(Translated by https://www.hiragana.jp/)
顔料 - Wikipedia コンテンツにスキップ

顔料がんりょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
粉末ふんまつじょう天然てんねんウルトラマリン顔料がんりょう
合成ごうせいウルトラマリン顔料がんりょうは、化学かがく組成そせい天然てんねんウルトラマリンと同様どうようであるが、純度じゅんどなどがことなる。

顔料がんりょう(がんりょう、pigment)は、着色ちゃくしょくもちいる粉末ふんまつみずあぶら不溶ふようのものの総称そうしょう着色ちゃくしょくもちいる粉末ふんまつみずあぶらけるものは染料せんりょうばれる。

特定とくてい波長はちょうひかり選択せんたくてき吸収きゅうしゅうすることで、反射はんしゃまたは透過とうかするいろ変化へんかさせる。蛍光けいこう顔料がんりょうのぞく、ほぼすべての顔料がんりょうていしょくプロセスは、みずかひかりはっする蛍光けいこう燐光りんこうなどのルミネセンスとは物理ぶつりてきことなるプロセスである。

顔料がんりょうは、塗料とりょうインク合成ごうせい樹脂じゅし織物おりもの化粧けしょうひん食品しょくひんなどの着色ちゃくしょく使つかわれている。おおくの場合ばあい粉末ふんまつじょうにして使つかう。バインダー、ビークルあるいはてんしょくざいばれる、接着せっちゃくざい溶剤ようざい主成分しゅせいぶんとする比較的ひかくてき無色むしょく原料げんりょう混合こんごうするなどして、塗料とりょうやインクといった製品せいひんとなる。実用じつようてき分類ぶんるいであり、分野ぶんや領域りょういきによって、顔料がんりょうとして認知にんちされている物質ぶっしつことなる。

顔料がんりょう世界せかい市場いちば規模きぼは2006ねん時点じてんで740まんトンだった。2006ねん生産せいさんがくは176おくUSドル(130おくユーロ)で、ヨーロッパ首位しゅいであり、それに北米ほくべいアジアつづいている[1]生産せいさんおよび需要じゅよう中心ちゅうしんアジア中国ちゅうごくインド)にうつりつつある。

ていしょく物理ぶつりがくてき原理げんり

[編集へんしゅう]
様々さまざま波長はちょういろ)のひかり顔料がんりょうたる。この顔料がんりょう場合ばあいあかみどりひかり吸収きゅうしゅうされ、あおひかりだけを反射はんしゃするため、あおえる物体ぶったいとして図示ずしされている。ただし、現実げんじつ顔料がんりょうはこのように単純たんじゅんではなく、光線こうせん自体じたい分光ぶんこう特性とくせい存在そんざいしてもいろがあるわけではないし、三原色さんげんしょくとして機能きのうする絶対ぜったいてきひかり存在そんざいしない。

顔料がんりょう特定とくてい波長はちょうひかり選択せんたくてき反射はんしゃまたは吸収きゅうしゅうするため、いろがあるようにえる。白色はくしょくこう可視かしこうスペクトル全体ぜんたいをほぼ均等きんとうふくんでいる。このひかり顔料がんりょうたると、一部いちぶ波長はちょう顔料がんりょう吸収きゅうしゅうされ、波長はちょう反射はんしゃされる。この反射はんしゃされたひかりスペクトルひとはいるといろとしてかんじられる。単純たんじゅんえば、あお顔料がんりょうあおひかり反射はんしゃし、ひかり吸収きゅうしゅうする。顔料がんりょう蛍光けいこう物質ぶっしつ燐光りんこう物質ぶっしつとはことなり、光源こうげん波長はちょう一部いちぶ吸収きゅうしゅうして除去じょきょするだけであり、あらたな波長はちょうひかり追加ついかすることはない。

顔料がんりょういろは、光源こうげんいろ密接みっせつ関連かんれんする。太陽光たいようこういろ温度おんどたかくスペクトルも均一きんいつちかいため、標準ひょうじゅんてき白色はくしょくこうることができる。人工じんこうてき光源こうげんにはスペクトルになんらかのピークや谷間たにまがある。そのため、太陽光たいようこうしたたときとはいろちがってかんじられる。

いろいろ空間くうかん数値すうちてきあらわ場合ばあい光源こうげん指定していしなければならない。Labしょく空間くうかん場合ばあいとく指定していがないかぎり D65 とばれる光源こうげん測定そくていしたと仮定かていされる。D65とは "Daylight 6500 K" のりゃくで、ほぼ太陽光たいようこういろ温度おんど対応たいおうしている。

いろさやあかるさといった属性ぞくせいは、顔料がんりょうわせたべつ物質ぶっしつによってもわってくる。顔料がんりょうくわえるてんしょくざい充填じゅうてんざいもそれぞれにひかり波長はちょう反射はんしゃ吸収きゅうしゅうのパターンをち、最終さいしゅうてきなスペクトルに影響えいきょうあたえる。同様どうよう顔料がんりょうぜるりょうによっては、個々ここ光線こうせん顔料がんりょう粒子りゅうしたらずに反射はんしゃされることもある。このような光線こうせんいろさに影響えいきょうする。純粋じゅんすい顔料がんりょう白色はくしょくこうをそのまま反射はんしゃすることはほとんどなく、いろ非常ひじょういものとなる。しかし大量たいりょうしろてんしょくざいなどと少量しょうりょう顔料がんりょうぜると、いろうすくなる。

顔料がんりょう化学かがくてき分類ぶんるい

[編集へんしゅう]

顔料がんりょうにはその組成そせいから、無機むき顔料がんりょう有機ゆうき顔料がんりょうの2種類しゅるい大別たいべつされる。無機むき顔料がんりょうは、有史ゆうし以前いぜんから使つかわれていた鉱物こうぶつ加工かこうひんである天然てんねん無機むき顔料がんりょうと、化学かがくてき合成ごうせいされた合成ごうせい無機むき顔料がんりょう区別くべつ可能かのうである。有機ゆうき顔料がんりょうは、あいたまのように植物しょくぶつからった不溶性ふようせいしめ染料せんりょう前駆ぜんくたいをそのまま顔料がんりょうとして使用しようするものと、植物しょくぶつ動物どうぶつから抽出ちゅうしゅつされる染料せんりょうをレーキさせたものがふるくからある。現在げんざい工業こうぎょうてき使つかわれているものの大半たいはん石油せきゆ工業こうぎょうによって成立せいりつする合成ごうせい有機ゆうき顔料がんりょうである。合成ごうせい有機ゆうき顔料がんりょうには化学かがく構造こうぞう自体じたい不溶性ふようせいしめすもの(不溶性ふようせい色素しきそ)と、水溶すいようせい合成ごうせい染料せんりょう不溶化ふようかさせたレーキ顔料がんりょう(lake, lake pigment)がある。

