ふくすい

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変電へんでんしょ設置せっちされたふくすい

ふくすい(ふくすいき、えい: condenser)とは、ねつ交換こうかん一種いっしゅで、蒸気じょうきタービンシリンダーうち仕事しごとしたのち水蒸気すいじょうき低圧ていあつ湿しめ蒸気じょうき)を冷却れいきゃくして凝縮ぎょうしゅくさせ、低圧ていあつ飽和ほうわえき[1]もど装置そうちである。ここでできた飽和ほうわえきみず)は給水きゅうすいポンプく。

エア・コンディショナー冷凍れいとうにもおな原理げんりはたらきの「コンデンサー」が使つかわれる。ただしみずではなく冷媒れいばいもちいるため「ふくすい」とはばず「凝縮ぎょうしゅく」とばれる。

ふくすいふくねつ力学りきがくサイクルにはランキンサイクルがある(ランキンサイクルの状態じょうたいで4→1のとうあつ冷却れいきゃく過程かてい)。

種類しゅるい形式けいしき[編集へんしゅう]

表面ひょうめんふくすい
冷却れいきゃくすいふくすい冷却れいきゃく管内かんないとおり、蒸気じょうきとは直接ちょくせつ接触せっしょくしないもの。ボイラーなどの配管はいかん循環じゅんかんするみず清浄せいじょう確保かくほするため、汽力発電はつでんなどおおくのシステムで表面ひょうめんふくすいもちいられる。
直接ちょくせつ接触せっしょくふくすい
冷却れいきゃくすいふくすいない導入どうにゅうし、蒸気じょうき混合こんごうするもの。地熱じねつ発電はつでんところでは、タービン蒸気じょうき凝縮ぎょうしゅくしたふくすいをボイラーに供給きょうきゅうする必要ひつようがなく、ふくすい清浄せいじょうたいする要求ようきゅうきびしくないため、構造こうぞう簡単かんたんねつ交換こうかんにも有利ゆうり直接ちょくせつ接触せっしょくふくすいもちいられることがおおい。

構造こうぞう性能せいのう[編集へんしゅう]

どう
はがねせいはこ形容けいようで、あつえるため内部ないぶ補強ほきょうもうけられる。大型おおがた発電はつでんプラントではタービンの真下ました配置はいちされ、低圧ていあつタービンの排気はいき直接ちょくせつけるが、小規模しょうきぼ地熱じねつ発電はつでんプラントではタービンのよこかれ、タービン排気はいき配管はいかんによりみちびかれることもある。どう下部かぶには凝縮ぎょうしゅくした飽和ほうわえきまるピットがあり、ホットウェルとばれる。
冷却れいきゃくかん
どうにはすうおおくの冷却れいきゃくかん貫通かんつうしており、冷却れいきゃく管内かんない冷却れいきゃくすい通過つうかさせてどうない蒸気じょうき冷却れいきゃくし、凝縮ぎょうしゅくさせる。火力かりょく発電はつでんしょでは通常つうじょうアルミニウム黄銅こうどうもちいられるが、とく腐食ふしょくやす部位ぶいにはチタンもちいられる場合ばあいがある。なお、直接ちょくせつ接触せっしょくふくすい冷却れいきゃくかんわりに冷却れいきゃくすいどうない散布さんぷするノズル数多かずおおもうけられ、冷却れいきゃくすい蒸気じょうきとを混合こんごうするもので、地熱じねつ発電はつでんプラントにもちいられる。
真空しんくう
ふくすい圧力あつりょくひくくなるほどタービンのねつ効率こうりつたかくなるが、ふくすいつてねつ面積めんせき冷却れいきゃく水量すいりょう増加ぞうかすることにより設備せつび運転うんてんコストが増大ぞうだいするため、ふくすい圧力あつりょく両者りょうしゃのバランスを考慮こうりょして決定けっていされるが、おも決定けってい要因よういん冷却れいきゃくすい温度おんどである。日本にっぽん事業じぎょうよう火力かりょく発電はつでんしょにおけるふくすい真空しんくうは、海水温かいすいおんたか沖縄おきなわひくく、海水温かいすいおんひく北海道ほっかいどうではたか設計せっけい運用うんようされており、その範囲はんいおおむね95 - 98 kPaである。また、地熱じねつ発電はつでんプラントでは蒸気じょうきちゅう凝縮ぎょうしゅくせいガスがふくまれていることから、ふくすい真空しんくう火力かりょく原子力げんしりょく発電はつでんプラントよりもひくく(ふくすいない圧力あつりょくとしてはたかく)設定せっていされる。〔参照さんしょう火力かりょく原子力げんしりょく発電はつでんしょ設備せつび要覧ようらん火力かりょく原子力げんしりょく発電はつでん技術ぎじゅつ協会きょうかい)〕

付属ふぞく設備せつび[編集へんしゅう]

