(Translated by https://www.hiragana.jp/)
版画 - Wikipedia コンテンツにスキップ

版画はんが

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

版画はんが(はんが)とは、印刷いんさつおこなかみ以外いがいに、彫刻ちょうこく細工ざいくほどこしたはんつくり、インク転写てんしゃ透写とうしゃとうによってふくすうまい絵画かいが製作せいさくする技法ぎほう、またはそれにより製作せいさくされた絵画かいがのこと。版画はんがはそのはん仕組しくみからおおきく4つに分類ぶんるいされる。凸版とっぱん凹版おうはん平版へいはん孔版こうはんである。また、印刷いんさつするはんめん種類しゅるいによって木版もくはんどう版画はんが石版せきばんシルクスクリーン分類ぶんるいされる。

凸版とっぱん

[編集へんしゅう]
版画用プレス機 インクとローラー
版画はんがようプレス
インクとローラー

凸版とっぱん(とっぱん)は、インクをローラーなどではんった部分ぶぶんだけに付着ふちゃくさせて、はんかみバレンまたはプレス(版画はんがプレス[1]しつけて、かみうつるという方法ほうほうである。凸版とっぱん製版せいはんでは、はんった部分ぶぶんつく作業さぎょうおこなう。それを簡単かんたんにできるように、はん材料ざいりょうとして、加工かこうがしやすい材質ざいしつものこのまれる。たとえば、木材もくざいゴムリノリウムなどが凸版とっぱんはん材質ざいしつとしてよく使つかわれる。[2]凸版とっぱんとは、凸版とっぱんという方法ほうほう印刷いんさつされた結果けっかもの場合ばあいもあれば、凸版とっぱん意味いみ使つかわれることもある。 凸版とっぱん製版せいはんは、はんった部分ぶぶんが、原画げんが左右さゆう反転はんてんさせたかがみぞうになるようにして、製作せいさくする。 凸版とっぱんには、木版もくはん、リノリウムばんはんざいとするリノカット、ごむ版画はんがいも版画はんがかみ版画はんがなどがふくまれる。凸版とっぱん製版せいはん必要ひつよう道具どうぐは、比較的ひかくてき安価あんか入手にゅうしゅでき、また販売はんばいされている場所ばしょ比較的ひかくてきおおい。製版せいはん作業さぎょう比較的ひかくてき簡単かんたんである。

木版もくはん

[編集へんしゅう]
浮世絵うきよええがかれた木版もくはん製作せいさく

木版もくはんは、いた版木はんぎ)をはん材料ざいりょう使つか凸版とっぱんである。原画げんがのうち、インクを付着ふちゃくさせたくない部分ぶぶん相当そうとうするいた領域りょういきを、彫刻ちょうこくがたなって製版せいはんする。輪郭りんかくせんのこす(輪郭りんかくせんにインクがつく)陽刻ようこくほうと、輪郭りんかくせんる(輪郭りんかくせんはインクがつかない)陰刻いんこくほうがあるが、このふたつの方法ほうほうのどちらも使つかって作品さくひんつくられることはおおい。

木材もくざいから版木はんぎとききによって、板目いため(いため)木版もくはん木口きぐち(こぐち)木版もくはんけられ、前者ぜんしゃおも日本にっぽんで、後者こうしゃ西洋せいよう発達はったつした。

江戸えど時代じだい日本にっぽんさかんにひろがり、鈴木すずき春信はるのぶ東洲斎写楽とうしゅうさいしゃらく葛飾かつしか北斎ほくさい喜多川きたがわ歌麿うたまろなど世界せかいてきられる浮世絵うきよえ版画はんが木版もくはん一種いっしゅで、いろごとにはん使つかばん多色たしょく版画はんがである。浮世絵うきよえ板目いため木版もくはんである。

棟方むなかた志功しこうは、木版もくはんを「いた」とんでいた。

コラグラフ

[編集へんしゅう]

