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屠畜場とちくじょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
USDA inspection of pig

屠畜場とちくじょう(とちくじょう、漢字かんじ制限せいげんにより「畜場ちくじょう」とも)は、うしぶたうまなどの家畜かちくころして(屠殺とさつして)解体かいたいし、食肉しょくにく加工かこうする施設しせつ名称めいしょうである。屠殺とさつじょう食肉しょくにく処理しょりじょう[1]食肉しょくにく解体かいたい施設しせつ食肉しょくにく工場こうじょうなどともいう。

日本にっぽん

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日本にっぽん畜場ちくじょうほうにおいては、生後せいご1ねん以上いじょううししくはうままたは1にちに10とうえるしし畜をところし、また解体かいたいする規模きぼゆうすると畜場ちくじょう一般いっぱん畜場ちくじょう、それ以外いがいのと畜場ちくじょう簡易かんい畜場ちくじょう として区別くべつしている。と畜場ちくじょうは、全国ぜんこくに195かしょ(うち、一般いっぱん畜場ちくじょうは183かしょ簡易かんい畜場ちくじょうは12かしょ)ある(2017ねん平成へいせい29ねん〉4がつ現在げんざい)。

初期しょき屠畜場とちくじょうほうではしし医師いしによって家畜かちく病気びょうき発見はっけん排除はいじょし、健康けんこうにく提供ていきょうすることが主要しゅよう目的もくてきであったため、屠畜場とちくじょうはいわば検査けんさ施設しせつであった。 しかし、近年きんねんサルモネラO157など家畜かちく由来ゆらい食中毒しょくちゅうどくたいする社会しゃかい関心かんしんたかまってきたことにより、屠畜場とちくじょうほう衛生えいせいめんじくあしいた内容ないようおおきく改訂かいていされ、たんなる検査けんさ施設しせつから食品しょくひん工場こうじょうとしての性格せいかくつよまった[2]

このため、現在げんざいかく施設しせつ具体ぐたいてき名称めいしょうは、「食肉しょくにく処理しょりじょう」「食肉しょくにくセンター」などの名称めいしょうされているものがおおい。

畜場ちくじょうほうもとづく食肉しょくにくよう動物どうぶつである家畜かちく日本にっぽんではうしうまぶた緬羊めんよう山羊やぎの5種類しゅるい家畜かちくのみで鹿しかいのししほう対象たいしょうがい)は、搬入はんにゅうされたのちシャワーでよごれをあらながしてから食肉しょくにく衛生えいせい検査けんさしょあるいは保健所ほけんじょ所属しょぞくするしし医師いしである「と畜検査けんさいん地方自治体ちほうじちたい職員しょくいん)」による病気びょうき等外とうがいかん検査けんさ生体せいたい検査けんさ)をける。

屠殺とさつは、ぜん頭部とうぶへの打撃だげき、あるいは電撃でんげき二酸化炭素にさんかたんそによって昏倒こんとうさせたあと、大動脈だいどうみゃく切開せっかいころせする方法ほうほうおこなわれる。 昏倒こんとうさせてからころせする方法ほうほう採用さいようされるのは、安楽あんらくころせという動物どうぶつ福祉ふくし観点かんてんからでもあるが、すみやかにいたらしめられなかった場合ばあいストレスによるすじ変性へんせい不良ふりょうによって肉質にくしつわるくなったり、恐怖きょうふした家畜かちくあばみずか筋肉きんにくほね損傷そんしょうしたりするなど、枝肉えだにく商品しょうひん価値かちそこなわないためという側面そくめんおおきい。

切開せっかいりょう後肢あとあしぶしとおした鉄棒てつぼうをフックでげ、しつさせながら施設しせつ天井てんじょうけたレールに沿ってかく作業さぎょう配置はいちじゅんまわり、解体かいたいされていく(オンライン方式ほうしき)。うしでは昏倒こんとうさせる場所ばしょ施設しせつ階上かいじょうもうけるか、あるいはるしたからだ動力どうりょく階上かいじょうへとげてから自重じちょう人力じんりきだけで容易よういかく作業さぎょう場所ばしょあいだ移動いどうできるようになっている。その途中とちゅう適宜てきぎほふ検査けんさいんにより病変びょうへん組織そしきのサンプリングと検査けんさ解体かいたい検査けんさ)が実施じっしされる。

