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出汁だし

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

出汁だし(だし)は、出汁だし(にだしじる)のりゃく[1]どう植物しょくぶつせい食品しょくひん旨味うまみ(うまみ)成分せいぶんみず溶出ようしゅつさせたもの[1]。「じる」(だしじる)、「にだし」ともいう[1][2]

くに地域ちいきにより、かなりことなっている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

料理りょうりおもうまくわえるためにもちいられる。うま成分せいぶんさかなにく野菜やさいキノコ海藻かいそうから抽出ちゅうしゅつし、栄養素えいようそとしてはアミノ酸あみのさん核酸かくさんなどからり、そのあまさんなどのあじくわえる。また出汁だしかおをもあたえる。

しょく文化ぶんかごとに出汁だしはかなりことなっている。ただし栄養素えいようそてきにはグルタミン酸ぐるたみんさんイノシンさんグアニルさんなどのていあじせいヌクレオチドふくまれており、そうした栄養素えいようそふく食材しょくざいえらばれている。

よう東西とうざいわず、出汁だしというものはある。

日本にっぽん料理りょうりにおいて鰹節かつおぶし昆布こぶ煮干にぼし椎茸しいたけ野菜やさいさかなアラなど様々さまざまなだしがある[3]。だしは「あじ基礎きそ」となっている。[注釈ちゅうしゃく 1]

西洋せいよう料理りょうりでは、伝統でんとうてきには、だしにはうしにわとりさかな野菜やさいこうそうなどをもちいる。たとえばフランス料理りょうりでは「フォン」というだしがあり、「フォン」はフランス語ふらんすごで「そこ」「根底こんてい」という意味いみであり、やはりあじ基礎きそとなっている。

なお出汁だし粉末ふんまつひとしにした製品せいひんもある。西洋せいよう料理りょうり中華ちゅうか料理りょうり汁物しるものスープ)に使つかわれるブイヨンなども「洋風ようふうだし」や「中華ちゅうかだし」などとばれることがあり、これらにたいしてとく日本にっぽん料理りょうりのだしをぶときは「和風わふうだし」とばれる。

日本にっぽん料理りょうり[編集へんしゅう]

だしをとるためのけずぶしけずられた状態じょうたい鰹節かつおぶし)。そもそもだしに使つかわれる鰹節かつおぶし西日本にしにほん東日本ひがしにっぽんではかなりことなる。
西日本にしにほんのダシのメインとなる昆布こぶ(の乾物かんぶつ

だしは日本にっぽん料理りょうり基本きほんである[5]。ただし、鰹節かつおぶし昆布こぶのような濃厚のうこうなだしじるは、元々もともと富裕ふゆうそう文化ぶんかで、庶民しょみんそうはいわいごとなどのハレののぞいて、さかな野菜やさい煮汁にじるからしょうじる淡白たんぱくなだしじる基本きほんとしており、大正たいしょうから昭和しょうわ時代じだいにかけての家庭かてい料理りょうりほんには、(庶民しょみんまったらないことを前提ぜんていとして)鰹節かつおぶし昆布こぶ使つかっただしじるかたかなら記載きさいされるほど、庶民しょみんには縁遠えんどおいものだった[6]。この「だし」が、西日本にしにほん関西かんさい)と東日本ひがしにっぽん関東かんとう)ではかなりことなっている[5]。そもそも、関西かんさい関東かんとうでだしに使つかわれている素材そざいことなっている[5]。たとえば、鰹節かつおぶしひとつをとりあげても、関西かんさい関東かんとうではちがっている[5]関西かんさいではカビつけをしないかつおのあらぶしこのまれ、あらたかしあぶせんじかおりがのこってスッキリとしたかおりと酸味さんみ特徴とくちょうである。それにたいして関東かんとうでは、江戸えど中期ちゅうきごろからカビつけした枯節がこのまれるようになったのだが、枯節というのは甘味あまみがあって上品じょうひんかおりが特徴とくちょうで、よりまろやかなあじわいがたのしめるという特徴とくちょうがある[5]高級こうきゅうあらぶしや枯節にくらべ、さばぶしやムロアジぶしやす購入こうにゅうできたが、庶民しょみんそうけず手間てまきらって、けずぶし乾物かんぶつ購入こうにゅうしていた[7]。だしは日本にっぽん料理りょうり基本きほんでありさまざまな料理りょうり使つかわれているわけで、その「だし」が素材そざいからちがうため、当然とうぜん結果けっかとして関西かんさい料理りょうり関東かんとう料理りょうりにもちがいがまれている[5]。なお庶民しょみんそう日常にちじょうてきに、鰹節かつおぶし昆布こぶでだしじるるようになるのは、戦前せんぜん明治めいじ末期まっきから普及ふきゅうした化学かがく調味ちょうみりょう安全あんぜんせい問題もんだいされた、戦後せんごの1970年代ねんだいごろからとわれている[8]

