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印刷いんさつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
左上ひだりうえからじゅんに: 紀元前きげんぜん1800ねんごろのバビロニア円筒えんとう印章いんしょう、インドの捺染なっせんよう木版もくはん印刷いんさつブロック、朝鮮ちょうせん活字かつじ、(2ぎょう活版かっぱん印刷いんさつリトグラフ印刷いんさつオフセット印刷いんさつ、(3ぎょうライノタイプデジタル印刷いんさつ3Dプリンタ

印刷いんさつ(いんさつ、えい: printingあるいはpress)とは、はんインキをつけて、それをかみ(など)にけ、はん表裏ひょうりぎゃく模様もようなんまい簡単かんたんはやくつくること、その作業さぎょう仕事しごと[1]

概要がいよう

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印刷いんさつ基本きほんから説明せつめいすると、まずはんつくり、それにインクをつけて、かみなど(かみ以外いがいのモノでもよい)にけると、はん表裏ひょうりぎゃく状態じょうたいでインクがつく。その仕事しごと作業さぎょう)を印刷いんさつという[1]。この作業さぎょう出来できるものを印刷物いんさつぶつという[1]

たとえば木版もくはん年賀状ねんがじょうぶし挨拶あいさつ葉書はがきをつくるとして、葉書はがきおおきさのえがいていたり、インキをつけたいところをのこして彫刻ちょうこくがたなげる。このはんにインキをつけしつければ印刷物いんさつぶつができあがる。この場合ばあい最初さいしょえがいたを「原稿げんこう」、はんをつくる作業さぎょうを「製版せいはん」といい、最後さいごのインキをつけてかみける作業さぎょう狭義きょうぎ意味いみ印刷いんさつという[1]

印刷いんさつされたものを印刷物いんさつぶつといい、印刷いんさつ業務ぎょうむとしてっている会社かいしゃ印刷いんさつ会社かいしゃといい、その工場こうじょう印刷いんさつ工場こうじょうという。

語源ごげん。プリントとプレス

print(プリント)ともpress(プレス)ともいう。

printの語源ごげんは、ラテン語らてんご動詞どうし「premere プレメーレ」でありこれは「ける」という意味いみである[2]。それがフランス語ふらんすごで「preindre プランドル」となり、それが中期ちゅうきオランダで「prente」となり、それがオランダ以外いがいゲルマン諸語しょごにもひろまってゆき、英語えいごに1300年代ねんだいはいり「print」となった[2]

「press プレス」は圧搾あっさくからている。西洋せいようではふるくから、印刷いんさつ登場とうじょうするまえから、圧搾あっさくのことを「press プレス」とんでいた。グーテンベルクの印刷いんさつは、もともとふるくから西洋せいようにあった、ワインづくりのためのブドウの圧搾あっさく(wine press)を転用てんようして開発かいはつしたものである。この経緯けいいで、圧搾あっさく意味いみした「プレス」は印刷いんさつ印刷いんさつ意味いみするようになった。

ちなみに印刷いんさつの「しるし」のは、いまではハンコという意味いみだが、もともとは、ハンコ(印璽いんじ)をつめさえて押捺おうなつ(おうなつ)するひと姿すがたかたちをなぞった漢字かんじである[3]。つまり「印刷いんさつ」というのはもともと、おさえてる、という意味いみ表現ひょうげんである。

現代げんだい印刷いんさつ傾向けいこう

現代げんだい印刷いんさつ主流しゅりゅうオフセット印刷いんさつである。「経済けいざい産業さんぎょうしょう 平成へいせい30ねん(2018ねん)工業こうぎょう統計とうけい 品目ひんもくへん」では印刷いんさつ事業じぎょうしょ印刷いんさつ方式ほうしきにより、オフセット印刷いんさつ / 活版かっぱん印刷いんさつ / グラビア印刷いんさつ / 特殊とくしゅ印刷いんさつ の4つに分類ぶんるいしているが、2017ねん統計とうけいデータで、印刷いんさつ事業じぎょうしょの73%ほどがオフセット印刷いんさつである[4]現在げんざいでは活版かっぱん印刷いんさつは9%[4]。1960年代ねんだいなどまでは活版かっぱん印刷いんさつ主流しゅりゅうであったが、そのオフセット印刷いんさつへの移行いこうすすみ、1980ねんにはオフセットのほうが優勢ゆうせいとなり、その割合わりあいしてきた。

現代げんだい一般いっぱんてきなオフセット印刷いんさつ製版せいはん工程こうてい後半こうはんでは、すりばん(さっぱん。うすいアルミばんでできたはん[5])をつくる。印画いんが出力しゅつりょくしてからフィルムに転写てんしゃし、そのフィルムからアルミばんけたり、あるいは組版くみはんデータをもとにして専用せんよう装置そうち使つか直接ちょくせつにアルミせいすりばんける[6]

統計とうけい
  • 2022ねん世界せかい印刷いんさつ産業さんぎょうそう売上うりあげは8210おくドル規模きぼだった。[7]
  • 世界せかい印刷いんさつによる収益しゅうえきの76%は産業さんぎょうてき印刷いんさつ業者ぎょうしゃによるものである。[7]
  • 世界せかい広告こうこく印刷いんさつは2019ねんから2020ねんにかけて18%増加ぞうかした。[7]
  • 中国ちゅうごく
    • 中国ちゅうごく印刷いんさつ収益しゅうえきの50%はパッケージ印刷いんさつである。[7]
    • 中国ちゅうごく印刷いんさつマーケットの30%は、伝統でんとうてき出版しゅっぱんである。[7]
    • 中国ちゅうごく印刷いんさつ売上うりあげはコロナウィルスのパンデミックのさいには80%ダウンとなった。[7]

