熊くま肉にく

熊くま肉にく（くまにく）とは、クマからとれる肉にく。熊くま料理りょうりの材料ざいりょうとなる。熊くま肉にくは古来こらい、食用しょくようとされてきた。狩猟しゅりょうによってしか得えられない野生やせいの肉にくであるため、大量たいりょうには出回でまわらない食材しょくざいである。全身ぜんしんが食しょくされる。旨味うまみが強つよいとされる。

食材しょくざい

特徴とくちょう

クマは全身ぜんしんを食用しょくようにでき、肉にくが少量しょうりょうであっても旨味うまみが強つよい。汁しるものには脂身あぶらみのある部位ぶいのほうが良よいスープが出でる。

東京家政学院大学とうきょうかせいがくいんだいがく客員きゃくいん教授きょうじゅの宗像むねかた伸子のぶこは、熊くま肉にくを調理ちょうりし食用しょくようした感想かんそうとして、脂身あぶらみは融点ゆうてんが低ひくく、甘あまみと旨味うまみが強つよかったこと、肉にくが少量しょうりょうであっても旨味うまみがスープに溶とけ出だし、野菜やさいにも味あじがよく染しみ込こんだことを述のべている。石川いしかわ県けんの白山はくさん商工会しょうこうかいによると、寒さむい地方ちほうの熊くまは、その肉にくは脂肪しぼう部分ぶぶんが多おおいが、サラッとした脂あぶらが特徴とくちょうだとしている。

栄養えいよう価か

熊くま肉にく（狩猟しゅりょう、生せい）

100 gあたりの栄養えいよう価か
エネルギー	161 kJ (38 kcal)
炭水化物たんすいかぶつ	0.00 g
食物しょくもつ繊維せんい	0.0 g
脂肪しぼう	8.30 g
タンパク質たんぱくしつ	20.10 g
ビタミン
ビタミンA相当そうとう量りょう	(0%) 0 µg
チアミン (B1)	(14%) 0.160 mg
リボフラビン (B2)	(57%) 0.680 mg
ナイアシン (B3)	(21%) 3.200 mg
ビタミンC	(0%) 0.0 mg
ミネラル
カルシウム	(0%) 3 mg
リン	(22%) 151 mg
鉄分てつぶん	(51%) 6.65 mg
他たの成分せいぶん
水分すいぶん	71.20 g
ビタミンA効力こうりょく	0 IU
単位たんい µg = マイクログラム (英語えいご版ばん) • mg = ミリグラム IU = 国際こくさい単位たんい
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける 成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI) の割合わりあい。 出典しゅってん: USDA栄養えいようデータベース（英語えいご）

熊くま肉にく（狩猟しゅりょう、煮込にこみ調理ちょうり）

100 gあたりの栄養えいよう価か
エネルギー	259 kJ (62 kcal)
炭水化物たんすいかぶつ	0.00 g
食物しょくもつ繊維せんい	0.0 g
脂肪しぼう	13.39 g
飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん	3.540
一価いっか不ふ飽和ほうわ	5.660
多た価あたい不ふ飽和ほうわ	2.400
タンパク質たんぱくしつ	32.42 g
ビタミン
ビタミンA相当そうとう量りょう	(0%) 0 µg
チアミン (B1)	(9%) 0.100 mg
リボフラビン (B2)	(68%) 0.820 mg
ナイアシン (B3)	(22%) 3.350 mg
ビタミンB6	(22%) 0.290 mg
葉酸ようさん (B9)	(2%) 6 µg
ビタミンB12	(103%) 2.47 µg
ビタミンC	(0%) 0.0 mg
ビタミンD	(0%) 0.0 µg
ビタミンE	(3%) 0.49 mg
ビタミンK	(2%) 1.8 µg
ミネラル
ナトリウム	(5%) 71 mg
カリウム	(6%) 263 mg
カルシウム	(1%) 5 mg
マグネシウム	(6%) 23 mg
リン	(24%) 170 mg
鉄分てつぶん	(83%) 10.73 mg
亜鉛あえん	(108%) 10.27 mg
他たの成分せいぶん
水分すいぶん	53.55 g
ビタミンA効力こうりょく	0 IU
ビタミンD	0 IU
砂糖さとう	0.00 g
コレステロール	98 mg
単位たんい µg = マイクログラム (英語えいご版ばん) • mg = ミリグラム IU = 国際こくさい単位たんい
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける 成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI) の割合わりあい。 出典しゅってん: USDA栄養えいようデータベース（英語えいご）

