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毛皮けがわ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
オポッサム毛皮けがわ

毛皮けがわ(けがわ、えい: fur)とは、体毛たいもうがついたままのししかわのこと[1]動物どうぶつ毛皮けがわもちいないフェイクファーなどのかたとの対比たいひで、本物ほんもの動物どうぶつ毛皮けがわのものをリアルファーともう。現代げんだいでは、基本きほんてきには毛皮けがわかわ部分ぶぶんなめして使つか[1]

古来こらい防寒ぼうかんファッション[2]などに利用りようされてきた。一般いっぱん人間にんげん衣類いるいなどに利用りようするじょうでは、断熱だんねつせいもとめる場合ばあいには加工かこうやす体毛たいもう哺乳類ほにゅうるいもちいられる。なお哺乳類ほにゅうるいでも水辺みずべなどに生息せいそくする動物どうぶつや、こまかくやわらかい毛並けなみを動物どうぶつのほうがこのまれる傾向けいこうもあり、それら毛皮けがわあての乱獲らんかくなどにより絶滅ぜつめつひんした動物どうぶつもいる。

動物どうぶつ犠牲ぎせいともな毛皮けがわ使用しようへの反対はんたいから、多数たすうのファッションブランドがフェイクファーへ転向てんこうしつつあり[3]、EUでは毛皮けがわ製品せいひん輸入ゆにゅうがく過去かこ10年間ねんかんで60%以上いじょう減少げんしょうした[4]

利用りよう歴史れきし

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35まんねんまえトータヴェルひと再現さいげんした人形にんぎょう。(フランス、トータヴェル

人類じんるい旧石器時代きゅうせっきじだいから、狩猟しゅりょうおこな動物どうぶつ食用しょくようにし毛皮けがわ衣類いるいとして使用しようしていたとかんがえられている。かつては防寒ぼうかんとして毛皮けがわわるものはなかったとかんがえられており、とく寒冷かんれい気候きこうきたヨーロッパなどでは、毛皮けがわ生活せいかつかせない必需ひつじゅひんであった。カエサルの『ガリア戦記せんき』にはゲルマンじん毛皮けがわ着用ちゃくようしていたことをしめ記述きじゅつがある。

毛皮けがわをまとっているエスキモー(『National Geographic Magazine』の1917ねん掲載けいさい写真しゃしん
さむコクピットすわるパイロットが着用ちゃくようした毛皮けがわのコート

封建ほうけん時代じだいのヨーロッパでは、高級こうきゅう毛皮けがわ宝石ほうせきなどと同様どうよう財宝ざいほうとしてあつかわれた。イギリスヘンリー8せい在位ざいい1509ねん - 1547ねん)は王族おうぞく貴族きぞく以外いがいものくろ毛皮けがわ着用ちゃくようすることをきんじ、とりわけくろテン毛皮けがわ子爵ししゃく以上いじょうものしか着用ちゃくようできないとした。18世紀せいき以降いこうにはヨーロッパ全土ぜんどひろまり、貴族きぞくキツネテンイタチなど、庶民しょみんヒツジイヌネコなどの毛皮けがわ使用しようしていた。

くろテンやビーバー、キツネといった毛皮けがわロシア主要しゅよう輸出ゆしゅつひんとして、おおきな商業しょうぎょうじょう利益りえきをもたらした。16世紀せいき以降いこうロシア帝国ていこく毛皮けがわもとめて、東方とうほう領土りょうどひろげ、シベリア開発かいはつおこなった。ロシア政府せいふはシベリアの少数しょうすう民族みんぞくたいし、毛皮けがわかたちぜい徴収ちょうしゅうした。このぜいは「ヤサク」とばれる。

18世紀せいきにはラッコ毛皮けがわ流行りゅうこうし、さい高級こうきゅうひんとして高値たかね取引とりひきされた。ロシアじんはこれをもとめて極東きょくとうカムチャツカ半島はんとう、さらにはリング海りんぐかいかいえてきたアメリカ大陸あめりかたいりくアラスカまで進出しんしゅつし、毛皮けがわ業者ぎょうしゃきょまんとみをもたらした。乱獲らんかくにより、20世紀せいき初頭しょとうにはラッコは絶滅ぜつめつ寸前すんぜんまで減少げんしょうした。

