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南極なんきょく

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南極大陸なんきょくたいりく
南極大陸なんきょくたいりく衛星えいせい写真しゃしん
南極なんきょくはた

南極なんきょく(なんきょく、えい: Antarctic)とは、地球ちきゅううえ南極なんきょくてん、もしくはみなみ極点きょくてん中心ちゅうしんとする南極大陸なんきょくたいりくおよびその周辺しゅうへん島嶼とうしょ海域かいいき南極なんきょくかい)などをふく地域ちいきう。南極なんきょくてん中心ちゅうしん南緯なんい6633ふんまでの地域ちいきについては南極なんきょくけんぶ。南緯なんい50から60にかけて不規則ふきそく形状けいじょうえが氷塊ひょうかい不連続線ふれんぞくせんである南極なんきょく収束しゅうそくせんがあり、これよりみなみ南極なんきょく地方ちほうともぶ。南極なんきょく地方ちほうには、南極大陸なんきょくたいりく中心ちゅうしん南極なんきょくかいふくみ、太平洋たいへいようインド洋いんどよう大西おおにしひろし一部いちぶぞくする。

なお、1961ねん6がつ発効はっこうした南極なんきょく条約じょうやくにより、南緯なんい60以南いなん領有りょうゆうけん主張しゅちょう凍結とうけつすでにしていた主張しゅちょう放棄ほうき意味いみしない)されており、軍事ぐんじ利用りようかく実験じっけんなども禁止きんしされている。

地理ちり[編集へんしゅう]

南極大陸なんきょくたいりく南極なんきょくかいからなる。南極大陸なんきょくたいりくは、地球ちきゅうじょうもっと寒冷かんれい地域ちいきひとつであり、およそ3000まんねんあいだもったゆきけずに1000~2000メートルのあつこおりそうとなった氷雪ひょうせつこおりゆか)におおわれ一部いちぶ沿岸えんがん地区ちく地衣ちいるいのぞき、植生しょくせいはほとんどない。陸地りくちはほとんどこおりゆかしたにあり、がん地区ちくすくない。こおりゆか氷河ひょうがとなってゆっくりとやま斜面しゃめんをずりちてうみされて流出りゅうしゅつし、一部いちぶではたなごおり形成けいせいしている。たなごおりおきされ、みずからのおもさによってひびれして氷山ひょうざんとしてうみただようことになる[1]

南極大陸なんきょくたいりく西半球にしはんきゅう西南せいなんきょく東半球ひがしはんきゅうひがし南極なんきょくからなり、ひがし南極なんきょくのほうが面積めんせきおおきい。西南せいなんきょくには南極なんきょく半島はんとうがあり、この半島はんとう北端ほくたん南緯なんい63付近ふきん南極なんきょく圏外けんがいにある。ツンドラ気候きこう地帯ちたいであり、南極なんきょくのなかでは温暖おんだんであるため、観測かんそく基地きち集中しゅうちゅうしている。

環境かんきょう問題もんだい[編集へんしゅう]