関東かんとうではだしじるを「つゆ」や「おつゆ」とぶことがある。それにたいして、関西かんさいでは「だし」、もしくは「おだし」と[5]。これはたんなる "方言ほうげんちがい" や "名称めいしょうちがい" ではなく、それらの言葉ことば意味いみしているニュアンスもことなっており、関東かんとう関西かんさいそれぞれの味付あじつけのかんがかたや、だしの活用かつようほうもかなりことなっている[5]

関東かんとうのつゆ
関東かんとうのつゆはつよあじしており、《味付あじつけ》が基本きほんである[5]関東かんとうの「おつゆ」は、さかな由来ゆらいのものがメインで、鰹節かつおぶしかおりが特徴とくちょうであり、さかなかおり(にお)にパンチがあるため、そこにわせるしょうゆも力強ちからづよいものがえらばれる[5]関東かんとうでは昆布こぶ使つかわないことすらある。
関西かんさいの「おだし」
関西かんさいの「おだし」は素材そざいの《風味ふうみ》をかすための下地したじ[5]関西かんさい昆布こぶをメインにして、煮干にぼししやかつおなどを使つかったみあわせのだしが特徴とくちょうであり、あくまで風味ふうみあじわい)がメインのためのものであり、しょうゆの使用しようはほんの少量しょうりょうふうあじつけにとどめる[5]

用途ようと活用かつようほう[編集へんしゅう]

出汁だし自動じどう販売はんばい

だしは煮物にものおでんなどのなべ料理りょうり麺類めんるいなど様々さまざまもちいられる。また、もの味付あじつけに利用りようしたり、などをって二杯酢にはいずなどべつ調味ちょうみりょうとしたり、一夜漬いちやづけなどの調味ちょうみ使用しようすることがある。なべ料理りょうりでは、出汁だしれて各種かくしゅざいからも出汁だしあじふかめ、最後さいご米飯べいはん麺類めんるいれてべる、いわゆる「〆(しめ)」づくりに使つかわれる。讃岐さぬきうどんられる香川かがわけんでは、つゆの作成さくせいのために、だしを醤油じょうゆ抽出ちゅうしゅつさせた「だし醤油じょうゆ」がかれる。

明治めいじ時代じだい以降いこう西洋せいよう中国ちゅうごく料理りょうり影響えいきょうもあって肉類にくるいなど食材しょくざいはばひろがり、鶏肉とりにくスッポンウミガメ豚骨とんこつうしこつなどが使つかわれることもある。

後述こうじゅつする西洋せいよう料理りょうりのだしなどが数時間すうじかん程度ていどかかるのにたいして、昆布こぶ鰹節かつおぶししでだしをとるのは、すうふんすうじゅうふん短時間たんじかんである。家庭かていでの和風わふう出汁だしづくりは手間てまがかかるため、食品しょくひんメーカーは簡単かんたんせる出汁だしりバッグや、顆粒かりゅう粉末ふんまつ液状えきじょうのインスタント出汁だし販売はんばいしている。外食がいしょく産業さんぎょう食品しょくひんメーカーでは素材そざい抽出ちゅうしゅつ方法ほうほう独自どくじ工夫くふうをした出汁だし使つかうことがおおい。とく飲食いんしょくてんでは、ダシのノウハウは一種いっしゅの "生命せいめいせん" であり、そのつくかたレシピ)を秘密ひみつにすることがおおい。

