(Translated by https://www.hiragana.jp/)
産業廃棄物 - Wikipedia コンテンツにスキップ

産業さんぎょう廃棄はいきぶつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
投棄とうきされた産業さんぎょう廃棄はいきぶつ

産業さんぎょう廃棄はいきぶつ(さんぎょうはいきぶつ)は、日本にっぽんシンガポールなどのほう制度せいどもちいられている廃棄はいきぶつ区分くぶん。「産廃さんぱい」(さんぱい)とりゃくされるほか、事業じぎょう活動かつどうともなって発生はっせいするごみであるため、「事業じぎょうけいごみ」や「事業じぎょうごみ」ともばれる。

日本にっぽん廃棄はいきぶつ処理しょりおよ清掃せいそうかんする法律ほうりつでは、廃棄はいきぶつをまず一般いっぱん廃棄はいきぶつ産業さんぎょう廃棄はいきぶつ大別たいべつする[1]。シンガポールでは一般いっぱん廃棄はいきぶつ産業さんぎょう廃棄はいきぶつ商業しょうぎょう廃棄はいきぶつ家庭かてい廃棄はいきぶつとう区分くぶんしており、産業さんぎょう廃棄はいきぶつ一般いっぱん廃棄はいきぶつ一種いっしゅである。廃棄はいきぶつ回収かいしゅう分類ぶんるいでは一般いっぱん廃棄はいきぶつ有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ区別くべつされ、一般いっぱん廃棄はいきぶつふくまれるものは「有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ」としてあつか[2]。このほかアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのように、廃棄はいきぶつ有害ゆうがい廃棄はいきぶつ有害ゆうがい廃棄はいきぶつから大別たいべつするほう制度せいどもあるなど、産業さんぎょう廃棄はいきぶつ位置いちづけは世界せかい共通きょうつうではないが、行政ぎょうせいじょうのindustrial wasteの訳語やくごとしてももちいられる[1]

日本にっぽん産業さんぎょう廃棄はいきぶつ

[編集へんしゅう]
  • 廃棄はいきぶつ処理しょりおよ清掃せいそうかんする法律ほうりつは、以下いかじょうすうのみ記載きさいする。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

日本にっぽん廃棄はいきぶつ処理しょりおよ清掃せいそうかんする法律ほうりつ廃棄はいきぶつ処理しょりほう)は廃棄はいきぶつをまず一般いっぱん廃棄はいきぶつ産業さんぎょう廃棄はいきぶつ大別たいべつする[1][3]

廃棄はいきぶつ処理しょりおよ清掃せいそうかんする法律ほうりつでは「産業さんぎょう廃棄はいきぶつ」とはつぎかかげる廃棄はいきぶつをいう(どうほうだい2じょうだい4こう)。

  1. 事業じぎょう活動かつどうともなってしょうじた廃棄はいきぶつのうち、がら汚泥おでい廃油はいゆはいさんはいアルカリはいプラスチックるいその政令せいれいさだめる廃棄はいきぶつ
  2. 輸入ゆにゅうされた廃棄はいきぶつ船舶せんぱくおよ航空機こうくうき航行こうこうともなしょうずる廃棄はいきぶつ政令せいれいさだめるものにかぎる。廃棄はいきぶつ処理しょりほうだい15じょうの4の5だい1こうにおいて「航行こうこう廃棄はいきぶつ」という。)ならびに本邦ほんぽう入国にゅうこくするもの携帯けいたいする廃棄はいきぶつ政令せいれいさだめるものにかぎる。どうこうにおいて「携帯けいたい廃棄はいきぶつ」という。)をのぞく。)

家庭かていとうから排出はいしゅつされる一般いっぱんのごみ(一般いっぱん廃棄はいきぶつ)は市町村しちょうそん処理しょり責任せきにんがあるのにたいし、産業さんぎょう廃棄はいきぶつ排出はいしゅつ事業じぎょうしゃ処理しょり責任せきにん下記かき参照さんしょう)がある。法的ほうてきあつかいがことなるため、廃棄はいきにあたっては、市町村しちょうそんとう一般いっぱん廃棄はいきぶつよう処理しょり施設しせつでの処理しょり処分しょぶんをすることはできない。産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょり処分しょぶんできる許可きょかけた産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょり事業じぎょうしゃ処理しょり処分しょぶん委託いたくすることとなっている。