それぞれの顔料がんりょうにはカラーインデックスによって分類ぶんるい番号ばんごうおよび分類ぶんるいめい付与ふよされている。たとえば、二酸化にさんかチタン(チタンしろ)のColour Index Generic Name[2] はPigment White 6、Colour Index Constitution Number[3] は77891である。

無機むき顔料がんりょう

[編集へんしゅう]

無機むき顔料がんりょう大別たいべつして天然てんねん鉱物こうぶつ顔料がんりょう合成ごうせい無機むき顔料がんりょう分類ぶんるいされる。有機ゆうき顔料がんりょうくらべてはるかに生産せいさんりょうおおいため、日本工業規格にほんこうぎょうきかく(JIS)ではとく生産せいさんりょうおおい12品目ひんもく統一とういつ規格きかく対象たいしょうとして規定きていしている。

古来こらい顔料がんりょう油脂ゆしるいやしたさいすす使用しようした黒色こくしょく以外いがい自然しぜん鉱物こうぶつ粉砕ふんさいしたものが主体しゅたいであった。黒色こくしょくすす現在げんざいカーボンブラックばれ、非常ひじょう多様たよう用途ようと使用しようされている。書道しょどう使つかすみ高級こうきゅうひんむかしながらの油煙ゆえんランプブラック)を使つかうが、一般いっぱんてきには天然てんねんガス石油せきゆ不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうさせてつくったファーネスブラック使用しようされている。また絵具えのぐでは植物しょくぶつやしてつくった植物しょくぶつせいくろ動物どうぶつほねやしてつくった骨炭こったん使つかわれている。ラピスラズリ使つかったウルトラマリンあお孔雀石くじゃくせき使つかった緑青ろくしょうなどは高価こうかであり、高級こうきゅう絵画かいが装飾そうしょくぶつ使用しようされた。赤色あかいろべんがら天然てんねん酸化さんかてつあか)やたつすな硫化りゅうか水銀すいぎん)が使つかわれた。

現在げんざい工業こうぎょうてき使用しようされているものは、アンバーシェンナといった天然てんねん由来ゆらい褐色かっしょく顔料がんりょうや、炭酸たんさんカルシウムしろいろ)、カオリン粘土ねんど淡色たんしょく)などがおおい。これらの天然てんねん鉱物こうぶつ顔料がんりょうのうち、淡色たんしょくないし無色むしょく顔料がんりょうは、淡色たんしょくぬりしょくつくるときに使つかわれる。また、レーキ顔料がんりょう製造せいぞうにおける担体としても使つかわれる。特殊とくしゅれいとして白色はくしょく雲母うんも粉砕ふんさいして使つかうパール顔料がんりょう真珠しんじゅよう光沢こうたくゆうする)がある。天然てんねん鉱物こうぶつ顔料がんりょう今日きょうでは顔料がんりょう工場こうじょうにてほろ粉砕ふんさいされており、使用しよう目的もくてきおうじた化学かがくてき処理しょりけて出荷しゅっかされている品種ひんしゅおおい。

化学かがくてき合成ごうせいされた純然じゅんぜんたる合成ごうせい無機むき顔料がんりょうは、1704ねんにドイツで合成ごうせいされた紺青こんじょう(プロシアあお以来いらいすうおおくの品種ひんしゅがある。白色はくしょく顔料がんりょう今日きょうではチタンしろ二酸化にさんかチタン)や亜鉛あえんはな酸化さんか亜鉛あえん)が使つかわれており、ふるくから白粉おしろい多用たようされ中毒ちゅうどくこして問題もんだいになっていたなまりしろ油絵具あぶらえのぐ以外いがいには使つかわれなくなった。代表だいひょうてき合成ごうせい無機むき顔料がんりょうとしては合成ごうせい酸化さんかてつあかカドミウムニッケルチタンストロンチウム水酸化すいさんかクロム酸化さんかクロムアルミさんコバルト合成ごうせいウルトラマリンあおとうがある。無機むき顔料がんりょう一般いっぱんてき有機ゆうき顔料がんりょうくらべると着色ちゃくしょくりょく鮮明せんめいさ、透明とうめいせいけるが、たいこうせい塗料とりょうなどに多用たようされる。銀色ぎんいろ金色きんいろ銀色ぎんいろ黄色きいろ着色ちゃくしょくしたものがおおい)の塗料とりょうインク使つかわれるアルミニウムこな無機むき顔料がんりょうである。なお、陶磁器とうじき使つかわれるセラミック顔料がんりょうも、無機むき化合かごうぶつでありかつ顔料がんりょうであり、無機むき顔料がんりょうである。

日本工業規格にほんこうぎょうきかく規定きていされている顔料がんりょう

有機ゆうき顔料がんりょう

[編集へんしゅう]
Pigment Red 170
あおあじあかのモノアゾ顔料がんりょう

有機ゆうき化合かごうぶつ成分せいぶんとする顔料がんりょう有機ゆうき顔料がんりょう呼称こしょうする。有機ゆうき顔料がんりょうはその化学かがく構造こうぞうからおおきくアゾ顔料がんりょうたまき顔料がんりょう類別るいべつされるのが普通ふつうであるが、色相しきそうによっても区分くぶんすることもあり、不溶性ふようせい色素しきそとレーキ顔料がんりょう分類ぶんるいされることもある。 有機ゆうき顔料がんりょう構造こうぞうちゅう飽和ほうわじゅう結合けつごうゆうし、共鳴きょうめいエネルギーをひかりから吸収きゅうしゅうして安定あんていする。この特定とくてい吸収きゅうしゅう波長はちょういき可視かしこういき(380-780 nm)の一部いちぶにあると、顔料がんりょう通過つうかまたは結晶けっしょうなか反射はんしゃしたひかりは、それ以外いがい波長はちょう構成こうせいされるいろいたひかりとなる。