精進しょうじん料理りょうりでは昆布こぶ椎茸しいたけほかに、大豆だいずモヤシろくじょう豆腐とうふ塩蔵えんぞうした乾燥かんそう豆腐とうふ)などももちいられる。

だしをったのち昆布こぶ鰹節かつおぶしといっただしがらも、醤油じょうゆとうあじけ、佃煮つくだにふりかけなどに利用りようされることがある。

日本にっぽん国外こくがいにおいても、日本にっぽんふうのだしを素材そざいあじかくあじとして西洋せいよう料理りょうり応用おうようするこころみがおこなわれている[9]

日本にっぽん料理りょうりでは吸物すいものもちいる一番いちばんだしや、下味したあじけたり汁物しるものもちいるばんだしなど用途ようとによってだしを使つかける[3]

種類しゅるい[編集へんしゅう]

だしには以下いかのようなものがある。

  • あわせだし - 複数ふくすう食品しょくひんからとっただし。とく昆布こぶ鰹節かつおぶしのあわせだしが使つかわれる。
    • 一番いちばんだし - おも吸物すいものもちいる。なべみず2リットルと昆布こぶ20グラムをれてて、沸騰ふっとう直前ちょくぜん昆布こぶす。鰹節かつおぶし30グラムをれたらめる。鰹節かつおぶししずんだら[3]
    • ばんだし - 汁物しるものとう様々さまざまもちいる。なべみず2リットルと、一番いちばんだしでもちいた昆布こぶ鰹節かつおぶしれて沸騰ふっとうしたらめてす。おいがつおをくわえる場合ばあいもある[3]
  • 精進しょうじんだし - にくきんじた、精進しょうじん料理りょうり使つかわれるだし。昆布こぶ椎茸しいたけかんぴょう大豆だいず小豆あずきなどをみずにつけたりたりしてる。
  • 八方はっぽうだし - だしにしおあじをつけたもの。醤油じょうゆみりんあじける場合ばあいもある。下味したあじけたり煮炊にたきにもちいる[3][2]
  • ラーメンじるのだし - ラーメン出汁だし店舗てんぽごとにおおきくことなる。なに使つかうかは、通常つうじょう各店かくてん極秘ごくひ事項じこうであり「企業きぎょう秘密ひみつ」である。[注釈ちゅうしゃく 2]

また地域ちいきによって以下いかのようなものがある。まず地域ちいきめいとだしのげ、説明せつめいする。

  • 九州きゅうしゅうアゴだし - 「アゴ」とは九州きゅうしゅう言葉ことばトビウオのことで、トビウオを乾燥かんそうさせてす。あごだしは、上品じょうひんでスッキリとした甘味あまみがあり、あじふか[10]。だしのなかでも高級こうきゅうひんだとも[10]あごだしは、昆布こぶ使つかわない鹿児島かごしまけん食品しょくひん業界ぎょうかいは、様々さまざま材料ざいりょうから出汁だしをとるしょく文化ぶんかのブランドはかる「出汁だし王国おうこく鹿児島かごしま」プロジェクトを展開てんかいしている[11]
  • 沖縄おきなわ沖縄おきなわ料理りょうりのだし - 沖縄おきなわ料理りょうりでは、かつおだしと昆布こぶだしのほかぶたばらにくじるしたものをぶただしとしてもちいる。
  • 関東かんとう)"関東かんとうふう"そばつゆのだし - おも関東かんとうでの蕎麦そば使つかうだし。沸騰ふっとうしたのなかに、鰹節かつおぶしソウダガツオけずぶしなどをれてそのまま1あいだほどしてからしぼす。このだしに、醤油じょうゆ砂糖さとうのみりんのかえしれて、つゆとなる[12]
  • 関西かんさい)"関西かんさいふう"うどんつゆのだし - おも関西かんさいでのうどんで使つかうだし。昆布こぶてしばらく沸騰ふっとうしてからす。鰹節かつおぶしにサバ、ウルメイワシけずぶしのブレンドをくわえてれてしてからしぼる。このだしに、醤油じょうゆ砂糖さとうとみりんをれて、つゆとなる[12]