歴史れきし

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印刷いんさつ技術ぎじゅつ発明はつめいされたのは、古代こだい中国ちゅうごくであるとかんがえられている。2世紀せいきころ中国ちゅうごくかみ発明はつめいされ、7世紀せいきから8世紀せいきころには木版もくはん印刷いんさつおこなわれていたといわれる[8]。この木版もくはん印刷いんさつ朝鮮半島ちょうせんはんとうおよび日本にっぽんにも伝来でんらいし、764ねんから770ねんにかけて現存げんそんする印刷物いんさつぶつ製作せいさく年代ねんだいがはっきりと判明はんめいしているものとしては世界せかい最古さいこのものである、日本にっぽんの「ひゃくまんとう陀羅尼だらに」が印刷いんさつされた[9]きたそうはいると木版もくはん印刷いんさつひろ普及ふきゅうし、おおくのほん印刷いんさつされるようになった。また1041ねんごろには畢昇陶器とうきによる活字かつじ発明はつめいした。この活字かつじ朝鮮ちょうせんへとつたわり、金属きんぞく活字かつじによる印刷いんさつ1314世紀せいきこううららでおこなわれている。ただし中国ちゅうごく日本にっぽんにおいては文字数もじすう膨大ぼうだいなものにのぼったこと、そしてなによりも木版もくはんはんなが保存ほぞんしておけるのにたいし、活版かっぱん印刷いんさつわればすぐにはんくずしてしまうため再版さいはんのコストが非常ひじょうたかくついたことから活字かつじはそれほど普及ふきゅうせず[10]、19世紀せいきなか以降いこうにヨーロッパからふたた金属きんぞく活字かつじ流入りゅうにゅうするまでは木版もくはん印刷いんさつ主流しゅりゅうつづけていた。この木版もくはん印刷いんさつ技術ぎじゅつはシルクロードを西進せいしんしてヨーロッパにももたらされたが、その当時とうじほん複製ふくせいはもっぱら写本しゃほん一般いっぱんてきであった。14世紀せいきから15世紀せいきごろには、エッチング技法ぎほうがヨーロッパにおいてひろがり、銅版どうはん印刷いんさつ技術ぎじゅつあらたにまれた。銅版どうはん繊細せんさい表現ひょうげん可能かのうであることからおも文字もじではなく絵画かいが印刷いんさつ使用しようされ、銅板どうばんによる版画はんがどう版画はんが)はルネサンス以降いこうひろ使用しようされるようになった。

活版かっぱん印刷いんさつ発明はつめい

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グーテンベルク印刷いんさつのレプリカ。スペインバレンシア博物館はくぶつかん所蔵しょぞう

印刷いんさつ一大いちだい転機てんきをもたらしたのが、1450ねんころヨハネス・グーテンベルクによる金属きんぞく活字かつじもちいた活版かっぱん印刷いんさつ技術ぎじゅつ発明はつめいである。グーテンベルクは金属きんぞく活字かつじだけでなく、油性ゆせいインキ印刷いんさつ活字かつじ鋳造ちゅうぞう装置そうちなどを次々つぎつぎ開発かいはつ[11]、これらをわせて大量たいりょう印刷いんさつができるシステムを構築こうちくして、印刷いんさつという産業さんぎょう基盤きばんととのえた。さらにそれまで使用しようされていた羊皮紙ようひしよりもはるかに印刷いんさつてきしていたかみ印刷いんさつ用紙ようし使用しようした。こうしたことからそれまでとはくらものにならないほど書物しょもつ簡単かんたん生産せいさんできるようになり、印刷いんさつ急速きゅうそくひろまった。その伝播でんぱ速度そくど非常ひじょうはやく、発明はつめいから20ねんほどたった1470ねんまでには、発明はつめいされたドイツのマインツのみならず、ラインがわ流域りゅういきパリきたイタリアローマにすでに印刷所いんさつしょ設立せつりつされ、それからさらに10ねん1480ねんまでにはイングランドフランス全域ぜんいきアラゴンネーデルラントきたドイツ、さらにはチェコポーランドハンガリーにいたるヨーロッパのひろ地域ちいき活版かっぱん印刷所いんさつしょ設立せつりつされていた[12]。グーテンベルクの発明はつめいから1500ねん以前いぜんまでに印刷いんさつされた書物しょもつインキュナブラ揺籃ようらんほん初期しょき刊本かんぽん)とばれ、どれも貴重きちょうしょであるため莫大ばくだい古書こしょがつくことも間々ままある。当時とうじ印刷物いんさつぶつは、聖書せいしょはじめとする宗教しゅうきょうしょ半数はんすうちかくをめており、活版かっぱん印刷いんさつによる聖書せいしょ普及ふきゅうは、マルティン・ルターらによる宗教しゅうきょう改革かいかくにつながっていく。ただし当時とうじ印刷物いんさつぶつ増大ぞうだい宗教しゅうきょうしょかぎらず、学術がくじゅつ実用じつようしょなどあらゆる分野ぶんや印刷物いんさつぶつ激増げきぞうした。

活版かっぱん印刷いんさつ発明はつめい影響えいきょう

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1450ねんから1800ねんにかけてのヨーロッパの書籍しょせき発行はっこうすう[13]