コラグラフは、かみはん材料ざいりょう使つか凸版とっぱんである。かみ版画はんがともばれる。台紙だいしあらわしたいもののかたちったかみなどをかさねて製版せいはんする。台紙だいし丈夫じょうぶ板紙いたがみあつめの画用紙がようし使つかわれる。画用紙がようし使つか場合ばあいは、輪郭りんかくでちぎってまる台紙だいしにしてもちいることもある(『人間にんげんかお』など)。はんには、画用紙がようしほかかたダンボールやレースペーパー、凹凸おうとつのあるシートるい、さらには毛糸けいと・ひも・ぬのなど、様々さまざま素材そざいもちいられる。凸版とっぱんとしてあつかわれることがおおいが、はんの凹部にインクを凹版おうはんとして手法しゅほうもある。

学校がっこう教育きょういくではおも小学校しょうがっこうてい学年がくねんおこなわれる技法ぎほうである。

凹版おうはん

[編集へんしゅう]
版画はんが彫刻ちょうこくツール一覧いちらん-(a)エッチングはり(ニードル)、(b)スクレーパー、(c)および(d)バーニッシャー英語えいごばん、(e)グレーバー(ビュラン)、(f)スクーパー、(g)メゾチントようスクレーパー、(h)点描てんびょうグレーバー、(i)ルーレットメゾチントよう、(j)メゾチントようシェーディングツール、(k)メゾチントようルーレット、(l)ドライポイントグレーバー、(m)ハンマー、(n)「グランド」をるためのダバー、(o)ワニスるためのブラシ( p)キャリパーコンパス(1841ねん)

凹版おうはんとは、はんの凹部で図柄ずがら構成こうせいする版画はんが技法ぎほうである。

西洋せいよう美術びじゅつ世界せかいでは、もっともひろもちいられた版画はんが技法ぎほうであり、とりわけルネサンス以降いこうどうはんざいとするどう版画はんがにおいておおくの製版せいはん技法ぎほう開発かいはつ蓄積ちくせきされてきた。平版へいはん孔版こうはん発達はったつであった19世紀せいき以前いぜんにおいては、たん版画はんがといえば、おおくの場合ばあいに「どうによる凹版おうはん」をしていた。どう高価こうかなため、今日きょうでは工業こうぎょうよう教材きょうざいようとしてポリ塩化えんかビニルいたなどももちいられるが、美術びじゅつ作品さくひんとしては依然いぜんとしてどうざいによるものがおおい。

凹版おうはん印刷いんさつ手順てじゅんはまず、はん全体ぜんたいにインクをせたのちに、これをぬのなどでき、凹部にのみインクをのこす。 あとは、このはんかみかさねて圧力あつりょくをかければ、凹部のインクが転写てんしゃされて完成かんせいである。

しかし製版せいはん手順てじゅんは、それほど単純たんじゅんではない。はんの凹部をどうつくるかで、いくつかの技法ぎほうがあり、おおきく直接ちょくせつほう間接かんせつほうかれている。 はん直接ちょくせつに凹部をきざ場合ばあい直接ちょくせつほうさんなどの浸食しんしょく作用さよう利用りようしてはんめんに凹部をつくるのが間接かんせつほうである。単一たんいつ技法ぎほうによる作品さくひんもあれば、併用へいようされる場合ばあいもある。 ここでは直接ちょくせつほうとしてエングレービングドライポイントメゾチントを、間接かんせつほうとしてエッチングアクアチントについて詳説しょうせつする。

エングレービングとドライポイント(直接ちょくせつほう

[編集へんしゅう]
騎士きし悪魔あくま』(1513)
デューラーによるエングレービング作品さくひん精緻せいちりなので、この画像がぞう解像度かいぞうどでは版画はんがえない。

直接ちょくせつほうとしてまず、エングレービングドライポイントについて詳説しょうせつする。

エングレービングでは、ビュランとばれる道具どうぐみぞって図柄ずがらつくってゆく。ビュランとは、Vがたをもった彫刻ちょうこくがたな三角さんかくがたなのような道具どうぐで、そのけずりくずはりだされ、はんじょうにはのこらない。これにたいしてドライポイントでは、 さきとがった、きわめて硬度こうどたかいニードルなどではん線描せんびょうする。ドライポイントは基本きほんてきはんにキズをつけるだけなので、けずりくずはせん周辺しゅうへんきでたままのこる (ささくれ、まくれ)。