近年きんねんは、高血圧こうけつあつ生活せいかつ習慣しゅうかんびょう予防よぼうするため、料理りょうりちゅう塩分えんぶんらし、わりに出汁だし旨味うまみ満足まんぞくかん維持いじするみがひろがっている。青森あおもりけんすすめる「だしかつ」プロジェクトがそのいちれいである[13]

昆布こぶカツオ節かつおぶしはいらない山間さんかんでは、椎茸しいたけ大根だいこんのほか、淡水魚たんすいぎょ煮干にぼしし・タニシ・イナゴ・にく出汁だし使つかわれていた。囲炉裏いろり雑炊ぞうすい・すいとんがつくられ、出汁だしがらもとしてべられていた。

栄養素えいようそについて[編集へんしゅう]

出汁だしをとるということ(「出汁だしく」ともいう)は、栄養素えいようそ着目ちゃくもくして栄養えいようがくてき大雑把おおざっぱ説明せつめいすると、つぎのような成分せいぶん栄養素えいようそ)をたり乾物かんぶつみず長時間ちょうじかんひたしたりして抽出ちゅうしゅつし、わせている、ということになる。

  • 昆布こぶグルタミン酸ぐるたみんさん
  • けずぶしなどの魚介ぎょかいるいのイノシンさん
  • 椎茸しいたけのグアニルさん

表記ひょうき歴史れきし[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだい前期ぜんき1643ねん)に発行はっこうされ「武蔵むさしこく狭山さやまいてく」としるされた『料理りょうり物語ものがたり』では、「だし」と表記ひょうきされ、「だしはかつお」ともかれた。1777ねんやまとくんしおり』(谷川たにがわきよし)には「たれじるまたは」と「タレ」と「ダシ」がかれている。現在げんざい出汁だしいてだし表記ひょうきだしじるという表記ひょうきがみられる。

関西かんさい関東かんとう表現ひょうげんのズレ[編集へんしゅう]

東日本ひがしにっぽんでは、「だし」とえば、汁物しるものやスープなどの「つゆ」をす。高齢こうれいしゃになるとラーメンの「豚骨とんこつ魚介ぎょかいとり下味したあじ」は「だし」とは表現ひょうげんせず「でじる」や「しる」になる。そのため、西日本にしにほん出身しゅっしんしゃが「だしがカラい(つゆがしょっぱい)」などと表現ひょうげんすると「つゆが(唐辛子とうがらしのように)つらい」とおもわれてしまうため、西日本にしにほん出身しゅっしんしゃ注意ちゅうい必要ひつようである。

西日本にしにほんでは、「だし」とえば、「昆布こぶ鰹節かつおぶし煮干にぼししなどの下味したあじ」をす。これはとく関西かんさい地方ちほう使つかわれ、うどんのしるをだしをかせていろうすくすることがほとんどであるのが理由りゆうであり、関西かんさいじんが「関東かんとうはうどんがつらい(い、しょっぱい)、関西かんさいはうどんがうすあじ」と表現ひょうげんすることおおいのはそのこと由来ゆらいする。

どうりょう場合ばあい関西かんさいふう使つかわれる薄口うすくち醤油じょうゆほうがやや塩分えんぶん濃度のうどたかいが、醤油じょうゆ使用しようりょうがあるてん注意ちゅういされたい。たとえば、うどんのしるには、関西かんさいがだし18リットルあたり500mlの薄口うすくち醤油じょうゆれるのにたいし、関東かんとうでは関西かんさいの4ばい以上いじょうりょう濃口こいくち醤油じょうゆれるため、実際じっさい塩分えんぶん濃度のうど関西かんさい2.5%なのにたいし、関東かんとう6.7%と2ばい以上いじょう塩分えんぶん濃度のうどたかい。なお、実際じっさい塩分えんぶん摂取せっしゅりょうしるりょうにも依存いぞんする。関西かんさいではしるひとおおいが、関東かんとうではしるのこ[14]