解体かいたい順序じゅんじょはごくおおざっぱにって、頭部とうぶ切断せつだんへずかわ内臓ないぞう摘出てきしゅつ背割せわり・枝肉えだにく検査けんさなどとつづき、半頭はんがしらぶんにくかたまりはんまる枝肉えだにく)となる。 たいていは解体かいたいラインの階下かいかしろモツ胃腸いちょうなど)、あかぶつ肝臓かんぞう心臓しんぞうなど胸腔きょうこう臓器ぞうき)などの内臓ないぞう分別ふんべつ洗浄せんじょう・パッキングするための作業場さぎょうばがあり、ラインではなされた臓器ぞうきをシュートに投入とうにゅうすることによりした内臓ないぞう処理しょり作業場さぎょうばおくられる仕組しくみになっている。

食肉しょくにく市場いちば取引とりひきされた枝肉えだにく食肉しょくにく加工かこうじょうだい分割ぶんかつされブロックにくとなる。そこからさらに精肉せいにくてんや、スーパーマーケットなどに搬送はんそうされ、ももやヒレなどの部位ぶいしょう分割ぶんかつされ、一般いっぱん消費しょうひしゃ市販しはんされる。

前述ぜんじゅつほう改正かいせいおこなわれたさい、O157やBSE対策たいさくのための設備せつび投資とうしおこなえなかった小規模しょうきぼ施設しせつおおくは廃業はいぎょうした。のこったなかだい規模きぼ施設しせつ衛生えいせい対策たいさくのため施設しせつ改築かいちくとうおこなっており、現在げんざいほとんどすべての屠畜場とちくじょう旧来きゅうらいのベッド方式ほうしき家畜かちくだいうえへずかわ解体かいたいする方式ほうしき)を廃止はいしし、オンライン方式ほうしき(フックでつるしてへずかわ解体かいたいする方式ほうしき)で運営うんえいされている。

なお、うしについてはBSEのさかのぼ調査ちょうさ偽装ぎそう防止ぼうしのためトレーサビリティシステム対応たいおうおこなっている。

歴史れきし

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1960ねんには全国ぜんこくに875の屠場とじょうがあったが、だい資本しほん進出しんしゅつにより小規模しょうきぼ屠場とじょう次々つぎつぎ閉鎖へいさされ、1986ねんには429に減少げんしょうした[3]

動物どうぶつ福祉ふくし

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日本にっぽんのと畜場ちくじょうでは家畜かちく飲水のみみず設備せつび設置せっちされていないところがおおく、2011ねん北海道ほっかいどう帯広おびひろ食肉しょくにく衛生えいせい検査けんさしょなどの調査ちょうさによるとうしでは50.4%、ぶたでは86.4%で設置せっちされていないことがわかっている[4]。これにかんしては厚生こうせい労働省ろうどうしょうから都道府県とどうふけんへ「と畜場ちくじょう施設しせつおよ設備せつびかんするガイドライン」が通知つうちされており、新設しんせつおよ改築かいちくとうおこなわれる場合ばあいにはしし畜の飲用いんようすい設備せつび設定せっていされていること[5]との記載きさいがあるが、達成たっせい時期じき未定みていである。屠殺とさつじょうにおける飲水のみみず設備せつび不備ふびは、日本にっぽん批准ひじゅんするOIE(国際こくさい獣疫じゅうえき事務じむきょく)の動物どうぶつ福祉ふくし基準きじゅんはんするものとなっている。

欧米おうべい

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EUではと畜場ちくじょうとう認定にんてい要件ようけんについて食肉しょくにく衛生えいせい関係かんけい食肉しょくにく検査けんさ関係かんけい家畜かちく衛生えいせい関係かんけいおよ動物どうぶつ福祉ふくし関係かんけいかく要件ようけんさだめている[6]食肉しょくにく衛生えいせい関係かんけいでは食肉しょくにく処理しょりじょうはと畜場ちくじょう併設へいせつされ一貫いっかんしたシステムになっていること、動物どうぶつ福祉ふくし関係かんけいでは給水きゅうすい給餌きゅうじなどの規定きていがある[6]