シベリアやアラスカのエスキモーなど寒冷かんれい地方ちほう生活せいかつする人々ひとびとは、防寒ぼうかんようとしてトナカイアザラシ毛皮けがわ愛用あいようしている。帽子ぼうし上着うわぎ、ズボン、長靴ながぐつ手袋てぶくろなど、ほぼ全身ぜんしん毛皮けがわおおっている。ロアール・アムンセン南極なんきょく探検たんけんさいにはイヌイットから伝授でんじゅされた毛皮けがわ防寒ぼうかん使用しようした。

20世紀せいきなか以降いこう狩猟しゅりょうによる毛皮けがわ採取さいしゅ減少げんしょうし、大半たいはん飼育しいくじょうわれたものの毛皮けがわ加工かこう生産せいさんするようになった。天然てんねん毛皮けがわ世界せかい各地かくち産出さんしゅつするものの、重要じゅうよう供給きょうきゅう寒冷かんれいである[1]

日本にっぽん

旧石器時代きゅうせっきじだいれいとしては、北海道ほっかいどうかしわだい1遺跡いせきから2まんねんまえ着色ちゃくしょくされた毛皮けがわられる痕跡こんせき確認かくにんされており、着色ちゃくしょくりょうとしては黒色こくしょく顔料がんりょうである二酸化にさんかマンガン赤色あかいろ顔料がんりょうであるあか鉄鉱てっこうなどが使用しようされたとられ、採掘さいくつされた鉱石こうせきちかくの遺跡いせきからつかっている[5]

日本にっぽんにおいて、他国たこくから毛皮けがわ輸入ゆにゅうをうかがわせる逸話いつわしるした記事きじは、『日本書紀にほんしょきひとしあきら5ねん659ねんじょう高句麗こうくり使つかいじんヒグマ毛皮けがわ敷物しきもの)をろうとしたはなしられる(詳細しょうさいは「ヒグマ#人間にんげんとのかかわり」の日本にっぽん参照さんしょう)。この時期じき(7世紀せいきなかばの時点じてん)では、列島れっとう北方ほっぽう北海道ほっかいどう交易こうえきからもヒグマの毛皮けがわながれていた(それ以前いぜんでは高句麗こうくりからの輸入ゆにゅうたよっていた)内容ないようとなっている。

嵯峨天皇さがてんのう時代じだい以来いらい渤海こくからテン(てん)やトラなどの毛皮けがわ高級こうきゅう舶来はくらいひんとして輸入ゆにゅうされた。平安へいあん時代じだいには貴族きぞくあいだ毛皮けがわ流行りゅうこうし、富裕ふゆう人々ひとびと防寒ぼうかんとして着用ちゃくようした[6]延長えんちょう5ねん(927ねん)の『延喜えんぎしき』の弾正だんじょうだいしき貴族きぞく服装ふくそう規定きてい)には、公式こうしきでの位階いかいべつ毛皮けがわ着用ちゃくよう基準きじゅんさだめられており、てんがわ参議さんぎ以上いじょうしか着用ちゃくようみとめられないさい高級こうきゅうのランクとされていた。たとえば、平家ひらか重代じゅうだいよろいである唐皮からかわはトラの毛皮けがわもちいられている(『平家ひらか物語ものがたり』)。

室町むろまち幕府ばくふだい6だい将軍しょうぐん足利あしかが義教よしのり再開さいかいした勘合かんごう貿易ぼうえきによって、中国ちゅうごくがわかいたまもの品目ひんもくとしてへびがわ50ちょうさるがわ1まんちょうくまがわ30はりげられ、おくられた[7]

庶民しょみんにおいては、ふるくよりたとえばマタギなど猟師りょうしみずか仕留しとめたしし毛皮けがわ加工かこうし、防寒ぼうかんなどとしてもちいていた。また豪奢ごうしゃ装飾そうしょくよう敷物しきもの工芸こうげいひん素材そざいとして利用りようされていたようである。

ただし、一般いっぱんでは衣料いりょう素材そざいとしてはあまり積極せっきょくてき使つかわれておらず、細々こまごまとした流通りゅうつうにとどまっていた。日本にっぽん最初さいしょの、一般いっぱんけに毛皮けがわ販売はんばいする専門せんもんてんは、1868ねん栃木とちぎけん日光にっこうはちいしまち創業そうぎょうした山岡やまおか毛皮けがわてんだとされている[ちゅう 1]