ひと健康けんこうまた生活せいかつ環境かんきょう被害ひがいしょうじるおそれのある性状せいじょうをもつ廃棄はいきぶつのうち、産業さんぎょう廃棄はいきぶつぞくするものは「特別とくべつ管理かんり産業さんぎょう廃棄はいきぶつ」として特別とくべつ基準きじゅん処理しょりされる[3]

  • 特別とくべつ管理かんり産業さんぎょう廃棄はいきぶつ
    • 廃油はいゆ
    • はいさんはいアルカリ
    • 感染かんせんせい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ
    • 特定とくてい有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ
      • はいPCB、PCB汚染おせんぶつ、PCB処理しょりぶつ
      • はい石綿いしわたとう
      • 有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ
        • 水銀すいぎんカドミウムなまり有機ゆうきリン化合かごうぶつろくクロムヒ素ひそ、シアン、PCB、はい溶剤ようざいチウラムシマジン、チオベンカルブ、ベンゼンセレンまたはその化合かごうぶつ基準きじゅん以上いじょうふくんでいる汚泥おでいこうさい、廃油はいゆはいさんはいアルカリ、がら、ばいじんとう
        • ダイオキシンるい基準きじゅん以上いじょうふくんだばいじん、がら汚泥おでいなど
    • 指定してい有害ゆうがい廃棄はいきぶつ硫酸りゅうさんピッチ)

なお、産業さんぎょう廃棄はいきぶつ該当がいとうしない事業じぎょう活動かつどうともな廃棄はいきぶつ事業じぎょうけい一般いっぱん廃棄はいきぶつ)については、事業じぎょうしゃみずか処理しょりするか、市町村しちょうそんまたは市町村しちょうそんちょう許可きょかけた一般いっぱん廃棄はいきぶつ処理しょり業者ぎょうしゃもしくは一般いっぱん廃棄はいきぶつ収集しゅうしゅう運搬うんぱん業者ぎょうしゃ処理しょり処分しょぶん委託いたくしなければならない。一般いっぱん廃棄はいきぶつ処分しょぶんぎょう許可きょかけていない産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょり事業じぎょうしゃ処理しょり委託いたくすることは違法いほうとなる。

範囲はんい

[編集へんしゅう]

あらゆる事業じぎょう活動かつどうともなうもの

[編集へんしゅう]

特定とくてい事業じぎょう活動かつどうともなうもの

[編集へんしゅう]
  • パルプかみまたかみ加工かこうひん製造せいぞうぎょう新聞しんぶんごう出版しゅっぱんごう印刷いんさつもの工業こうぎょうとうからしょうずるかみくず
  • 建設けんせつぎょうからしょうずるかみくず(工作こうさくぶつ新築しんちく改築かいちくまたは除去じょきょともなってしょうずるものにかぎる)
  • 建設けんせつぎょうからしょうずるくず(工作こうさくぶつ新築しんちく改築かいちくまたは除去じょきょともなってしょうずるものにかぎる)
  • 木材もくざい木製品もくせいひん製造せいぞうぎょうとうからしょうずるくず
  • 繊維せんい工業こうぎょう衣類いるいとう繊維せんい製品せいひん製造せいぞうぎょうのぞく)からしょうずる繊維せんいくず
  • 建設けんせつぎょうからしょうずる繊維せんいくず(工作こうさくぶつ新築しんちく改築かいちくまた除去じょきょともなってしょうずるものにかぎる)
  • 食料しょくりょうひん製造せいぞうぎょう医薬品いやくひん製造せいぞうぎょう香料こうりょう製造せいぞうぎょうにおいて原料げんりょうとして使用しようした動物どうぶつまた植物しょくぶつかか固形こけいじょう不要ふようぶつ
  • 屠畜場とちくじょうにおいて屠殺とさつし、また解体かいたいしたししおよしょくとり処理しょりじょうにおいて処理しょりしたしょくとりかか固形こけいじょう不要ふようぶつ動物どうぶつけい固形こけい不要ふようぶつ
  • 畜産ちくさん農業のうぎょうからしょうずる動物どうぶつのふん尿にょう
  • 畜産ちくさん農業のうぎょうからしょうずる動物どうぶつ死体したい
  • 以上いじょう産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょりするために処分しょぶんしたもので、上記じょうき産業さんぎょう廃棄はいきぶつ該当がいとうしないもの