熊くま肉にくには身体しんたいを温あたためる効果こうかや、滋養じよう効果こうかが高たかいとされる。また、熊くま肉にくには美肌びはだ効果こうかがあるといわれるコラーゲンが含ふくまれ、特とくに中華ちゅうか料理りょうりの高級こうきゅう食材しょくざいである「熊くま掌てのひら」は豊富ほうふにコラーゲンが含有がんゆうされ、美容びように効果こうかがあると珍重ちんちょうされる。

白山しろやま商工会しょうこうかいによると、熊くま鍋なべは、動物どうぶつ性せい蛋白質たんぱくしつと食物しょくもつ繊維せんいやビタミンなどが同時どうじに摂取せっしゅできるとしている。

アメリカにおける熊くま料理りょうり

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは先住民せんじゅうみんを除のぞいても開拓かいたく時代じだいから熊くま肉にく（主おもにグリズリーとアメリカクロクマ）が食たべられていたが、熊くま肉にくを食たべるには適切てきせつな方法ほうほうで捕獲ほかく・調理ちょうりされる必要ひつようがあり、動物どうぶつ学者がくしゃのアーネスト・シートンによると「穀物こくもつ、植物しょくぶつの根ね、果実かじつなどを食たべていて、最後さいごに苦痛くつうを与あたえずに素早すばやく屠殺とさつして適切てきせつに洗浄せんじょうしたもの」が理論りろん上じょう最高さいこうの味あじになるという。

また、シートンの書籍しょせき『シートン動物どうぶつ誌し（原題げんだい：LIVES OF GEME ANIMALS）』によると熊くま肉にく料理りょうりに以下いかのようなものが紹介しょうかいされている。

• クマの油あぶらで揚あげたビスケット　-　ビスケット自体じたいは通常つうじょうの揚あげビスケットだが、揚あげる際さいにクマの油あぶら（脂身あぶらみをバターのように溶とかす）で揚あげる。腹持はらもちがよい。
• クマのハムの燻製くんせい　-　クマを殺ころした後のち、通常つうじょうのハムと同おなじく下しも処理しょりをして塩漬しおづけと燻製くんせいにする。珍味ちんみの一ひとつだが熟練じゅくれん者しゃが材料ざいりょうに良よいクマを選えらばないとひどい味あじになる。

これ以外いがいにメジャーではないが、ホッキョクグマもアラスカ周辺しゅうへんなどで食たべられたことがあったが、（特とくに肝臓かんぞうが）有毒ゆうどく説せつが古ふるくからあり、実際じっさいに食たべた人ひとで激はげしい頭痛ずつう、めまい、下痢げり、手足てあしの皮かわがむけたという報告ほうこく例れいがあり、先住民せんじゅうみんたちもホッキョクグマ肉にく自体じたいは食たべても肝臓かんぞうは食たべないで犬いぬに与あたえたり、犬いぬにもホッキョクグマ肉にくを一切いっさい食たべさせないようにしていたところがあったという。

中国ちゅうごくにおける熊くま料理りょうり

中国ちゅうごくでは「熊くま掌てのひら」が古ふるくから珍重ちんちょうされ、龍りゅう肝きも、鳳おおとり髄ずい、豹ひょう胎、鯉こい尾お、猩唇、鴞炙、酥酪蝉せみとともに「周しゅうの八はち珍ちん」と称しょうされた。

「香こう熊ぐま」は煮込にこんだ熊くま肉にくをマッチ箱ばこほどの大おおきさに切きり、濃こいめの香こう羹あつもの（こうかん）をかけた料理りょうりである。

日本にっぽんにおける熊くま料理りょうり

山やま肉にく料理りょうり店てんの鍋なべもの（日本にっぽん）

熊くま鍋なべ（日本にっぽん）

伝統でんとう的てきな日本にっぽんのジビエ料理りょうりとして食しょくされるほか、薬くすり膳ぜんの材料ざいりょうとしても用もちいられる。

熊くま肉にく料理りょうりはツキノワグマやヒグマが生息せいそくする地域ちいきの料理りょうりでもあり、かつて、熊くま肉にくはその土地とちだけで消費しょうひされるもので、主おもな料理りょうりは煮物にものや熊くま汁じるである。

