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繊維せんい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
繊維せんい工業こうぎょうから転送てんそう
ヘンプあさ)の繊維せんい
リネン亜麻あま)の繊維せんい
コットン木綿こわた)の繊維せんい
ウール繊維せんい
シルクきぬ)の繊維せんい
ナイロン繊維せんい。(実験じっけんしつでの制作せいさく

繊維せんい[ちゅう 1](せんい、えい: fibre)は、ほそく、しなやかな素材そざいほそくてなが物質ぶっしつ[2][注釈ちゅうしゃく 1]

概説がいせつ

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動物どうぶつもうかわ植物しょくぶつカイコまゆなど天然てんねん素材そざいから天然てんねん繊維せんい使用しようしてきた歴史れきし圧倒的あっとうてきながいが、19世紀せいきまつころから繊維せんい人工じんこうてきにつくる人造じんぞう繊維せんい試作しさくされるようになり、20世紀せいき以降いこう人造じんぞう繊維せんい工場こうじょう大量たいりょう生産せいさんできるようになり、そちらのほうが大量たいりょう使つかわれるようになっている。

繊度せんど

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繊度せんど(fineness)とは、繊維せんい(やいとの)ふとさ(やほそさ)をあらわ用語ようご概念がいねんなが重量じゅうりょうとのであり[4]つねじゅうしき番手ばんてほうつねちょうしき番手ばんてほうあらわされる(いと#いとふと参照さんしょう)。なお、繊度せんどかんして、繊維せんい断面だんめん完全かんぜん円形えんけいではないので、直径ちょっけいだん面積めんせきではあらわせない、と指摘してきされている[5][注釈ちゅうしゃく 2]

構造こうぞう

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天然てんねん繊維せんいは、複雑ふくざつ構造こうぞうっているものがおおい。

一方いっぽう人造じんぞう繊維せんいは、特定とくてい物質ぶっしつつよばしたり、こうあつをかけて微小びしょうあなから射出しゃしゅつしたりしてつくり、大抵たいてい天然てんねん繊維せんいほどは複雑ふくざつではない。

歴史れきし

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繊維せんい」が天然てんねんのものだけをしていた歴史れきし非常ひじょうながい。

人類じんるいは(採集さいしゅうりをしてらしていた歴史れきしがとてもながいがそのに)一部いちぶ動物どうぶつ家畜かちくしてうようになっても、まだ動物どうぶつって使つかうという方法ほうほうおもいついていなかった段階だんかいでは、動物どうぶつ毛皮けがわ衣類いるいとしてにまとっていた。[6]

歴史れきし学者がくしゃは、古代こだいメソポタミア人々ひとびとひつじってそれからふくつくることができると発見はっけんした、とかんがえている[6]。これは偉大いだい発見はっけんであった。というのは、この方法ほうほうならひつじころさずにふくにいれることができ、おまけに同一どういつひつじ毎年まいとしあらたに羊毛ようもうをもたらしてくれる可能かのうせいがあるのだから[6]。メソポタミアの人々ひとびとは、最初さいしょはウールをつむいだりったりしなかった。もしかするとそういうことをかんがえもしなかったのかもれない[6]かれらは最初さいしょ、ウールをフェルトかたち使つかった[6]。そのひつじのウールをつむいでって毛織物けおりものとして使つかうようになった[6]

古代こだいでは、遊牧民ゆうぼくみんしし原料げんりょうにフェルトをつくったり、ウールをつむいでって毛織物けおりもの着用ちゃくようしていた。一方いっぽう、(紀元前きげんぜん9せんねん前後ぜんこうなどとわれている時期じきに)農耕のうこうはじめる人々ひとびとがに登場とうじょうしたが、かれらはあさ繊維せんいつむいでったぬの着用ちゃくようした。

古代こだいエジプトではひつじ(やヤギ)を家畜かちくとしてっていてウールることができ、またナイルがわ流域りゅういき肥沃ひよく土地とち亜麻あま栽培さいばいしていて亜麻あま繊維せんいることができ、亜麻あまぬの毛織物けおりもの両方りょうほう使つかわれていたが、亜麻あまぬののほうが"清浄せいじょう"となされどこでも使つかえたのにたいして、毛織物けおりもののほうは"不浄ふじょう"となされ、富裕ふゆうひとなどが着用ちゃくようしたものの、神殿しんでんen)では着用ちゃくようできなかった。

