焼却しょうきゃく炉ろ

焼却しょうきゃく炉ろ（しょうきゃくろ）は、廃棄はいき物ぶつを焼却しょうきゃくするための設備せつび・施設しせつ。廃棄はいき物ぶつの焼却しょうきゃくとは、燃焼ねんしょうによって廃棄はいき物ぶつ中ちゅうの有機物ゆうきぶつを可燃かねん性せいガス、油あぶら、炭素たんそなどに分解ぶんかいし、その容量ようりょうを大幅おおはばに減げん容ようすることをいう^[1]。焼却しょうきゃくにより、廃物はいぶつの腐敗ふはいを防止ぼうしし（安定あんてい化か）、病原菌びょうげんきんを滅菌めっきん（無害むがい化か）する作用さようもある^[1]。

焼却しょうきゃく炉ろの分類ぶんるい[編集へんしゅう]

規模きぼによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

処理しょり能力のうりょくにより大型おおがた、中型ちゅうがた、小型こがたに分類ぶんるいされる^[2]。これらは操業そうぎょう方式ほうしきでは連続れんぞく炉ろ（24時じ間あいだ運転うんてん）、准じゅん連続れんぞく炉ろ（10時じ間あいだ～/日び運転うんてん）、機械きかいバッチ炉ろ、バッチ炉ろに分わけられる^[2]。バッチ炉ろは外気がいきと遮断しゃだんして廃棄はいき物ぶつを1回かいの投入とうにゅうだけで燃もやし切きる方式ほうしきの焼却しょうきゃく炉ろをいう^[3]。

4t/h以上いじょう - 大型おおがた焼却しょうきゃく炉ろ（主おもに連続れんぞく炉ろ）^[2]
2t/h以上いじょう4t/h未満みまん - 中型ちゅうがた・大型おおがた焼却しょうきゃく炉ろ（主おもに准なぞらえ連続れんぞく炉ろ、連続れんぞく炉ろ、機械きかいバッチ炉ろ）^[2]
200kg/h以上いじょう2t/h未満みまん - 小型こがた・中型ちゅうがた焼却しょうきゃく炉ろ（主おもに准なぞらえ連続れんぞく炉ろ、機械きかいバッチ炉ろ、バッチ炉ろ）^[2]
50kg/h以上いじょう200kg/h未満みまん - 小型こがた焼却しょうきゃく炉ろ（主おもにバッチ炉ろ）^[2]

なお、小型こがた焼却しょうきゃく炉ろについては規制きせいのために各地かくちの条例じょうれい等とうで規定きていされた「小型こがた焼却しょうきゃく炉ろ」の定義ていぎとは異ことなる場合ばあいがある（後述こうじゅつ）。

構造こうぞうによる分類ぶんるい[編集へんしゅう]

焼却しょうきゃく炉ろは広義こうぎにはガス化か溶融ようゆう炉ろを含ふくむが、狭義きょうぎには（直接ちょくせつ）焼却しょうきゃく炉ろのことを指さす^[4]（ガス化か溶融ようゆう炉ろに関かんしては溶融ようゆう炉ろを参照さんしょう）。

主おもな焼却しょうきゃく炉ろには次つぎのような種類しゅるいがある。

火ひ格子こうし炉ろ（ストーカ炉ろ）

最もっとも普遍ふへん的てきで基本きほん的てきな方式ほうしき^[5]。

固定こてい式しき火ひ格子こうし炉ろは、格子こうし状じょうに組くんだ火ひ床ゆかで廃棄はいき物ぶつを燃焼ねんしょうさせて灰はいを隙間すきまから落おとす方式ほうしきで、比較的ひかくてき小規模しょうきぼの焼却しょうきゃく炉ろで用もちいられる^[1]。
機械きかい式しきストーカ炉ろは、火ひ格子こうしを自動的じどうてきに動うごかしながら廃棄はいき物ぶつを燃焼ねんしょうさせる方式ほうしきで、紙かみくずや木きくずなどの発熱はつねつ量りょうの高たかい固形こけい廃棄はいき物ぶつの焼却しょうきゃくに適てきしている^[1]。

回転かいてん床ゆか炉ろ: 炉ろ床ゆかを回転かいてんさせて、廃棄はいき物ぶつの供給きょうきゅう、炉ろ内ないでの移送いそう、攪拌、灰はい出だし操作そうさ等とうを連続れんぞく的てきに行おこなう方式ほうしき^[5]。
回転かいてん式しき炉ろ（ロータリーキルン）: 横よこ置おけ回転かいてん式しき焼却しょうきゃく炉ろで構造こうぞうが簡単かんたんなため炉ろ容量ようりょうを大おおきくしやすく、広範囲こうはんいの廃棄はいき物ぶつを混合こんごう処理しょりできる^[1]^[5]。
流動りゅうどう床ゆか炉ろ: 形状けいじょうは塔とう状じょうで炉ろの下部かぶに砂すなを充填じゅうてんし、その底そこから空気くうきを噴射ふんしゃして高温こうおんに熱ねっした砂すなと撹拌かくはんし、廃棄はいき物ぶつを短時間たんじかんに乾燥かんそう、着火ちゃっか、燃焼ねんしょうさせる方式ほうしき^[1]^[4]。

法的ほうてき規制きせい[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおける規制きせい[編集へんしゅう]