熊くま肉にく（日本にっぽん）

大だい日本にっぽん猟りょう友とも会かいによると、日本にっぽんでは、熊くま肉にくは北海道ほっかいどうから中部ちゅうぶまでの一部いちぶ地域ちいきで食たべられているところ、クマは年間ねんかん1千せんから2千せん頭とうが捕獲ほかくされており、その内うちの1割わり程ほどが食用しょくようとなる。

旬しゅん

日本にっぽんでは熊くまは年中ねんじゅう獲えれるが、クマの肉にくが最もっとも美味うまいのは、巣す穴あなで冬眠とうみん中なかの3、4歳さいの個体こたい、または冬眠とうみん直前ちょくぜんとされている。これはツキノワグマ、ヒグマに関かかわらず、秋あきの木この実み（ドングリなど）を食しょくし、冬眠とうみんのための脂肪しぼうがのっているからである。

次つぎに美味おいしいのは4月がつ下旬げじゅん、“春はるクマ狩かり”の頃ころのものである。夏なつのクマは、痩やせて脂肪しぼうが乏とぼしいうえに野生やせい特有とくゆうの匂においが強つよく不味まずいとされる。

熊くま肉にくは野生やせいの肉にくであるため、臭くさみが強つよいと思おもわれがちだが、原因げんいんは季き節ぶしによって主おもに食たべる餌えさが違ちがうことと、狩猟しゅりょう後ごの処理しょり（血ち抜ぬきなど）の仕方しかたで、個体こたい差さがでる。熊くまを狩猟しゅりょうしたのち、すぐに締しめて解体かいたいするなど、一定いっていの技術ぎじゅつがないと、臭くさみが出でる。京都きょうと（滋賀しが）のある山荘さんそうは、「肉にくの柔やわらかさや匂においまで変かわるため、仕留しとめ方かたや解体かいたい方法ほうほうが上手じょうずな信頼しんらいの置おける猟師りょうしからしか仕入しいれない」と語かたり、京きょう風ふうの出汁だしで熊くま肉にくを食しょくする。

狩猟しゅりょう

日本にっぽんにおいてクマ類るいは家畜かちく化かされていないため、野生やせいのクマを狩猟しゅりょう、捕獲ほかくして入手にゅうしゅする。

「狩猟しゅりょう」、「マタギ」、および「クマの胆きも」も参照さんしょう

猟期りょうき

岐阜ぎふ県けん白山はくさん麓ふもとでは、むかしは春はるに熊くま猟りょうを行おこなっていたが、現在げんざいではクマは保護ほご獣じゅうとなっており、11月15日にちから2月がつ15日にちまでの猟期りょうきのみ狩かりが行おこなわれる。クマの頭数とうすうが増ふえすぎた場合ばあいは春はるの駆除くじょの許可きょかがある。

自治体じちたいによっては通年つうねん禁猟きんりょうとなっていたり、逆ぎゃくに、春はるの猟りょうを解禁かいきんする向むきもある。

解体かいたい

以下いかはヒグマの解体かいたい法ほうの一いち例れいである。

(1) 皮かわを剥はぐ - ヒグマを仰向あおむけにし、股間こかん部ぶから首くびに向むけて、体からだの中心ちゅうしんに沿そいナイフを入いれて、皮かわを剥はぐ。同様どうように手足てあしの皮かわを剥はぐ。手首てくび・足首あしくびの関節かんせつの部位ぶいで手足てあしを外はずす。

(2) 腹部ふくぶ・胸部きょうぶを開ひらく - 胃いや腸ちょうを傷きずつけぬよう腹部ふくぶを開ひらく。胸部きょうぶは、肋骨あばらぼねの根元ねもとをなたやのこぎりを使用しようして開ひらく。

(3) 内臓ないぞうを取とり出だす - 首くびから食道しょくどうを取とり出だし、外そとに引ひき出だす。横隔膜おうかくまくは骨ほねに沿そって切きり取とり、残のこりの内臓ないぞうを引ひき出だす。肛門こうもん部ぶは肛門こうもんの回まわりをくり抜ぬくか、なたで骨ほねを割わって取とり出だす。