だしの東西とうざい境目さかいめについて[編集へんしゅう]

「だし」の関西かんさい / 関東かんとう境目さかいめ、つまりあきらかに風味ふうみ味付あじつけがわるのは、関ヶ原せきがはらあたりであり、関ヶ原せきがはらあたりをとおるように南北なんぼくばしたせんだということがかっている。ちなみに、正月しょうがつべる《お雑煮ぞうに》にれるもちかたち関西かんさい関東かんとうことなっており、やはり関ヶ原せきがはらあたりで南北なんぼくばしたせん西にしひがしことなり、このせんより西側にしがわまるもち東側ひがしがわかくもち四角しかくったもち)を雑煮ぞうにれる。[注釈ちゅうしゃく 3]

だしの東西とうざいちがいがしょうじた理由りゆう[編集へんしゅう]

なぜ東西とうざいで「だし」にこのようなちがいがしょうじたかというと、「だし」が発展はってんして日本人にっぽんじん生活せいかつ根付ねつ基盤きばんとなったのは江戸えど時代じだい[5]江戸えど時代じだい物流ぶつりゅう状況じょうきょう現在げんざいとはことなり道路どうろ事情じじょう非常ひじょうわる[5]日本にっぽんには古代こだいマ帝国まていこく建造けんぞうめぐらせたような「舗装ほそう道路どうろ」のあみく、あめになれば ぬかるみ だらけでどろまみれになるみちばかりで陸運りくうん困難こんなんで、当時とうじ日本にっぽんはあえていうと水運すいうん中心ちゅうしんだった)、きょうから江戸えどまで徒歩とほなどではこぶとなるとおよそ500キロメートルもあり、ひとあしでは2週間しゅうかんあるかなければいけない距離きょりで、昆布こぶ太平洋たいへいようルートで運搬うんぱんするのは困難こんなんだったため、関東かんとうでは昆布こぶ入手にゅうしゅすることは困難こんなんだった[5]。その結果けっか関東かんとうでは関東かんとうれるさかなおも使つかった「だし」や料理りょうりほう発達はったつすることになったのだが[5]関東かんとうれるさかなうすあじのものもおおくてい《味付あじつけ》が必要ひつようだったため、しっかり味付あじつけする「おつゆ」が使つかわれるようになった[5]。それにたいして、関西かんさいでは昆布こぶれやすく、さかなさかな自体じたいつよあじわいをもつさかなれたので、関西かんさいでは素材そざいかすような調理ちょうりほう味付あじつけが一般いっぱんしたのである[5]

なお、とりあえずは関西かんさい/関東かんとうちがいを説明せつめいしたが、さらにうと「だし」は関西かんさい/関東かんとうちがいだけでなく、九州きゅうしゅう日本海にほんかいがわ北海道ほっかいどうといったさまざまな場所ばしょちがいがあり、それぞれの土地とち特産とくさんひんなどが「だし」に影響えいきょうしている[5]

中華ちゅうか料理りょうり[編集へんしゅう]

中華ちゅうか料理りょうりにおいては、鶏肉とりにくにわとりガラ・にわとりこつ豚肉ぶたにく中国ちゅうごくハム貝柱かいばしら海老えびなどが材料ざいりょうとして使つかわれる。

朝鮮ちょうせん料理りょうり[編集へんしゅう]

朝鮮ちょうせん料理りょうりにおいては、うしにわとりなどが材料ざいりょうとしてよく使つかわれるほかかいのだしももちいられる。にくのゆでじるをだしとしてもちいる場合ばあいおおく、牛肉ぎゅうにくのだしをユッスにくすい、육수)という。

西洋せいよう料理りょうり[編集へんしゅう]