おもに、たまき顔料がんりょう(polycyclic pigment)、アゾ顔料がんりょうの2種類しゅるいがある。一般いっぱんに、アゾ顔料がんりょうたまき顔料がんりょうふくめない。一般いっぱんに、有機ゆうき顔料がんりょう高分子こうぶんしすると耐久たいきゅうせいたかまるが、コストの上昇じょうしょう分散ぶんさんせい低下ていかなどのデメリットをともなう。このため、てい分子ぶんしであってもたか耐久たいきゅうせいゆうし、鮮明せんめいなものをもとめる研究けんきゅうがされる。

アゾ顔料がんりょう中心ちゅうしんとなる窒素ちっそ同士どうし結合けつごうは、鮮明せんめい化合かごうぶつしょうじるが、耐久たいきゅうせいなんがあるために、耐久たいきゅうせいたか構造こうぞうむなどして耐久たいきゅうせいたか顔料がんりょうにする工夫くふうられている。

顔料がんりょうとして使用しよう出来でき植物しょくぶつ由来ゆらいあいや、マダーレーキに代表だいひょうされるアントラキノンレーキ顔料がんりょうのように、植物しょくぶつ動物どうぶつから採取さいしゅした染料せんりょうをレーキした顔料がんりょうもある。ただし、今日きょう使つかわれている有機ゆうき顔料がんりょうおおくは、石油せきゆ由来ゆらい原料げんりょう石油せきゆ化学かがくてき加工かこうかさねることによって製造せいぞうしたものである。無機むき顔料がんりょう鉱物こうぶつ精製せいせいて、工業こうぎょうてき製造せいぞうされることとは対照たいしょうてきである。

たまき顔料がんりょう

[編集へんしゅう]
Pigment Red 83
アリザリン

たまき顔料がんりょうは、顔料がんりょうとしての機能きのうゆうするちぢみあいたまき化合かごうぶつ構造こうぞう着眼ちゃくがんして分類ぶんるいすると多種たしゅ顔料がんりょう工業こうぎょうされている。アゾ顔料がんりょうくらべて耐久たいきゅうせいたか顔料がんりょうおおい。たまき顔料がんりょう代表だいひょうてきなものにフタロシアニン顔料がんりょうがある。フタロシアニン顔料がんりょうフタロシアニンブルーのうちよく使つかわれるものはどうふくんだ有機ゆうき化合かごうぶつで、鮮明せんめい青色あおいろていし、たいこうせい良好りょうこう緑色みどりいろのフタロシアニングリーンもどう系統けいとう化合かごうぶつキノン構造こうぞうゆうするアリザリンをレーキして顔料がんりょうとしてもちいている事実じじつがある。Pigment Red 177のように、顔料がんりょうであることからレーキ不要ふようなアントラキノン顔料がんりょうもある。色相しきそうごとにけて列挙れっきょする。

アゾ顔料がんりょう

[編集へんしゅう]
アゾもと
イミダゾール

アゾ顔料がんりょうは、窒素ちっそ原子げんし同士どうしじゅう結合けつごうゆうする化合かごうぶつであるアゾ化合かごうぶつのうち、顔料がんりょうとしての機能きのうゆうするものをす。レモンイエロー(みどりあじ)からルビー(あおあじあか)をていしょくする。一般いっぱんにアゾ結合けつごう発色はっしょくだんくらべて、可視かしこういき特定とくてい吸収きゅうしゅう波長はちょうつよ吸収きゅうしゅうつよ発色はっしょくをする。ちゅう黄色おうしょくていするベンジジンイエロー(; Pigment Yellow 14)の透明とうめいタイプ、あおあじあかていするブリリアントカーミン6B(; Pigment Red 57:1)とう着色ちゃくしょくりょくつよ鮮明せんめいでかつ透明とうめいたかいのが特徴とくちょう印刷いんさつインキに多用たようされるが、たいこうせいなんがある。 ただし、たとえばイミダゾール水素すいそ化合かごうしていない窒素ちっそ水素すいそ結合けつごうさせ2窒素ちっそ原子げんし結合けつごうしている炭素たんそ化合かごうしている水素すいそ酸素さんそえた構造こうぞうとして説明せつめい可能かのうなイミダゾロンもと導入どうにゅうすることによって、分子ぶんし構造こうぞう水素すいそ結合けつごうこすことでたか耐久たいきゅうせい実現じつげんすることが可能かのうである[4]。このように、難点なんてんとされているたいこうせいたいこうせい向上こうじょうさせたアゾ顔料がんりょうもある。これらはおも塗料とりょう着色ちゃくしょくざいあらわしょく成分せいぶんとしてもちいられている。 芳香ほうこうぞくアミンとカップリング成分せいぶん反応はんのうによって水中すいちゅう合成ごうせいされる。種類しゅるいごとに分類ぶんるいすると以下いかのものがある。

分子ぶんしりょうおおきいほど堅牢けんろうせい向上こうじょうするといわれており、堅牢けんろうせいは、モノアゾ<ジスアゾ<ちぢみあいジスアゾのじゅんたかい。ただし、ベンツイミダゾロンに分類ぶんるいされるモノアゾ顔料がんりょうとベンツイミダゾロンに分類ぶんるいされるジスアゾ顔料がんりょうはこのかぎりではない。

  1. 分子ぶんし構造こうぞうちゅうにアゾもとを1つゆうする、モノアゾ顔料がんりょう。モノアゾに金属きんぞくはいしたレーキ顔料がんりょうもモノアゾ顔料がんりょう分類ぶんるいされる。
  2. 分子ぶんし構造こうぞうちゅうにアゾもとを2つゆうし、中央ちゅうおう配向はいこう構造こうぞう中心ちゅうしんとしたたか対称たいしょうせいしめす、ジスアゾ顔料がんりょう着色ちゃくしょくりょくたかさが特徴とくちょう
  3. 分子ぶんし構造こうぞうちゅうにアゾもとを2つゆうし、中央ちゅうおう配向はいこう構造こうぞう中心ちゅうしんとしたたか対称たいしょうせいしめす、ちぢみあい反応はんのうもちいて製造せいぞうされる、ちぢみあいジスアゾ顔料がんりょう着色ちゃくしょくりょくたかい。