コウテイペンギン

高緯度こういど極地きょくちである南極大陸なんきょくたいりく日本にっぽんなどていなか緯度いど地域ちいきくらべて地球ちきゅう温暖おんだんひとし影響えいきょう顕著けんちょである。南極なんきょく半島はんとういき基地きちでの観測かんそくでは、ファラデー基地きちで50 ねんで 2.5 ~ 3℃ののぼりあつしとなっているなど、とし平均へいきんぶしとも温暖おんだん明瞭めいりょうである。しかし、一方いっぽうでそれ以外いがい地域ちいきとく大陸たいりく本体ほんたいの「ひがし南極なんきょく」では温暖おんだん寒冷かんれいもみられない。昭和しょうわ基地きちでも 50年間ねんかん気温きおん変化へんか記録きろくでも同様どうようおおきな変化へんかはない 。また、内陸ないりく南極なんきょくてん基地きちではむしろ寒冷かんれい(10年間ねんかんで-0.17 ℃の低下ていか)がられるほどである。ひがし南極なんきょく沿岸えんがんでは、うみごおりひろがりも縮小しゅくしょうはしておらず、ぎゃく面積めんせき増加ぞうかしているとの報告ほうこく整合せいごうてきである。このように現在げんざいのところ半島はんとういき以外いがい地上ちじょうでは、気温きおんこおりゆかなどに温暖おんだん目立めだった兆候ちょうこうられない。しかし南大みなみおお洋上ようじょう大気たいきながれによっては、温暖おんだん傾向けいこうかう可能かのうせいがあることには注意ちゅうい必要ひつようである[2][3][4]地上ちじょう温暖おんだん傾向けいこうられない一方いっぽうで、上空じょうくう温暖おんだんしている。対流圏たいりゅうけんぜんそうでは気温きおん上昇じょうしょう明瞭めいりょうで、とく中層ちゅうそう600hPa高度こうどやく4000m高度こうど)では、10ねんで0.7℃も上昇じょうしょうしている。対流圏たいりゅうけんぜんそう温暖おんだんしているといえる。しかし、うえ成層圏せいそうけんでは気温きおん低下ていか寒冷かんれいしている[5][6]成層圏せいそうけんでは、おもにオゾンによる紫外線しがいせん吸収きゅうしゅうによる加熱かねつ二酸化炭素にさんかたんそとう温室おんしつ効果こうかガスによる赤外線せきがいせん放射ほうしゃによる冷却れいきゃくによりバランスをたもっており、二酸化炭素にさんかたんそ増加ぞうかするとあかがい冷却れいきゃく効果こうかつよまり寒冷かんれいし、またオゾンが減少げんしょうすれば、紫外線しがいせん加熱かねつ減少げんしょうするので寒冷かんれいする。現在げんざい、オゾンホールは回復かいふくしておらず、二酸化炭素にさんかたんそ増加ぞうかしているため、成層圏せいそうけん寒冷かんれいこっているとかんがえられる[7]。また、オゾンホールには南極なんきょく温暖おんだん抑制よくせいしてきたといういちめんもあり[8]南極なんきょくのオゾンホールの縮小しゅくしょうが、南半球みなみはんきゅう温暖おんだん加速かそくする可能かのうせいかるなど[9]、オゾンそう回復かいふくが、今後こんごどのように地球ちきゅう全体ぜんたい影響えいきょうおよぼすのか、継続けいぞくてき観測かんそくもとめられている。

近年きんねんではこおりだい規模きぼ融解ゆうかい観測かんそくされており、2003ねん1がつ以降いこう1年間ねんかんで92±10Gtのこおりうしなわれた[10]。この南極なんきょくこおりゆか減少げんしょうおも西南せいなんきょく氷河ひょうがとしてながうみしたたなごおりきている。たなごおりした大地だいちではなくうみであり、あたたかい海水かいすい流入りゅうにゅうすることによりこおり融解ゆうかいしているとかんがえられている。一方いっぽうで、東南とうなんきょく温暖おんだん傾向けいこうはみられず、降雪こうせつによりこおりゆかあつみがしているが、西南せいなんきょく減少げんしょうりょう速度そくど増加ぞうかりょう速度そくど上回うわまわっており南極なんきょく全体ぜんたいとしてはこおり減少げんしょうしている[11][12]。もしも、南極なんきょくこおりすべけたとしたら海水かいすいじゅんやく58m上昇じょうしょうさせると推定すいていされる[13][14]。また融解ゆうかい速度そくどはやまることで、今世紀こんせいきちゅうにメートル単位たんい海面かいめん上昇じょうしょうこす可能かのうせい指摘してきされている[15][よう文献ぶんけん特定とくてい詳細しょうさい情報じょうほう]

放射ほうしゃせい物質ぶっしつ[編集へんしゅう]

1950年代ねんだい以降いこうおこなわれたかく実験じっけんによる放射ほうしゃせい物質ぶっしつ南極なんきょくでも検出けんしゅつされる。検出けんしゅつされる放射ほうしゃせい物質ぶっしつのうちトリチウムさん重水素じゅうすいそ)は分布ぶんぷ濃度のうどがある[16]、しかし濃度のうどしょうじる理由りゆう解明かいめいである[16]

越冬えっとう観測かんそく基地きち[編集へんしゅう]

南極なんきょく地方ちほうニュージーランドオーストラリアみなみアメリカ大陸あめりかたいりくなど一部いちぶ周辺しゅうへんしょ地方ちほうふくむ)

このふし記載きさいされていない基地きちかんしては、南極なんきょく観測かんそく基地きち一覧いちらん参照さんしょう

南極なんきょく条約じょうやくにより南極なんきょくはどこのくに領土りょうどでもない。

タイムゾーン[編集へんしゅう]

南極なんきょく地方ちほう各地かくち散在さんざいする各国かっこく観測かんそく基地きちとうでは、基本きほんてきにその地点ちてん経度けいどによりどのタイムゾーンぞくするかを各々おのおのさだめている。たとえば、昭和しょうわ基地きち東経とうけいやく40のため、UTC+3あいだとしている。