印刷いんさつとく活版かっぱん印刷いんさつ発明はつめい世界せかいにいくつもの巨大きょだい影響えいきょうあたえた。この影響えいきょう総称そうしょうして「印刷いんさつ革命かくめい」とばれることもある[14]直接的ちょくせつてき影響えいきょうれいとしては、活版かっぱん印刷いんさつによってほん大量たいりょう供給きょうきゅうされることで、それまで非常ひじょう高価こうかだった書籍しょせき庶民しょみんでもはいるようになった。そのことで知識ちしき蓄積ちくせきおよび交流こうりゅうがそれまでの社会しゃかいくら格段かくだんすすむようになり、宗教しゅうきょう改革かいかくをはじめとする数々かずかず社会しゃかいてき変革へんかくこしていった。

印刷いんさつはまた、書物しょもつ規格きかくをももたらした。写本しゃほん場合ばあい誤記ごき文章ぶんしょう欠落けつらくめずらしいことではまったくなかったが、活版かっぱん印刷いんさつ事前じぜんチェックが可能かのうであり、もしあやまりがあった場合ばあい修正しゅうせい容易よういであるため、誤植ごしょく可能かのうせい加味かみしても手書てがほんくらべはるかに正確せいかく文章ぶんしょうしるされるようになった。どう時期じき発達はったつした版画はんが活版かっぱん印刷いんさつわせは、もと情報じょうほう正確せいかく反復はんぷく可能かのうにし、信頼しんらいできる正確せいかく図版ずはんおよび文章ぶんしょう蓄積ちくせき科学かがく革命かくめい基盤きばんとなった[15]印刷いんさつによって書籍しょせきととのった文字もじならぶようになったことは、それまでの手書てがほんくらべて読解どっかい容易よういなものとし、識字しきじ有用ゆうようせいをよりたかめることとなった。こうした書籍しょせき氾濫はんらんは、貴重きちょうほん一人ひとり人間にんげんげそれを周囲しゅうい大勢おおぜい人間にんげん拝聴はいちょうするというかたちおこなわれていた知識ちしき伝達でんたつシステムを変化へんかさせ、聴覚ちょうかくわり視覚しかく優位ゆういあたらしい方法ほうほう主流しゅりゅうとなった[16]

このほか、それまでの写本しゃほん時代じだいにはほとんど考慮こうりょされていなかった著作ちょさくけんが、活版かっぱん印刷いんさつ開始かいしほとんどをおかずして各国かっこく次々つぎつぎ保護ほごされるようになっていったことも印刷いんさつおおきな影響えいきょうのひとつである。活版かっぱん印刷いんさつ発明はつめい以前いぜんにおいては写本しゃほん自体じたい写字しゃじせい確保かくほなどで非常ひじょうこうコストなものであり、ほん自体じたい手書てがきのため発行はっこうりょう非常ひじょうすくなく、著者ちょしゃ写本しゃほんさいなんらかの報酬ほうしゅうはいることはほとんどなかった。しかし活版かっぱん印刷いんさつによって大量たいりょう書籍しょせきいち生産せいさんできるようになると、他者たしゃ出版しゅっぱんぶつ無断むだん複製ふくせいさい出版しゅっぱんすることが横行おうこうするようになり、著者ちょしゃならびに出版しゅっぱん業者ぎょうしゃたいする権利けんり保護ほご急務きゅうむとなった。1518ねんイングランドにおいてヘンリー8せい出版しゅっぱん業者ぎょうしゃのリチャード・ピンソンにたいかれ出版しゅっぱんぶつ他者たしゃ再刊さいかん禁止きんしみとめたのは、こうしたうごきの初期しょきれいである[17]

近代きんだいにおける印刷いんさつ技術ぎじゅつ改良かいりょう

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その欧米おうべいにおいてはながらく活版かっぱんによる文字もじ凹版おうはんによる絵画かいが挿絵さしえ印刷いんさつおこなわれた。活版かっぱん印刷いんさつ熟練じゅくれん植字しょくじこう必要ひつようであり、いまだ大量たいりょう印刷物いんさつぶつ素早すばや印刷いんさつするというわけにはいかなかった。1642ねんにはドイツのルートヴィヒ・フォン・ジーゲンがメゾチント発明はつめいした。18世紀せいき初頭しょとうにはスコットランドのウィリアム・ゲドが鉛版えんばん考案こうあんした。これはみあがった活字かつじ可塑かそせいのあるものをかぶせてめすがたつくり、それになまりそそいで印刷いんさつよういたさい作成さくせいする方法ほうほうで、みあがった活字かつじさい作成さくせい容易よういになり、再版さいはんのコストをおおきくげた[18]。こうした鉛版えんばんには当初とうしょ粘土ねんどいで石膏せっこう使つかわれていたが、19世紀せいき前半ぜんはんにフランスのジュヌーがかみ使つかって紙型しけい作成さくせいすることを考案こうあんし、以後いごこの方法ほうほう主流しゅりゅうとなった。1798ねんにドイツのセネフェルダー石版せきばん印刷いんさつリトグラフ)を発明はつめい。これが平版へいはん印刷いんさつはじめとなる。1800ねんにはイギリスのチャールズ・スタンホープ(スタナップ)が鉄製てつせい印刷いんさつ発明はつめいし、それまでの木製もくせいのグーテンベルク印刷いんさつにとってかわった。1811ねんにはドイツのフリードリヒ・ケーニヒが蒸気じょうきしき印刷いんさつ開発かいはつし、印刷いんさつ能力のうりょく大幅おおはば向上こうじょうした。