事業じぎょう活動かつどうともな廃棄はいきぶつであっても、これらの定義ていぎ該当がいとうしないものは産業さんぎょう廃棄はいきぶつではなく、一般いっぱん廃棄はいきぶつとなる。 たとえば、「かみくず」は業種ぎょうしゅ限定げんていがあり、これにふくまれない一般いっぱんのオフィスから排出はいしゅつされるものは産業さんぎょう廃棄はいきぶつではない。

また「従業じゅうぎょういんがオフィスでてた飲料いんりょうようペットボトル」などは「はいプラスチック」であるが、事業じぎょう活動かつどうによるものでないとして産廃さんぱいあつかいしないれいおおい。

こうしたもののうち不要ふようぶつについて、最高さいこう裁判所さいばんしょ(平成へいせい11ねん3がつ10日とおか判決はんけつ)は、「みずか利用りようまた他人たにん有償ゆうしょう譲渡じょうとすることができないために事業じぎょうしゃにとって不要ふようになったもの」と定義ていぎしたうえで、「これに該当がいとうするかかは、そのもの性状せいじょう排出はいしゅつじょう况、通常つうじょう取扱とりあつか形態けいたい取引とりひき価値かち有無うむおよ事業じぎょうしゃ意思いしとう総合そうごうてき勘案かんあんしてけっする」としている。そのうえで、豆腐とうふ製造せいぞう業者ぎょうしゃ排出はいしゅつするところのおからは、不要ふようぶつにあたり、産業さんぎょう廃棄はいきぶつにあたるとしている。

排出はいしゅつ

[編集へんしゅう]

そう排出はいしゅつりょう

[編集へんしゅう]

環境省かんきょうしょうによれば、1995年度ねんど平成へいせい7年度ねんど以降いこう、4おくトン前後ぜんこう推移すいいしている。ただし、リサイクルや廃棄はいきぶつやして減量げんりょうするひとしたうえでの、最終さいしゅう処分しょぶんりょうやく916まんトンであり、年々ねんねん減少げんしょう傾向けいこうにある[4]

  • 2003ねん平成へいせい15ねん) 4おく1,200まんトン
  • 2004ねん平成へいせい16ねん) 4おく1,700まんトン
  • 2005ねん平成へいせい17ねん) 4おく2,200まんトン
  • 2006ねん平成へいせい18ねん) 4おく1,800まんトン
  • 2007ねん平成へいせい19ねん) 4おく1,900まんトン
  • 2008ねん平成へいせい20ねん) 4おく400まんトン
  • 2009ねん平成へいせい21ねん) 3おく9,000まんトン
  • 2010ねん平成へいせい22ねん) 3おく8,600まんトン
  • 2011ねん平成へいせい23ねん) 3おく8,100まんトン
  • 2012ねん平成へいせい24ねん) 3おく7,900まんトン
  • 2013ねん平成へいせい25ねん) 3おく8,500まんトン
  • 2014ねん平成へいせい26ねん) 3おく9,300まんトン
  • 2015ねん平成へいせい27ねん) 3おく9,100まんトン
  • 2016ねん平成へいせい28ねん) 3おく8,700まんトン
  • 2017ねん平成へいせい29ねん) 3おく8,400まんトン
  • 2018ねん (平成へいせい30ねん) 3おく7,883まんトン
  • 2019ねん (れい元年がんねん) 3おく8,596まんトン

種類しゅるいべつ上位じょうい3品目ひんもく

[編集へんしゅう]

そう排出はいしゅつりょうやく8わりめる。れい元年がんねん[4]

  • 汚泥おでい 44.3%(排出はいしゅつりょうやく1おく7,084まんt)
  • 動物どうぶつのふん尿にょう 20.9%(排出はいしゅつりょうやく8,079まんt)
  • がれきるい 15.3%(排出はいしゅつりょうやく5,893まんt)

産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょり責任せきにん

[編集へんしゅう]

排出はいしゅつしゃ責任せきにん原則げんそく

[編集へんしゅう]