レーキ顔料がんりょう

[編集へんしゅう]

レーキ顔料がんりょうは、水溶すいようせいゆうする有色ゆうしょく物質ぶっしつ(染料せんりょう)を電離でんりさせ、担体としての金属きんぞくイオン電気でんきてき結合けつごうさせ、不溶性ふようせいのものにしたものである。この一連いちれん操作そうさレーキ不溶化ふようかなどとぶ。

カルボニウム染料せんりょうなどの染料せんりょう(可溶性かようせい色素しきそ有機ゆうき化合かごうぶつで、染色せんしょくにおける使用しよう実績じっせきのあるもの)も、レーキして顔料がんりょうとして使用しようされることがある。かつて使つかわれていたクェルシトロンレーキなどの、動植物どうしょくぶつ由来ゆらい染料せんりょう不溶化ふようかして顔料がんりょうとしたものも、レーキ顔料がんりょうである。

赤色あかいろのレーキレッドC、ウォチュングレッドなど、濃度のうどたか色相しきそう鮮明せんめいなのものがおおい。これらの顔料がんりょう印刷いんさつインキに使用しようされる。アリザリンレーキ絵具えのぐ使用しようされるが、屈折くっせつりつ一般いっぱんてき固着こちゃく成分せいぶんちかいためたか透明とうめいせいしめ顔料がんりょうで、その独特どくとく色合いろあいやたか透明とうめいせいからこのまれており、たか需要じゅようがある。たか透明とうめいせい要求ようきゅうされるインクジェットプリンターにおいてもマゼンタに採用さいようされるキナクリドン顔料がんりょうよりも屈折くっせつりつひくい。つまり、この意味いみでの透明とうめいせいはアリザリンレーキのほうたかい。

蛍光けいこう顔料がんりょう

[編集へんしゅう]
蛍光けいこう顔料がんりょうインクによるペイント。ブラックライト照射しょうしゃによる発光はっこう

蛍光けいこう顔料がんりょうは、おもフォトルミネセンスによりていしょくする顔料がんりょうである。

そのうち有機ゆうきしつのものとして、樹脂じゅし高分子こうぶんし)に蛍光けいこう染料せんりょう固着こちゃく微細びさいしたものがある。 顔料がんりょうにより、蛍光けいこう染料せんりょうには耐久たいきゅうせいたいこうせいたい薬品やくひんせいたい溶剤ようざいせいたい熱性ねっせいなど)やたいしょく移行いこうせいたいマイグレーションせいたいブリードせいたい汚染おせんせい)、発色はっしょくせいインクてんしょくざい種類しゅるい影響えいきょうされない)、隠蔽いんぺいせいなどをゆうする蛍光けいこう色素しきそとなる。 通常つうじょうこうあざやかにかくいろ(イエロー、オレンジ、ピンク、グリーン、ブルー、ホワイトとう)にていしょくし、ブラックライトなどのUVこうしたではよりつよ発光はっこうする。 これらの有機ゆうき蛍光けいこう顔料がんりょうは、ネオンカラー汎用はんよう蛍光けいこう塗料とりょう蛍光けいこうインク)の色素しきそとして使用しようされる[5]顔料がんりょう通常つうじょう反射はんしゃくわえてフォトルミネセンスで発色はっしょくするため一般いっぱん顔料がんりょうくらべてより鮮明せんめいえる。これら可視かしタイプのほかに、通常つうじょうこうでは無色むしょくでブラックライトかくいろ発色はっしょくする不可視ふかしタイプのものもある。

一方いっぽう無機むきしつのものは、(無機むき蛍光けいこうたいばれ 希土類きどるい元素げんそドープした金属きんぞく酸化さんかぶつなどがある。それ自体じたいみずあぶら不溶ふよう微粉びふんまつ顔料がんりょうとして解釈かいしゃくされる。おもブラウン管ぶらうんかん蛍光けいこうとうひや陰極いんきょくかん白色はくしょく発光はっこうダイオードなどの蛍光けいこう発光はっこう物質ぶっしつとして使用しようされている。通常つうじょうこうでは無色むしょくおも透明とうめい白色はくしょく)でブラックライトなどの短波たんぱ長光ながみつかくいろ発色はっしょくする(ルミライト印刷いんさつ)。一般いっぱんてきに、有機ゆうきしつ不可視ふかし蛍光けいこう顔料がんりょうくらべて高価こうかこう耐久たいきゅうせいである。 広義こうぎにはひかり照射しょうしゃめてもざんこう発光はっこうする無機むき蓄光たい燐光りんこう)もふくまれる。

顔料がんりょう要求ようきゅうされる性能せいのう

[編集へんしゅう]

分光ぶんこう反射はんしゃりつ着色ちゃくしょくりょく

[編集へんしゅう]

色相しきそう鮮明せんめいで、着色ちゃくしょくりょくつよいものがのぞましい。

透明とうめいせいまたは隠蔽いんぺいせい

[編集へんしゅう]

透明とうめいせい屈折くっせつりつ粒子りゅうしみち依存いぞんする[6][7]一般いっぱんなかだちざいとの屈折くっせつりつ近似きんじすれば透明とうめいになる。また可視かし光線こうせん波長はちょう半分はんぶん以下いか粒子りゅうしみちでは透明とうめいになるが、それ以上いじょうではちいさいほど不透明ふとうめいになる。要求ようきゅうされる透明とうめいせい度合どあいは目的もくてきによってことなる。塗料とりょうもちいるものは不透明ふとうめいせい隠蔽いんぺいせい)を要求ようきゅうされるが、さん原色げんしょくシアンマゼンタイエローキーの4しょくのインキ(CMYK)をかさねるカラー印刷いんさつには、透明とうめいしょく使用しようされる。

分散ぶんさんせい

[編集へんしゅう]

