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真空しんくうポンプ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
真空しんくうポンプでエアコンの真空しんくうきをおこなっているところ

真空しんくうポンプ(しんくうポンプ、バキュームポンプ、vacuum pump)とは、容器ようきないから気体きたい排出はいしゅつし、真空しんくうるためのポンプである。1650ねんドイツオットー・フォン・ゲーリケにより発明はつめいされた。1だいちょうこう真空しんくうから大気たいきあつまでをカバーするのは非常ひじょう困難こんなんなため、おおくはようのポンプとメインの真空しんくう排気はいきようのポンプをわせて使つかうが、用途ようとによって1だい場合ばあいあらきポンプ、メインポンプなどのけはしない。

構成こうせい

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真空しんくうポンプは以下いかの3つにより構成こうせいされる。

  • 吸気きゅうきこう気体きたい吸入きゅうにゅうする部分ぶぶんである。真空しんくうチャンバーなどに接続せつぞくするため真空しんくうフランジもちいられることがおおい。真空しんくうポンプの主要しゅようスペックである排気はいき速度そくど単位たんい時間じかんたりの吸気きゅうきこう通過つうかした気体きたいりょうとJISにめられている。
  • 排気はいきこう真空しんくうポンプ内部ないぶれられた気体きたい排気はいきこうより排出はいしゅつされる。真空しんくうポンプによってはこの排気はいきこう圧力あつりょく大気たいき以下いかでないと作動さどうしないポンプもある。また、気体きたいしきポンプは内部ないぶ気体きたいむため排気はいきこう存在そんざいしない。しかし無限むげんたくわえられるわけではないため、べつ真空しんくうポンプを用意よういし、定期ていきてき吸気きゅうきこうより排気はいきしなければならない。
  • ポンプ:かくポンプ作用さようこす部分ぶぶん。これらはそれぞれの真空しんくうポンプの種類しゅるいによりおおきくことなる。

分類ぶんるい

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どれだけの真空しんくう必要ひつようとするか、また排気はいきする気体きたい成分せいぶんによって、使用しようすべき真空しんくうポンプはことなる。真空しんくうポンプの分類ぶんるいほう原理げんりによる分類ぶんるい使用しよう圧力あつりょくによる分類ぶんるいあぶらもちいるかもちいないかの分類ぶんるいなどによる。

真空しんくうポンプでもっと一般いっぱんてきなのは排気はいきりょう到達とうたつ圧力あつりょく価格かかくなどの総合そうごうめんすぐれた性能せいのうあぶら回転かいてんがた真空しんくうポンプ(ロータリーポンプ)である。もっと安価あんかであろう手押ておしきは、エアコンの冷媒れいばい注入ちゅうにゅうようとして市販しはんされている。 吸着きゅうちゃく装置そうちやアスピレータなどのてい真空しんくうけに安価あんかダイアフラムポンプもかなり普及ふきゅうしている。

排気はいき方法ほうほうによる分類ぶんるい

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真空しんくうポンプは気体きたい吸気きゅうきがわから排気はいきがわかって輸送ゆそうする方式ほうしきにより排気はいきする気体きたい輸送ゆそうしき真空しんくうポンプと、真空しんくうポンプのなか吸気きゅうきがわからはいってくる気体きたいむ「気体きたいしきポンプ(entrapment (capture) vacuum pump)」に分類ぶんるいされる。 また、気体きたい輸送ゆそうしき真空しんくうポンプは一定いってい容積ようせき気体きたい吸気きゅうきがわから排気はいきがわ輸送ゆそうする方式ほうしきの「容積ようせき移送いそうしき真空しんくうポンプ(positive displacement pump)」とポンプないべつ物質ぶっしつ運動うんどうエネルギーにより排気はいきがわ気体きたい輸送ゆそうする「運動うんどうりょう輸送ゆそうしき真空しんくうポンプ(kinetic vacuum pump)」にけられる。