(4) 熊くまの胆い（胆たんのう）は肝臓かんぞうの脇わきにあり、ナイフで慎重しんちょうに剥はがし、胆汁たんじゅうが漏もれぬよう胆きも管かんをひもできつく縛しばって切きり取とる。 — 北海道ほっかいどう環境かんきょう生活せいかつ部ぶ環境かんきょう局きょく自然しぜん環境かんきょう課か

アイヌが儀式ぎしき（イヨマンテ）で行おこなう解体かいたい法ほうも現代げんだいに伝承でんしょうされている。

調理ちょうり法ほう

獣しし臭しゅう

熊くま肉にくに限かぎらず、獣肉じゅうにくには臭くさみがある。幾いくつかの地方ちほうでは、調理ちょうりの際さいに、臭におい消けしのために、醤油じょうゆではなく、味噌みそで味付あじつけする。白川しらかわでは、風味ふうみが変かわりやすいため熊くま鍋なべに醤油じょうゆは用もちいず、臭におい消けしに赤あかみそと白しろみそを合あわせる。また、臭におい消けしの効果こうかがあるねぎや唐辛子とうがらしなどの香辛料こうしんりょうを具つぶさに用もちいる工夫くふうも行おこなう。そして、鍋なべに肉にくを入いれた後のちは、鍋なべの蓋ぶたをせず、匂においが残のこらぬようにしている。

肉にくの硬かたさ

熊くま肉にくは熱ねつを通とおすとギュッと縮ちぢまり、肉質にくしつがとても硬かたくなる。東京家政学院大学とうきょうかせいがくいんだいがく客員きゃくいん教授きょうじゅの宗像むねかた伸子のぶこは、「メニューを考かんがえる時ときには、柔やわらかくなる調理ちょうり法ほうを取とり入いれることがポイントで、叩たたいたり煮込にこんだりするだけでなく、酢すやタンパク質たんぱくしつ分解ぶんかい酵素こうその強つよい野菜やさい、果物くだものを利用りようするとよい」とし、トマトやキウイフルーツなどを用もちいている。一般いっぱん的てきには、料理りょうり酒しゅを用もちいて肉にくを柔やわらかくする。また、砂糖さとうには牛肉ぎゅうにくをやわらかくする効果こうかがあるが、熊くま肉にくに砂糖さとうを用もちいるとますます肉にくが固かたくなる。