南極なんきょくてんは、本来ほんらいどのタイムゾーンにも拘束こうそくされないが、極点きょくてんにほどちかいアムンゼン・スコット基地きちおも輸送ゆそう連絡れんらくされるニュージーランドのタイムゾーン(UTC+12あいだ夏時間なつじかんUTC+13あいだ)を採用さいようしているため、これにじゅんじることがおおい。

南極なんきょくかんする協定きょうていなど[編集へんしゅう]

失効しっこう

調査ちょうさ[編集へんしゅう]

地質ちしつ化石かせき岩石がんせきかんする報告ほうこくむかしからおこなわれているが、日本語にほんご要約ようやくしたものは1957ねん立見たつみ辰雄たつお菊池きくちとおる久野くのひさらが地学ちがく雑誌ざっし発表はっぴょうした『南極なんきょく地域ちいき地質ちしつ』が初出しょしゅつである[17]

南極なんきょくにおける化石かせき[編集へんしゅう]

1912ねん冒険ぼうけんロバート・スコットらの調査ちょうさたいが、植物しょくぶつ化石かせきふくむ16kgの貴重きちょうなサンプルを収集しゅうしゅうし、植物しょくぶつ化石かせきについての記述きじゅつもみられるが調査ちょうさたい全員ぜんいん帰国きこくまえ死亡しぼうしてとどけられるまで9かげつ経過けいかした。ただ、植物しょくぶつ化石かせき自体じたい以前いぜんから報告ほうこくされており、1892ねん捕鯨ほげいせん船長せんちょうカール・アントン・ラーセン英語えいごばんシーモアとう珪化化石かせき発見はっけんをしたのが初出しょしゅつとされる[18]

うみごおり面積めんせき[編集へんしゅう]