このちがいははん耐久たいきゅうせいちがいとなってあらわれる。 凹版おうはんとははんじょうかみつよ圧力あつりょくをかけてインクを転写てんしゃする技法ぎほうである。 エングレービングは凹部以外いがいはんめんはフラットなので、多量たりょう印刷いんさつてもはん劣化れっかしにくい。 紙幣しへい印刷いんさつにエングレービングがもちいられるのはそのためである。 ドライポイントの場合ばあいは、ればるほど、せん周辺しゅうへん突起とっきさえつけられ、次第しだいせんがつぶれてくる。 印刷いんさつすくないはんであれば、せん周辺しゅうへん突起とっきにわずかにインクがのこるため、せん微妙びみょう陰影いんえいがつくが、印刷いんさつすすむほどにせんはより単調たんちょうに、より弱々よわよわしくなっていく。 はや段階だんかいでの印刷いんさつかそうでないかで、作品さくひん印象いんしょうも、価値かちちがってくるのはすべての版画はんが宿命しゅくめいであるが、ドライポイントはとくにそれが顕著けんちょである。

エングレービングとドライポイントの長短ちょうたんは、はんつくりやすさというてんでは逆転ぎゃくてんする。 エングレービングはかなりの熟練じゅくれん労力ろうりょくようする。エングレービングの大家たいかげる場合ばあい、しばしばルネサンスデューラーまでさかのぼられるが、そもそも美術びじゅつ史上しじょうでエングレービングにながじた作家さっかかぎられている。 ドライポイントはそれにくらべれば、デッサン技量ぎりょうたしかなら、習熟しゅうじゅくしやすく、製版せいはん時間じかんみじかい。 それでも、みぞふかさのコントロールや、「ささくれ」「まくれ」によるせん陰影いんえいまで計算けいさんした製版せいはんができるまでには修練しゅうれん必要ひつようである。

メゾチント(直接ちょくせつほう

[編集へんしゅう]

エングレービングとドライポイントがせん表現ひょうげんのための技法ぎほうであるのにたいして、メゾチントめん表現ひょうげんりょくふかめる技法ぎほうである。 「中間ちゅうかん色合いろあい」をせるというのが、その由来ゆらいである。 ヨーロッパでまだ写真しゃしん技術ぎじゅつのないころ肖像しょうぞう版画はんが細密さいみつ版画はんがもちいれられ人気にんきがあったが、写真しゃしん発達はったつとともにかえりみられなくなり、「わすれられた技法ぎほう」といわれることもある。 浜口はまぐち陽三ようぞうがこの技法ぎほう復興ふっこうしたことでられる。

その製版せいはん工程こうていは、これまでの技法ぎほうぎゃくである。 エングレービングとドライポイントでは、平面へいめんはんみぞきざむことで図柄ずがらつくってゆくが、メゾチントでは、まずはん全体ぜんたいにひじょうにこまかなてんせん無数むすうきざんで、ざらつかせ (これを「目立めたて」という)、そのにこの「」をけずって平面へいめんをつくってゆく。 インクがのこるのは当然とうぜんけずられなかった部分ぶぶんである。

目立めたてだけをほどこした段階だんかい印刷いんさつにかけると、全面ぜんめんくろ版画はんがができる。 ただし、くろとはいえ、それはこまかなてんせん集積しゅうせきなので、均一きんいつくろではなく微妙びみょう陰影いんえいる。 目立めたての粗密そみつ調整ちょうせいすればめんのニュアンスもわってくるし、またをならす段階だんかいでも、どの程度ていどもとののこすかでしょく濃淡のうたん調整ちょうせいできる。 エングレービングやドライポイント作品さくひん部分ぶぶんてきにこの技法ぎほうもちいれば、スムーズなかい調ちょうかげをつけることもできる。

きわめて労力ろうりょくがかかるので (大作たいさくだと目立めたてだけですうヶ月かげつかかる)、普及ふきゅう限界げんかいのある技法ぎほうではあるが、日本にっぽんには浜口はまぐち陽三ようぞう長谷川はせがわきよしなど、メゾチントを得意とくいとする作家さっかおおい。