空気くうき抽出ちゅうしゅつ
低圧ていあつタービンはあつとなっているため軸受じくうけ隙間すきまなどからタービンない微量びりょう空気くうき流入りゅうにゅうする。この空気くうきふくすいない滞留たいりゅうすると、真空しんくう悪化あっか発電はつでん効率こうりつ低下ていかさせる。そのため、エゼクター真空しんくうポンプなどの空気くうき抽出ちゅうしゅつによりふくすいない空気くうき除去じょきょしている。とく地熱じねつ発電はつでんでは蒸気じょうきふくまれる凝縮ぎょうしゅくせいガスがおおいため、大型おおがた空気くうき抽出ちゅうしゅつ必要ひつようである。
てつイオン注入ちゅうにゅう装置そうち
海水かいすいによる冷却れいきゃくかん腐食ふしょく防止ぼうしするためふくすい入口いりくち海水かいすい微量びりょう硫酸りゅうさんてつ(II)注入ちゅうにゅうして管内かんないめん保護ほご皮膜ひまく形成けいせいする。
塩素えんそ注入ちゅうにゅう装置そうち
冷却れいきゃく管内かんないムラサキイガイなどのうみせい生物せいぶつ付着ふちゃく繁殖はんしょくすることにより、冷却れいきゃく効率こうりつ低下ていかあつそん増加ぞうかかん腐食ふしょくなどが発生はっせいするため、ふくすい入口いりくち海水かいすい微量びりょう塩素えんそ注入ちゅうにゅうしてうみせい生物せいぶつ繁殖はんしょく防止ぼうししている。通常つうじょう海水かいすい電気でんき分解ぶんかいして発生はっせいさせる。

蒸気じょうき機関きかんしゃふくすい[編集へんしゅう]

蒸気じょうき機関きかんしゃでは通常つうじょうボイラーつくられた蒸気じょうきシリンダーおくられて動輪どうりん駆動くどうし、使つかわった蒸気じょうきけむりしつうちにドラフトとしてして、しつ英語えいごばん空気くうきながれをたすけるために使用しようされる。このためみずはサイクルを循環じゅんかんせず、一方いっぽうてき消費しょうひされて煙突えんとつから燃料ねんりょう燃焼ねんしょうガス一緒いっしょそとされてしまう。これは、蒸気じょうき機関きかんしゃ運行うんこうをするためには頻繁ひんぱんみず補給ほきゅうをしなければならないことを意味いみする。

これにたいして、水源すいげん確保かくほむずかしくみず補給ほきゅう設備せつびすくない乾燥かんそう地帯ちたいや、調達ちょうたつ可能かのうみず水質すいしつ条件じょうけん劣悪れつあく戦場せんじょうなどでは、蒸気じょうき機関きかんしゃ運行うんこうするためにみず消費しょうひりょう極力きょくりょくらしたいという需要じゅようがあった。

こうした地域ちいきでは給水きゅうすいよう大型おおがたみずタンクを設置せっちし、さらにそのみずタンクに備蓄びちくするみず輸送ゆそうするためにタンクしゃつらねたみず輸送ゆそう列車れっしゃ定期ていきてき運行うんこうせねばならないなど、みず確保かくほ難渋なんじゅうする状況じょうきょうとなっていたのである。

そのため、蒸気じょうき機関きかんしゃふくすい搭載とうさいしてみず循環じゅんかんさせるようにしたものがある。ふくすい循環じゅんかんさせてもれる蒸気じょうき完全かんぜんにはくせないためまったみず補給ほきゅう省略しょうりゃくできるようになるわけではなく、当然とうぜん燃料ねんりょう補給ほきゅう必要ひつようとなるが、理論りろんじょう一般いっぱんがた機関きかんしゃでおよそ90パーセント、実用じつようれいでは40パーセント程度ていどまでみず消費しょうひ削減さくげんできるため、一般いっぱんがた機関きかんしゃ比較ひかくしてかなり航続こうぞく距離きょりばすことや、かく給水きゅうすい施設しせつみず消費しょうひりょう軽減けいげん可能かのうとなる。

もっとも、その一方いっぽう排気はいき蒸気じょうき回収かいしゅうしてしまうためこれをドラフトとして使用しようできず、ターボブロアファンなどの動力どうりょくしきドラフト装置そうち設置せっちするなどの代替だいたい措置そち必要ひつようとなり、さらにふくすいでの水分すいぶん凝結ぎょうけつさいしても冷却れいきゃくファンの駆動くどう必要ひつようとなる。そのため、こうした本来ほんらい走行そうこう使用しようすべきエネルギー消費しょうひされてしまう=ふくすいたない通常つうじょうがた機関きかんしゃよりも性能せいのう低下ていかしてしまう[2]というデメリットがある。また、複雑ふくざつふくすい搭載とうさいするため、機関きかんしゃ自体じたいのサイズが大型おおがたするという問題もんだいもある。

ふくすい使用しようした蒸気じょうき機関きかんしゃドイツヘンシェルしゃ実績じっせきがあり、だい世界せかい大戦たいせんまえアルゼンチンロシアけのふくすいしき蒸気じょうき機関きかんしゃ納入のうにゅう実績じっせきがある。まただい世界せかい大戦たいせんどくせんでは、ドイツ自身じしんふくすいしき改造かいぞうしたBR52使用しようした。だい世界せかい大戦たいせんではみなみアフリカ国鉄こくてつ25がた蒸気じょうき機関きかんしゃれいがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 沸点ふってんたっした状態じょうたい液体えきたい
  2. ^ たとえばみなみアフリカ国鉄こくてつ25がたではこのふくすいぐんだけで700馬力ばりきのもの出力しゅつりょく消費しょうひされた。