(Translated by https://www.hiragana.jp/)
アルミニウム合金 - Wikipedia コンテンツにスキップ

アルミニウム合金ごうきん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』

アルミニウム合金ごうきん（アルミニウムごうきん、英えい: aluminum alloy）は、アルミニウムを主成分しゅせいぶんとする合金ごうきんである。アルミニウムには軽かるいという特徴とくちょうがある一方いっぽう、純じゅんアルミニウムは軟やわらかい金属きんぞくであるため、銅どう(Cu)、マンガン(Mn)、ケイ素けいそ(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛あえん(Zn)、ニッケル(Ni)などと合金ごうきんにすることで強度きょうどなど金属きんぞく材料ざいりょうとしての特性とくせいの向上こうじょうが図はかられる。アルミニウム合金ごうきんを加工かこうする場合ばあい、大おおきく分わけて展てん伸しん法ほうと鋳造ちゅうぞう法ほうが採用さいようされる。

アルミニウム合金ごうきんの軽かるさと強度きょうどを応用おうようした例れいとして、航空機こうくうき材料ざいりょうとしてのジュラルミンの利用りようが挙あげられる。ジュラルミンはAl-Zn-Mg-Cu系けいのアルミニウム合金ごうきんである。

詳細しょうさいは「ジュラルミン」を参照さんしょう

アルミニウム合金ごうきんは高たかい強度きょうどを持もつ反面はんめん、溶接ようせつ・溶断ようだんは特とくに難むずかしく、用途ようと変更へんこうに応おうじた改造かいぞうや、破損はそんの際さいの修繕しゅうぜんは鋼はがねなどに比くらべて困難こんなんである。

なお、近年きんねんではリチウムを添加てんかした合金ごうきんも実用じつよう化かされている[1][2]。

展てん伸しん用よう合金ごうきん[編集へんしゅう]

一般いっぱんに展てん伸しん法ほうで利用りようされるアルミニウム合金ごうきんには、4桁けたの数字すうじからなる国際こくさいアルミニウム合金ごうきん名めいが使用しようされている。日本工業規格にほんこうぎょうきかく(JIS H 4140)においても、国際こくさいアルミニウム合金ごうきん名めいがアルミニウム合金ごうきん名めいの一部いちぶに取とり入いれられ準用じゅんようされている。名称めいしょうとしては、例たとえばA3003P-H12 のようにアルミをあらわすAの後のちに合金ごうきんの種類しゅるいを示しめす4桁けたの数字すうじが続つづき、ハイフン以降いこうは加工かこう硬化こうかや熱処理ねつしょりなどの調しらべ質しつ記号きごうである。