手動しゅどう 蒸気じょうきしき
グーテンベルクかた印刷いんさつ
1600ねんごろ
スタンホープ印刷いんさつ
1800ねんごろ
ケーニヒ印刷いんさつ
1812ねん
ケーニヒ印刷いんさつ
1813ねん
ケーニヒ印刷いんさつ
1814ねん
ケーニヒ印刷いんさつ
1818ねん
1あいだたりの印刷いんさつ枚数まいすう 200 [19] 480 [20] 800 [21] 1,100 [22] 2,000 [23] 2,400 [23]

1851ねんには輪転りんてん印刷いんさつ発明はつめいされた[24]。こうした機械きかいによって、印刷物いんさつぶつはよりはや大量たいりょう生産せいさんでき安価あんかなものとなった。1884ねんにはオットマー・マーゲンターラーライノタイプばれるうえ発明はつめいし、これによって印刷いんさつこうが1ぎょうごとにまるごと活字かつじ鋳造ちゅうぞうできるようになり印刷いんさつはより効率こうりつした[25]現在げんざい主流しゅりゅうとなっている平版へいはんオフセット印刷いんさつは、1904ねんにアメリカのルーベル発明はつめいしたといわれているが、それ以前いぜんにイギリスではブリキ印刷いんさつ分野ぶんや使用しようされていた。ルーベルの発明はつめいかみへの平版へいはんオフセット印刷いんさつである。1938ねんにはアメリカのチェスター・カールソンゼログラフィせいでん写真しゃしんほう)を発明はつめいし、1942ねん特許とっきょ取得しゅとくした。この発明はつめい複写ふくしゃ技術ぎじゅつてき基礎きそとなり、1960ねんにハロイドしゃ(のちのゼロックス)がこれを商品しょうひんしたことでコピーぜん世界せかい普及ふきゅうした[26]1985ねんにはアメリカでDTPはじまった。

デジタル印刷いんさつ出現しゅつげん

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古代こだいから印刷いんさつにはかならず(物体ぶったいの)ばん必要ひつようとされていたが、1990年代ねんだい以降いこう製版せいはんデータは作成さくせいする実用じつようばんすりばん)を出力しゅつりょくしないデジタル印刷いんさつ出現しゅつげんした[27]。 (なお、それでもかなら一旦いったん電子でんしてきはん作成さくせいする。電子でんしてきはんすら作成さくせいせずに、いきなりモノの表面ひょうめんなにかをえがくような作業さぎょうはprinting印刷いんさつとは基本きほんてきわない。はん作成さくせいせずになにかをえが作業さぎょう印刷いんさつではなく、drawing(ドローイング)や writing(ライティング)である。)

技術ぎじゅつてき意味いみでの世界せかいはつのデジタルカラー印刷いんさつは1991ねんにドイツのハイデルベルクしゃ発表はっぴょうしたGTO-DIとされている[27]

1993ねんにはイスラエルのインディゴしゃ電子でんし写真しゃしん方式ほうしきのE-print1000を発表はっぴょうした[27]電子でんし写真しゃしん方式ほうしき印刷いんさつもちいられるエレクトロインキはブランケットどうのこらず、いち回転かいてんごとにことなる画像がぞう印刷いんさつできる画期的かっきてきなものであった[27]

一方いっぽう、インクジェット方式ほうしきは1990年代ねんだい日本にっぽんでデジタルカメラとともに流行りゅうこう[27]産業さんぎょうようのインクジェット方式ほうしきのプリンタは2011ねんごろから大型おおがたのものが次々つぎつぎ登場とうじょうした[27]

日本にっぽんにおける歴史れきし

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吾妻あづまきょう活字かつじほん寛永かんえいばんはやし羅山らざん跋文ばつぶん

日本にっぽんでは、「ひゃくまんとう陀羅尼だらに」が作成さくせいされて以降いこうひゃくすうじゅう年間ねんかん印刷物いんさつぶつされることはなかったが、平安へいあん時代じだい中期ちゅうきになって、すりけい供養くようさかんにおこなわれるようになった。これが、奈良なら中心ちゅうしんとする寺院じいんあいだに、出版しゅっぱん事業じぎょうおこさせるようになる。興福寺こうふくじなどでひらけばんした印刷物いんさつぶつ春日しゅんじつばんぶ。鎌倉かまくら時代ときよには高野山こうのやま金剛峰寺こんごうぶじでも出版しゅっぱんおこなうようになった。これは高野たかのばんばれる。13世紀せいきごろからは、そう留学りゅうがくしたそうがもたらしたそうかんばん影響えいきょうけ、京都きょうと五山ごさんばんる。安土あづち桃山ももやま時代じだいはいると、1590ねんにはイエズスかいアレッサンドロ・ヴァリニャーノによって加津佐かづさ印刷いんさつ輸入ゆにゅうされて活字かつじによる印刷いんさつキリシタンばん)がはじまった[28]近世きんせい以前いぜん金属きんぞく活字かつじもちいたキリシタンばん駿河するがばんといった例外れいがいのぞき、木版もくはん印刷いんさつ中心ちゅうしんだった。活字かつじはこの時期じき多用たようされ、美麗びれい嵯峨さがほんはじおおくの活字かつじほん江戸えど時代じだい初期しょきには出版しゅっぱんされていたが、寛永かんえい年間ねんかんからは木版もくはんさかんとなり、寛文ひろふみ年間ねんかんにはほぼせいばんにとってかわられた。これは中国ちゅうごく同様どうよう文字数もじすうおお活字かつじ膨大ぼうだいりょう必要ひつようだったことと、木版もくはんはんなが保存ほぞんしておけるのにたいし、活版かっぱん印刷いんさつわればすぐにはんくずしてしまうため再版さいはんのコストが非常ひじょうたかくついたことが原因げんいんである[29]。しかし活字かつじ印刷いんさつえてしまったわけではなく、活字かつじ印刷いんさつ江戸えど時代じだいつう細々こまごまつづけられた[30]一方いっぽう木版もくはん印刷いんさつ発展はってんつづけ、庶民しょみんものである赤本あかほん黄表紙きびょうしなど、一気いっき出版しゅっぱん文化ぶんか花開はなひらくことになる。