だい世界せかい大戦たいせんときでは、軍需ぐんじゅひんとしてのムササビ毛皮けがわ高騰こうとうした(詳細しょうさいは「ムササビ#ひととの関係かんけい」を参照さんしょう)。戦時せんじではだい日本にっぽんりょうともかい毛皮けがわ収入しゅうにゅうげんとしていた(詳細しょうさいは「だい日本にっぽんりょうともかい#歴史れきし」を参照さんしょう)。また飛行ひこうふく素材そざいとしてしょ外国がいこく同様どうようヌートリア飼育しいく国民こくみん奨励しょうれいしたが、戦後せんごには放逐ほうちく野生やせい問題もんだいとなっている[8]

1959ねん1がつ14にち皇太子こうたいし明仁あきひと親王しんのう正田しょうだ美智子みちこ婚約こんやくおり正田しょうだがわ実家じっかおりけていたミンクストール当時とうじのテレビで大々的だいだいてき放映ほうえいされ、女性じょせいたちはミッチー・ブーム熱狂ねっきょう、ミンクのストールも注目ちゅうもくされた。おりしも日本にっぽん岩戸いわと景気けいき大衆たいしゅうゆたかさを実感じっかん享受きょうじゅする時代じだい突入とつにゅうしていたので、毛皮けがわはそれまで一部いちぶ権力けんりょくしゃ有力ゆうりょくしゃだけの贅沢ぜいたくひんだった状態じょうたいから、一気いっき一般いっぱん労働ろうどうしゃそうでも頑張がんばればとどく、高価こうか贅沢ぜいたくだが一般いっぱんてき装飾そうしょくてき意味合いみあいのつよ衣料いりょうひんにまでなった。

現代げんだいでは動物どうぶつ愛護あいご動物どうぶつ権利けんり意識いしきたかまりから毛皮けがわ利用りようたいして国際こくさいてき反対はんたい運動うんどう展開てんかいされており、とく寒冷かんれいとうで「必需ひつじゅひん」として利用りようするのではなく「贅沢ぜいたくひん」として利用りようすることにはつよ嫌悪けんおかんひとおおいとわれる。なお、愛玩あいがん動物どうぶつとしての地位ちいもあるいぬねこ毛皮けがわかんしては、こういった嫌悪けんおかん形成けいせいされやすい傾向けいこうられ、ヨーロッパでは2006ねん9がつ流通りゅうつうしていた毛皮けがわ製品せいひんうちいぬねこのそれを使つかったもの確認かくにんされたため社会しゃかい問題もんだいとなり、2006ねん11月20にち欧州おうしゅう連合れんごう加盟かめい諸国しょこくあいだでは貿易ぼうえき禁止きんしとなった [9]

おも毛皮けがわじゅう

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アカギツネ毛皮けがわ

哺乳類ほにゅうるいからだひょう体毛たいもうえている。密生みっせいした体毛たいもうはそのなか空気くうきそうたも断熱だんねつせいすぐれており、これによって哺乳類ほにゅうるいねつ体温たいおんがることをふせいでいる。野生やせい動物どうぶつあめなどにさらされるが、たとえ毛皮けがわ外面がいめん表面ひょうめんれるような状況じょうきょうになっても根元ねもと油分ゆぶんによりみずをはじくことでみず気化きかによりねつうばわれることをふせぐ。冬季とうきにはさらにこまかなやして断熱だんねつせいたかめる動物どうぶつもいる。のこしたままの皮革ひかくは、皮革ひかく上記じょうきのような防寒ぼうかん効果こうか効用こうようくわわったものになり、つまり防寒ぼうかんとなるのである。

鳥類ちょうるい羽毛うもう空気くうきふくすぐれた保温ほおん断熱だんねつ役割やくわりたしているが、ただ羽毛うもう毛皮けがわのようにはがしてシートじょうのままあつかうことはむずかしい[ちゅう 2]

毛皮けがわじゅうとして、キツネテンイタチチンチラなど寒冷かんれい生息せいそくするたねや、ラッコカワウソビーバーアザラシなどはん水生すいせいないし水生すいせいたねおももちいられる。これらはいずれも断熱だんねつせいすぐれた毛皮けがわつ。

毛皮けがわ動物どうぶつ種類しゅるい

毛皮けがわ特徴とくちょう

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保温ほおんせい吸湿きゅうしつせい通気つうきせいすぐれるものの、天然てんねん繊維せんいくらべるとねつひかりかび害虫がいちゅうなどによわ[1]