エッチングとアクアチント(間接かんせつほう

[編集へんしゅう]
ひゃくフルデン版画はんが』(1647/49)
レンブラントによる混合こんごう技法ぎほう作品さくひん(エッチング・ドライポイント・エングレービング)。

間接かんせつほうとしてはエッチングアクアチントがよくられている。なお西欧せいおうではすべての間接かんせつほう総称そうしょうして「エッチング」とぶこともある。

エッチングとは銅版どうはん防食ぼうしょくざいいちめんにコーティングしたのち、ニードルで線描せんびょうし、さんひたして腐食ふしょくさせる技法ぎほうである。ニードルで防食ぼうしょくざいがした部分ぶぶんだけが浸食しんしょくされ、それがはんの凹部となる。最後さいご防食ぼうしょくざいあらながしてはん完成かんせいする。 レンブラントはエッチングをこのんで制作せいさくした最初さいしょ作家さっかであり、ほかのどう版画はんが技法ぎほう併用へいようするなど、意欲いよくてきにその表現ひょうげん可能かのうせい拡大かくだいした。 凹版おうはんのなかでは特殊とくしゅ技能ぎのうをもっとも必要ひつようとしない技法ぎほうなのでひろ普及ふきゅうしている。 有名ゆうめい画家がかが「ごろな」価格かかく作品さくひん提供ていきょうするためにエッチングをがけることもおおい。 そうした場合ばあい腐食ふしょく工程こうていにまで画家がか関与かんよするかどうかは画家がかのこだわり次第しだいで、「職人しょくにんまかせ」の場合ばあいもある。ただし、腐食ふしょく時間じかんながくするとよりふかみぞになってはっきりしたせんになり、みじかくするとあわ調子ちょうしになるなど、工夫くふう次第しだい複雑ふくざつ描画びょうがができるので腐食ふしょく工程こうていはけっして単純たんじゅん作業さぎょうではない。 近年きんねんでは薬液やくえきもちいない乾式かんしきエッチングも開発かいはつすすんでいる。

エッチングがせん表現ひょうげん技法ぎほうであるのにたいして、アクアチントめん表現ひょうげん技法ぎほうである。 エッチングの場合ばあいは、はんめんられた防食ぼうしょくそうがしてその部分ぶぶん腐蝕ふしょくすることで図柄ずがらつくるが、アクアチントは防食ぼうしょくざい松脂まつやに)を粉末ふんまつじょうにして、銅版どうはんめん半分はんぶんほど露出ろしゅつする程度ていど銅版どうはんりかける。松脂まつやにりかかった銅版どうはんうらからねっして銅版どうはん定着ていちゃくさせ、腐蝕ふしょくえき腐蝕ふしょくすることによってざらざらなめんをつくる。 濃淡のうたん腐蝕ふしょく時間じかん調節ちょうせつする。また、松脂まつやにりかけるりょうでもニュアンスがわってくる。 メゾチントの場合ばあいちがって、防食ぼうしょく腐蝕ふしょくふたつの工程こうてい余分よぶん介在かいざいしているため、はんめん仕上しあがりをコントロールするのはよりむずかしい。 単独たんどくもちいられるよりも、線描せんびょう技法ぎほう併用へいようされることのほうおおい。 水彩すいさいのようなぼかし、にじみをつけるときによく使つかわれたので、そのがある。

アクアチントの応用おうよう技法ぎほうとされるものにシュガー・アクアチントがある。 これは、みずはん偶発ぐうはつてきつく形状けいじょう定着ていちゃくさせる技法ぎほうであり、飛沫しぶき水玉みずたまなど特殊とくしゅ模様もようをつけるためにもよくもちいられる。 その工程こうていはまず、銅版どうはんめん砂糖さとうみずいたり、ふでひろげたりして模様もようつくることからはじまる。 つづいて、砂糖さとうすいかわかして定着ていちゃくさせ、そのうえから防食ぼうしょくざいかさねる。 これを温水おんすいひたすと、砂糖さとうのうえの防食ぼうしょくざい砂糖さとうけるとともにがれち、はんめん露出ろしゅつする。 あとはこれを腐蝕ふしょく工程こうていにかければ砂糖さとうすいによる模様もようはんめんきざまれる。 場合ばあいによっては腐蝕ふしょくまえ間接かんせつほうほどこされる。 水溶すいようせいのものであれば砂糖さとうでなくとも代替だいたいできるが、砂糖さとうはその濃度のうど調整ちょうせいすると適度てきどねば模様もようをコントロールしやすいし、なにより安価あんかである。