木版もくはん以外いがいでは、1783ねん司馬しば江漢こうかん腐食ふしょくによる彫刻ちょうこくどう版画はんが製作せいさくしている。1856ねんには長崎ながさき奉行ぶぎょう所内しょない活版かっぱんによる近代きんだい洋式ようしき印刷いんさつはじまる。

明治めいじ時代じだいはいり、1870ねんには本木もとぎ昌造しょうぞう長崎ながさき新町しんまち活版かっぱんしょ創立そうりつ、これが日本にっぽんにおける民間みんかんはつ洋式ようしき活版かっぱん企業きぎょうである。1888ねんには合田あいだきよし木口きぐち木版もくはん西洋せいよう木版もくはん)を日本にっぽんはじめて紹介しょうかいした。日本にっぽんはつ印刷いんさつ専門せんもん印刷いんさつ雑誌ざっし』の創刊そうかんごう1891ねん)の表紙ひょうしには、合田あいだきよし木口きぐち木版もくはん使つかわれている。1896ねんには、小川おがわ一真かずまさ日本にっぽんはつ3しょくばん印刷いんさつ発表はっぴょうした。1902ねんには、小倉おぐら倹司一般いっぱん刊行かんこうぶつでは日本にっぽん最初さいしょの3しょくばん印刷物いんさつぶつ発表はっぴょうした(明治めいじ35ねん7がつ15にち発行はっこうの「文藝ぶんげい倶楽部くらぶだい8かんだい10ごう口絵くちえ発表はっぴょうした「薔薇ばらはな」)。1919ねんには、HBプロセスほう日本にっぽん移入いにゅうされた。

1924ねん石井いしい茂吉しげよし森澤もりさわ信夫しのぶ邦文ほうぶん写真しゃしん植字しょくじ試作しさく発表はっぴょう1926ねんには写真しゃしん植字しょくじ研究所けんきゅうじょ設立せつりつした。1929ねん実用じつよう完成かんせい。その2にんたもとかち、それぞれうつしけんモリサワとして写植しゃしょくオフセットの時代じだいささえていくことになる。

1960ねん電子でんし製版せいはんカラースキャナ)が実用じつようされ、1970年代ねんだいには、国産こくさん4しょく同時どうじ分解ぶんかいスキャナ開発かいはつされた。このころから電算でんさん写植しゃしょくオフセット印刷いんさつ主流しゅりゅうとなる。1978ねん発表はっぴょう東芝とうしばJW-10においてかな漢字かんじ変換へんかん登場とうじょうせんねんなやみであった漢字かんじ問題もんだい解決かいけつ目処めどった。

1985ねん、アメリカでDTPはじまり、1989ねん日本にっぽんはつのフルDTP出版しゅっぱんぶつもり書物しょもつ』が刊行かんこうされた。このころからデータのデジタル加速かそくオンデマンド印刷いんさつ電子でんし出版しゅっぱんなどが徐々じょじょ現実げんじつとなりはじめる。

版式はんしきによる分類ぶんるい

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ゆう版式はんしき

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はん色々いろいろ

凸版とっぱん

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はん凹凸おうとつ利用りようする印刷いんさつほうひとつで、せんを凹、せんとつにしてとつにインクをつけ、かみ転写てんしゃする方式ほうしき[31]

活版かっぱん印刷いんさつ活字かつじ写真しゃしん凸版とっぱん線画せんが凸版とっぱん罫線けいせんなどをわせてはんとする)はこの版式はんしきである。印刷いんさつでのあつりょくによりかみ凹凸おうとつができることがある[31]。また、印刷いんさつされた文字もじにマージナルゾーン(インクのよこれにより、実際じっさい活字かつじせんはば以上いじょう余分よぶんふとさとなる部分ぶぶん)がられるなどの特徴とくちょうがある。はんなまりせいあつかいにくいこと、オフセット印刷いんさつ発達はったつなどにより、活版かっぱん印刷いんさつすたれた。現在げんざいおもおこなわれている凸版印刷とっぱんいんさつは、樹脂じゅし凸版印刷とっぱんいんさつおよびフレキソ印刷いんさつである。樹脂じゅし凸版印刷とっぱんいんさつとは、活版かっぱんわりに感光かんこうせい樹脂じゅしすりばんもちいるもので、週刊しゅうかんのモノクロページ、シール、ラベル印刷いんさつなどで使用しようされている。ただし現在げんざいでは、週刊しゅうかんのモノクロページはほとんど平版へいはんオフセットで印刷いんさつされるようになった。フレキソ印刷いんさつは、ゴムや感光かんこうせい樹脂じゅしはんもちい、すりばんにインキを供給きょうきゅうする部分ぶぶんにアニロックスロールとばれるローラーをもちいる方法ほうほうである。アニロックスロールは、表面ひょうめん規則正きそくただしい配列はいれつへこみを彫刻ちょうこくし、その凹部にまったインキをはん供給きょうきゅうするもので、用途ようとわせて凹部のせんすう選択せんたくすることができる。しるしあつがほとんどない「キスタッチ」が理想りそうとされ、だんボールライナー、包装ほうそうフィルムなどの印刷いんさつ使用しようされている。