シルクきぬ)の使用しよう歴史れきしもとてもながく、しん石器せっき時代じだいいまから8500ねん以上いじょうまえ中国ちゅうごくですでに使つかわれていた、との証拠しょうこつかっている[7]

人造じんぞう繊維せんいはじまり

1883ねん、イギリスでジョゼフ・スワン(Joseph Swan、 1828ねん-1914ねん)がニトロセルロースから繊維せんい試作しさくし「artificial silk」(人造じんぞう絹糸けんし)とづけた。

1884ねん、フランスのイレール・ドゥ・シャルドネ[注釈ちゅうしゃく 3]Hilaire de Chardonnet、1839ねん-1924ねん)がやはり硝酸しょうさんセルロース(ニトロセルロース)からレーヨン製造せいぞうし、1889ねんパリ万国博覧会ばんこくはくらんかいに「シャルドネのきぬ」として出品しゅっぴんされた[8]。こちらもフランスで人造じんぞう絹糸けんし(soie artificielle)とばれた。

ナイロンストッキングのまれた拡大かくだい写真しゃしん

1936ねんにアメリカのデュポンしゃウォーレス・カロザースナイロン合成ごうせい成功せいこうし、1939ねんにデュポンしゃがナイロン繊維せんい工業こうぎょう生産せいさん大量たいりょう生産せいさん)を開始かいしした。この繊維せんい石炭せきたんみず空気くうきからつくることができ、当初とうしょブラシのいわゆる「」の部分ぶぶん使つか商品しょうひんしていたが、1940ねん5がつ15にち全米ぜんべいでナイロンストッキング発売はつばい(これがだいセンセーションとなり、このは「N-DAY」と人々ひとびと記憶きおくされることになり)、発売はつばい1ねんで6400まんちゃくれた。だが、だい世界せかい大戦たいせんはじまっており、各国かっこく政府せいふ次第しだい軍需ぐんじゅ優先ゆうせんするようになり、ナイロンはパラシュートかさやコードの部分ぶぶん使つかわれるようになっていった[9][10]

分類ぶんるい

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繊維せんい天然てんねん植物しょくぶつ動物どうぶつ鉱物こうぶつから採取さいしゅされる天然てんねん繊維せんい (natural fibers) と人造じんぞう人造じんぞう繊維せんい (man-made fibers) にけられる[11][3][12]

なお天然てんねん繊維せんい人造じんぞう繊維せんい分類ぶんるいは、繊維せんい一般いっぱんてき分類ぶんるい方法ほうほうであるが、天然てんねん繊維せんい綿めん樹脂じゅし架橋かきょう結合けつごうしたものや、ふくあい繊維せんいのように、単純たんじゅんに2分類ぶんるいできない、分類ぶんるいじょう問題もんだいのあるものもある[3]

紡織ぼうしょく繊維せんい

繊維せんいのうち紡績ぼうせきなどの加工かこうえうる強靭きょうじんさをゆうする繊維せんい紡織ぼうしょく繊維せんいという[3]

天然てんねん繊維せんい

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天然てんねん繊維せんい繊維せんい形状けいじょう自然しぜんつくられたもので、伝統でんとうてき[11]植物しょくぶつ繊維せんい動物どうぶつ繊維せんい鉱物こうぶつ繊維せんい石綿いしわたるい)に分類ぶんるいされている[3][11]

植物しょくぶつ繊維せんいは、かた用語ようごでは「セルロースけい繊維せんい」とばれることがあり[11][13]植物しょくぶつ種類しゅるいでさらにほそ分類ぶんるいされる[11]コットン木綿こわた)、リネン亜麻あま)、ヘンプあさ)、ラミー苧麻からむし等々とうとうである。植物しょくぶつ繊維せんい植物しょくぶつくき種子しゅしから採取さいしゅされる[11]