防寒ぼうかんようとして衣服いふく履物はきもの内側うちがわ使つかわれることがおおかったが、より安価あんか高性能こうせいのう合成ごうせい素材そざい登場とうじょうにより、現代げんだいではショール袖口そでぐちすそなどの装飾そうしょくもちいられている[1]

毛皮けがわ加工かこう

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ぜん処理しょり

動物どうぶつ畜殺していだ生皮なまかわからにくかたまり脂肪しぼうかたまりのぞく。さらに中性ちゅうせい洗剤せんざいや、工業こうぎょうようガソリンといった有機ゆうき溶剤ようざいで、脱脂だっしおこなう。

なめし

脱脂だっし、なめしざい漬込つけこんで防腐ぼうふ処理しょりおこなう。なめしざいとして、ミョウバン食塩しょくえん混合こんごう溶液ようえきや、塩基えんきせいクロムしお食塩しょくえん混合こんごう溶液ようえきなどがもちいられる。ミョウバンによるなめしはふるくからおこなわれてきたものであるが、水分すいぶんよわいため、染色せんしょくにはかない。クロムしおによるなめしはたい水性すいせいたい熱性ねっせいすぐれるが、毛皮けがわあわあお緑色みどりいろ着色ちゃくしょくしてしまうという難点なんてんがある。皮革ひかくのなめしのことを英語えいごでタンニング (tanning) とぶが、毛皮けがわ場合ばあいドレッシング (dressing) とばれる。

仕上しあ

必要ひつようおうじて染色せんしょくおこなう。あぶらによってかわ繊維せんい油脂ゆし浸透しんとうさせ、「水分すいぶんくわえる」→「みとばし」→「乾燥かんそう」をかえすことで、柔軟じゅうなんせいくする。さらに、剪毛によって毛並けなみをととのえて製品せいひんとする。

動物どうぶつ愛護あいごじょう問題もんだい

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毛皮けがわよう養殖ようしょくじょうのケージのなかのキツネ

世界せかい毛皮けがわの85%以上いじょう野生やせい由来ゆらいではなく、毛皮けがわよう動物どうぶつ養殖ようしょく農場のうじょうから生産せいさんされており[10]、その毛皮けがわよう動物どうぶつ養殖ようしょくじょうにおける動物どうぶつあつかいが問題もんだいされている[11]動物どうぶつにはつねどう行動こうどう幼児ようじ殺害さつがいきず行為こういなどの異常いじょう行動こうどうがみられる。近親きんしん交配こうはい結果けっかはす頸や難聴なんちょう免疫めんえき不全ふぜん個体こたいまれた。

1ちゃくのフォックスコートにはやく10ひき、ミンクコートやラクーンコート、ラビットコートにはやく30ひき動物どうぶつ使つかわれる。

法学ほうがくしゃのフランシオンは、一般いっぱん必要ひつよう動物どうぶつへの危害きがいけるべきだとしているが、毛皮けがわ必要ひつよう危害きがい禁止きんしはんし、やめるべきだと指摘してきする[12]

2004ねんから2005ねんに Swiss Animal Protection などNGO(政府せいふ組織そしき)の調査ちょうさ[13]中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく河北かほくしょう毛皮けがわ生産せいさん現場げんば劣悪れつあく動物どうぶつ飼育しいく施設しせつや、タヌキ意識いしきのある状態じょうたい毛皮けがわはがされているなどの実態じったい[14]あきらかになって以降いこう中国ちゅうごくだけではなくフィンランド[15][16]ノルウェー[17][18]などでも毛皮けがわよう動物どうぶつ養殖ようしょく農場のうじょう劣悪れつあく飼育しいく環境かんきょうについて告発こくはつつづいている。

以上いじょうのような背景はいけいから、世界せかい各国かっこく毛皮けがわ廃止はいし運動うんどうがおこっており、ワールドワイド ファー フリー フライデー (WFFF) には、世界せかいの200かこくでデモンストレーションがおこなわれている[19]

こうした批判ひはんけたファッションブランドやアパレル各社かくしゃ毛皮けがわばなれがすすんでいる。2023ねんにはドイツ農業のうぎょう大臣だいじんが「必要ひつようのない高級こうきゅうひん生産せいさんするために、これらの動物どうぶつ繁殖はんしょくさせ、ころすことは倫理りんりてきゆるされない。」と発言はつげん[20]