ドイツで印刷いんさつじゅつ流行りゅうこうした時期じき凸版印刷とっぱんいんさつじゅつのアイディアは、レオナルド・ダ・ヴィンチ考案こうあんし、印刷いんさつ設計せっけいえがいたが、実用じつようされるのは、その300ねんとなる(佐藤さとうみゆきさんへんぶん青木あおきあきら図説ずせつ レオナルド・ダ・ヴィンチ』 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ初版しょはん1996ねん)6さつ2006ねん p.22)。一説いっせつにレオナルドの稿こうかがみ文字もじもちいたのも、この印刷いんさつようはん意識いしきしてのこととされる(どう図説ずせつ レオナルド・ダ・ヴィンチ』 p.22)。

線画せんが凸版とっぱん
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印刷物いんさつぶつには文字もじだけでなくなどの図版ずはん必要ひつようとされることがおおい。ひょうなどの線画せんがから光学こうがくてきネガフィルム作成さくせいし、それを感光かんこうざい塗布とふした亜鉛あえんばん(または銅版どうはん)にける。感光かんこうしたところだけ硬化こうかして皮膜ひまくとなるので、塩酸えんさんなどで金属きんぞく腐食ふしょくさせることで感光かんこうせん)だけがとつじょうのこ線画せんが凸版とっぱん出来上できあがる。

写真しゃしんばん
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写真しゃしん印刷いんさつするための凸版とっぱん写真しゃしんばんという。詳細しょうさい#写真しゃしん印刷いんさつ参考さんこう

鉛版えんばん
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複製ふくせい鉛版えんばん、ステロばんともいう。活字かつじ線画せんが凸版とっぱん組版くみはんしてつくった原版げんばん摩耗まもうなどにより一定いってい枚数まいすうしか印刷いんさつ出来できないのが通常つうじょうであるため、原版げんばん紙型しけいせてプレス加圧かあつおこなってかたり、その紙型しけい鋳型いがたとしてなまりすずアンチモン合金ごうきんながんで複製ふくせいばんつくられる。このさい半円はんえんがた鋳造ちゅうぞうしたものを2つわせれば「まる鉛版えんばん」となり輪転りんてんにかけることが可能かのうとなる。これによって大量たいりょう印刷いんさつ可能かのうとなった。

凹版おうはん基本きほんてき仕組しく
したはんにある凹部ぶんのインクがかみ(うえ)に転写てんしゃされる)

凹版おうはん

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はん凹凸おうとつ利用りようする印刷いんさつほうひとつで、せんであるとつのインクをり凹部にいたインクをかみ転写てんしゃする方式ほうしき現在げんざいでは電子でんし彫刻ちょうこくされたどうせいのシリンダーをもちいたすりばん使用しようされるため耐久たいきゅうせいがあり、大量たいりょう印刷いんさついている。微細びさいせん表現ひょうげんできることから、偽造ぎぞう防止ぼうし目的もくてき紙幣しへい収入しゅうにゅう印紙いんしなどに採用さいようされることがおおい。

また、グラビア印刷いんさつ凹版おうはん印刷いんさつ仲間なかまえる。グラビアばんは、ほかの印刷いんさつ方法ほうほうのような錯覚さっかく利用りようした濃淡のうたん表現ひょうげんと、凹部ぶんふかさのちがいによるインクのりょう増減ぞうげんによる濃淡のうたん変化へんか双方そうほう可能かのうであるため、写真しゃしんなどの再現さいげんせいすぐれている。かつて、雑誌ざっしにおいては本文ほんぶん凸版とっぱん印刷いんさつされ、写真しゃしんページはグラビアで印刷いんさつされていたことから、てんじて写真しゃしんページのことをグラビアページとぶようになった。現在げんざい本文ほんぶん写真しゃしんともオフセット印刷いんさつ利用りようされることがおお[32]

平版へいはん

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オフセット印刷いんさつ

たいらなはんうえに、化学かがくてき処理しょりにより、おや油性ゆせいせん親水しんすいせいせん作成さくせいし、インキをせんせて、かみ転写てんしゃする方式ほうしき[33]一般いっぱんてきにはオフセット印刷いんさつ同義どうぎ理解りかいされているが、オフセットとはインキがはんからゴムばんいち転写てんしゃされることをすのであり、本来ほんらい平版へいはん印刷いんさつうのがただしい。オフセットする凸版とっぱん(ドライオフセット印刷いんさつなど)や凹版おうはん(パッド印刷いんさつ=タコ印刷いんさつなど)もまれに存在そんざいする。石版せきばん印刷いんさつ(リトグラフ、リソグラフィ)も平版へいはん一種いっしゅ

現代げんだい日本にっぽん出版しゅっぱんぶつは、おおくが平版へいはんオフセット印刷いんさつられている。ちょくりの凸版とっぱん凹版おうはんちがい、すりばんじょう画像がぞう反転はんてんしていないので間違まちがいなどをつけやすい。また高速こうそく大量たいりょう印刷いんさつてきしている。日本にっぽんにおいて平版へいはん印刷いんさつ普及ふきゅうした理由りゆうとして写真しゃしん植字しょくじげられる。写真しゃしん植字しょくじによる版下はんした作成さくせいはその工程こうていとして製版せいはんフィルムあつまりばん)が不可欠ふかけつであり、この工程こうていかぎ平版へいはん印刷いんさつ最適さいてきであるからである。カラー印刷いんさつ英語えいごばんほとんどすべてこの方式ほうしきである。