作動さどう圧力あつりょく領域りょういきによる分類ぶんるい

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1だい大気たいきあつからこう真空しんくうまで排気はいきすることが可能かのう真空しんくうポンプは存在そんざいしない。その排気はいき方法ほうほうによって作動さどうする圧力あつりょくまっており、使つかけなければならないことを意味いみする。とくこう真空しんくう領域りょういきまで排気はいきするためにはこう真空しんくうまで排気はいきできるポンプの排気はいきがわ大気たいきあつから作動さどうするポンプをべつ用意よういしなければならず、排気はいきがわあつがわ)の圧力あつりょくげなければならない。このような場合ばあいこう真空しんくうまで排気はいきできるポンプを「しゅポンプ(main pump)」、しゅポンプのあつがわのポンプを「補助ほじょポンプ(backing vacuum pump)」とぶ。補助ほじょポンプはしゅポンプを使用しようする領域りょういきを、しゅポンプを作動さどうさせることができる圧力あつりょくまで排気はいきするあらきをおこなうこともふくむため「あらきポンプ(roughing vacuum pump)」とばれる場合ばあいもある。 また、大気たいきあつから作動さどうするポンプを「てい真空しんくうポンプ(low vacuum pump)」、こう真空しんくう作動さどうするポンプを「こう真空しんくうポンプ(high vacuum pump)」と分類ぶんるいする場合ばあいもある。

ドライ、ウェットによる分類ぶんるい

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こう真空しんくう領域りょういきまで排気はいきされたチャンバないでは、じつ排気はいきだけではなく真空しんくうポンプ自体じたいから発生はっせいする気体きたい成分せいぶんおおきな割合わりあいめる場合ばあいがある。とく真空しんくうポンプないでオイルや水分すいぶんなどを使用しようする場合ばあいはそれ自体じたい蒸発じょうはつがチャンバないでの作用さようおおきな影響えいきょうあたえる場合ばあいがある。とく微細びさいなコントロールがもとめられる集積しゅうせき回路かいろ製造せいぞう工程こうていである半導体はんどうたいプロセスではわずかな蒸気じょうき混入こんにゅう製品せいひん歩留ぶどまり影響えいきょうすることもあるため、真空しんくうポンプ自体じたいあぶらなどを使つかわないドライなポンプなのか、あぶらなどを使用しようするウェットなポンプなのかは非常ひじょう重要じゅうよう問題もんだいとなる。そのため、現在げんざいではあぶら使用しようしないポンプを「ドライポンプ(dry pump)」、あぶら使用しようする真空しんくうポンプを「ウェットポンプ(wet pump)」と分類ぶんるいしている。

歴史れきし

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スプレンゲルポンプ

真空しんくうポンプ先駆さきがけとなる吸引きゅういんポンプは、1206ねん技術ぎじゅつしゃ発明はつめいアル=ジャザリ発明はつめいした。吸引きゅういんポンプは15世紀せいきになってヨーロッパにもたらされた[1][2][3]。1551ねんにはタキ・アッディン・ムハンマド・イブン・マルーフ英語えいごばんが6気筒きとうしきポンプ発明はつめいした。これもかなり真空しんくうちか状態じょうたいつくせるもので、なまりおもりうえうごかすと、それにともなってピストンがうえかれ、真空しんくう状態じょうたいになったシリンダーみず吸引きゅういんし、バルブでみず逆流ぎゃくりゅうしないようにする構造こうぞうだった[4]