事業じぎょうしゃは、その事業じぎょう活動かつどうともなってしょうじた廃棄はいきぶつみずからの責任せきにんにおいて適正てきせい処理しょりしなければならない」3じょう)とさだめる「廃棄はいきぶつ処理しょりおよ清掃せいそうかんする法律ほうりつ」により、産業さんぎょう廃棄はいきぶつは、排出はいしゅつしゃ処理しょり責任せきにんがある。これを一般いっぱんてきに「排出はいしゅつしゃ責任せきにん」または「排出はいしゅつ事業じぎょうしゃ責任せきにん」という。すなわみずか処理しょりする(自己じこ処理しょり)を原則げんそくとし、都道府県とどうふけん知事ちじの「産業さんぎょう廃棄はいきぶつ収集しゅうしゅう運搬うんぱんぎょう」「産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょりぎょう」の許可きょかけた業者ぎょうしゃ処理しょり委託いたくすることができるとしている。ただし、産廃さんぱい業者ぎょうしゃ委託いたくする場合ばあいは、排出はいしゅつしゃ責任せきにんにおいて、法定ほうてい事項じこうんだ委託いたく契約けいやく書面しょめん締結ていけつするとともに、処理しょり完了かんりょう確認かくにんするための処理しょり伝票でんぴょう産業さんぎょう廃棄はいきぶつ管理かんりひょうマニフェスト)を発行はっこう回収かいしゅう照合しょうごうしなければならない(12じょうの3)。

建設けんせつ工事こうじともなしょうずる廃棄はいきぶつ処理しょりかんする例外れいがい

[編集へんしゅう]

建設けんせつ工事こうじ請負うけおい工事こうじ)でしょうずる産業さんぎょう廃棄はいきぶつ排出はいしゅつしゃは、元請もとうけ事業じぎょうしゃ発注はっちゅうしゃから直接ちょくせつ工事こうじ請負うけおいったもの)となり処理しょり責任せきにん発生はっせいする(ほうだい21じょうの3)。
なお、建設けんせつ工事こうじにはさまざまな発注はっちゅう形態けいたいがあり、下記かきのように処理しょり責任せきにんまぎらわしいケースも発生はっせいするので注意ちゅうい必要ひつようである。

発注はっちゅうしゃ商社しょうしゃ管理かんり会社かいしゃとうビルマネジメント会社かいしゃプラント運営うんえい会社かいしゃビルメンテナンス会社かいしゃなど)をかいして建設けんせつ業者ぎょうしゃ工事こうじ発注はっちゅうするケースである。この場合ばあい商社しょうしゃ管理かんり会社かいしゃとう元請もとうけ建設けんせつ業者ぎょうしゃ下請したうけとみなされる[ちゅう 1]。よって処理しょり責任せきにん商社しょうしゃ管理かんり会社かいしゃとうにあり、建設けんせつ業者ぎょうしゃにはない。このケースでは商社しょうしゃ管理かんり会社かいしゃとう法令ほうれい精通せいつうしていない場合ばあい処理しょり責任せきにんめぐってトラブル発生はっせいすることがあるので注意ちゅうい必要ひつようである[5]

  • テナント工事こうじがあるケース

ショッピングセンタービルなどでオーナーテナント個別こべつ工事こうじ発注はっちゅうするケースである。この場合ばあいはオーナーから工事こうじ直接ちょくせつ請負うけおった建設けんせつ業者ぎょうしゃだけではなく、テナントから工事こうじ直接ちょくせつ請負うけおった建設けんせつ業者ぎょうしゃにもそれぞれ別個べっこ処理しょり責任せきにん発生はっせいすることになる。このケースではオーナーやテナントが法令ほうれい精通せいつうしていない場合ばあい処理しょり責任せきにんめぐってトラブルが発生はっせいすることがあるので注意ちゅうい必要ひつようである[5]