孔版こうはん

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はん油紙あぶらがみなど)に微細びさいあな多数たすうけ、あつりょくによってそこを通過つうかしたインクをかみなどに転写てんしゃする方式ほうしき

手軽てがる設備せつび実現じつげんできる。身近みぢか代表だいひょうれい理想科学工業りそうかがくこうぎょうプリントゴッコリソグラフ製品せいひんめい)。複製ふくせい絵画かいが使用しようされるシルクスクリーンや、謄写版とうしゃばんガリ版がりばん)も孔版こうはん一種いっしゅ文字もじ画像がぞう印刷いんさつかぎらず、物体ぶったい表面ひょうめん各種かくしゅ機能きのうせい材料ざいりょう皮膜ひまく形成けいせいする技術ぎじゅつとしてひろもちいられている。いちれいでは、カラーブラウン管ぶらうんかんのシャドーマスクや液晶えきしょう表示ひょうじ装置そうちのカラーフィルターといった部品ぶひんが、印刷いんさつ技術ぎじゅつもちいて製造せいぞうされている。別名べつめいステンシル印刷いんさつともしょうされるが、最近さいきんではスクリーン印刷いんさつばれることがおおい。ステンシルテンプレート孔版こうはん一種いっしゅといえる。

版式はんしき

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はん印刷いんさつとは、製版せいはんフィルムやすりばんなどを作成さくせいすることなく、直接ちょくせつ用紙ようし印刷いんさつする方式ほうしき

電子でんし写真しゃしん方式ほうしきせいでん記録きろく方式ほうしき

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電子でんし写真しゃしん方式ほうしきせいでん記録きろく方式ほうしき)はオフィスなどでもちいられるレーザープリンターひろ普及ふきゅうしている方式ほうしき[34]

熱転写ねつてんしゃ方式ほうしき

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熱転写ねつてんしゃ方式ほうしきには溶融ようゆうがた熱転写ねつてんしゃ染料せんりょう熱転写ねつてんしゃがある[34]染料せんりょう熱転写ねつてんしゃ染料せんりょう加熱かねつによる昇華しょうか利用りようしたため昇華しょうかがた熱転写ねつてんしゃばれていたが、かならずしも昇華しょうか原理げんり利用りようしないものも利用りようされるようになっている(ただし分類ぶんるいじょう印刷いんさつ過程かてい関係かんけいなく昇華しょうかがた熱転写ねつてんしゃ使つかわれることもある)[34]

インクジェット方式ほうしき

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インクジェット方式ほうしきは1980年代ねんだい電機でんきけい会社かいしゃ中心ちゅうしん開発かいはつされた[34]

写真しゃしん印刷いんさつ

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(a) 凹版おうはんはセルのふかさで濃淡のうたん表現ひょうげんできる。
(b) 凸版とっぱんあみてんおおきさで濃淡のうたん表現ひょうげんする。

凹版おうはん

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凸版とっぱん平版へいはんことなり凹版おうはんではせんを凹部で製版せいはんする。凹版おうはん印刷いんさつ代表だいひょうであるグラビア印刷いんさつでは、くぼみ(「セル」という)のふかさにより印刷いんさつされるインキのりょう調整ちょうせいできるため、あみてん使つかうことなくいろ濃淡のうたん表現ひょうげんすることができる。これをコンベンショナルほうという。現在げんざいグラビア印刷いんさつ主流しゅりゅうあみグラビアほうで、これはあみてん使つかった印刷いんさつ手法しゅほうである。

あみてん

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モノクロもうてん、45°スクリーン
おな写真しゃしんのカラー/CMYKもうてん
CMYKもうてんスクリーン角度かくどれい

写真しゃしん連続れんぞくかい調ちょうがあるのにたいし、凸版印刷とっぱんいんさつ平版へいはん印刷いんさつでは白黒しろくろ場合ばあいしろくろの2かい調ちょうしか出力しゅつりょくできない。そこであみてん(ハーフトーンドット)の大小だいしょうによって写真しゃしん濃淡のうたん表現ひょうげんしている。(網版あみはんほう

この手法しゅほう印刷いんさつもちいられるようになったのは、ドイツのマイゼンバッハらの発案はつあんもとに、1886ねん、アメリカのレビー兄弟きょうだいあみスクリーンの実用じつよう成功せいこうしたのがはじまりである[35]

製版せいはんにはくろしろしかないちょう硬性こうせいリスフィルム使用しようされる。フィルムのまえ一定いってい距離きょりけてコンタクトスクリーン(あみスクリーン)をく。このスクリーンは格子こうしじょうひかり透過とうかする模様もようはいっており、写真しゃしん濃淡のうたんくろあみてん大小だいしょうえてリスフィルムにける効果こうかつ。こうしてつくられたあみネガが製版せいはんフィルムとなる。

なお、あみこまかさは「あみてんかず/インチ」であらわされ、それをスクリーンせんすうという。新聞しんぶんなどインキのにじみやすい紙質かみしつのものは85せん(1インチに85あみてん)、一般いっぱん書籍しょせきは100せん写真しゃしん中心ちゅうしん画集がしゅうなどは175せんといった具合ぐあいである。

凸版とっぱんではこうしてできた製版せいはんフィルムと亜鉛あえんばん(もしくは銅版どうはん)に感光かんこうざい塗布とふしたものをわせて露光ろこうする。感光かんこうした部分ぶぶんだけが硬化こうかしてのこり、部分ぶぶんあらとされる。この亜鉛あえんばん塩酸えんさん腐食ふしょくさせることで感光かんこうした部分ぶぶんだけがとつじょうのこった写真しゃしんばん網版あみはん)が出来上できあがる。活字かつじ写真しゃしんばんから組版くみはんにより印刷いんさつもちいる原版げんばん出来上できあがる。