動物どうぶつ繊維せんいは、かた用語ようごでは「タンパク繊維せんい」とばれることがある[11][14]動物どうぶつ繊維せんいおもししシルクきぬ)に分類ぶんるいでき[11](さらにクモのいとげる場合ばあいがあり[11])、しししつによりウールとヘアーに分類ぶんるいすることもできるが、ウールのほうがしし代表だいひょうであり、ウールは動物どうぶつ繊維せんい代表だいひょうでもある。ウールを動物どうぶつ種類しゅるい細分さいぶんるいすることも一般いっぱんてきである。ウールの代表だいひょうひつじのウール(羊毛ようもう)であるが、ほかにもアンゴラヤギ(アンゴラ)、カシミヤヤギ(カシミヤ)、ふたこぶラクダ(キャメル)、アルパカアルパカ)、ウサギアンゴラ)などと分類ぶんるいされている。ウールの代表だいひょう羊毛ようもうは、ひつじたねでさらにこまかく分類ぶんるいされている(詳細しょうさいべつ記事きじウール解説かいせつ)。

人造じんぞう繊維せんい

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人造じんぞう繊維せんい日本にっぽんでは「化学かがく繊維せんい」とぶことがある ※)は繊維せんい形状けいじょう人工じんこうてきつくられたもので有機ゆうきしつ繊維せんい無機質むきしつ繊維せんいけられる[3]

近年きんねんでは有機ゆうきしつ繊維せんいなかでもとくにポリエステル繊維せんい生産せいさんりょう消費しょうひりょうおお[15]。ポリエステル繊維せんいは、強度きょうどすぐれ、染色せんしょく発色はっしょくく、あせをすばやく蒸散じょうさんさせ、紡績ぼうせき方法ほうほう工夫くふう天然てんねん繊維せんいのような風合ふうあいもすことができるなど、すぐれた性質せいしつをいくつもそなえており、原料げんりょうから合成ごうせいすることもでき、リサイクルペットボトルから安価あんか製造せいぞうすることもできるので、衣料いりょうひん・インテリアひんなどで多用たようされるようになった[15]
炭素たんそ繊維せんい
ガラス繊維せんい

※(補注ほちゅう) なお、日本にっぽんでは化学かがく繊維せんい (chemical fibers) という言葉ことば人造じんぞう繊維せんい同義どうぎ使つかわれることがあるが、こういう使つかかたをすると、いったい「化学かがく」という用語ようごをどういう意味いみ使つかっているのかということが問題もんだいになる[3]。「化学かがく」を通常つうじょう意味いみ使つかうと、ガラス繊維せんいなどは人造じんぞう繊維せんいであるが化学かがく繊維せんいではない[3]。ただし、「化学かがく」を通常つうじょうより広義こうぎ解釈かいしゃくして、「化学かがく処理しょりほどこした繊維せんいあるいは化学かがくてき手段しゅだんによってつくられた繊維せんい」とでもかんがえれば、一応いちおうすじとお[3]日本にっぽんで、正式せいしき用語ようごではなく日常にちじょうとして「化学かがく繊維せんい」と場合ばあいの「化学かがく」は化学かがくによる化学かがく組成そせい変化へんかだけではなく、溶融ようゆうなど物理ぶつり化学かがくふくめた手段しゅだんによってつくられた繊維せんいまで「化学かがく繊維せんい」と解釈かいしゃくしている[3]

たん繊維せんいちょう繊維せんい

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繊維せんいはまたたん繊維せんいちょう繊維せんい分類ぶんるいされる。

動物どうぶつ繊維せんい通常つうじょうながさが比較的ひかくてきみじか[注釈ちゅうしゃく 5]、これはstaple fiber(たん繊維せんい)とばれている[11]たいして、シルク(きぬ)は連続れんぞくてきフィラメントちょう繊維せんい)である[11]