17世紀せいきまでにポンプの設計せっけい進化しんかし、ほとんど真空しんくう状態じょうたいつくせるようになったが、その事実じじつ人々ひとびとづくにはやや時間じかんがかかった。当時とうじわかっていたのは、吸引きゅういんポンプはあるたか以上いじょうにまでみずげることができないという事実じじつだった。1635ねんごろ測定そくていされた結果けっかでは18ヤードだった(帝国ていこく標準ひょうじゅんヤード制定せいていまえなのでメートルへの換算かんさん不明ふめいだが、だいたい9から10メートルとかんがえられる)。この限界げんかい灌漑かんがい鉱山こうざん排水はいすいにとっての懸念けねん材料ざいりょうであり、当時とうじ噴水ふんすいつくろうとしていたトスカーナ大公たいこうフェルディナンド2せいにとっても問題もんだいだった。そこでトスカーナ大公たいこうガリレオ・ガリレイ問題もんだい調査ちょうさ依頼いらいした。ガリレオは科学かがくしゃらにこの問題もんだいひろいかけた。そのなか1人ひとりであるガスパロ・ベルティ英語えいごばん問題もんだい再現さいげんする装置そうち製作せいさくした(1639ねん ローマにて)。これはみず使つかった一種いっしゅ気圧きあつけいである[5]。ベルティの気圧きあつけい水柱みずばしらうえ真空しんくうしょうじさせたが、当人とうにんはそれが真空しんくうであるとはかっていなかった。1643ねんエヴァンジェリスタ・トリチェリ突破口とっぱこうひらいた。ガリレオの記述きじゅつもとづき、トリチェリは世界せかいはつ水銀すいぎん使つかった気圧きあつけいつくり、水銀柱すいぎんちゅううえ空間くうかん真空しんくうであると結論けつろんけた。また水銀柱すいぎんちゅうたかさは、大気たいきあつささえられる最大さいだい重量じゅうりょう対応たいおうしていることがわかった。なお、トリチェリの実験じっけん重要じゅうようだが、実際じっさいにその空間くうかん真空しんくうであると証明しょうめいしたのはブレーズ・パスカル実験じっけんだとするせつもある。

1654ねんオットー・フォン・ゲーリケ世界せかいはつ真空しんくうポンプを発明はつめいし、有名ゆうめいマクデブルクの半球はんきゅう実験じっけんおこない、内部ないぶ真空しんくうにした2つの半球はんきゅう何頭なんとうものうまっても半球はんきゅうはずれないことをしめした。ロバート・ボイルはゲーリケの設計せっけい改良かいりょうし、真空しんくう性質せいしつについて様々さまざま実験じっけんおこなった。なお、ボイルの真空しんくうポンプの開発かいはつにはロバート・フック助手じょしゅとしてかかわった。1690ねんドニ・パパンはシリンダーに少量しょうりょうみずれてピストンで密封みっぷうし、それをそとからねっしたりやしたりする実験じっけんおこない、なか真空しんくう状態じょうたいつくられることを発見はっけんした。トーマス・セイヴァリは1698ねんにドニ・パパンと同様どうよう原理げんりみず吸引きゅういんするポンプを完成かんせいさせた。セイヴァリはこれを「鉱夫こうふとも」とび、鉱山こうざん排水はいすいにこれを使つかった。

その真空しんくう研究けんきゅう進展しんてんはなかったが、1855ねんハインリッヒ・ガイスラー水銀すいぎん使つかったポンプを発明はつめいし、10 Pa(0.1 Torr)という真空しんくう記録きろく達成たっせいした。1865ねんハーマン・スプレンゲルさらたか真空しんくうせるスプレンゲルポンプ発明はつめいした。このレベルの真空しんくう電気でんきてき性質せいしつ観測かんそく可能かのうになってくると、ふたた真空しんくうへの興味きょうみ増大ぞうだいし、そこから電球でんきゅう真空しんくうかん開発かいはつされることになった。

ポンプの種類しゅるい 

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関連かんれん項目こうもく

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ポンプメーカー
業界ぎょうかい団体だんたい
展示てんじかい

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

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  1. ^ Donald Routledge Hill, "Mechanical Engineering in the Medieval Near East", Scientific American, May 1991, pp. 64-69 (cf. Donald Routledge Hill, Mechanical Engineering)
  2. ^ Ahmad Y Hassan. “The Origin of the Suction Pump: Al-Jazari 1206 A.D.”. 2008ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  3. ^ Donald Routledge Hill (1996), A History of Engineering in Classical and Medieval Times, Routledge, pp. 143 & 150-2
  4. ^ Salim Al-Hassani (23-25 October 2001). “The Machines of Al-Jazari and Taqi Al-Din”. 22nd Annual Conference on the History of Arabic Sciences. 2008ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  5. ^ The World's Largest Barometer”. 2013ねん10がつ17にち閲覧えつらん(2008ねん4がつ17にち時点じてんアーカイブ