化学かがく繊維せんい

化学かがく繊維せんい（かがくせんい、chemical fiber）とは、石油せきゆなどから化学かがく的てきプロセスにより製造せいぞうされる繊維せんいの総称そうしょう。人造じんぞう繊維せんい (artificial fiber) とも呼よばれる。

定義ていぎ

一般いっぱん的てきな繊維せんいの分類ぶんるいでは繊維せんいは天然てんねん繊維せんいと化学かがく繊維せんい（人造じんぞう繊維せんい）に分わけられる（ASTMインターナショナルの繊維せんい分類ぶんるい表ひょうではnatural fibersとman-made fibersに分類ぶんるいされている）。日本にっぽんでは一般いっぱん的てきに人造じんぞう繊維せんいは化学かがく繊維せんいと同義どうぎで扱あつかわれており、この場合ばあいの化学かがく繊維せんいは「化学かがく処理しょりを施ほどこした繊維せんいあるいは化学かがく的てき手段しゅだんによって作つくられた繊維せんい」と定義ていぎされる。

化学かがく的てき手段しゅだんを狭せまく解釈かいしゃくする場合ばあい、ガラス繊維せんいなどは人造じんぞう繊維せんいであるが化学かがく繊維せんいではないことになる。しかし、一般いっぱん的てきな繊維せんいの分類ぶんるいでは化学かがく繊維せんいの「化学かがく」は狭義きょうぎの化学かがくによる化学かがく組成そせいの変化へんかだけではなく、溶融ようゆうなど物理ぶつり化学かがくも含ふくめた化学かがく的てき手段しゅだんによって作つくられた繊維せんいを化学かがく繊維せんいとして天然てんねん繊維せんいと分わけている。

天然てんねん繊維せんいと人造じんぞう繊維せんい（化学かがく繊維せんい）の分類ぶんるいは、繊維せんいの一般いっぱん的てきな分類ぶんるいの方法ほうほうであるが、天然てんねん繊維せんいの綿めんを樹脂じゅしで架橋かきょう結合けつごうしたものや、複ふく合あい繊維せんいのように分類ぶんるい上じょう問題もんだいのあるものもある。

分類ぶんるい

化学かがく繊維せんい（人造じんぞう繊維せんい）には無機質むきしつ繊維せんい（無機むき繊維せんい）と有機ゆうき質しつ繊維せんい（有機ゆうき繊維せんい）がある。

有機ゆうき繊維せんい

合成ごうせい繊維せんい

合成ごうせい繊維せんいは低てい分子ぶんしの製造せいぞう原料げんりょうから合成ごうせいによりつくられた高分子こうぶんしの組成そせいの化学かがく繊維せんい。

• ポリエステル系けい合成ごうせい繊維せんい
• ポリアミド系けい合成ごうせい繊維せんい - ナイロン

など

半はん合成ごうせい繊維せんい

半はん合成ごうせい繊維せんいは天然てんねん高分子こうぶんし化合かごう物ぶつを原料げんりょうに他たの物質ぶっしつとの化合かごうにより多少たしょうの化学かがく変化へんかを加くわえて紡糸ぼうししたもの。

• セルロース系けい半はん合成ごうせい繊維せんい - アセテート
• タンパク質たんぱくしつ系けい半はん合成ごうせい繊維せんい - プロミックス

など

再生さいせい繊維せんい

再生さいせい繊維せんいは天然てんねん高分子こうぶんし化合かごう物ぶつを原料げんりょうにそれを溶解ようかいしてから紡糸ぼうししたもの。

• セルロース系けい再生さいせい繊維せんい - レーヨン、キュプラ、ポリノジック

など

無機むき繊維せんい

金属きんぞく繊維せんい（金糸きんし・銀糸ぎんし）、ガラス繊維せんい、岩石がんせき繊維せんい、炭素たんそ繊維せんいなど。

JISによる化学かがく繊維せんいの種類しゅるい

JIS L 0204-2 : 2020「繊維せんい用語ようご（原料げんりょう部門ぶもん）－第だい2部ぶ：化学かがく繊維せんい」に記載きさいされている化学かがく繊維せんいには以下いかのようなものがある（括弧かっこ内ないは英語えいご表記ひょうき）。