  • 分離ぶんり発注はっちゅうのケース

発注はっちゅうしゃ建築けんちく工事こうじかん工事こうじ電気でんき工事こうじひとし個別こべつ発注はっちゅうするケースである。この場合ばあい建築けんちく工事こうじ業者ぎょうしゃだけでなく、かん工事こうじ業者ぎょうしゃ電気でんき工事こうじ業者ぎょうしゃとう直接ちょくせつ工事こうじ請負うけおっているためそれぞれ別個べっこ処理しょり責任せきにん発生はっせいする。このケースは分離ぶんり発注はっちゅうのほとんどが公共こうきょう工事こうじであり、発注はっちゅうしゃがわかく請負うけおいしゃがわ法令ほうれい精通せいつうしていることから、処理しょり責任せきにんめぐってトラブルが発生はっせいすることはまれである[5]

排出はいしゅつしゃ責任せきにん限度げんど

[編集へんしゅう]

受託じゅたく処理しょり業者ぎょうしゃ適正てきせい処理しょりにより不法ふほう投棄とうきなどがこった場合ばあいに、排出はいしゅつしゃがどこまで責任せきにんうかが問題もんだいとなる。実際じっさい事件じけんでは、廃棄はいきぶつ内容ないよう確認かくにんすることによって排出はいしゅつしゃ特定とくていすることはできても直接ちょくせつ投棄とうきしゃ特定とくていできなかったり、処理しょり業者ぎょうしゃ資力しりょくがなく撤去てっきょ費用ひよう負担ふたんなどをいきれなかったりすることがおおいからである。都道府県とどうふけん産業さんぎょう廃棄はいきぶつ担当たんとう部局ぶきょくは、排出はいしゅつしゃ管理かんり状態じょうたいなどを精査せいさし、問題もんだいがあれば「排出はいしゅつしゃとして責任せきにんあり」として、撤去てっきょ費用ひようなどの負担ふたんもとめるが、なかには排出はいしゅつしゃ管理かんり問題もんだいがなくても「当然とうぜん排出はいしゅつしゃ責任せきにん」として、排出はいしゅつしゃ負担ふたんもとめてくることもある。

しかしだい原則げんそくとして、とくさだめのないかぎり、過失かしつがないものには民事みんじうえ責任せきにん発生はっせいしない。(b:民法みんぽうだい709じょう過失かしつ責任せきにん原則げんそく」)

産業さんぎょう廃棄はいきぶつにおいては、3じょう解釈かいしゃくとして、とくさだめのある場合ばあい無過失責任むかしつせきにん[ちゅう 2])に該当がいとうするかが問題もんだいとなる。小池こいけ百合子ゆりこ環境かんきょう大臣だいじん(2005ねん当時とうじ)は、国会こっかい(2005ねん衆院しゅういん環境かんきょう委員いいんかい)における答弁とうべんでは、無過失責任むかしつせきにん採用さいようしていないという前提ぜんていち、「(排出はいしゅつしゃに)予見よけん不可能ふかのう負担ふたんわせ、経済けいざい活動かつどう不当ふとう制約せいやくするおそれもある」と、今後こんご導入どうにゅうについても否定ひていてき見解けんかいしめしている。

すなわち、環境省かんきょうしょう解釈かいしゃくによれば「過失かしつ責任せきにん原則げんそく」が適用てきようされるため、排出はいしゅつしゃ過失かしつがないとみとめられる場合ばあいは、不法ふほう投棄とうきなどがあった場合ばあいでも、排出はいしゅつしゃ民事みんじじょう法的ほうてき責任せきにん根拠こんきょ存在そんざいしないとされる。あくまで自主じしゅてき判断はんだん負担ふたんすべきものとかんがえられる。今後こんご司法しほう判断はんだんにも注目ちゅうもくされる。

不法ふほう投棄とうき問題もんだい

[編集へんしゅう]

だい規模きぼ不法ふほう投棄とうき事例じれいとして、「香川かがわけん豊島としま不法ふほう投棄とうき事案じあん(豊島としま事件じけん)」、「青森あおもりけん岩手いわてけん県境けんきょう産廃さんぱい不法ふほう投棄とうき事案じあん」、「埼玉さいたまけん朝霞あさか上内間木かみうちまぎ新河岸川しんがしがわ河川敷かせんしきPCBドラム缶どらむかん不法ふほう投棄とうき事案じあん[6][7]などがある。