焼却しょうきゃく炉ろは「廃棄はいき物ぶつ処理しょり法ほう」、「大気たいき汚染おせん防止ぼうし法ほう」、「悪臭あくしゅう防止ぼうし法ほう」、「水質すいしつ汚濁おだく防止ぼうし法ほう」、「騒音そうおん規制きせい法ほう」、「振動しんどう規制きせい法ほう」、「ダイオキシン類るい対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほう」により法的ほうてきな規制きせいがされている。特とくに2002年ねん12月施行しこうの改正かいせい廃棄はいき物ぶつ処理しょり法ほうにおいて家庭かてい用よう焼却しょうきゃく炉ろを含ふくめ、全すべての規模きぼの焼却しょうきゃく炉ろに対たいして下記かきの構造こうぞう的てきな新しん基準きじゅんが定さだめられた^[6]。

空気くうき取とり入いれ口くち及および煙突えんとつの先端せんたん以外いがいに焼却しょうきゃく炉ろ設備せつび内ないと外気がいきが接せっすることなく、燃焼ねんしょう室しつにおいて発生はっせいするガスの温度おんどが800℃以上いじょうの状態じょうたいで廃棄はいき物ぶつを焼却しょうきゃくできるもの。
燃焼ねんしょうに必要ひつような量りょうの空気くうきの通風つうふうが行おこなわれること。
外気がいきと遮断しゃだんされた状態じょうたいで、定量ていりょうずつ廃棄はいき物ぶつを燃焼ねんしょう室しつに投入とうにゅうすることが出来できること。
燃焼ねんしょう室しつ中ちゅうの燃焼ねんしょうガスの温度おんどを測定そくていできる装置そうちが設もうけられていること。
燃焼ねんしょうガスの温度おんどを高温こうおんに保たもつことができるよう、助じょ燃もえ装置そうちが設もうけられていること。

条例じょうれいで設置せっち等とうの届出とどけで、排出はいしゅつ基準きじゅんの遵守じゅんしゅ、定期ていき的てきな排出はいしゅつガス中ちゅうのダイオキシン類るい濃度のうどの測定そくてい、構造こうぞう基準きじゅん・維持いじ管理かんり基準きじゅんの遵守じゅんしゅを定さだめている自治体じちたいもある^[7]。新座にいざ市しのように「小型こがた焼却しょうきゃく炉ろ」と「簡易かんい焼却しょうきゃく炉ろ」を分わけて規制きせいしている自治体じちたいもある^[7]。

米国べいこくにおける規制きせい[編集へんしゅう]

米国べいこく1990年ねん大気たいき浄化じょうか法ほうの連邦れんぽう排出はいしゅつ基準きじゅんプログラムでは、固形こけい廃棄はいき物ぶつ焼却しょうきゃく規制きせい（§129）で地域ちいきゴミや医療いりょう廃棄はいき物ぶつ等とうの焼却しょうきゃく炉ろからのダイオキシン類るい等とうの排出はいしゅつを規制きせいしている^[8]。

固形こけい廃棄はいき物ぶつ焼却しょうきゃく炉ろは建造けんぞう/改造かいぞう時期じきによって、新規しんき固形こけい廃棄はいき物ぶつ焼却しょうきゃく炉ろ、改造かいぞう固形こけい廃棄はいき物ぶつ焼却しょうきゃく炉ろ、既存きそん固形こけい廃棄はいき物ぶつ焼却しょうきゃく炉ろに分類ぶんるいされる^[8]。新規しんき焼却しょうきゃく炉ろに関かんしてはダイオキシン類るい排出はいしゅつ規制きせいの新規しんき発生はっせい源げん性能せいのう基準きじゅん及およびその他たの要件ようけんが適用てきようされ、直接的ちょくせつてきな連邦れんぽう規制きせいを受うける^[8]。既存きそん焼却しょうきゃく炉ろに関かんしてはダイオキシン類るいの排出はいしゅつ指針ししん及およびその他たの要件ようけんが適用てきようされるが、EPAの承認しょうにんを得えて各州かくしゅうが策定さくていする「州しゅうプラン」による規制きせいを受うける^[8]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f 尾上おがみ雅典まさのり『図解ずかい入門にゅうもんビジネス最新さいしん産廃さんぱい処理しょりの基本きほんと仕組しくみがよーくわかる本ほん』秀和しゅうわシステム、2011年ねん、36-37頁ぺーじ。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f “固定こてい発生はっせい源げんからの排はいガス分析ぶんせきマニュアル（2021年版ねんばん）”. 一般社団法人日本環境測定分析協会大気技術委員会編. 2023年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。
^ “廃棄はいき物ぶつ焼却しょうきゃく炉ろの構造こうぞう基準きじゅんについて”. 広島ひろしま県けん. 2023年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b “焼却しょうきゃく方法ほうほうの分類ぶんるい”. 環境省かんきょうしょう. 2023年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b ^c 篠原しのはら幸一こういち「産業さんぎょう廃棄はいき物ぶつ処理しょりにおける焼却しょうきゃくプロセスの安定あんてい操業そうぎょうに関かんする研究けんきゅう」、九州大学きゅうしゅうだいがく、2020年ねん。
^ 廃棄はいき物ぶつの処理しょり及および清掃せいそうに関かんする法律ほうりつ施行しこう規則きそく第だい一いち条じょうの七なな
^ ^a ^b “新座にいざ市しにおける焼却しょうきゃく炉ろの規制きせい”. 新座にいざ市し. 2023年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b ^c ^d 田邉たなべ朋とも行ぎょう. “有害ゆうがい大気たいき汚染おせん物質ぶっしつ及およびダイオキシン類るい排出はいしゅつ規制きせいの日米にちべい比較ひかくとわが国くに法ほうへの示唆しさ”. 東京大学とうきょうだいがく法学部ほうがくぶ・法学ほうがく政治せいじ学がく研究けんきゅう科か. 2023年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。