平版へいはん(リトグラフ)

[編集へんしゅう]

平版へいはんとは石版せきばんリトグラフばれているもので、あぶらみずをはじく原理げんり利用りようしている。1798ねんころアロイス・ゼネフェルダー偶然ぐうぜん原理げんり発見はっけんし、以降いこうロートレックなどの画家がか斬新ざんしん芸術げいじゅつせいたかポスターをこの方法ほうほうえがいた。以前いぜん巨大きょだいいしえがいていたが、近年きんねんあつかいやすいアルミばん使つかうことがおおい。専用せんようのアルミばんなどに油分ゆぶんつよいチョーク、クレヨン油性ゆせいのペンシル(ダーマトグラフ)などでえがき、アラビアゴム薬品やくひんって、はんつくる。注意ちゅういするてんはんにインクをさいはんつねみずれていなければならないことである。かみたびに、インクと水分すいぶんかみうつるので、はんにインクをまえかならみずはんらす必要ひつようがある。そうしないとすぐにしろいままにしておきたい部分ぶぶんにインクがいてしまい、はん駄目だめになる。

孔版こうはん

[編集へんしゅう]

孔版こうはん(こうはんが, えい: screenprinting または えい: serigraphy)とは、インクが通過つうかするあなとインクが通過つうかしないところをつくることで製版せいはんし、印刷いんさつする技法ぎほう。「あな」とは「けたあな」の意味いみである。[3] 孔版こうはんにはたくさんの種類しゅるい技法ぎほう存在そんざいするが、とく歴史れきしながく、よくられているものは、ステンシルとシルクスクリーンである。スクリーンは、英語えいごえい: screen語源ごげんで、こまかいあながたくさんあるぬのじょう網目あみめのシートのことである。むかしきぬぬの孔版こうはんはん材料ざいりょうとして使つかわれたが、現在げんざいではさまざまな材質ざいしつのスクリーンが使つかわれる。いといとあいだ隙間すきまがあるきぬぬの英語えいごで silk screen (シルク・スクリーン)だが、silk screen を使つかった孔版こうはん英語えいごで silk screen printing (シルク・スクリーン・プリンティング)とう。しかし、現代げんだいきぬ孔版こうはん使つかわれないので、孔版こうはん技法ぎほう日本語にほんごうところのシルクスクリーンの技法ぎほうは、英語えいごで screen printing (スクリーン・プリンティング)または serigraphy (セリグラフィ)とう。screen print または serigraph とは、 screen printing または serigraphy とばれる版画はんが技法ぎほう使つかってつくられた版画はんが作品さくひん言葉ことばである。

もし「印刷いんさつ」の意味いみ製版せいはん意味いみふくまず、かみうえにインクをける、狭義きょうぎ意味いみだとすれば、孔版こうはん製版せいはん方法ほうほうにはたくさんの種類しゅるいがあるが、印刷いんさつ方法ほうほう種類しゅるいすくない。孔版こうはん典型てんけいてき印刷いんさつ方法ほうほうは、製版せいはんされたはんのスクリーンとかみ密着みっちゃくさせ、スクイージーえい: squeegee)でインクをスクリーンのあなとおしてかみすというものである。

孔版こうはん製版せいはん方法ほうほうれいとして、かれた型紙かたがみをスクリーンにるカッティングほう、スクリーンに感光かんこうによってかたまる乳剤にゅうざいり、ひかりとお部分ぶぶんとおさない部分ぶぶんえがいた原画げんがをスクリーンにわせて露光ろこうして製版せいはんする直接ちょくせつほう特殊とくしゅ描画びょうがざいえがいたうえ乳剤にゅうざいって描画びょうがざい部分ぶぶんのみを剥離はくりさせる直間ちょっかんほう露光ろこうでスクリーンに定着ていちゃくする感光かんこう乳剤にゅうざい利用りようする写真しゃしん製版せいはんほうなどがある。