産業さんぎょう廃棄はいきぶつ不法ふほう投棄とうき対策たいさく促進そくしんするため、2003年度ねんどから10年間ねんかん時限じげんほうである産廃さんぱい特措法とくそほう特定とくてい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ起因きいんする支障ししょう除去じょきょとうかんする特別とくべつ措置そちほう)が制定せいていされた。その、2012ねん改正かいせい[8]存続そんぞく期限きげんが10ねん延長えんちょうされ、現在げんざい期限きげん[9]2023ねん3月31にちまでである。

なお、操業そうぎょう停止ていししている産業さんぎょう廃棄はいきぶつ最終さいしゅう処分しょぶんじょう周辺しゅうへん住民じゅうみんが「有害ゆうがい廃棄はいきぶつ撤去てっきょおこたり、放置ほうち違法いほう」と福岡ふくおかけん廃棄はいきぶつ撤去てっきょもとめた訴訟そしょう福岡ふくおか地裁ちさいの1しん却下きゃっかし、2011ねん2がつ7にち福岡ふくおか高裁こうさいは「住民じゅうみん生命せいめい健康けんこう重大じゅうだい損害そんがいしょうじるおそれがある」としてけん必要ひつよう行政ぎょうせい措置そち日本にっぽんはじめて義務付ぎむづけた。そのけん上告じょうこくし、一方いっぽう県議会けんぎかい上告じょうこくげをもとめる決議けつぎをした[10]

シンガポールの産業さんぎょう廃棄はいきぶつ

[編集へんしゅう]

定義ていぎ

[編集へんしゅう]

シンガポールの環境かんきょう公衆こうしゅう衛生えいせいほうだい2じょうでは「小売こうり商業しょうぎょう製造せいぞうぎょう建設けんせつ生成せいせいされる固形こけい液体えきたい気体きたい廃棄はいきぶつであり、有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ危険きけん物質ぶっしつふくむ。」と定義ていぎされる[2]。また「有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ」は「産業さんぎょう廃棄はいきぶつのうち性質せいしつ組成そせいりょうが、ひと健康けんこう環境かんきょう危険きけんをもたらすか、または感染かんせんしょう病原びょうげんたいつく可能かのうせいのあるもの」と定義ていぎされる[2]。ただし廃棄はいきぶつ回収かいしゅう分類ぶんるいでは一般いっぱん廃棄はいきぶつ(General waste)と有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ(Toxic Industrial Waste)は区別くべつされ、一般いっぱん廃棄はいきぶつふくまれるものは「有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ」としてあつか[2]

排出はいしゅつ事業じぎょうしゃ責任せきにん

[編集へんしゅう]

産業さんぎょう廃棄はいきぶつ生成せいせいする事業じぎょうしゃは、産業さんぎょう廃棄はいきぶつについてひと動物どうぶつ環境かんきょう悪影響あくえいきょうおよぼさない適切てきせつかつ効率こうりつてき方法ほうほう保管ほかんし(だい25じょう)、定期ていきてき廃棄はいきしなければならない(だい26じょう[2]

有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ

[編集へんしゅう]

有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ(Toxic Industrial Waste)は環境かんきょう公衆こうしゅう衛生えいせいほうだい2じょう定義ていぎされており、医療いりょう廃棄はいきぶつ生物せいぶつがくてき有害ゆうがい廃棄はいきぶつ(biohazard waste)もこれにふく[2]

有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ発生はっせいしゃは、排出はいしゅつする有害ゆうがい廃棄はいきぶつ種類しゅるい性質せいしつわる場合ばあいや、環境かんきょう公衆こうしゅう衛生えいせい有害ゆうがい廃棄はいきぶつ規則きそくさだめる基準きじゅんりょう上回うわまわ排出はいしゅつおこな場合ばあいには、国家こっか環境庁かんきょうちょうへの報告ほうこく義務ぎむがある[2]有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ運搬うんぱん委託いたくする場合ばあい業者ぎょうしゃ免許めんきょ保有ほゆうしているかの確認かくにん義務ぎむ廃棄はいきぶつ内容ないよう正確せいかくつたえる義務ぎむ[2]。また有害ゆうがい産業さんぎょう廃棄はいきぶつ排出はいしゅつする事業じぎょうしゃは、廃棄はいきぶつ種類しゅるいりょう廃棄はいき手段しゅだん有害ゆうがい廃棄はいきぶつ収集しゅうしゅう事業じぎょうしゃ委託いたくした日付ひづけりょう、その事業じぎょうしゃめい住所じゅうしょのこっている廃棄はいき物量ぶつりょう記録きろくする義務ぎむがある[2]