西洋せいよう料理りょうりにおいては、うしにわとりさかなといった動物どうぶつしつ素材そざい野菜やさいタマネギニンジンセロリなど)・こうそうるいからなる香味こうみ野菜やさいくわえて素材そざいとしてつくる。動物どうぶつしつ素材そざいにはにくのほか、すじにくほね使つかい、使用しよう目的もくてきによってはオーブンでこうばしくいたうえ長時間ちょうじかん煮込にこむ。風味ふうみととのえるために「ブーケガルニ」とばれるこうくさるいのセットをもちいる(パセリタイムローリエひとし)。エビロブスター料理りょうりでは、むいたからでだしをとることもある。

ブイヨン(フランス語ふらんすご)、ブロス(英語えいご)、スープストック(英語えいご)、ブロード(イタリア)はスープのベースに使つかわれ、フォン(フランス語ふらんすご)はソースのベースとして使つかわれる[15]

フランス料理りょうり[編集へんしゅう]

フォン
野菜やさいブイヨン

フランス料理りょうりにおいては、だしを用途ようとによって使つかける。おおきくは、コンソメポタージュなどのスープにもちいるブイヨンと、ソースもちいるフォンとに大別たいべつされる。フランス料理りょうりではソースの種類しゅるいによって様々さまざまなだしがある。

うし素材そざいとして使つかったものは「フォン・ド・ヴォー」、ひつじのものは「フォン・ダニョー」、シカイノシシウサギウズラなど野鳥やちょうじゅうのものは「フォン・ド・ジビエ」、にわとりのものは「フォン・ド・ヴォライユ」、さかなのものは「フュメ・ド・ポアソン」とばれる。

  • フォン・ド・ヴォー - うしのフォン。茶色ちゃいろい。
  • フォン・ド・ヴォライユ - にわとりのだしじる鶏肋けいろくもつジブレッツ)をのぞき、みずる。ニンジン、タマネギ、セロリなどと、ブーケガルニやコショウしおくわ[16]
  • フォン・ダニョー - ひつじのだし。
  • フォン・ド・ジビエ - ジビエのだし。野生やせいのシカ、イノシシ、ウサギやウズラなどのだし。
  • フュメ・ド・ポワソン - さかな料理りょうりのだし。さかな料理りょうりへのソースや、さかなスープのベースとする。白身しろみぎょあらとタマネギ、セロリ、エシャロットなどを薄切うすぎりにしてバターでいため、しろワインみずレモン薄切うすぎり、ブーケガルニ、コショウをくわえてしてしたもの[17]
  • ブイヨン - スープのだし。牛肉ぎゅうにくのすね、うしこつ鶏肉とりにく鶏肋けいろくはもつ(ジブレッツ)をのぞき、みずからる。野菜やさいのニンジン、タマネギ、セロリ、ブーケガルニやコショウ、しおくわえて、灰汁あくのぞきながら、6あいだほど[17][16]
  • クールブイヨン - おも魚介ぎょかいるいをゆでるためのだし。クールは短時間たんじかん野菜やさいのニンジン、タマネギ、セロリ、ブーケガルニやレモン、ライム、コショウ、しおを、みずしろワイン、ワインビネガー短時間たんじかんつく[17]

加工かこうひん[編集へんしゅう]

風味ふうみ調味ちょうみりょうなどともばれる。原材料げんざいりょうは、「風味ふうみ原料げんりょう」とよばれる動物どうぶつせい植物しょくぶつせいのエキスぶんとうに、タンパク加水かすい分解ぶんかいぶつ化学かがく調味ちょうみりょうしお醤油じょうゆ砂糖さとうなどの調味ちょうみりょうなど(なおそういったふく原料げんりょうくわえない出汁だし存在そんざいする)、および香辛料こうしんりょうデンプンなど様々さまざまである。液体えきたい粉末ふんまつ・ペーストじょうなどの加工かこうひんがある。風味ふうみによって、カツオふう、コンブふうにわとりガラふう、コンソメふうなど様々さまざま種類しゅるいがある。

比喩ひゆ表現ひょうげん[編集へんしゅう]