1000番台ばんだい
純じゅんアルミニウム 加工かこう性せい、耐食性たいしょくせい、電気でんき伝導でんどう性せい、熱ねつ伝導でんどう性せいはよいが強度きょうどが低ひくい
用途ようと：アルミ箔はく、化学かがく工業こうぎょうタンク類るい、導しるべ電材でんざい･航空機こうくうき
  • 1100 (1100 aluminium alloy)  耐食性たいしょくせいに優すぐれているが強度きょうどが弱よわい為ため、航空機こうくうきのジュラルミンに使用しようされている表面ひょうめん上じょうの被覆ひふく機材きざい（アルクラッド材ざい）に使用しようされている
  • 1199 (1199 aluminium alloy)  用途ようと：電解でんかいコンデンサー
2000番台ばんだい
Al-Cu系けい合金ごうきん
  • 2011 快かい削そぎアルミとして知しられ、機械きかい切削せっさく性せいに優すぐれる。耐食性たいしょくせい、対たい応力おうりょく腐食ふしょく割われ性せいが劣おとる。
  • 2017 (2017 aluminium alloy)  熱処理ねつしょり系けい高だか強度きょうどアルミ合金ごうきん。「ジュラルミン」として知しられる。熱処理ねつしょりによって高こう強度きょうど化かが可能かのう。耐食性たいしょくせい、対たい応力おうりょく腐食ふしょく割われ性せいが劣おとる。溶接ようせつ割われ感受性かんじゅせいが高たかいため溶接ようせつ性せいが劣おとる。
  • 2024 (2024 aluminium alloy)  熱処理ねつしょり系けい高だか強度きょうどアルミ合金ごうきん。「超ちょうジュラルミン」として知しられる。熱処理ねつしょりによって高こう強度きょうど化かが可能かのう。耐食性たいしょくせい、対応たいおう力りょく腐食ふしょく割われ性せいが劣おとる。溶接ようせつ割われ感受性かんじゅせいが高たかいため溶接ようせつ性せいが劣おとる。
  • 2117 熱処理ねつしょり系けい高だか強度きょうどアルミ合金ごうきん。耐食性たいしょくせい、対応たいおう力りょく腐食ふしょく割われ性せいが改善かいぜんしている。熱処理ねつしょりによって高こう強度きょうど化かが可能かのうであるが、A2017、A2024ほどの高こう強度きょうどは得えられない。溶接ようせつ割われ感受性かんじゅせいが高たかいため溶接ようせつ性せいが劣おとる。
  • 2219 (2219 aluminium alloy)  熱処理ねつしょり系けい高だか強度きょうどアルミ合金ごうきん。溶接ようせつ割われ感受性かんじゅせいを低減ていげんし溶接ようせつ性せいを改善かいぜんしている。熱処理ねつしょりによって高こう強度きょうど化かが可能かのう。耐食性たいしょくせいが劣おとる。鋳造ちゅうぞうが不可ふか。
3000番台ばんだい
Al-Mn系けい合金ごうきん 加工かこう性せい、耐食性たいしょくせい、強度きょうどが良好りょうこう
用途ようと：航空機こうくうき・ビール・ジュース缶かんボディ部ぶ
  • 3003 (3003 aluminium alloy)  Mnを1.0〜1.5%加くわえて1100よりやや強度きょうどを上あげた合金ごうきん
4000番台ばんだい
Al-Si系けい合金ごうきん 耐たい摩耗まもう性せいが良好りょうこう
5000番台ばんだい
Al-Mg系けい合金ごうきん
用途ようと：船舶せんぱく、車両しゃりょう、航空機こうくうき・自動車じどうしゃ用ようアルミホイール、建築けんちく用よう内ない外装がいそう、圧力あつりょく容器ようき、ビール・ジュース缶かん蓋ぶた部分ぶぶん
  • 5052 (5052 aluminium alloy)  1100･3003より強度きょうどを持もつ合金ごうきん、強度きょうど･耐食性たいしょくせい･加工かこう性せい･溶接ようせつ性せいのバランスに優すぐれている
  • 5056 5052のMgの含有がんゆう量りょうを2.5%から5.0%に上あげた合金ごうきん、溶接ようせつ性せいは良よくない
6000番台ばんだい
Al-Mg-Si系けい合金ごうきん 強度きょうど、耐食性たいしょくせいが良好りょうこう
  • 6061 (6061 aluminium alloy) 　Cuをわずかに含ふくみ6063よりも強度きょうどが高たかい 用途ようと：ヨーヨーなど
  • 6063 (6063 aluminium alloy)  用途ようと：建築けんちく用ようサッシなど
7000番台ばんだい
Al-Zn-Mg系けい合金ごうきん・Al-Zn-Mg-Cu系けい合金ごうきん 高だか強度きょうど材ざいでありCu系けいはアルミ合金ごうきん中ちゅうの最高さいこう強度きょうどである
8000番台ばんだい
それ以外いがいの合金ごうきん。
  • 8006
  • 8009
  • 8011
  • 8014
  • 8019
  • 8025
  • 8030
  • 8090
  • 8091
  • 8093
