくなり、埋蔵まいぞうりょうなし、年数ねんすう0、つまり、「枯渇こかつ」ということになる。

価格かかく上昇じょうしょう

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年数ねんすうは、原油げんゆ価格かかくがるとびるという特性とくせいがある。それは、原油げんゆ価格かかく変化へんかすると『採掘さいくつ可能かのう埋蔵まいぞうりょう』が変化へんかするためである。以下いかれいしめす。

ある油田ゆでんは1バレルあたり採掘さいくつコストが30ドルかかるとする。このとき、もし原油げんゆ価格かかくが1バレルあたり10ドルならば、この油田ゆでん採算さいさんわないため『採掘さいくつ可能かのう埋蔵まいぞうりょう』にはふくまれない。しかし、もし原油げんゆ価格かかくが1バレル50ドルに上昇じょうしょうすれば、この油田ゆでん充分じゅうぶん採算さいさんうため『採掘さいくつ可能かのう埋蔵まいぞうりょう』にふくまれることになる。

現在げんざい採掘さいくつ技術ぎじゅつでコストをかんがえずに採掘さいくつおこなえば、あとすうひゃくねんぶん埋蔵まいぞうされているともわれるが、石油せきゆ事情じじょうつね変化へんかつづける。また、埋蔵まいぞうりょう各国かっこく自己じこ申告しんこくであり、政治せいじてき理由りゆうのかさげがなん判明はんめいしてきた。

人類じんるい採掘さいくつ可能かのう石油せきゆ埋蔵まいぞうりょう究極きゅうきょく埋蔵まいぞうりょうという。1970年代ねんだいにはこれは2ちょうバレルとかんがえられており、また、その時点じてんでのすんで発見はっけん埋蔵まいぞうりょうは1ちょうバレルとかんがえられていた。しかし、2005ねんには3ちょうバレルまで増大ぞうだいしていた[32]需要じゅよう今後こんご拡大かくだいするとおもわれる石油せきゆだが、わざと供給きょうきゅうをなるべくちいさくして原油げんゆ価格かかくげようとしているのではいかという意見いけんかれる。

消費しょうひりょう増大ぞうだい

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R/Pは「その時点じてんでの消費しょうひりょうが、えずに永遠えいえんつづく」と前提ぜんてい計算けいさんであることに留意りゅういしなければならない。つまり今世紀こんせいき初頭しょとう自動車じどうしゃ人口じんこう先進せんしんこく一部いちぶ共産きょうさんけんで10おくにんほどであったが、中国ちゅうごく13おくにん、インド12おくにん東南とうなんアジア5おくにんという人口じんこう規模きぼ地域ちいき自動車じどうしゃ普及ふきゅうした場合ばあい今世紀こんせいき中盤ちゅうばんには自動車じどうしゃ人口じんこうが35おくにんえる。つまりられる速度そくどが3.5ばいにまではやくなるため、永遠えいえんにこれらの人々ひとびと自動車じどうしゃらない前提ぜんてい計算けいさんしているR/Pでは、予想よそうよりはや枯渇こかつすることとなってしまう。

このようなR/Pの指標しひょうとしての欠陥けっかんから、最近さいきんはR/Pよりピーク理論りろん事実じじつじょう資源しげん持続じぞく期間きかん表示ひょうじすることがおおい。(石油せきゆピーク参照さんしょう

採油さいゆ技術ぎじゅつ向上こうじょう

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従来じゅうらい採油さいゆ技術ぎじゅつ単純たんじゅん油層ゆそう圧力あつりょく自噴じふんさせるかポンプでげるだけであり、地下ちか存在そんざいする原油げんゆうち容易よういてくるものだけがられるにぎなかった。この「いち回収かいしゅう」とばれる方法ほうほうでは地下ちか存在そんざいする原油げんゆの20-40%しかられない。しかし、採油さいゆ技術ぎじゅつ向上こうじょうし「回収かいしゅう」「さん回収かいしゅう」とばれる技術ぎじゅつ場合ばあいにより100%にちか回収かいしゅうくだりなえるようになっている。

地下ちか油田ゆでん内部ないぶ状態じょうたいさん次元じげんよん次元じげん地震じしん探鉱たんこう技術ぎじゅつによって立体りったいてき判別はんべつ出来できるようになり、のこしの原油げんゆ見通みとおせるようになっている。

傾斜けいしゃり」や「水平すいへいり」とばれる自由じゆう方向ほうこうすすめる技術ぎじゅつ地中ちちゅう分岐ぶんきさせる技術ぎじゅつ登場とうじょうによって、原油げんゆ存在そんざいする地層ちそううようにすすめること出来できるようにもなってきている。

また、従来じゅうらい採掘さいくつ不可能ふかのうとされていただい深度しんど地下ちか油層ゆそう水深すいしん2000m以上いじょう深海しんかい油田ゆでん極地きょくちでの採掘さいくつ可能かのうになっており、油田ゆでん探査たんさ対象たいしょう地域ちいき拡大かくだいしている[31]

統計とうけい

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1にちあたり原油げんゆ生産せいさんりょう

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近年きんねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく生産せいさんりょうばしている。

2016ねん えいBP[33]単位たんい まんバレル)

ぜん世界せかい 9215.0(100.0%)

中東ちゅうとう 3178.9(34.5%)

  1. アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく  1235.4(13.4%)
  2. サウジアラビア  1234.9(13.4%)
  3. ロシア  1122.7(12.2%)
  4. イラン  460.0(5.0%)
  5. イラク   446.5(4.8%)
  6. カナダ  446.0(4.8%)
  7. アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽう 407.3(4.4%)
  8. 中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく  399.9(4.3%)
  9. クウェート  315.1(3.4%)
  10. ブラジル 260.5(2.8%)

確認かくにん埋蔵まいぞうりょう

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2010ねんまいエネルギー情報じょうほうちょう単位たんい おくバレル)

  • ぜん世界せかい13,542
  1. サウジ 2624
  2. カナダ 1752
  3. イラン 1376
  4. イラク 1150
  5. クウェート1040
  6. ベネズエラ994
  7. UAE 978
  8. ロシア 600
  9. リビア 443
  10. ナイジェリア 372
  11. カザフスタン 300
  12. カタール 254
  13. 中国ちゅうごく 204
  14. 米国べいこく 191
  15. ブラジル 128
  16. アルジェリア 122
  17. メキシコ 104

2007ねん Oil and Gas Journal

  1. サウジアラビア2598
  2. イラン 1363
  3. イラク 1150
  4. クウェート990
  5. ロシア 600
  6. アラブ首長しゅちょうこく連邦れんぽう 922
  7. ベネズエラ 800
  8. ナイジェリア362
  9. リビア 415
  10. カザフスタン300
  11. アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく218
  12. 中国ちゅうごく160
  13. カタール152

おも産油さんゆこく油田ゆでん一覧いちらん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ コスモ石油こすもせきゆアブダビカタール石油せきゆ開発かいはつおこなっている。

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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