孔版こうはんほか種類しゅるい技法ぎほうとして、謄写版とうしゃばん、ペーパースクリーン版画はんが、コロジオン版画はんがまたは毛筆もうひつ謄写版とうしゃばんばれるもの、プリントゴッコまたはしん孔版こうはんばれるもの、サン描画びょうがスクリーン技法ぎほうなどがある。

くわしくは、シルクスクリーン参照さんしょう

美術びじゅつひんとしての版画はんが

[編集へんしゅう]

版画はんが作家さっかによって制作せいさくされる商業しょうぎょうてき版画はんが作品さくひんは、油彩ゆさいなどとことなり、一回いっかい作成さくせいつくられたはんからなんてんかの作品さくひんいちられる[4]られる部数ぶすう作品さくひん作家さっかによってまちまちであり、美術びじゅつひんとしての価値かち鑑定かんていしたうえで、作家さっかプロデュースする関係かんけいしゃによってめられる[4]

オリジナル版画はんが

[編集へんしゅう]

版画はんが作家さっかみずからがたずさわった作品さくひんはオリジナル版画はんがばれる。日本にっぽん版画はんが画商がしょう団体だんたいである日本にっぽん現代げんだいばん画商がしょう協同きょうどう組合くみあいでは、オリジナル版画はんがについて以下いかのように定義ていぎしている[5]

  1. 版画はんが制作せいさくする目的もくてきで、作家さっか下絵したええがき、作家さっか自身じしん木版もくはん銅版どうはん石版せきばん孔版こうはんなどをこく製版せいはん)したもの。
  2. 作家さっか自身じしん自分じぶんったり機械きかい(プレス)にかけてったりした作品さくひん、もしくは作家さっか監督かんとく職人しょくにんがその指示しじどおりったもの。
  3. 完成かんせいした作品さくひんいちまいいちまい作家さっか容認ようにんしたもの、もしくは職人しょくにん製版せいはんし、がった作品さくひん作家さっか自身じしん容認ようにんしたもの。
  4. 完成かんせいした作品さくひんはんめん左下ひだりした限定げんてい番号ばんごう(エディション・ナンバー)を、みぎ自筆じひつ署名しょめいしたもの(例外れいがいもある)。
  5. あらかじめめた限定げんてい部数ぶすうわったはんには、斜線しゃせんいちほんか〆しるしれ、あるいははんあなをうがつなどして、原版げんばんはいばん(レイエ)する。

エスタンプ

[編集へんしゅう]

エスタンプは、オリジナルの作者さくしゃまたは権利けんりしゃ了解りょうかいたうえで、オリジナル作品さくひん原画げんがとして第三者だいさんしゃによって版画はんが技法ぎほうもちいて制作せいさくされた版画はんが作品さくひんである[4]。エスタンプには余白よはくにそれとかる刻印こくいんなどが場合ばあいもあるが、オリジナルと見分みわけがきにくいものもおおい。エスタンプも部数ぶすう限定げんていされており、オリジナル版画はんがをしのぐ市場いちば価値かち作品さくひんもある[6]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ MAU造形ぞうけいファイル プレスふし
  2. ^ 版画はんが技法ぎほう表現ひょうげん』、町田まちだ市立しりつ国際こくさい版画はんが美術館びじゅつかん、1987ねん、13ぺーじ(ISBNなし)
  3. ^ 版画はんが技法ぎほう表現ひょうげん』、町田まちだ市立しりつ国際こくさい版画はんが美術館びじゅつかん、1987ねん、14ぺーじ(ISBNなし)
  4. ^ a b c 島田しまだ 1990, pp. 226–228.
  5. ^ グループ・ギャラリー 1990, pp. 118–119.
  6. ^ グループ・ギャラリー 1990, pp. 120–123.

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 島田しまだ紀夫のりお へん絵画かいが知識ちしき百科ひゃっか主婦しゅふ生活社せいかつしゃ生活せいかつシリーズ〉、1990ねん 
  • グループ・ギャラリー へん版画はんがかた主婦しゅふ友社ともしゃ〈エランズ・ブックス〉、1990ねんISBN 4079365004 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]