オフセット印刷いんさつ代表だいひょうされる平版へいはんでも基本きほんてき原理げんりおなじである。文字もじ原稿げんこうから写植しゃしょくあるいは電算でんさん写植しゃしょくにより版下はんした作成さくせいされ、写真しゃしんはコンタクトスクリーンによる露光ろこうによってあみネガがつくられて、文字もじ版下はんしたわされもうポジがつくられる。このあみポジがPSばんけられて製版せいはんされる[35]

同人どうじんなどをオフセット印刷いんさつまわ場合ばあい濃淡のうたん部分ぶぶん事前じぜんあみてんあみけ/もうれ)しておくと料金りょうきんやすむことがおおい。個人こじんようプリンター印刷いんさつしたものの場合ばあいすでにこの処理しょりおこなわれている。

カラー写真しゃしん場合ばあい製版せいはんCMYKかくいろようフィルターをもちいるなどして4しょく分解ぶんかいおこない、それぞれのいろ対応たいおうしたはんつくる。このときもちいるあみスクリーンは格子こうし角度かくどをそれぞれのいろごとに10~15ずつずらしたものを使つかい、モアレ発生はっせい抑制よくせいしている。

2015ねん現在げんざい商業しょうぎょう印刷いんさつ主流しゅりゅうのオフセット印刷いんさつでは最新さいしんCTPダイレクトすりばんにより製版せいはんフィルムが不要ふようになっているケースがある。CTPによって写真しゃしん電子でんしてきいろ分解ぶんかいあみてんおこなわれるため、スクリーンを使つかった光学こうがくてき置換ちかんはもはやおこなわれない。

印刷いんさつ方法ほうほう比較ひかく

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印刷いんさつ方法ほうほう比較ひかく[36]
印刷いんさつ方法ほうほう 転送てんそう方法ほうほう 圧力あつりょく インクりょう ねばたび インクのあつ 備考びこう 費用ひようたい効果こうかたか印刷いんさつ枚数まいすう
オフセット印刷いんさつ ローラー 1 MPa 40-100 Pa・s 0.5-1.5 μみゅーm たか印刷いんさつ品質ひんしつ >5,000 (A3仕上しあ寸法すんぽう, sheet-fed)[37]

>30,000 (A3仕上しあ寸法すんぽう, まき印刷いんさつ)[37]

グラビア印刷いんさつ ローラー 3 MPa 50-200 mPa・s 0.8-8 μみゅーm インクそうあつくすることができる
画像がぞう再現さいげんせいすぐれる
印刷いんさつのふちがギザギザになる[38]
>500,000[38]
フレキソ印刷いんさつ ローラー 0.3 MPa 50-500 mPa・s 0.8-2.5 μみゅーm 高品たかしなただし
活版かっぱん印刷いんさつ あつばん 10 MPa 50-150 Pa・s 0.5-1.5 μみゅーm かわくのがおそ
スクリーン印刷いんさつ スクリーンのあなとおしてインクを <12 μみゅーm 多彩たさい方法ほうほうがある
てい品質ひんしつ
ゼログラフィ 静電気せいでんき 5-10 μみゅーm インクがあつ
液体えきたいゼログラフィ 静電気せいでんき 画像がぞう再現さいげんせいすぐれる、多彩たさい媒体ばいたい印刷いんさつ可能かのう非常ひじょううす画像がぞう
インクジェットプリンター ねつ 5-30ピコリットル(pl) 1-5 Pa・s[よう出典しゅってん] <0.5 μみゅーm インク消費しょうひらすための特殊とくしゅ用紙ようし必要ひつよう <350 (A3仕上しあ寸法すんぽう)[37]
インクジェットプリンター あつでん 4-30 pl 5-20 mPa s <0.5 μみゅーm インク消費しょうひらすための特殊とくしゅ用紙ようし必要ひつよう <350 (A3仕上しあ寸法すんぽう)[37]
インクジェットプリンター 連続れんぞく 5-100 pl 1-5 mPa・s <0.5 μみゅーm インク消費しょうひらすための特殊とくしゅ用紙ようし必要ひつよう <350 (A3仕上しあ寸法すんぽう)[37]
転写てんしゃ 熱転写ねつてんしゃフィルムまたは水圧すいあつによる転写てんしゃ 湾曲わんきょくした表面ひょうめんまたは凹凸おうとつのある表面ひょうめん画像がぞう大量たいりょう印刷いんさつ可能かのう

主要しゅよう印刷いんさつ会社かいしゃ

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主要しゅよう印刷いんさつ機械きかいメーカー

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世界せかい

en:Category:Printing press manufacturers

日本にっぽん

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c d 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ』【印刷いんさつ
  2. ^ a b Etymoline
  3. ^ [1]
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  6. ^ [4]
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  8. ^ 図説ずせつ ほん歴史れきし』p22 樺山かばやま紘一こういちへん河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 2011ねん7がつ30にち初版しょはん発行はっこう
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  17. ^ 印刷いんさつ・スペース・ざされたテキスト」ウォルター・オング(『歴史れきしなかのコミュニケーション メディア革命かくめい社会しゃかい文化ぶんか所収しょしゅう)p149 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤーへんはやしすすむ大久保おおくぼ公雄きみおやくしん曜社 1995ねん4がつ20日はつか初版しょはんだい1さつ
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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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