佃煮つくだに

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くぎイカナゴやその稚魚ちぎょ佃煮つくだに

佃煮つくだに(つくだに)は、醤油じょうゆ砂糖さとう甘辛あまから煮付につけた日本にっぽんものである。由来ゆらいとしては、しょうさかな塩辛しおから煮込にこんで保存ほぞんしょくとし、あまったものを「佃煮つくだに」としてしたのがはじまりとされている[1]佃煮つくだににされるのはワカサギイカナゴのようなしょうさかなアサリなどの貝類かいるい昆布こぶひとし海藻かいそうるいもちいられた。シソゴマなどをくわえることもある。牛肉ぎゅうにく佃煮つくだに存在そんざいし、ごはん一緒いっしょべると美味びみとされる。

長野ながのけん伊那いなたに群馬ぐんまけんのような内陸ないりく海産物かいさんぶつれない地域ちいきで、イナゴひとし昆虫こんちゅうるい煮染にしめた佃煮つくだにしょくされた[2]

歴史れきし[編集へんしゅう]

佃煮つくだに由来ゆらい[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだい徳川とくがわ家康いえやす名主なぬしもり孫右衛門まごえもん摂津せっつこくつくだむら現在げんざい大阪おおさか西淀川にしよどがわつくだ)のうで漁師りょうし江戸えどせるようい、隅田川すみだがわ河口かこう石川いしかわとう南側みなみがわにあった干潟ひかたててまわせた(現在げんざい東京とうきょう中央ちゅうおうつくだとう[3][4][5][6]つくだとう漁民ぎょみん悪天候あくてんこう食料しょくりょう出漁しゅつぎょ船内せんないしょくとするため自家用じかようとしてしょうさかな貝類かいるいしお醤油じょうゆ煮詰につめて常備じょうびさい保存ほぞんしょく]していた[4][7]雑魚ざこがたくさんれると、佃煮つくだに大量たいりょうつくおおすようになったといわれ、保存ほぞんせいたかさと価格かかくやすさから江戸えど庶民しょみん普及ふきゅうし、さらには参勤交代さんきんこうたい武士ぶし江戸えど名物めいぶつ土産物みやげものとして各地かくちかえったため全国ぜんこくひろまったとされる[8][7][6]

なお、以上いじょうせつたいしては異説いせつもある。

  • 1858ねん安政あんせい5ねん)に青柳あおやぎざいすけ創始そうししたとするせつ[9]。なおざいすけつくだとうしおから「佃煮つくだに」と名付なづけたとされる。
  • 1862ねん文久ぶんきゅう2ねん)に浅草あさくさかわらまちふな佐吉さきち創始そうししたとするせつ[9]。なお佐吉さきちは、それまでしおであった佃煮つくだに独自どくじ改良かいりょう種類しゅるいごとの素材そざいけ、当時とうじ高級こうきゅうであった醤油じょうゆはじめて使用しようするという斬新ざんしん発想はっそう)のもと現在げんざい佃煮つくだに原型げんけいつくした。[10]
  • 日本橋にほんばし伊勢屋いせやふとし兵衛ひょうえ創始そうししたとするせつ[9]
  • 大坂おおさか住吉すみよし明神みょうじん江戸えどつくだとう住吉すみよし神社じんじゃとして分霊ぶんれいし、その祭礼さいれいでは雑魚ざこ煮詰につめたものをそなえていた(醬油せつしおせつがある)[4]。このことから、住吉すみよし神社じんじゃ雑魚ざこ煮詰につめたものを「佃煮つくだに」としてそなえたことに由来ゆらいするというせつ[9]

全国ぜんこく調理ちょうり食品しょくひん工業こうぎょう協同きょうどう組合くみあいでは、つくだとう住吉すみよし神社じんじゃまつったのが正保まさやす2ねん(1646ねん)6がつ29にちであることと、2(英語えいごでtwo=ツー)と9(く)の語呂合ごろあわせから、6月29にちを「佃煮つくだに」としている[11]

1877ねん明治めいじ10ねん)の西南せいなん戦争せんそうさいして、政府せいふぐんから軍用ぐんようしょくとして多量たりょう佃煮つくだに製造せいぞうめいじられた。1894ねん明治めいじ27ねん)のにちしん戦争せんそうでも佃煮つくだに製造せいぞうめいじられ、大量たいりょう生産せいさんおこなわれるようになった。戦後せんご帰宅きたくした兵士へいし戦場せんじょうべた江戸前えどまえ佃煮つくだにになじんでおり、これは一般いっぱん家庭かてい副食ふくしょくとなり日常にちじょうしょくとなっていった。

現代げんだいでは、佃煮つくだに素材そざい味付あじつけの種類しゅるいえるとともに、包装ほうそう工夫くふうにより販売はんばい保存ほぞんらくになったことから、消費しょうひえた[12]

各地かくち産地さんち[編集へんしゅう]