比喩ひゆ表現ひょうげん俗語ぞくご表現ひょうげん)で、自分じぶん目的もくてき利益りえきのために、ひとやものを利用りようすることを「だしにする」と表現ひょうげんすることがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 野菜やさいのおかずで米飯べいはんべることが主体しゅたいの、日本にっぽん中心ちゅうしんとしたひがしアジアの米食べいしょく地帯ちたいにあっては、それ自体じたいのうますくない野菜やさいにそれをおぎな必要ひつようしょうじ、こくひしおさかなひしお美味おいしさのエキスである出汁だし文化ぶんか発展はってんした経緯けいいがある。こうした素地そじがあったため、化学かがく調味ちょうみりょう東南とうなんアジアなどへの迅速じんそく浸透しんとう当然とうぜんのこととられている[4]
  2. ^ よくあるのは、鶏肋けいろく豚骨とんこつ野菜やさい昆布こぶ煮干にぼしし、鰹節かつおぶしサバふしなどの、いくつかを使つかうが、どれを使つかうかは各店かくてん秘密ひみつである。
  3. ^ 関ヶ原せきがはらたたか西にしぐんひがしぐんがこのあたりで激突げきとつしたのも、たんなる偶然ぐうぜんではなく、もともとさまざまな文化ぶんか社会しゃかいてきつながり(ひとひとのネットワーク)にかんして、西側にしがわ京都きょうと大阪おおさか播磨はりまこくなど)の勢力せいりょくけん東側ひがしがわ美濃みの尾張おわり三河みかわおよび、そのひがし国々くにぐになど)の勢力せいりょくけん境目さかいめがこのあたりであったので、その結果けっか軍事ぐんじてき衝突しょうとつもその境目さかいめあたりでしょうじた可能かのうせいがあり、勢力せいりょくけんわかれていて人々ひとびと境目さかいめがそこにあれば、自然しぜんとその境目さかいめ西にしひがし味付あじつけや料理りょうりほうことなる結果けっかになった、とかんがえられる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん』(だい2はん)。 
  2. ^ a b 広辞苑こうじえん』(だい5はん)。 
  3. ^ a b c d e 講談社こうだんしゃ 1998b.
  4. ^ 石毛いしげ 2013, p. 266.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 関西かんさい関東かんとうの「だし」のちがい 素材そざいわるあじわいをたのしもう”. にんべん. 2022ねん12月22にち閲覧えつらん
  6. ^ さかながら 2023, pp. 77, 79.
  7. ^ さかながら 2023, p. 77.
  8. ^ さかながら 2023, pp. 78–79.
  9. ^ Harris Salat (2008ねん10がつ14にち). “The Secret's Out as Japanese Stock Gains Fans” (英語えいご). New York Times. 2010ねん11月30にち閲覧えつらん
  10. ^ a b あごだしとは”. うまだし. やまやコミュニケーションズ. 2023ねん1がつ12にち閲覧えつらん
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  12. ^ a b 講談社こうだんしゃ 1998a.
  13. ^ だしかつけんかつげんしお推進すいしん事業じぎょう”. 青森あおもりけん. 2017ねん7がつ3にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2017ねん5がつ3にち閲覧えつらん
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • さかながら仁之ひとしすけまぼろしの麵料理りょうり 再現さいげん100ひんあおゆみしゃ、2023ねん3がつISBN 978-4-7872-2098-1 
  • 講談社こうだんしゃ へんあきさかな講談社こうだんしゃしゅん食材しょくざい〉、2004ねん7がつISBN 4-06-270133-2 
  • つじ静雄しずお 編著へんちょ『フランス料理りょうりほん 食卓しょくたくのエスプリ』 4(野菜やさいたまご料理りょうり)、講談社こうだんしゃ、1986ねん11月。ISBN 4-06-202924-3 
  • 四季しき日本にっぽん料理りょうりあき講談社こうだんしゃ、1998ねん7がつISBN 4-06-267453-X 
  • 四季しき日本にっぽん料理りょうりふゆ講談社こうだんしゃ、1998ねん9がつISBN 4-06-267454-8 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]