主おもな料理りょうり

各地かくちの主おもな料理りょうり

• 北海道ほっかいどう - 各地かくちに熊くま（羆ひぐま）料理りょうりの店みせがある。根菜こんさい類るいをいれた味噌みそ仕立したててスープの熊くま鍋なべもある。
• 青森あおもり県けん - 鰺あじヶ沢さわ町まちに“赤石あかしまたぎ”の熊くま汁じるが伝つたわる。マタギの調理ちょうりは、「肉にくは、串くしに刺さして火ひで焼やいたり、味噌みそ煮ににする」、「内臓ないぞうは、脳味噌のうみそを混まぜて和あえて食たべる」、「匂におい消けしの為ためにも、ねぎや唐辛子とうがらしなどの香辛料こうしんりょうを入いれる」となっている。
• 岩手いわて県けん - 宮古みやふる市しにマタギ料理りょうりが伝つたわる。
• 秋田あきた県けん - 仙北せんぼくや阿仁あに地方ちほうには、マタギの村むらが多おおく、マタギの伝統でんとう料理りょうりとして“ナガセ汁じる”（骨ほね付つき肉にくの鍋なべ）、“熊くまかやき”、モチグシ（串焼くしやき）という料理りょうりが伝つたわる。伝統でんとう的てきな熊くま鍋なべは、熊くま肉にくを大根だいこんと味噌みそ仕立したてで煮にたものであり、熊くまかやきとは、それに豆腐とうふを入いれ、しょうゆで味付あじつけしたものである。鹿角かづの市しではきりたんぽとともに熊くま鍋なべを食くえしていたと伝つたわる。南部なんぶ藩はんの殿様とのさまが、湯瀬ゆぜ温泉おんせん（秋田あきた県けん）に湯治とうじした際さいに、熊くま狩かりをし熊ぐま鍋なべを食くえしたと伝承でんしょうされている。現代げんだい風ふうの熊くま鍋なべは、熊くま肉にくと大根だいこん以外いがいに、ゼンマイ、タケノコ、ブナハリタケなど山菜さんさいを入いれ、自家製じかせいの味噌みそで煮にる。マタギの「熊くま鍋なべ」と「熊くまかやき」は、秋田あきた県けんを代表だいひょうする鍋なべ料理りょうりに数かぞえられている。
• 山形やまがた県けん - 小国おぐに町まちでは、小玉こだま川熊かわくままつりにおいて、伝統でんとう的てきな熊くま猟りょうの模擬もぎ演技えんぎのあとに、熊くま汁じるが供きょうされる。
• 神奈川かながわ県けん - 清川きよかわ村むらに熊くま肉にく料理りょうりが伝つたわる。
• 石川いしかわ県けん - 白山はくさん市し。この地ちの熊くま汁じる鍋なべは、熊くま肉にく、ゴボウ、サトイモ、豆腐とうふなどを用もちいている。また、白山はくさん麓ふもとでは、狩猟しゅりょうした熊くま肉にくが新あたらしいうちは刺身さしみで食たべ、煮物にもの（熊くま煮に）や鍋なべ（熊くま鍋なべ）、みそ汁しる（熊くま汁じる）を食しょくす。鍋なべの具ぐは、アザミやススタケ（チシマザサの可か食しょく部ぶ）などの山菜さんさいや土地とちの野菜やさい（主おもに根菜こんさい類るい）などである。
• 長野ながの県けん - 栄さかえ村むらの秘境ひきょう・秋山あきやま郷さとなどに、熊くま肉にく料理りょうりが伝つたわる。
• 岐阜ぎふ県けん - 白川しらかわ村むらでは熊くま鍋なべに赤味噌あかみそと白味噌しろみその合あわせ味噌みそを用もちいる。かつて、熊くま肉にくはその土地とち（地区ちく）だけで消費しょうひされるもので、主おもな料理りょうりは煮物にものや熊くま汁じるであったが、白川郷しらかわごうでは20世紀せいき終おわりごろに「熊くま鍋なべ」を開始かいしし、これを郷土きょうど料理りょうりとして各かく店舗てんぽが行おこなうようになった。

東京とうきょう、大阪おおさか、名古屋なごや、京都きょうとという日本にっぽんの都市としでも珍めずらしいもの（珍味ちんみ）として取とり扱あつかう飲食いんしょく店てんが幾いくつかある。高級こうきゅう食材しょくざいとなっている場合ばあいもある。また、江戸えど時代じだいから続つづく店みせもある。

主おもな新あたらしい料理りょうり

• 熊くまそば - 宮城みやぎ県けん栗原くりはら市し栗駒くりごま地区ちくで見みられる。つゆはクマの骨ほねと内臓ないぞうを煮込にこむ。
• 熊くまカレー - 北海道ほっかいどうのヒグマの肉にくを用もちいた辛口からくちのカレー。通信つうしん販売はんばいもされる。
• 熊くま丼どんぶり - 牛丼ぎゅうどんに似にたもの。“マタギの里さと”がある栃木とちぎ県けん日光にっこう市し、白山しろやま麓ふもとの石川いしかわ県けん白山はくさん市しなどで見みられる。
• 熊くま肉にくの燻製くんせい - 「くまくん」の商品しょうひん名めいで石川いしかわ県けん白山はくさん市しで作つくられる。柔やわらかめに燻製くんせいされた加工かこう肉にく。

缶詰かんづめ

熊くま肉にくは缶詰かんづめに加工かこうされることもある。

• 缶詰かんづめの例れい
• 
  熊くま肉にくの大和やまと煮にの缶詰かんづめ（北海道ほっかいどう）
• 
  熊くま肉にくの缶詰かんづめ（北海道ほっかいどう）

シベリア諸しょ民族みんぞく

狩猟しゅりょうと信仰しんこう

シベリアでは森林地帯しんりんちたい（タイガ）にヒグマが棲息せいそくしており、エヴェンキ族ぞくなどによって狩猟しゅりょう、儀礼ぎれい、崇拝すうはいの対象たいしょうになっている。特とくにエヴェンキ族ぞくやギリヤーク族ぞく（ニヴヒ族ぞく）のクマ祭さいが知しられている。北方ほっぽうツングース系けい民族みんぞくのエヴェンキ族ぞくやエヴェン族ぞく（ラムート族ぞく）には、森もりで得えた獲物えもの（特とくに食肉しょくにく獣じゅう）を一人ひとりで消費しょうひしてはならないニマトという慣習かんしゅうがある。