顔料がんりょうこなたいのまま使つかわれることはほとんどなく、塗料とりょう・インキ・絵具えのぐクレヨンクレパス・カラーマーカーとうかたち使つかわれる。これらは顔料がんりょうみずあぶら溶剤ようざい樹脂じゅしワックスなどのバインダーとわせたものである。顔料がんりょう使用しよう目的もくてきおうじてバインダーにたいしての分散ぶんさんせい要求ようきゅうされる。分散ぶんさんそこなわれれば、現象げんしょうとして発色はっしょく阻害そがいされ、にぶ色合いろあいになったり不鮮明ふせんめい発色はっしょくする。またバインダーとの相性あいしょう次第しだいでは、ねばたびたかあつかいにくくなる場合ばあいもある。分散ぶんさんせい制御せいぎょするために顔料がんりょう表面ひょうめん改良かいりょうし、分散ぶんさんせい向上こうじょうさせる技術ぎじゅつられている。

たいせい

[編集へんしゅう]
たいこうせい
有機ゆうき顔料がんりょう化学かがく構造こうぞうは、太陽光たいようこう紫外線しがいせんよわく、屋外おくがい直射ちょくしゃ日光にっこうたるところではいろくなりやすい。屋外おくがい長期間ちょうきかん掲示けいじされたポスターの写真しゃしん青黒あおぐろくなっているのはべにいろくなってあいくろのみがのこった結果けっかである。長期ちょうき掲示けいじされるポスターるいには有機ゆうき顔料がんりょうなかでもたいこうせいいものが使つかわれる。無機むき顔料がんりょう一般いっぱんてきたいこうせい良好りょうこうで、建築けんちくぶつ塗料とりょう多用たようされる。工業こうぎょうてきたいこうせい促進そくしん試験しけんひかり曝露ばくろして評価ひょうかされる。ブルースケールとばれる褪色たいしょくことなる8種類しゅるい染料せんりょう染色せんしょくされた標準ひょうじゅんぬの試料しりょうどう環境かんきょうき、試料しりょう褪色たいしょく程度ていどをブルースケールと比較ひかくして8段階だんかい評価ひょうか数値すうちして表示ひょうじする。
たいこうせい
英語えいごではWeather Fastnessと表示ひょうじされており、おも塗料とりょう塗膜とまく日光にっこう曝露ばくろをして褪色たいしょく程度ていどをJISグレースケールで5段階だんかい評価ひょうかする。たいこうせいとのちがいは屋外おくがい曝露ばくろするため、あめ、また降雨こううふくまれる化学かがく物質ぶっしつ影響えいきょうける。
たい熱性ねっせい
陶器とうき着色ちゃくしょくなどける場合ばあいにはもっとたかたい熱性ねっせいもとめられる。プラスチック着色ちゃくしょく使つか場合ばあいはその軟化なんかてん以上いじょうレトルトパックの印刷いんさつには100℃の沸騰水ふっとうすいえる顔料がんりょうもとめられる。
たい溶剤ようざいせい
顔料がんりょう溶媒ようばい溶剤ようざい不溶ふようであることが定義ていぎであるが、有機ゆうき顔料がんりょう場合ばあいおおかれすくなかれ溶媒ようばいたいしてける。使用しよう用途ようとにより条件じょうけん様々さまざまであるが、温度おんど溶媒ようばい極性きょくせいにより溶出ようしゅつおおきくことなる。特定とくてい溶剤ようざい規定きてい時間じかん湿潤しつじゅんしたのち溶出ようしゅつしたいろ程度ていど評価ひょうかする。

その使用しよう目的もくてきによってたい水性すいせい耐油たいゆせいたいアルカリ性あるかりせい/たい酸性さんせいたい薬品やくひんせいとうたいせいもとめられる。

顔料がんりょう特殊とくしゅ用途ようと

[編集へんしゅう]

強度きょうど向上こうじょう

[編集へんしゅう]

カーボンブラックをゴムむと、ゴムの強度きょうどいちじるしく向上こうじょうする。ゴムタイヤくろいのはカーボンブラックを大量たいりょうんだためで、工業こうぎょうようカーボンブラックの用途ようと大半たいはんはこの目的もくてき使用しようされる。

導電性どうでんせい活用かつよう

[編集へんしゅう]

カーボンブラックの化学かがく構造こうぞう黒鉛こくえんであり、黒鉛こくえん導電性どうでんせいゆうする。たとえばくろ鉛筆えんぴつ使用しようしていた部分ぶぶんはわずかではあるが電気でんきとおす。このような性質せいしつ種々しゅじゅ目的もくてき使用しようされている。

体質たいしつ顔料がんりょう

[編集へんしゅう]

体質たいしつ顔料がんりょう(extender pigment)は白色はくしょくないし無色むしょく顔料がんりょうである。屈折くっせつりつが1.5 - 1.6程度ていどひくいため、てんしょくざい混和こんわしても隠蔽いんぺいせいにほとんど影響えいきょうあたえないことから、増量ぞうりょうざいとして絵具えのぐ塗料とりょう化粧けしょうひんなどのコストダウン、着色ちゃくしょくりょく光沢こうたく強度きょうど使用しようかんなどの調整ちょうせい使つかわれる[8]。また、染付そめつけレーキ顔料がんりょう原料げんりょうとしても使つかわれる。

近年きんねん粒子りゅうしおおきさや形状けいじょう表面ひょうめん性質せいしつことなる、多様たよう体質たいしつ顔料がんりょう出現しゅつげんし、製品せいひん加工かこうせい光学こうがくてき性質せいしつ機械きかいてき強度きょうどなどの物性ぶっせい変化へんかさせる機能きのうせい材料ざいりょうとしてゴムやプラスチック、シーラントなどの化学かがく樹脂じゅし医薬品いやくひん食品しょくひん肥料ひりょうなどにも利用りようされている[8]

体質たいしつ顔料がんりょうには炭酸たんさんカルシウム硫酸りゅうさんバリウム水酸化すいさんかアルミニウム[9]タルクなどがあり、分野ぶんやによって充填じゅうてんざい、フィラー、はまりょうぬり顔料がんりょうなどとばれている[8]

顔料がんりょう歴史れきし

[編集へんしゅう]

