ターボ分子ぶんしポンプ

ターボ分子ぶんしポンプの内部ないぶ

ターボ分子ぶんしポンプ（ターボぶんしポンプ、英語えいご：turbomolecular pump、略称りゃくしょう：TMP）は機械きかい式しき真空しんくうポンプの一種いっしゅで、金属きんぞく製せいのタービン翼つばさを持もった回転かいてん体たいであるロータが高速こうそく回転かいてんし、気体きたい分子ぶんしを弾はじき飛とばすことによりガスを排気はいきするポンプである。JISではこのような排気はいき方式ほうしきを「運動うんどう量りょう輸送ゆそう式しき」の真空しんくうポンプと呼よんでいる。

ターボ分子ぶんしポンプは、1912年ねんにドイツのW.ゲーデによって機械きかい式しき高だか真空しんくうポンプの起源きげんとなる分子ぶんしポンプが考案こうあんされ、その後ご、同おなじくドイツのW.ベッカーが1955年ねんにタービン翼つばさを有ゆうするターボ分子ぶんしポンプ(TMP)を考案こうあん、これが1958年ねんに商品しょうひん化かされたのが最初さいしょといわれる。

動作どうさ原理げんりは、斜ななめに配置はいちされたタービン翼つばさを高速こうそく回転かいてん（数すう万まんrpmに達たっする）させて吸気きゅうきから排気はいきへの通過つうか確かく率りつ(A)と排気はいきから吸気きゅうきへの通過つうか確かく率りつ(B)に差さをつける事ことで圧力あつりょく差さを発生はっせいさせる。設計せっけい上じょうの排気はいき速度そくどは（開口かいこう面積めんせき×11.6×A/（B×p））となる（pは圧力あつりょく上昇じょうしょう分ぶん）。翼つばさの角度かくどと回転かいてん数すう（翼つばさ速度そくど）をモンテカルロ法ほうなどで計算けいさんすると、翼つばさ角度かくど大だい＝排気はいき速度そくど大だい、圧縮あっしゅく比ひ小しょう。翼つばさ角度かくど小しょう＝排気はいき速度そくど小しょう、圧縮あっしゅく比ひ大だいとなってくる。到達とうたつ圧力あつりょくは 10⁻⁷Pa (10⁻¹⁰Torr)程度ていど。

その原理げんりから、気体きたい分子ぶんしに対たいする翼つばさ速度そくど（翼つばさ速度そくど比ひ）によって排気はいき速度そくどが変化へんかするため軽けいガス（水素すいそ・ヘリウム）に対たいしては排気はいき速度そくどが低下ていかする。動作どうさ圧力あつりょくには制限せいげんがあるため、普通ふつうはロータリーポンプを補助ほじょポンプとして用もちい、1セットになっている。ポンプ使用しよう中ちゅうに圧力あつりょくが高こう真空しんくうから低てい真空しんくう側がわへ急激きゅうげきに変化へんかした場合ばあい、ポンプの破損はそんに繋つながる可能かのう性せいがある。

TMPは良よい真空しんくうが得えられる手軽てがるで便利べんりなポンプである。ロータの支持しじ方式ほうしきとしては、油あぶら潤滑じゅんかつ式しきの玉たま軸受じくうけ型かたとグリス潤滑じゅんかつ式しき、磁気じき浮上ふじょう型かたがある。 玉たま軸受じくうけの油あぶら潤滑じゅんかつ式しきは価格かかくが手てごろな利点りてんがあるが、取とり付つけ方向ほうこうは一方向いちほうこうに限かぎられる。グリス潤滑じゅんかつ式しきは取とり付つけ方向ほうこうに制限せいげんが無ない場合ばあいが多おおいが、玉たま軸受じくうけ寿命じゅみょう・グリス補給ほきゅうと保守ほしゅ面めんで課題かだいも多おおい。

磁気じき浮上ふじょう型かたは

• 完全かんぜんにオイルフリー
• 取とり付つけ方向ほうこうの自由じゆう度どが高たかい（逆さかさまや横向よこむきでも設置せっち可能かのう）

といった利点りてんがある。その代かわり、停電ていでん時じの対策たいさくとしてバッテリーが必要ひつようなものが多おおい。 近年きんねんでは、ロータの回転かいてん運動うんどうエネルギーを電力でんりょくに回生かいせいし、磁気じき浮上ふじょうに利用りようするバッテリーレス化かも進すすんでいる。

構造こうぞう上じょう、内部ないぶのタービン翼つばさが歪いがむと、高速こうそく回転かいてん中ちゅうの動どう翼つばさと上下じょうげに挟はさまれた固定こてい翼つばさ(静せい翼つばさ)同士どうしが接触せっしょくして一瞬いっしゅんで壊こわれてしまう恐おそれがある。またターボ分子ぶんしポンプを設置せっちする際さいには、固定こていを厳重げんじゅうにしておかねばならない。

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