現在げんざいでは全国ぜんこく各地かくちに、入手にゅうしゅしやすい食材しょくざい地域ちいきしょく文化ぶんかわせて多様たよう佃煮つくだに産地さんちがある。小豆島しょうどしまは、醤油じょうゆ産地さんちでもあり佃煮つくだにおおつくられている。とく昆布こぶ佃煮つくだに全国一ぜんこくいちとなるなど佃煮つくだに産業さんぎょうさかんである。広島ひろしまでも佃煮つくだに製造せいぞうおこなわれており、1904ねん明治めいじ37ねん)から1905ねん明治めいじ38ねん)のにち戦争せんそう広島ひろしま陸軍りくぐん出征しゅっせい拠点きょてんとなったこと軍需ぐんじゅささえられていたという背景はいけいがあり、1898ねん明治めいじ31ねん)に楠原くすはら政之助まさのすけ広島ひろしまちゅうにて漬物つけもの佃煮つくだに缶詰かんづめ製造せいぞう発売はつばいした[13]秋田あきたけん潟上かたがみ昭和しょうわ大久保おおくぼ地区ちくは、軍需ぐんじゅ産業さんぎょうとして八郎潟はちろうがたれたわかさぎ白魚しらうお使用しようした佃煮つくだに製造せいぞうぎょうさかんにおこなわれ、干拓かんたく事業じぎょうによって大幅おおはば湖水こすい面積めんせき減少げんしょうした現在げんざいでも有数ゆうすう佃煮つくだに産地さんちとなっている。静岡しずおかけん焼津やいづかつお佃煮つくだに生産せいさんだかおおい。

製法せいほう[編集へんしゅう]

現在げんざい一般いっぱん市販しはんされている佃煮つくだには、うすあじ甘口あまくち保存ほぞんせい以前いぜんほどたかくはない。真空しんくう包装ほうそうものや、よう冷蔵れいぞう佃煮つくだにおおい。ぞうねば安定あんていざいなどがくわえられていることがある。

本来ほんらい江戸前えどまえ佃煮つくだには、なつ常温じょうおんしたおにぎり弁当べんとうれてもいたまず食中毒しょくちゅうどくこさない、辛口からくちのものが安心あんしん重宝ちょうほうされてきた。現在げんざいすうけんだが、職人しょくにん手造てづくりで旧来きゅうらい味付あじつけの佃煮つくだにがれている。

おも材料ざいりょう[編集へんしゅう]

ギャラリー[編集へんしゅう]

比喩ひゆ[編集へんしゅう]

佃煮つくだにあまもの利用りよう保存ほぞんよう食品しょくひん[1]であったことから、ものあまってもてあますさまを「佃煮つくだににするほど」と表現ひょうげんすることもある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 佃煮つくだに世界せかい”. 水産庁すいさんちょう(www.jfa.maff.go.jp). 2023ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  2. ^ いなごの佃煮つくだに 長野ながのけん | うちの郷土きょうど料理りょうり”. 農林水産省のうりんすいさんしょう(www.maff.go.jp). 2023ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  3. ^ なお、岡田おかだ 2003, p. 297によれば、まず、日本にっぽん橋東詰はしひがしづめ移住いじゅうしたのちに1645ねんつくだとう移住いじゅうしたとされている。
  4. ^ a b c マルハ 2000, p. 119
  5. ^ おさかな雑学ざつがく 2002, p. 215.
  6. ^ a b 岡田おかだ 2003, p. 297
  7. ^ a b おさかな雑学ざつがく 2002, p. 216
  8. ^ マルハ 2000, pp. 119–120.
  9. ^ a b c d 岡田おかだ 2003, p. 297(諸説しょせつあるなか一説いっせつとして紹介しょうかい
  10. ^ 岩崎いわさき信也しんやしょく起源きげんたずねて」『月刊げっかん だま』1994ねん9がつごう、エモーチオ21
  11. ^ 6月29にちは「佃煮つくだに」について 全国ぜんこく調理ちょうり食品しょくひん工業こうぎょう協同きょうどう組合くみあい(2023ねん7がつ8にち閲覧えつらん
  12. ^ 日本にっぽん食品しょくひん新聞しんぶんしゃ[出典しゅってん無効むこう]
  13. ^ 広島ひろしま政財界せいざいかい人物じんぶつだい104‐105ぺーじおよび東京とうきょう自治じち調査ちょうさかい発行はっこう広島ひろしまけん
  14. ^ 乾物かんぶつのヤツメウナギをいて甘辛あまからつけたもの。独特どくとく風味ふうみがあり、ビタミンAおおふくまれるため、一種いっしゅ健康けんこう食品しょくひんとしてべられることがおおい。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 岡田おかだあきらちょ『たべもの起源きげん事典じてん東京とうきょうどう出版しゅっぱん、2003ねんISBN 978-4490106169 
  • マルハ広報こうほうしつ『おさかな常識じょうしき非常識ひじょうしき「なるほどふーん」雑学ざつがく講談社こうだんしゃ講談社こうだんしゃプラスアルファ文庫ぶんこ〉、2000ねんISBN 978-4490106169 
  • おさかな雑学ざつがく研究けんきゅうかいあたまがよくなる おさかな雑学ざつがくだい事典じてん幻冬舎げんとうしゃ幻冬舎げんとうしゃ文庫ぶんこ〉、2002ねんISBN 978-4344402942 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]