繊維せんい産業さんぎょう

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繊維せんい産業さんぎょうというのは、日本標準にっぽんひょうじゅん産業さんぎょう分類ぶんるいでいう化学かがく繊維せんい製造せいぞうぎょう繊維せんい工業こうぎょうテキスタイル製造せいぞうぎょう)、衣服いふくまわひん製造せいぞうぎょうアパレル製造せいぞうぎょう)、の3つを基本きほんに、そこに繊維せんいひん卸売おろしうりごう小売こうりごうくわえ、さらにそれをあつか総合そうごう商社しょうしゃや「百貨店ひゃっかてん繊維せんい部門ぶもん」をくわえたもの、として定義ていぎされている[16]

おも繊維せんいメーカー

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かつての繊維せんいメーカー

団体だんたい

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メディア

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 医学いがく分野ぶんやにおいてはおもに「線維せんい」と表記ひょうきされる(れい神経しんけい線維せんいなど)[1]
  1. ^ 工業こうぎょう規格きかく設定せっていしているASTMインターナショナル定義ていぎでは繊維せんい物体ぶったい形状けいじょうであり、材質ざいしつわないとされている[3]
  2. ^ 直径ちょっけい」という概念がいねん基準きじゅんに、天然てんねん繊維せんいふくめて定義ていぎしようとすることにはかなり無理むりがある。ところが、あくまで鉄道てつどう産業さんぎょう発展はってんともなってレール製造せいぞうするためのはがね規格きかく制定せいていする団体だんたいとしてはじまったASTMインターナショナルは、「ながさは直径ちょっけいあるいははばの100ばい以上いじょうあるもの」、と「直径ちょっけい」という概念がいねんしてしまっている。ASTMは、あくまでレールの鋼材こうざい規格きかく制定せいていする団体だんたい出発しゅっぱつてんとしており鋼材こうざい理解りかいはかなりふかいが、繊維せんい業界ぎょうかい団体だんたい母体ぼたいとしておらず繊維せんい理解りかいはかなりあさい。
  3. ^ フランス語ふらんすごではH,hを発音はつおんしない。Chardonnetのおとのカタカナ表記ひょうきはシャルドネが妥当だとう実際じっさいおとこちらくことができる。
  4. ^ 通常つうじょう有機ゆうきしつ繊維せんい無機質むきしつ繊維せんいよりもまえげる。
  5. ^ 比較的ひかくてきなが羊毛ようもうでもすうじゅうセンチメートル程度ていどつむいでながいとにして使つかう。

出典しゅってん

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  1. ^ 澤田さわだ和也かずや. “繊維せんい線維せんい生体せいたい線維せんい洗浄せんじょう再生さいせい医療いりょうへの展開てんかい” (PDF). 2024ねん2がつ2にち閲覧えつらん
  2. ^ 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ
  3. ^ a b c d e f g h i j 下村しもむら 寿ひさし繊維せんい分類ぶんるい」『繊維せんい製品せいひん消費しょうひ科学かがくだい8かんだい5ごう、1967ねん、271-278ぺーじ2020ねん6がつ21にち閲覧えつらん 
  4. ^ [https://kotobank.jp/word/%E7%B9%8A%E5%BA%A6-550773 コトバンク 繊度せんど
  5. ^ 改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん』【繊維せんい
  6. ^ a b c d e f Great stories and history of wool
  7. ^ Yuxuan Gong, Li Li, and Juzhong Zhang "Biomolecular Evidence of Silk from 8,500 Years Ago"
  8. ^ 垣内かきうちひろし. "レーヨン". 小学館しょうがくかん 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ). コトバンクより2023ねん6がつ21にち閲覧えつらん
  9. ^ History and Future of Plastics
  10. ^ NAIGAI, 所蔵しょぞうひんでたどるストッキングの変遷へんせん
  11. ^ a b c d e f g h i j k l Textile and fibre science Gate PREPRATION
  12. ^ 福原ふくはらはじめちゅう. “衣料いりょうようポリエステル繊維せんい技術ぎじゅつ系統けいとう調査ちょうさ”. 国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん. 2023ねん4がつ11にち閲覧えつらん
  13. ^ [1]
  14. ^ コトバンク、タンパク繊維せんい
  15. ^ a b TEXTILE NET、すごいぞポリエステル 国内こくない生産せいさんりょう消費しょうひりょうナンバー1
  16. ^ [2]化学かがく繊維せんい用語ようごしゅう

関連かんれん項目こうもく

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