古代こだい以来いらい顔料がんりょう

[編集へんしゅう]
奴隷どれいすくひじりマルコ』
ティントレット
1548ねんごろ
染物そめもの息子むすこだったティントレットは、コチニールカイガラムシからつくった赤色あかいろ顔料がんりょう使つかって、劇的げきてき効果こうかげている。

黄土おうど酸化さんかてつなどの天然てんねん顔料がんりょう先史せんし時代じだいから着色ちゃくしょくざいとして使つかわれてきた。考古こうこ学者がくしゃによれば、先史せんし時代じだい人類じんるい身体しんたい顔料がんりょうっていた証拠しょうこつかっている。顔料がんりょうとそれを粉末ふんまつにする器具きぐは35まんねんから40まんねんまえから使つかわれてきたとみられ、ザンビアルサカちかくにある洞窟どうくつなどでつかっている。

産業さんぎょう革命かくめい以前いぜん芸術げいじゅつ装飾そうしょく使つかえるいろ範囲はんい技術ぎじゅつてきかぎられていた。顔料がんりょうおおくは鉱物こうぶつ由来ゆらいのものか、生物せいぶつ由来ゆらいのものだった。植物しょくぶつ動物どうぶつくそ昆虫こんちゅう軟体動物なんたいどうぶつなどに由来ゆらいするめずらしい顔料がんりょう貴重きちょうなものであり、交易こうえきひんとしてひろ流通りゅうつうしていた。なかにはかなり高額こうがく取引とりひきされる顔料がんりょうもあり、あおむらさきはその貴重きちょうさから王室おうしつむすけられるようになった。

生物せいぶつ由来ゆらい顔料がんりょう抽出ちゅうしゅつむずかしいことがおおく、その製法せいほう秘密ひみつにされていた。かい紫色むらさきいろアッキガイ巻貝まきがい一種いっしゅ粘液ねんえきからつくられた顔料がんりょうである。織物おりもの染色せんしょくのためのかい紫色むらさきいろ生産せいさんフェニキアひと紀元前きげんぜん1200ねんごろからはじめ、それをギリシャじんぎ、ひがしマ帝国まていこく滅亡めつぼうする1435ねんまでつづいた[10]。この顔料がんりょう製造せいぞう手間てまがかかり、そのいろ着色ちゃくしょくしたものはとみ権力けんりょく象徴しょうちょうとなった。古代こだいギリシアの歴史れきしテオポンポス紀元前きげんぜん4世紀せいき著作ちょさくで「染料せんりょうのためのむらさきは(しょうアジアの)コロフォンおなおもさのぎん交換こうかんして入手にゅうしゅした」といている[11]

鉱物こうぶつ顔料がんりょう交易こうえき対象たいしょうとしてひろ売買ばいばいされた。ふかあお顔料がんりょうウルトラマリン宝石ほうせきちかラピスラズリからしかつくれず、ラピスラズリの産地さんちはヨーロッパからはとおかった。フランドルの15世紀せいき画家がかヤン・ファン・エイクは、高価こうかすぎるためあお使つかえなかった。ウルトラマリンを使つかった肖像しょうぞうえがいてもらうことは大変たいへん贅沢ぜいたくだった。あお使つかった所望しょもうする場合ばあい特別とくべつ料金りょうきん支払しはら必要ひつようがあった。ファン・エイクはラピスラズリを使つか場合ばあいけっしていろぜなかった。そのわりにほぼ純粋じゅんすいあお装飾そうしょくのようににのせた[12]ラピスラズリがあまりに高価こうかだったため、画家がかたちはもっと安価あんか代替だいたい顔料がんりょうさがもとめ、鉱物こうぶつ顔料がんりょうアズライト)と有機ゆうき顔料がんりょうインディゴ)が誕生たんじょうした。

歌川うたがわ広重ひろしげ京都きょうと名所めいしょこれない 淀川よどがわ』。浮世絵うきよえ特徴とくちょうてきあおはインディゴのいろであり、ジャパンブルー、もしくはヒロシゲブルーとばれる。

16世紀せいきスペインによる新大陸しんたいりく征服せいふくにより、西洋せいようではあらたな顔料がんりょう入手にゅうしゅ可能かのうになった。中央ちゅうおうアメリカみなみアメリカ寄生きせい昆虫こんちゅうから抽出ちゅうしゅつした染料せんりょう顔料がんりょうであるコチニール色素しきそられ、ヨーロッパで珍重ちんちょうされるようになった。これはコチニールカイガラムシあつめ、乾燥かんそうしてくだいたもので、染料せんりょうとしても顔料がんりょうとしても使つかえ、絵具えのぐ化粧けしょうひんによく利用りようされている。

ペルー原住民げんじゅうみん紀元きげん700ねんごろからコチニール染料せんりょう染色せんしょく使つかっていたが[13]、ヨーロッパじんはそのようないろたことがなかった。スペインじんアステカ征服せいふくすると、あらたに入手にゅうしゅした色素しきそ交易こうえきにさっそく利用りようした。この地域ちいき現在げんざいメキシコ)の輸出ゆしゅつひんとしては、コチニール色素しきそぎん重要じゅうよう産物さんぶつとなった。この顔料がんりょうカーマイン枢機卿すうききょうのローブをめ、イギリスの軍服ぐんぷくあざやかにめるようになった("redcoat" は英国えいこく軍人ぐんじんそのものをあらわ言葉ことばになっている)。この顔料がんりょう原料げんりょう昆虫こんちゅうであることは18世紀せいきまで秘密ひみつにされていたが、生物せいぶつ学者がくしゃらがその秘密ひみつあばいた[14]

カーマインによってヨーロッパではあか値段ねだんがったが、依然いぜんとしてあお高価こうかであり、とみ権力けんりょく象徴しょうちょうになっていた。17世紀せいきオランダのヨハネス・フェルメール作品さくひんにカーマインやインディアンイエローともラピスラズリ多用たようしたことでられている。

合成ごうせい顔料がんりょう発展はってん

[編集へんしゅう]
『ドブロリ公爵こうしゃく夫人ふじん
ドミニク・アングル
1853ねん
かつての画家がかたちが夢想むそうしていた豊富ほうふ色彩しきさい実現じつげん可能かのうとなったころ作品さくひん