くわえて、新型しんがたコロナウイルス感染かんせんしょうへの防疫ぼうえき措置そちとしてミンクのころせ処分しょぶんデンマークで2020ねん11月に政府せいふからめいじられたことから、飼育しいく業者ぎょうしゃ協同きょうどう組合くみあいすうねん廃業はいぎょうすることをめるれいてきている[21]

毛皮けがわ廃止はいしうご

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アメリカのカリフォルニアしゅうでは、2023ねん1がつ1にちから毛皮けがわ製品せいひん販売はんばい禁止きんしする法律ほうりつ施行しこうされた[22]

ファストファッションブランドからラグジュアリーブランドまで毛皮けがわ廃止はいし宣言せんげんするファッションブランドは増加ぞうかしている。毛皮けがわ反対はんたいする国際こくさい連盟れんめい Fur Free Alliance(FFA/事務じむきょくオランダアムステルダム)が各国かっこく展開てんかいしているファーフリープログラムには現在げんざい859のファッションブランドが参加さんかしており[23]、これらのブランドは毛皮けがわ販売はんばいしないことを宣言せんげんしている。ファーフリープログラムに参加さんかしているブランドはグッチヒューゴ・ボスアルマーニなどのラグジュアリーブランドからZARAH&Mのようなファストファッションブランドまで幅広はばひろい。

日本にっぽんおも毛皮けがわ廃止はいしブランドではアシックスグンゼコム・デ・ギャルソンしまむらダイソーハニーズミキハウス無印むじるし良品りょうひんモンベルユニクロほか、ペット用品ようひんのようなファッション以外いがい企業きぎょうにおいても毛皮けがわ廃止はいしうごきがひろがっている[24]

このような毛皮けがわ廃止はいしうごきをけ、世界せかい最大さいだい毛皮けがわ生産せいさんこくである中国ちゅうごくでは、ミンク、キツネ、タヌキから採取さいしゅされた毛皮けがわそう産出さんしゅつりょうが、2014ねんの8700まんまいから2019ねんには3900まんまい、2021ねんには2700まんまい減少げんしょうした[25]。ミンクの毛皮けがわ統計とうけいると、中国ちゅうごくふくめた世界せかい全体ぜんたい生産せいさんりょう減退げんたいつづけている[26]

2023ねん9がつ27にちリトアニア議会ぎかい毛皮けがわ農場のうじょう禁止きんし法案ほうあん可決かけつ本法ほんぽうにより国内こくないやく40のミンク農場のうじょうと30のチンチラ毛皮けがわ農場のうじょうを2027ねんまでに閉鎖へいさしなければならない[27]同年どうねん12がつバーバリーなどが会員かいいんとなる英国えいこくファッション評議ひょうぎかいは、ロンドンファッションウィークで毛皮けがわ使用しよう正式せいしき禁止きんしすると発表はっぴょうした[28]

毛皮けがわ代替だいたいひん

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リアルファーにたいして、毛皮けがわせた人工じんこう毛皮けがわをフェイクファーとぶが、最近さいきん技術ぎじゅつ向上こうじょうし、エコファーともばれはじめた。日本にっぽんでは和歌山わかやまけん高野口こうやぐち織物おりもの産業さんぎょう注目ちゅうもくされている[29]。ただし、フェイクファーは化学かがく繊維せんいであることからエコファーとぶことにたいする異論いろんもある。

植物しょくぶつ成分せいぶん再生さいせいポリエステル使用しようしたものも登場とうじょうしている[30]

廃棄はいきされたさかなかわ利用りようおこなわれている[3]

環境かんきょう汚染おせん

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なめしに使つかわれる化学かがく薬品やくひんには環境かんきょう人体じんたい有害ゆうがいろくクロムホルムアルデヒドふくんでおり、毛皮けがわなめしがさかんな中国ちゅうごくでは河川かせん生活せいかつすい農業のうぎょう用水ようすいなどが汚染おせんされ「がんむら」とばれるむら多数たすう存在そんざいする。毛皮けがわ生産せいさんさかんな河北かほくしょうなどはその筆頭ひっとうである。ろくクロムホルムアルデヒド国際こくさいがん研究けんきゅう機関きかん(IARC)の分類ぶんるいではグループ1(ひとたいしてはつがんせいがある)に指定していされており、2001ねん調査ちょうさでは広東かんとんしょうむらでのがん罹患りかんりつ全国ぜんこく平均へいきんの9ばいであった。がんのむらは2013ねん中国ちゅうごく政府せいふ重点じゅうてん課題かだいみとめるところとなりみはされているようだが解決かいけつにはなが年月としつきがかかるものとおもわれる。