  • 8176
アルミニウム合金ごうきんの成分せいぶん表ひょう
合金ごうきん番号ばんごう 化学かがく成分せいぶん(wt%)
ケイ素けいそ 鉄てつ 銅どう マンガン マグネシウム クロム 亜鉛あえん チタン その他た アルミ
1050 0.25以下いか 0.40以下いか 0.05以下いか 0.05以下いか 0.05以下いか - 0.05以下いか 0.03以下いか V 0.05以下いか 99.50以上いじょう
1060 0.25以下いか 0.35以下いか 0.05以下いか 0.03以下いか 0.03以下いか - 0.05以下いか 0.03以下いか V 0.05以下いか 99.60以上いじょう
1070 0.20以下いか 0.25以下いか 0.040以下いか 0.030以下いか 0.030以下いか - 0.040以下いか 0.030以下いか V 0.050以下いか
その他ほか 0.030以下いか		 99.70以上いじょう
1080 0.15以下いか 0.15以下いか 0.03以下いか 0.02以下いか 0.02以下いか 0.03以下いか - 0.03以下いか - 99.80以上いじょう
1100 Si+Fe 0.95以下いか 0.05-0.20 0.05以下いか - 0.10以下いか - - - 99.00以上いじょう
1145 Si+Fe 残のこり 0.05 0.05 0.05 - 0.05 0.03 - 99.45
1199 0.0060以下いか 0.0060以下いか 0.0060以下いか 0.0020以下いか 0.0060以下いか - 0.0060以下いか 0.0020以下いか V 0.0050以下いか
Ga 0.0050以下いか
その他ほか 0.0020以下いか		 99.99以上いじょう
1200 Si+Fe 1以下いか 0.050以下いか - 0.0060以下いか - 0.10以下いか 0.050以下いか その他ほか 0.15以下いか 99.0以上いじょう
2011 0.40以下いか 0.7以下いか 5.0-6.0 - - - 0.30以下いか - Bi 0.20-0.6
Pb 0.20-0.6		 残のこり
2014 0.50-1.2 0.7以下いか 3.9-5.0 0.40-1.2 0.20-0.8 0.10以下いか 0.25以下いか 0.15以下いか - 残のこり
2017 0.20-0.8 0.7以下いか 3.5-4.5 0.40-1.0 0.40-0.8 0.10以下いか 0.25以下いか 0.15以下いか - 残のこり
2024 0.50以下いか 0.50以下いか 3.8-4.9 0.30-0.9 1.2-1.8 0.10以下いか 0.25以下いか 0.15以下いか - 残のこり
2117 0.20-0.8 0.7以下いか 2.5以下いか - 0.3以下いか 0.10以下いか 0.25以下いか 0.15以下いか - 残のこり
2219 0.20以下いか 0.3以下いか 5.8-6.8 0.20-0.40 0.02以下いか - 0.10以下いか 0.02-0.10 V 0.05-0.15
Zr 0.10-0.25		 残のこり
3003 - - - 1.0~1.5 - - - - - 残のこり
3004 0.30以下いか 0.7以下いか 0.25以下いか 1.0-1.5 0.8-1.3 - 0.25以下いか - - 残のこり
5005 0.30以下いか 0.7以下いか 0.20以下いか 0.20以下いか 0.50-1.1 0.10以下いか 0.25以下いか - - 残のこり
5052 0.25以下いか 0.40以下いか 0.10以下いか 0.10以下いか 2.5以下いか 0.25以下いか 0.10以下いか 0.03以下いか 0.05以下いか
(計けい0.15以下いか)		 残のこり
5056 - - - - 5.0以下いか 0.25以下いか - - - 残のこり
5086 0.40以下いか 0.50以下いか 0.10以下いか 0.20-0.7 3.5-4.5 0.05-0.25 0.25以下いか 0.15以下いか - 残のこり
5652 0.4以下いか 0.4以下いか 0.04以下いか 0.01以下いか 2.2-2.8 0.15-0.35 0.1以下いか - 0.15以下いか 残のこり
6063 0.20-0.6 0.35以下いか 0.10以下いか 0.10以下いか 0.45-0.9 0.10以下いか 0.10以下いか 0.10以下いか - 残のこり
7075 0.40以下いか 0.50以下いか 1.2-2.0 0.30以下いか 2.1-2.9 0.18-0.28 5.1-6.1 0.20以下いか - 残のこり
7204 0.30以下いか 0.35以下いか 0.20以下いか 0.20-0.7 1.0-2.0 0.30以下いか 4.0-5.0 0.20以下いか V 0.10以下いか
Zr 0.25以下いか		 残のこり