南極なんきょくたなごおりうみごおり面積めんせきなどを観測かんそくしているべい国立こくりつ雪氷せっぴょうデータセンター英語えいごばんによって、観測かんそくデータがまとめられ報告ほうこくおこなわれている[19][20]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 谷合たにあいみのり『たくさんの生命せいめいはぐく地球ちきゅうのさまざまななぞかす! 「地球ちきゅう科学かがく入門にゅうもん」』ソフトバンククリエイティブ 2012ねん 68ページ
  2. ^ 平沢ひらさわ尚彦なおひこ. “大気たいき気候きこう観測かんそくって、南極なんきょくなにをする?”. 国立こくりつ極地きょくち研究所けんきゅうじょ. 2021ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  3. ^ 平沢ひらさわ尚彦なおひこ. “ひがし南極なんきょく大気たいきこおりゆか表面ひょうめんあらわれる温暖おんだん影響えいきょう検出けんしゅつとメカニズムの解明かいめい”. 国立こくりつ極地きょくち研究所けんきゅうじょ. 2021ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  4. ^ 平沢ひらさわ尚彦なおひこ青木あおき輝夫てるおはやし政彦まさひこ藤田ふじた耕史こうじ飯塚いいづか芳徳よしのり栗田くりた直幸なおゆき本山もとやま秀明ひであき山内やまうちきょうひがし南極なんきょく気候きこう変動へんどう検出けんしゅつ解明かいめいけた大気たいきこおりゆか海洋かいよう長期ちょうきてき観測かんそく」『だい7かいごくいき科学かがくシンポジウム/横断おうだんセッション:[IL]きょくいき科学かがくにおける学術がくじゅつ大型おおがた研究けんきゅう計画けいかくについて』、国立こくりつ極地きょくち研究所けんきゅうじょ、2016ねん12月。 
  5. ^ 極地きょくちけんNEWS 182」『極地きょくちけんNEWS』だい182ごう国立こくりつ極地きょくち研究所けんきゅうじょ、2007ねん6がつ、1-16ぺーじISSN 13476483 
  6. ^ 山内やまうちきょう南極なんきょく北極ほっきょく地球ちきゅう温暖おんだん現状げんじょう将来しょうらい : 南極なんきょく北極ほっきょく本当ほんとう温暖おんだんしているのか?」『ヒマラヤがくだい10ごう京都きょうと大学だいがくヒマラヤ研究けんきゅうかい総合そうごう地球ちきゅう環境かんきょうがく研究所けんきゅうじょ高所こうしょプロジェクト」、2009ねん5がつ、212-220ぺーじdoi:10.14989/HSM.10.212ISSN 0914-8620NAID 120005466104 
  7. ^ 山崎やまざき孝治こうじだい 5 しょう地球ちきゅう温暖おんだんともな大気たいき海洋かいよう応答おうとう役割やくわり」。 
  8. ^ 南極なんきょく観測かんそく』(プレスリリース)国立こくりつ極地きょくち研究所けんきゅうじょ、2019ねんhttps://www.nipr.ac.jp/kouhou/PDF/kansoku2019.pdf2021ねん5がつ15にち閲覧えつらん 
  9. ^ "Ozone hole healing could cause further climate warming" (Press release). イギリス自然しぜん環境かんきょう研究けんきゅう会議かいぎ(NERC). 26 January 2010. 2021ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  10. ^ Christopher Harig; Frederik J. Simons (2015). “Accelerated West Antarctic ice mass loss continues to outpace East Antarctic gains”. Earth and Planetary Science Letters (Elsevier) 415 (1): 134-141. doi:10.1016/j.epsl.2015.01.029. 
  11. ^ 杉山すぎやま まこと箕輪みのわ あきらひろし伊藤いとう ゆうじん山根やまね 志織しおりねつすい掘削くっさくによる南極なんきょくごおりゆか底面ていめん環境かんきょう探査たんさ」『雪氷せっぴょうだい83かんだい1ごう日本にっぽん雪氷せっぴょう学会がっかい、2021ねん、13-25ぺーじdoi:10.5331/seppyo.83.1_13 
  12. ^ 川村かわむら, 賢二けんじ南極なんきょくのアイスコアから復元ふくげんする過去かこ気候きこう変動へんどう」『低温ていおん科学かがくだい76かんだい1ごう低温ていおん科学かがくだい76かん編集へんしゅう委員いいんかい、2018ねん、145-152ぺーじdoi:10.14943/lowtemsci.76.145 
  13. ^ 菅沼すがぬま ゆうかいいしはなわ 健樹たけき川又かわまた はじめじん奥野おくの 淳一じゅんいち香月かつき きょうふとし板木はんぎ 拓也たくやせき おさむ金田かねだ 平太郎へいたろう ほか「東南とうなんきょくにおける海域かいいきりくいきシームレス堆積たいせきぶつ掘削くっさく研究けんきゅう展望てんぼう」『地学ちがく雑誌ざっしだい129かんだい5ごう東京とうきょう地学ちがく協会きょうかい、2020ねん、591-610ぺーじdoi:10.5026/jgeography.129.591 
  14. ^ P. Fretwell、H. D. Pritchard et al.「Bedmap2: improved ice bed, surface and thickness datasets for Antarctica」『Articles』だい7かんだい1ごう、2013ねん、375–393ぺーじdoi:10.5194/tc-7-375-2013 
  15. ^ A new view on sea level rise,Stefan Rahmstorf,6 April 2010
  16. ^ a b 神山かみやま孝吉こうきち, 渡辺わたなべ興亜こうあ南極なんきょく内陸ないりくごおり床上ゆかうえ降下こうか堆積たいせきする物質ぶっしつについて」『南極なんきょく資料しりょうだい38かんだい3ごう、1994ねん11月、232-242ぺーじdoi:10.15094/00008863ISSN 0085-7289NAID 120005509802 
  17. ^ 辰雄たつお, 立見たちみ; とおる, 菊池きくち; ひさ, 久野くの (1957). 南極なんきょく地域ちいき地質ちしつ. 地學ちがく雜誌ざっし 66 (1): 17–33. doi:10.5026/jgeography.66.17. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/66/1/66_1_17/_article/-char/ja/. 
  18. ^ The Antarctic Report”. www.antarcticreport.com. 2023ねん11月17にち閲覧えつらん
  19. ^ Spring, Jake (2023ねん9がつ26にち). “南極なんきょくふゆうみごおり面積めんせき過去かこ最小さいしょう大幅おおはば更新こうしん 気候きこう変動へんどう懸念けねん”. Reuters. 2024ねん2がつ26にち閲覧えつらん
  20. ^ 南極なんきょくうみごおり面積めんせき、2ねん連続れんぞく過去かこ最小さいしょう更新こうしん 科学かがくしゃら「わりのはじまりか」”. CNN.co.jp. 2024ねん2がつ26にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

座標ざひょう: 南緯なんい9000ふん 西経せいけい0000ふん / 南緯なんい90.000 東経とうけい-0.000 / -90.000; -0.000