ナイロン

ナイロン6とナイロン6,6の分子ぶんし構造こうぞう

ナイロン（nylon）は、ポリアミド合成ごうせい樹脂じゅしの種類しゅるいである。当初とうしょは主おもに繊維せんいとして使つかわれた。世界せかい初はつの合成ごうせい繊維せんいのナイロン6,6（6,6-ナイロンなどとも）が含ふくまれる。

ウォーレス・カロザース

1935年ねん、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのデュポン社しゃのウォーレス・カロザースが合成ごうせいに成功せいこうした。ナイロンは本来ほんらい、インビスタ社しゃ（旧きゅうデュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社しゃ）の商品しょうひん名めいだが、現在げんざいではポリアミド系けい繊維せんい（単たん量りょう体たいがアミド結合けつごう（-CO-NH-）により次々つぎつぎに縮ちぢみ合あわした高分子こうぶんし）の総称そうしょうとして定着ていちゃくしている。

種類しゅるいとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などがある。これらの数字すうじは、合成ごうせい原料げんりょうの炭素たんそ原子げんしの数かずに由来ゆらいする。

構造こうぞう（右みぎ図ず）は、

• ナイロン6：${\ce {{CO\ -(CH2)5\ -NH}n}}$
• ナイロン6,6：${\ce {{CO\ -(CH2)4\ -CO\ -NH\ -(CH2)6\ -NH}n}}$

他たのナイロンについては「ポリアミド系けい樹脂じゅし」を参照さんしょう

語源ごげん

ナイロン（nylon）の名称めいしょうは、「伝つて線せん（run）しないストッキング用ようの繊維せんい」を意図いとした「norun」に由来ゆらいする。また暗あんにnil（虚無きょむ）の意いを込こめてこの繊維せんいをNylonと命名めいめいした、と『ナイロンの発見はっけん』には書かかれている。

歴史れきし

合成ごうせい法ほう、製造せいぞう法ほうの歴史れきし

ウォーレス・カロザースが合成ごうせいしたナイロン6,6は、アジピン酸さんとヘキサメチレンジアミンを重合じゅうごうして作つくられる。一方いっぽう、1941年ねんに日本にっぽんで東洋とうようレーヨン（現げん・東とうレ）の星野ほしの孝平たかひららにより合成ごうせいされたナイロン6（合成ごうせい当時とうじの名なはアミラン）はεいぷしろん-カプロラクタムを開ひらけ環かん重合じゅうごうして作つくられる。1960年代ねんだいにはデュポン社しゃにより、ニッケル触媒しょくばいを利用りようした1,3-ブタジエンのヒドロシアノ化かによるナイロン6,6の合成ごうせい法ほうが開発かいはつされた。ほかにプロピレンをアンモ酸化さんかしたアクリロニトリルを原料げんりょうに、モンサント社しゃ（現げん：バイエル）が開発かいはつした電解でんかいヒドロ二に量りょう化か法ほうにより中間ちゅうかん体からだのアジポニトリルを合成ごうせいする方法ほうほうもあり、ベンゼン・ブタジエン・プロピレンの価格かかく動向どうこうや電力でんりょく価格かかくにより優劣ゆうれつが変動へんどうする。

一般いっぱん的てきにはナイロン6,6は絹きぬ、ナイロン6は木綿もめんに近ちかい肌触はだざわりとされている。

ナイロン繊維せんいの利用りよう法ほう、ナイロン製品せいひんの販売はんばいの歴史れきし

ナイロンストッキング工場こうじょうでの検品けんぴん作業さぎょう（1954年ねん、スウェーデン）

1936年ねんにアメリカのデュポン社しゃのウォーレス・カロザースが合成ごうせいに成功せいこうし、1939年ねんにデュポン社しゃはナイロン繊維せんいの工業こうぎょう生産せいさん（大量たいりょう生産せいさん）を開始かいしした。当初とうしょは歯はブラシのいわゆる「毛け」の部分ぶぶんなどに使つかい商品しょうひん化かしていたが、次つぎに同社どうしゃはナイロンの用途ようととして、それまで主おもに絹きぬで作つくられていた薄手うすでのストッキングに着目ちゃくもく、まずは女性じょせいたちの反応はんのうを調しらべるために、1939年ねん10月がつ24日にちにデラウェア州しゅうウィルミントンでナイロンストッキング4,000着ちゃくを販売はんばいしてみたところ、わずか3時じ間あいだで完売かんばい。これを踏ふまえて、1940年ねん5月がつ15日にちに全米ぜんべいでナイロンストッキングを発売はつばい（これは大だいセンセーションとなり、この日ひは「N-DAY」と人々ひとびとに記憶きおくされることになり）、発売はつばい1年ねんで6400万まん着ちゃくも売うれた。だが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが始はじまっており、各国かっこく政府せいふは次第しだいに軍需ぐんじゅを優先ゆうせんするようになり、ナイロンはパラシュートの傘かさやコードの部分ぶぶんに使つかわれるようになっていった。

なお、ナイロンストッキング発売はつばい当時とうじのキャッチフレーズは「石炭せきたんと水みずと空気くうきから作つくられ、鋼鉄こうてつよりも強つよく、クモの糸いとより細ほそい」というものだった。

用途ようと

ストッキングや水着みずぎ、合羽かっぱやウインドブレーカー、スキーウェアなど冬ふゆ用ようスポーツウェア、傘かさ。その他た、クラシックギターの弦つる、釣つり糸いとなどに用もちいられている。

強度きょうどにまつわる事件じけん

なおナイロンは登場とうじょう当初とうしょ、その強度きょうどが盲信もうしんされ、1950年代ねんだいから1970年代ねんだいころまでクライミングロープとしても多用たようされたが、実際じっさいの鋭するどい岩肌いわはだにすれる環境かんきょう下かでの強度きょうどテストは行おこなわれておらず、登山とざんの現場げんばでは突然とつぜんあっけなく切きれて登山とざん者しゃが墜落ついらくする事故じこ（死亡しぼう事故じこ）が何なん度ども発生はっせいした。

詳細しょうさいは「ナイロンザイル事件じけん」を参照さんしょう

他た

（昨今さっこんでは、自然しぜん環境かんきょう中ちゅうで分解ぶんかいされないマイクロプラスチック類るいの海洋かいよう生物せいぶつへの悪影響あくえいきょうが深刻しんこく化かしていることが次第しだいに認識にんしきされるようになってきて、国際こくさい機関きかんや各国かっこく政府せいふが対策たいさくを進すすめるようになってきており）ナイロンも生なま分解ぶんかい性せいはほとんど無ないため、モノマーに分解ぶんかいする酵素こうそ（ナイロン加水かすい分解ぶんかい酵素こうそ）の研究けんきゅうが進すすめられている。

関連かんれん項目こうもく

• 塩化えんかアジポイル
• ビニロン