米国べいこく

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アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは肉牛にくぎゅうのままの状態じょうたい精肉せいにくてん小売こうり業者ぎょうしゃ)がけ、精肉せいにくてん小売こうり業者ぎょうしゃ)がみずからの施設しせつ牛肉ぎゅうにく食肉しょくにく解体かいたいおこなうことが一般いっぱんてきである[1]

衛生えいせい管理かんり米国べいこく基準きじゅんは、1.施設しせつ設備せつびとう衛生えいせい管理かんり、2.衛生えいせいてきなとさつ・解体かいたいおよ分割ぶんかつ、3.衛生えいせい管理かんり体制たいせいおよび4.人道的じんどうてきしし畜の取扱とりあつかおよびとさつの4つからなる[6]施設しせつ規定きていでは「ゆか内壁ないへき天井てんじょうとう」、「照明しょうめいおよ換気かんき」、「給水きゅうすい給湯きゅうとう設備せつび」、「汚水おすいおよ汚物おぶつ処理しょり」、「器具きぐ洗浄せんじょう消毒しょうどくしつ」、「ねずみ、昆虫こんちゅうとう侵入しんにゅう防止ぼうし」、「手洗てあらいしょ」、「更衣ころもがえしつおよび「便所べんじょ」について条件じょうけんさだめられている[6]

施設しせつ設備せつびとう構造こうぞう材質ざいしつ米国べいこく基準きじゅん」はコーデックス委員いいんかいの「食品しょくひん衛生えいせい一般いっぱん原則げんそく規範きはん」にもとづき作成さくせいされた日本にっぽん1994ねん平成へいせい6ねん)の厚生こうせい労働省ろうどうしょう通達つうたつ「と畜場ちくじょう施設しせつおよ設備せつびかんするガイドライン」とほぼおな基準きじゅんとなっている[6]

言葉ことば

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一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん共同通信社きょうどうつうしんしゃの『記者きしゃハンドブック』では、「屠殺とさつじょう」「屠畜場とちくじょう」を「食肉しょくにく処理しょりじょう」にいいかえるとしている。また、「屠殺とさつ」「ほふ畜」について、業務ぎょうむじょう食肉しょくにく処理しょりでないものをしている場合ばあいは、「処分しょぶん」「薬殺やくさつ」など文脈ぶんみゃくによっていいかえると紹介しょうかいしている。

また、漫画まんがでも、当初とうしょ表現ひょうげんからいいかえられている。

  • 北斗ほくとこぶし』:「ブタは屠殺とさつじょうけ!」→「ブタはブタ小屋こやけ!」→「ブタとはなはない!!」
  • おおかみ星座せいざ』:「まるで屠殺とさつじょうにひかれるヒツジのようだな」→「すっかりうちひしがれているようだな」

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 田辺たなべすすむ太郎たろう牛肉ぎゅうにくろん』ポプラ新書しんしょ、2016ねんISBN 978-4-591-15246-1 
  2. ^ 厚労省こうろうしょう食品しょくひん衛生えいせい調査ちょうさかいちちにく水産すいさん食品しょくひん部会ぶかい(1999ねん平成へいせい11ねん〉8がつ31にち
  3. ^ だい5かい部落ぶらく問題もんだいフィールドワーク 関西大学かんさいだいがく通信つうしん205ごう、1992ねん1がつ10日とおか
  4. ^ 畜場ちくじょう繋留けいりゅうしょにおける家畜かちく飲用いんようすい設備せつび設置せっちじょうきょう”. 2020ねん10がつ11にち閲覧えつらん
  5. ^ 畜場ちくじょう施設しせつおよ設備せつびかんするガイドライン”. 2020ねん10がつ11にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d e 1.食肉しょくにく処理しょり施設しせつ現状げんじょう”. 公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん日本にっぽん食肉しょくにく生産せいさん技術ぎじゅつ開発かいはつセンター. 2021ねん2がつ19にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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