Vはバナジウム、Zrはジルコニウム、Pbは鉛なまり、Biはビスマス、Gaはガリウム

鋳造ちゅうぞう用よう合金ごうきん[編集へんしゅう]

AC・・が鋳物いもの用もちい、ADC・・がダイカスト用もちい、AJ・・が軸受じくうけ鋳物いもの用ようとなる。

  • AC1C,AC1B - Al-Cu系けい
  • AC2A,AC2B - Al-Cu-Si系けい
  • AC3A - Al-Si系けい
  • AC4A,AC4C - Al-Si-Mg系けい
  • AC4B - Al-Si-Cu系けい
  • AC4D - Al-Si-Cu-Mg系けい
  • AC5A - Al-Cu-Ni-Mg系けい
  • AC7A - Al-Mg系けい
  • AC8A,AC8B - Al-Si-Cu-Ni-Mg系けい
  • AC9A,AC9B - Al-Si-Cu-Mg系けい
  • ADC1 - Al-Si系けい
  • ADC3 - Al-Si-Mg系けい
  • ADC5 - Al-Mg系けい
  • ADC6 - AL-Mg-Mn系けい
  • ADC10,ADC12 - Al-Si-Cu系けい
  • ADC14 - Al-Si-Cu-Mg系けい

ろう材ざい[編集へんしゅう]

アルミニウム合金ごうきんのろう材ざいは、単体たんたいのほか、心材しんざいとなる合金ごうきんの片面かためんもしくは両面りょうめんに融点ゆうてんの低ひくい合金ごうきんを張はり合あわせたクラッド材ざいとしても供給きょうきゅうされる。

強化きょうか方法ほうほう[編集へんしゅう]

純じゅんアルミニウムは極きわめて柔やわらかく、完全かんぜん焼やきなまし状態じょうたいでの強度きょうどは約やく50N/mm2であるが、加工かこう硬化こうか、固かた溶硬化かおよび析出せきしゅつ硬化こうかによって適当てきとうな硬かたさにすることができる。

調しらべ質しつ記号きごう[編集へんしゅう]

日本工業規格にほんこうぎょうきかく（JIS）[3]によって、アルミニウム合金ごうきんの展てん伸しん材ざい及および鋳物いものの質しつ別べつについて規定きていされている。

  • F - 製造せいぞうのままのもの
  • O - 焼やきなましたもの
  • H - 加工かこう硬化こうかしたもの
    • H1 - 加工かこう硬化こうかだけのもの
    • H2 - 加工かこう硬化こうか後ご適度てきどに軟化なんか熱処理ねつしょりしたもの
    • H3 - 加工かこう硬化こうか後ご安定あんてい化か処理しょりしたもの
    • H4 - 加工かこう硬化こうか後ご塗装とそうしたもの
  • W - 溶体化か処理しょりしたもの
  • T - 熱処理ねつしょりによってF・O・H以外いがいの安定あんていな質しつ別べつにしたもの
    • T1 - 高温こうおん加工かこうから冷却れいきゃく後ご、自然しぜん時効じこうさせたもの
    • T2 - 高温こうおん加工かこうから冷却れいきゃく後ご、冷ひや間あいだ加工かこうを行おこない、さらに自然しぜん時効じこうさせたもの
    • T3 - 溶体化か処理しょり後ご、冷ひや間あいだ加工かこうを行おこない、さらに自然しぜん時効じこうさせたもの
    • T4 - 溶体化か処理しょり後ご、自然しぜん時効じこうさせたもの
    • T5 - 高温こうおん加工かこうから冷却れいきゃく後ご、人工じんこう時効じこうしたもの
    • T6 - 溶体化か処理しょり後ご、人工じんこう時効じこうしたもの
    • T7 - 溶体化か処理しょり後ご、安定あんてい化か処理しょりしたもの
    • T8 - 溶体化か処理しょり後ご、冷ひや間あいだ加工かこうし、さらに人工じんこう時効じこうしたもの（T3を人工じんこう時効じこう硬かたしたもの）
    • T9 - 溶体化か処理しょり後ご、人工じんこう時効じこうし、さらに冷ひや間あいだ加工かこうしたもの（T6を冷ひえ間あいだ加工かこうしたもの）
    • T10 - 高温こうおん加工かこうから冷却れいきゃく後ご、冷ひや間あいだ加工かこうを行おこない、さらに人工じんこう時効じこうしたもの

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 航空機こうくうきに於おけるアルミリチウム合金ごうきんの開発かいはつ動向どうこう（（公おおやけ財ざい）航空機こうくうき国際こくさい共同きょうどう開発かいはつ促進そくしん基金ききん 【解説かいせつ概要がいよう 17-5-7】）
  2. ^ 松澤まつざわ和夫かずお：「Al-Li系けい合金ごうきん」、J.JILM, v62(2012年ねん4月がつ），pp.185-197．
  3. ^ JIS H 0001「アルミニウム，マグネシウム及およびそれらの合金ごうきん−質しつ別記べっき号ごう」に規定きていされている。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 門間かどま改あらため三さん『機械きかい材料ざいりょう』SI単位たんい版ばん,実じつ教きょう,1993年ねん,ISBN 978-4-407-02328-2

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

ウィキメディア・コモンズには、アルミニウム合金ごうきんに関連かんれんするカテゴリがあります。
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=アルミニウム合金ごうきん&oldid=99941309」から取得しゅとく