化学かがく物質ぶっしつ残留ざんりゅう

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毛皮けがわから基準きじゅんえるろくクロムホルムアルデヒド検出けんしゅつされることがあるため、毛皮けがわ製品せいひん使用しようすることによる健康けんこうめん懸念けねんされている。海外かいがい調査ちょうさではベビー・キッズアイテムの毛皮けがわから人体じんたい影響えいきょうのある危険きけん化学かがく物質ぶっしつこう濃度のうど検出けんしゅつされ、2016ねんにはイタリア保健ほけんしょうから毛皮けがわいているいくつかの子供こどもよう衣料いりょうひん回収かいしゅう命令めいれい市場いちばされた[31]日本にっぽんでも2009ねん東京とうきょう調査ちょうさでマフラーやかみめの毛皮けがわからホルムアルデヒド検出けんしゅつされている。

ひとじゅう共通きょうつう感染かんせんしょう

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毛皮けがわ養殖ようしょくじょうは、動物どうぶつからひとへの感染かんせんしょうリスクがたかいことが指摘してきされている[32]

毛皮けがわようミンク農場のうじょうにおいて新型しんがたコロナウイルス感染かんせんしょう蔓延まんえんした。デンマークは200以上いじょう毛皮けがわ農場のうじょう新型しんがたコロナウイルスが発生はっせいしたことをけ、1,700まんとうのミンクがころせ処分しょぶんされた。ウイルス学者がくしゃらは、毛皮けがわ産業さんぎょうにはパンデミックリスクがあるとして、政府せいふたいし、毛皮けがわ養殖ようしょくを「廃止はいし」するようもとめた[33]

また2023 ねんにはフィンランド毛皮けがわ農場のうじょうとりインフルエンザに感染かんせん、ミンクとキツネ5まんとうころせ処分しょぶんをフィンランド食品しょくひん当局とうきょく命令めいれいした。当局とうきょくによると、ミンクはとりインフルエンザのなかあいだ宿主しゅくしゅとなり、ウイルスがより効果こうかてきにヒトに感染かんせんするかたち変異へんいすることを可能かのうにするという[34]

品質ひんしつ表示ひょうじ問題もんだい

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日本にっぽん家庭かてい用品ようひん品質ひんしつ表示法ひょうじほうには毛皮けがわふくまれていないため、毛皮けがわ購入こうにゅうけたい消費しょうひしゃ判別はんべつすることができないという問題もんだい提起ていきされており、国会こっかいでこの問題もんだいなんげられている[35][36]

動物どうぶつがくにおける毛皮けがわ

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毛皮けがわ哺乳類ほにゅうるい標本ひょうほんとしても使つかわれる。それをもとの姿すがたちか復元ふくげんした剥製はくせい標本ひょうほんとしてもちいられる。したがって、かつては未知みち地域ちいき新種しんしゅ野生やせい動物どうぶつ発見はっけんされ、標本ひょうほんはその地域ちいき出店しゅってん商品しょうひんとして入手にゅうしゅされた毛皮けがわだった、というれいがある。

にく食用しょくよう

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毛皮けがわうえで、その動物どうぶつほか部分ぶぶんにく)が利用りようされることもある。たとえば、ウサギふるくより防寒ぼうかんよう毛皮けがわとしてもちいられ、ことだい世界せかい大戦たいせん以降いこうには航空機こうくうき発達はったつにより気温きおんひくこう高度こうど対応たいおうした飛行ひこうふく必要ひつようとされ、日本にっぽんではだい規模きぼなウサギの養殖ようしょく毛皮けがわ加工かこうおこなわれた。これらのにく元々もともと不要ふよう部分ぶぶんではあったのだが、これをプレスハムなどのかたち加工かこうして食品しょくひんとして利用りようすることがしばしばおこなわれた[37]

組織そしき団体だんたい

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 現在げんざい神奈川かながわけん横浜よこはま元町もとまちみせかまえている。
  2. ^ 羽毛うもううす皮膚ひふ表面ひょうめんからじく構造こうぞうえており、さらにそのじく構造こうぞう表面ひょうめんこまかい起毛きもうやしで断熱だんねつそうつくるため、これをはがして断熱だんねつせいをもたせたまま加工かこうすることは困難こんなんである。

出典しゅってん

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