不法ふほう投棄とうき規制きせい

[編集へんしゅう]

環境かんきょう公衆こうしゅう衛生えいせいほうだい20じょう産業さんぎょう廃棄はいきぶつなどの不法ふほう投棄とうき禁止きんしさだめており、1996ねん罰金ばっきんげや懲役ちょうえきけい追加ついか不法ふほう投棄とうき使用しようした車両しゃりょう没収ぼっしゅうなど厳罰げんばつされた[2]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく産業さんぎょう廃棄はいきぶつ

[編集へんしゅう]

連邦れんぽうほう資源しげん保護ほご回復かいふくほう(Resource Conservation and Recovery Act/ RCRA)は、廃棄はいきぶつをまず有害ゆうがい廃棄はいきぶつ(hazardous waste)と有害ゆうがい廃棄はいきぶつ(non-hazardous waste)に大別たいべつしている[1]有害ゆうがい廃棄はいきぶつには、一般いっぱんてき産業さんぎょう生産せいさん過程かていから排出はいしゅつされた特定とくていげん廃棄はいきぶつ(Fリスト)や特定とくてい産業さんぎょうから排出はいしゅつされた特定とくていげん廃棄はいきぶつ(Kリスト)があるが、連邦れんぽう環境かんきょう保護ほごちょう(Environmental Protection Agency/EPA)は、商店しょうてん事務所じむしょ、レストランなど製造せいぞうぎょうから発生はっせいする商業しょうぎょうごみ(commercial solid waste)を産業さんぎょう廃棄はいきぶつとしていない[1]。この米国べいこく定義ていぎによる連邦れんぽう環境かんきょう保護ほごちょう統計とうけいでは、産業さんぎょう廃棄はいきぶつやく97%が廃水はいすい(waste water)で固形こけい廃棄はいきぶつではないとしている[1]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]
  1. ^ 建設けんせつぎょう許可きょか有無うむや、実際じっさい設計せっけい施工しこう施工しこう管理かんりとうをするかはわない。
  2. ^ 無過失責任むかしつせきにんとは、「損害そんがい発生はっせいした場合ばあいには、故意こいまたは過失かしつがなくても賠償ばいしょう責任せきにんうという原則げんそく」。水質すいしつ汚濁おだく防止ぼうしほう大気たいき汚染おせん防止ぼうしほうにその規定きていがある。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d e f アメリカの産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょりについて”. 一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん自治体じちたい国際こくさい協会きょうかい. 2022ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f g h i j だい9しょう シンガポールにおける産業さんぎょう廃棄はいきぶつ・リサイクル政策せいさく”. 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん日本にっぽん貿易ぼうえき振興しんこう機構きこう. 2022ねん4がつ4にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 廃棄はいきぶつとは…”. 奈良ならけん. 2022ねん4がつ6にち閲覧えつらん
  4. ^ a b 産業さんぎょう廃棄はいきぶつ排出はいしゅつおよ処理しょりじょうきょうとうれいもと年度ねんど実績じっせき)について”. 環境省かんきょうしょう. 2022ねん6がつ13にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c 出典しゅってん一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん全国ぜんこく建設けんせつ研修けんしゅうセンター監理かんり技術ぎじゅつしゃ必携ひっけい-れい2年版ねんばん監理かんり技術ぎじゅつしゃ講習こうしゅうテキスト」p.270-271
  6. ^ 新河岸川しんがしがわ産業さんぎょう廃棄はいきぶつ処理しょり対策たいさく -埼玉さいたまけん
  7. ^ 報道ほうどう記事きじ(1990ねん11月9にち)(1990ねん11月23にち) -朝日新聞あさひしんぶん
  8. ^ 平成へいせい24ねん8がつ22にち法律ほうりつだい58ごう
  9. ^ 附則ふそくだい2こう
  10. ^ 読売新聞よみうりしんぶん2011ねん2がつ8にち夕刊ゆうかん関東かんとう地域ちいき3はん12めん飯塚いいづか産廃さんぱい撤去てっきょ訴訟そしょう福岡ふくおかけん上告じょうこく(2011ねん2がつ22にち

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]