初期しょき顔料がんりょうには天然てんねん鉱物こうぶつ使つかわれていた。天然てんねん酸化さんかてつ様々さまざまいろ発色はっしょくするもので、旧石器時代きゅうせっきじだいおよびしん石器せっき時代じだい洞窟どうくつ壁画へきがによく使つかわれている。たとえば、無水むすいのFe2O3のレッドオーカー、含水のFe2O3.H2Oのイエローオーカーがある[15]すみまたはカーボンブラックも先史せんし時代じだい以来いらいずっと黒色こくしょく顔料がんりょうとして使つかわれている[15]

最初さいしょ合成ごうせい顔料がんりょうとして、なまりしろ(エンパク。炭酸たんさんなまり一種いっしゅ。(PbCO3)2Pb(OH)2)とあおフリット(エジプシャンブルー)がある。なまりしろなまり食酢しょくず酢酸さくさん、CH3COOH)をぜ、そこにCO2くわえてつくる。あおフリットはカルシウムどう珪酸けいさんしおであり、孔雀石くじゃくせきなどの銅鉱どうこうせき着色ちゃくしょくしたガラスをくだいてつくる。これらの顔料がんりょう紀元前きげんぜん2千年紀せんねんきには使つかわれはじめている[16]

産業さんぎょう革命かくめい科学かがく革命かくめいにより、合成ごうせい顔料がんりょうおおきく発展はってんすることになった。合成ごうせいした顔料がんりょう天然てんねん素材そざいから抽出ちゅうしゅつした顔料がんりょう製造せいぞうぎょうにも芸術げいじゅつにも使つかわれるようになっていった。ラピスラズリ高価こうかだったことから、とくあお顔料がんりょうをより安価あんか製造せいぞうする努力どりょくがなされた。

最初さいしょあお合成ごうせい顔料がんりょうとして登場とうじょうしたのが紺青こんじょうで、1704ねんのことである。19世紀せいきはじめごろにはあお合成ごうせい顔料がんりょう金属きんぞく顔料がんりょうがさらに登場とうじょうした。合成ごうせいウルトラマリンコバルトあおセルリアンブルーなどである。20世紀せいきには有機ゆうき合成ごうせい顔料がんりょうフタロブルー登場とうじょうした。

顔料がんりょう多色たしょくあらたな産業さんぎょうし、ファッションにも影響えいきょうあたえた。1856ねんにははつアニリン染料せんりょうであるモーブ発見はっけんされ、それをきっかけとして多数たすう合成ごうせい染料せんりょう合成ごうせい顔料がんりょうされることになった。モーブを発見はっけんしたのは18さい化学かがくしゃウィリアム・パーキンで、この発見はっけん事業じぎょうしてとみた。この成功せいこうにあやかろうとおおくの追随ついずいしゃてきた。金持かねもちになることを夢見ゆめみわか科学かがくしゃ有機ゆうき化学かがく分野ぶんや集中しゅうちゅうするようになった。すうねんアカネ色素しきそ代替だいたいとしてアリザリン合成ごうせい顔料がんりょう工業こうぎょう生産せいさんされはじめた。19世紀せいきまつには織物おりもの塗料とりょうなどの用品ようひんあかあおむらさきといったいろ安価あんか使つかえるようになった[17]

合成ごうせい顔料がんりょう染料せんりょう開発かいはつは、ドイツ中心ちゅうしんとするきたヨーロッパ各国かっこく産業さんぎょう繁栄はんえい寄与きよしたが、同時どうじ天然てんねん顔料がんりょう産地さんち打撃だげきけた。スペインはメキシコですうせんにんてい賃金ちんぎん労働ろうどうしゃやとってコチニール色素しきそ生産せいさんおこなっていた。コチニール色素しきそ生産せいさんはスペインが独占どくせんしてそこからとみていたが、1810ねんはじまったメキシコ独立どくりつ革命かくめい市場いちば変化へんかによって生産せいさんりょう低下ていかした。これにとどめをしたのが有機ゆうき化学かがくである。化学かがくしゃがカーマインの安価あんか代替だいたいひん開発かいはつ成功せいこうすると、コチニール色素しきそ生産せいさんりょう急激きゅうげき低下ていかしていった[18]

歴史れきしてきいろめいあらたな原料げんりょう

[編集へんしゅう]
聖母せいぼ昇天しょうてん
1518ねんごろ
ティツィアーノの、天然てんねん顔料がんりょうヴァーミリオン使つかったフレスコ

産業さんぎょう革命かくめい以前いぜん顔料がんりょうはそれをさんする地名ちめいむすけられていた。鉱物こうぶつ原料げんりょうとする顔料がんりょうは、その採掘さいくつおこなわれている地方ちほう都市としばれることがおおかった。シェンナイタリアシエーナ由来ゆらいし、アンバーウンブリア由来ゆらいする。これらの顔料がんりょう合成ごうせい容易よういだったため、化学かがくしゃ天然てんねんのものより純度じゅんどたか顔料がんりょう合成ごうせいするようになった。それでも地名ちめい由来ゆらいする名称めいしょうはそのまま使つかわれている。

歴史れきしてきかつ文化ぶんかてき天然てんねん顔料がんりょう名称めいしょうはそのままで、おおくの天然てんねん顔料がんりょう合成ごうせい顔料がんりょう代替だいたいされている。場合ばあいによってはいろ名称めいしょうあらわしきそのものが変化へんかしたケースもある。一般いっぱん天然てんねん顔料がんりょう代替だいたいする合成ごうせい顔料がんりょうは「色相しきそう」を維持いじするが、製造せいぞう業者ぎょうしゃ色相しきそう維持いじとくをつけているわけではない。以下いか歴史れきしてき顔料がんりょう名称めいしょうあらわいろ変化へんかしたれいしめす。