• レーヨン（rayon, viscose）
• ポリノジック（polynosic）
• モダル（modal）
• リヨセル（lyocell）
• キュプラ（cupro）
• アセテート（acetate）
• トリアセテート（triacetate）
• プロテイン繊維せんい（protein fiber）
• プロミックス（promix）
• ビニラール（vinylal）
• ビニロン（vinylon）
• エチレンビニルアルコール繊維せんい（ethylene vinyl alcohol fiber）
• ポリ塩化えんかビニル（polyvinyl chloride, chlorofiber）
• ビニリデン（polyvinylidene chloride, chlorofiber）
• アクリル（acrylic）
• モダクリル（modacrylic）
• アクリレート（polyacylate）
• ナイロン（nylon, polyamide）
• アラミド（aramid）
• ポリエステル（polyester）
• ポリエチレンテレフタレート（polyethylene terephthalate）
• ポリトリメチレンテレフタレート（polytrimethylene terephthalate）
• ポリブチレンテレフタレート（polybutylene terephthalate）
• ポリアリレート繊維せんい（polyarylate fiber）
• ポリ乳酸にゅうさん（polylactide）
• ポリエチレン（polyethylene）
• ポリプロピレン（polypropylene）
• ポリウレタン（polyurethane, elastane）
• ふっ素そ繊維せんい（fluorofiber）
• ポリイミド（polyimide）
• ポリエーテルエステルエラストマー（polyeterester elastomer）
• ポリフェニレンスルフィド（polyphenylene sulfide）
• アルギネート（alginate）
• エラストジェン（elastodiene, rubber）
• エラストオレフィン（elastolefin）
• メラミン繊維せんい（melamine fiber）
• ポリカーボアミド（polycarbamide）
• トリビニル（trivinyl）
• ポリベンゾイミダゾール（polybenzimidazol）
• キチン繊維せんい（chitin fiber）
• 炭素たんそ繊維せんい（carbon fiber）
• ガラス繊維せんい（glass fiber）
• 金属きんぞく繊維せんい（metal fiber）
• セラミック繊維せんい（ceramic fiber）

歴史れきし

• 1884年ねん：フランスのイレール・ドゥ・シャルドネ（fr:Hilaire de Chardonnet）が硝酸しょうさんセルロース（ニトロセルロース）よりレーヨンを製造せいぞう、1889年ねんのパリ万国博覧会ばんこくはくらんかいに「シャルドネの絹きぬ」として出品しゅっぴんされる（ニトロセルロースは1832年ねん発明はつめい）。
• 1892年ねん：イギリスのクロス（en:Charles Frederick Cross）とビーバン（en:Edward John Bevan）がビスコースレーヨンを発明はつめい、特許とっきょを得える。
• 1901年ねん：ドイツのティーレ（Edmund Thiele）がストレッチ紡糸ぼうし法ほうを発明はつめいして銅どうアンモニアレーヨンの実用じつよう化かに成功せいこうする（銅どうアンモニアレーヨンは1857年ねん発明はつめい）。
• 1918年ねん：ドイツのベンベルグ社しゃ（en:J. P. Bemberg）が銅どうアンモニアレーヨン（キュプラ）の製造せいぞうを開始かいしする。
• 1938年ねん：デュポン社しゃが1935年ねんにアメリカのウォーレス・カロザースが発明はつめいしたナイロンの製造せいぞうを開始かいしする。
• 1941年ねん：イギリスのJ. R.ウィンフィールド（J. R. Whinfield） とJ. T.ディクソン（J. T. Dickson）がポリエステル繊維せんいを発明はつめいする。
• 1950年ねん：イギリスのインペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI)社しゃがポリエステル繊維せんい（商品しょうひん名めい：テリレン）の製造せいぞうを開始かいしする。
• 1950年ねん：デュポン社しゃがアクリル繊維せんいの製造せいぞうを開始かいしする。
• 1950年ねん：クラレがビニロン（ポバール原料げんりょう）の工業こうぎょう化かを開始かいしする。
• 1953年ねん：アメリカのデュポン社しゃがポリエステル繊維せんい（商品しょうひん名めい：ダクロン）の製造せいぞうを開始かいしする。
• 1959年ねん：炭素たんそ繊維せんいが工業こうぎょう化かされる。（炭素たんそ繊維せんいは1860年ねん発明はつめい）

関連かんれん項目こうもく

• 天然てんねん繊維せんい - 動物どうぶつ繊維せんい / 植物しょくぶつ繊維せんい / 鉱物こうぶつ繊維せんい
• 高分子こうぶんし

外部がいぶリンク

• 日本にっぽん化学かがく繊維せんい協会きょうかい