エヴェンキ族ぞく

エヴェンキ族ぞくでは普段ふだんからクマ猟りょうは行おこなわれており、クマと遭遇そうぐうした時点じてんで行おこなわれ、1人ひとりでクマを倒たおした者ものは伝承でんしょうとして語かたり継つがれる場合ばあいもある。一方いっぽう、クマ祭さいのための儀礼ぎれい的てきな狩猟しゅりょうはクマ穴あなを探査たんさし、集落しゅうらくの複数ふくすう人じんでクマ穴あなをふさぎ狩猟しゅりょうを行おこなう。

• スィム地方ちほうの儀礼ぎれいでは、クマ祭さいの2日にち目めに熊くま肉にくの脂肪しぼうを料理りょうりしたテケミン（東部とうぶではセヴェン）が用意よういされる。
• ポドカーメンナヤ ・ツングースカ地方ちほうのクマ祭さいではテケミヴナという熊くま肉にくの脂肪しぼう料理りょうりが饗宴きょうえんに出だされる。
• アルダノ＝ウチュル地方ちほうの儀礼ぎれいでも、熊くま肉にくを煮にたものや揚あげたものが饗宴きょうえんに出だされ、脂肪しぼう料理りょうりのセヴェンも用意よういされる。

注意ちゅうい点てん

トリヒナ

クマの生食なましょくは、旋毛せんもう虫むし症しょう（トリヒナ）の感染かんせん源げんとなる。1897年ねんにサロモン・アウグスト・アンドレーら、スウェーデンの北極ほっきょく探検たんけん隊たいが遭難そうなん死ししたのは、ホッキョクグマの生肉せいにくによる旋毛せんもう虫むし症しょうが原因げんいんとされている。日本にっぽんでも旋毛せんもう虫むし症しょうの集団しゅうだん発生はっせい例れいはあり、1974年ねんの青森あおもり県けん岩崎いわさき村むら、1981年ねん12月から1982年ねん1月がつまでの三重みえ県けん四日市よっかいち市し（京都きょうと府ふおよび兵庫ひょうご県けん産さん）でのツキノワグマの例れいや、1979年ねんの北海道ほっかいどう札幌さっぽろ市しでのヒグマのルイベ（冷凍れいとう肉にく）、2019年ねんの北海道ほっかいどう札幌さっぽろ市しの例れいがある。冷凍れいとう処理しょりをしても寄生虫きせいちゅうが死滅しめつせず潜ひそんでいる場合ばあいがあるため、熊くま肉にくの生食なましょくは医学いがく上じょうの禁忌きんきと考かんがえられる。

一方いっぽう、2011年ねん3月がつに発生はっせいした福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょ事故じこの影響えいきょうにより、同年どうねん12月がつ、福島ふくしま県けん中通なかどおりで捕獲ほかくされたニホンツキノワグマから、暫定ざんてい規制きせい値ちを超こえる放射ほうしゃ性せいセシウムが検出けんしゅつされ、出荷しゅっか停止ていしとなった。その後ご、他た地域ちいきでも基準きじゅん値ちを超こえた個体こたいが見みつかり、山形やまがた、岩手いわて、宮城みやぎ、福島ふくしま、群馬ぐんま、新潟にいがたの6県けんで出荷しゅっかが規制きせいされた。一部いちぶの地域ちいきでは、伝統でんとうの食しょく文化ぶんかが絶たえてしまうことが懸念けねんされている。

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの獣肉じゅうにく食しょくの歴史れきし
• しし鍋なべ（猪いのしし）
• もみじ鍋なべ（鹿しか肉にく）
• ジビエ
• マタギ
• 熊くまの胆い
• 熊くまの手て

外部がいぶリンク

• 熊くま鍋なべの例れい - ウェイバックマシン（2012年ねん3月がつ16日にちアーカイブ分ぶん） - 岐阜ぎふ県けん白川しらかわ村むら「白水しろみず園えん」（47ニュース）