インディアンイエロー
かつては、マンゴーのみをあたえられたうし尿にょうあつめてつくられていた。17世紀せいきから18世紀せいきのオランダやフランドルの画家がかはこれを太陽光たいようあきらあらわすのにこのんでもちいた。フェルメールに『真珠しんじゅ耳飾みみかざりの少女しょうじょ』の制作せいさく依頼いらいしたきゃくは、かれが「うし尿にょう」を使つかってつまえがいたとべている。マンゴーの栄養えいようてきうしてきしていないため、このような製造せいぞう方法ほうほう人道的じんどうてきだとされるようになった。現在げんざいおな色相しきそう合成ごうせい顔料がんりょう代替だいたいしている。
バーミリオン
水銀すいぎん化合かごうぶつであり、そのふか朱色しゅいろこのんで使つかったのがティツィアーノである。いまでは様々さまざま合成ごうせい顔料がんりょう代替だいたいされており、カドミウムレッドなどがある。本来ほんらいのバーミリオンはいまでも入手にゅうしゅ可能かのうだが、おおくの絵具えのぐメーカーはその毒性どくせいによる法的ほうてき責任せきにんけるため販売はんばいしていない。現在げんざい朱色しゅいろないしバーミリオンという名称めいしょう絵具えのぐやインクやマーカーなどのおおくは本来ほんらいのバーミリオンとはことなる。
ウルトラマリン
ラピスラズリからつくられていたが、安価あんか合成ごうせい顔料がんりょう合成ごうせいウルトラマリン)で代替だいたいされるようになった。合成ごうせいウルトラマリンの原料げんりょうカオリナイト硫黄いおうなどである。ウルトラマリンの別名べつめいだったロイヤルブルーはよりあかるいあおすようになり、フタロブルー二酸化にさんかチタン混合こんごうするか、安価あんかあお合成ごうせい染料せんりょうからつくるのが一般いっぱんてきである。合成ごうせいウルトラマリン自体じたい化学かがく組成そせいがラピスラズリと同一どういつである。ウルトラマリンのもう1つの別名べつめいだったフレンチブルーは1990年代ねんだいいろめいとして業界ぎょうかい注目ちゅうもくびるようになり、本来ほんらいのウルトラマリンとはまったことなる青色あおいろ名称めいしょうとして使つかわれるようになった。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Market Study: Pigments”. Ceresana Research. 2010ねん8がつ8にち閲覧えつらん
  2. ^ ぞくに、カラーインデックスめい。ただし、Colour Index Constitution Numberをカラーインデックスめいとする誤用ごようもある。
  3. ^ ぞくに、カラーインデックス番号ばんごう。ただし、Generic Nameをカラーインデックス番号ばんごうとする誤用ごようもある。
  4. ^ 有機ゆうき顔料がんりょうハンドブック』 橋本はしもといさお カラーオフィス 2006.5
  5. ^ SINLOIHI 蛍光けいこう塗料とりょう蛍光けいこう顔料がんりょうシンロイヒ
  6. ^ 一見いっけん敏男としお (1980). “顔料がんりょういろはなし”. 化学かがく教育きょういく (日本にっぽん学会がっかい) 28 (1): 32-35. NAID 110001822628. 
  7. ^ 大塚おおつかあつし. “顔料がんりょう”. 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ). 小学しょうがくかん. 2016ねん12月9にち閲覧えつらん
  8. ^ a b c 顔料がんりょう技術ぎじゅつ研究けんきゅうかいへんいろ顔料がんりょう世界せかい三共さんきょう出版しゅっぱん 2017 ISBN 978-4-7827-0759-3 pp.213-219.
  9. ^ 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん だい2はん平凡社へいぼんしゃ、2009ねん
  10. ^ Kassinger, Ruth G. (2003-02-06). Dyes: From Sea Snails to Synthetics. 21st century. ISBN 0-7613-2112-8. https://books.google.co.jp/books?id=5pWAWgq5My4C&printsec=frontcover&dq=Dyes:+From+Sea+Snails+to+Synthetics&hl=ja&ei=NlJfTIWyFoy4vQO71_iZDA&sa=X&oi=book_result&ct=result&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false 
  11. ^ Theopompus, cited by Athenaeus [12.526] in c. 200 BCE; according to Gulick, Charles Barton. (1941). Athenaeus, The Deipnosophists. Cambridge: Harvard University Press.
  12. ^ Michel Pastoureau (2001-10-01). Blue: The History of a Color. Princeton University Press. ISBN 0-691-09050-5 
  13. ^ Jan Wouters, Noemi Rosario-Chirinos (1992). “Dye Analysis of Pre-Columbian Peruvian Textiles with High-Performance Liquid Chromatography and Diode-Array Detection”. Journal of the American Institute for Conservation (The American Institute for Conservation of Historic &#38) 31 (2): 237–255. doi:10.2307/3179495. JSTOR 10.2307/3179495. http://links.jstor.org/sici?sici=0197-1360(199222)31%3A2%3C237%3ADAOPPT%3E2.0.CO%3B2-7. 
  14. ^ Amy Butler Greenfield (2005-04-26). A Perfect Red: Empire, Espionage, and the Quest for the Color of Desire. HarperCollins. ISBN 0-06-052275-5 
  15. ^ a b Pigments Through the Ages”. WebExhibits.org. 2007ねん10がつ18にち閲覧えつらん
  16. ^ Rossotti, Hazel (1983). Colour: Why the World Isn't Grey. Princeton, NJ: Princeton University Press. ISBN 0-691-02386-7 
  17. ^ Simon Garfield (2000). Mauve: How One Man Invented a Color That Changed the World. Faber and Faber. ISBN 0-393-02005-3 
  18. ^ Jeff Behan. “The bug that changed history”. 2006ねん6がつ26にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • Ball, Philip (2002). "Bright Earth: Art and the Invention of Color" (Document). Farrar, Straus and Giroux. ISBN 0-374-11679-2
  • Doerner, Max (1984). "The Materials of the Artist and Their Use in Painting: With Notes on the Techniques of the Old Masters, Revised Edition" (Document). Harcourt. ISBN 0-15-657716-X
  • Finlay, Victoria (2003). "Color: A Natural History of the Palette" (Document). Random House. ISBN 0-8129-7142-6
  • Gage, John (1999). "Color and Culture: Practice and Meaning from Antiquity to Abstraction" (Document). University of California Press. ISBN 0-520-22225-3
  • Meyer, Ralph (1991). "The Artist's Handbook of Materials and Techniques, Fifth Edition" (Document). Viking. ISBN 0-670-83701-6

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]