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静電気せいでんき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

静電気せいでんき(せいでんき、static electricity)とは、静止せいしした電荷でんかによってこされる物理ぶつり現象げんしょう

すべだい接触せっしょくして発生はっせいした静電気せいでんきによってかみたがいに反発はんぱつしている(反発はんぱつれい)
ねこうごきによって静電気せいでんき蓄積ちくせきされ、発泡はっぽうプラスチックせい梱包こんぽうざいからだにまとわりついている(せのれい)

概要がいよう

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静電気せいでんきは、物体ぶったいおも誘電ゆうでんたい)に電荷でんかたくわえられている(帯電たいでんする)状態じょうたいや、たくわえられている電荷でんかそのもののことを場合ばあいもある。電荷でんかつね電界でんかいによる効果こうか磁界じかいによる効果こうかつが、静電気せいでんきばれるのは電界でんかいによる効果こうか際立きわだっている場合ばあいである。

物体ぶったい物体ぶったいから摩擦まさつつよちからくわわると、まけ電荷でんか移動いどうしてせい電荷でんかまけ電荷でんかのバランスがくずれ、それぞれまさ帯電たいでんした状態じょうたいまけ帯電たいでんした状態じょうたいになる[1]。これらはおな種類しゅるい電荷でんかたがいに反発はんぱつし(斥力せきりょく)、ちが種類しゅるい電荷でんかう(引力いんりょく)という性質せいしつをもち、これらのちから静電気せいでんきりょくという[1]

発見はっけんふるく、紀元前きげんぜん600ねんごろにはタレスによる摩擦まさつ帯電たいでんについての記述きじゅつ存在そんざいしている。電池でんち電磁でんじ誘導ゆうどう原理げんりされるまで、電気でんきといえば静電気せいでんきのことであった。あまり使つかわれない用語ようごだが、対義語たいぎごとしてどう電気でんきがある。ただし、静電気せいでんきがくではどう電気でんきという言葉ことば使つかわれることはほぼなく、どう電気でんき定義ていぎのものであっても、静電気せいでんき現象げんしょうとしてあつかわれることがほとんどである。

しばしば、摩擦まさつ帯電たいでんによってしょうじる電荷でんかのことをして静電気せいでんきぶが、本来ほんらい摩擦まさつ帯電たいでん静電気せいでんき現象げんしょうひとつでしかない。たとえばあつでん効果こうかなども静電気せいでんき範疇はんちゅうである。かみなりもまた、くもたくわえられていた静電気せいでんきによってこされる放電ほうでん現象げんしょうである。

英語えいごelectricity電気でんき)という言葉ことば最初さいしょ使つかったのはトーマス・ブラウンで1646ねんのことだが、これはウィリアム・ギルバートが1600ねん使つかったラテン語らてんご新語しんご electricusもとになっている。なお、electricus という言葉ことばは13世紀せいきごろから使つかわれていたが、ギルバートははじめてこの言葉ことばを「琥珀こはくのようにものをける特性とくせい(つまり静電気せいでんき)」という意味いみ使つかった。ギルバートは摩擦まさつによって effluviumえない放出ほうしゅつぶつ)がのぞかれることでその物体ぶったいがものをけるようになるとかんがえており、電荷でんかというかんがかたにはいたっていない[2]

日本にっぽんにおいても静電気せいでんき学会がっかいによって応用おうよう方法ほうほう事故じこ防止ぼうし方法ほうほう研究けんきゅうされている。

発生はっせい

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セロハンテープのおな電荷でんかによる反発はんぱつ
セロハンテープの電荷でんかによる

もっとも身近みぢか静電気せいでんきは、2種類しゅるい誘電ゆうでんたい絶縁ぜつえんたい)の摩擦まさつによってしょうじる。誘電ゆうでんたいをこすりわせたときにしょうじる静電気せいでんき符号ふごうは、物体ぶったいわせによってきまる。わせたときにせい電荷でんかしょうじるものをみぎに、まけ電荷でんかしょうじるものをひだりになるようにならべると、誘電ゆうでんたい一直線いっちょくせんじょうならべることができ、この配列はいれつのことを帯電たいでんれつぶ。帯電たいでん極性きょくせい帯電たいでんれつによってまり、ことなる物質ぶっしつあいだ帯電たいでんでは帯電たいでんれつはなれているほどたかくなる。

このほか帯電たいでんした物体ぶったいへの接近せっきんしずかでん誘導ゆうどうおよび誘電ゆうでん分極ぶんきょく)や、物理ぶつりてき応力おうりょくあつでん効果こうか)、温度おんど変化へんかこげでん効果こうか)によってもしょうじる。実験じっけん用途ようと工業こうぎょう用途ようと静電気せいでんき利用りようする場合ばあいには、ヴァンデグラフ起電きでんのようなしずかでん発電はつでんや、コッククロフト・ウォルトン回路かいろのような昇圧しょうあつ回路かいろもちいる。物体ぶったいたくわえられている電荷でんか自分じぶん自身じしん反発はんぱつするため、静電気せいでんきはもっともひろがった状態じょうたい、すなわち物体ぶったい表面ひょうめん分布ぶんぷする状態じょうたいがもっとも安定あんていであり、ファラデーケージはこれを原理げんりとする。

利用りよう

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静電気せいでんき利用りようには、放電ほうでん現象げんしょう利用りようする場合ばあいと、電荷でんかによる吸引きゅういん反発はんぱつりょく利用りようする場合ばあいがある。電荷でんかによるちから距離きょりの2じょう反比例はんぴれいするため、これを利用りようする場合ばあいには対象たいしょうこまかいほどてきしている。このため、加速器かそくきイオンエンジン究極きゅうきょく用途ようとともえる。産業さんぎょう分野ぶんやでも、しずかでん植毛しょくもうしずかでん塗装とそうしゅうちり装置そうちのようにきりじょうけむりじょう物質ぶっしつ分散ぶんさんけいこなつぶからだ)をあつか用途ようとにしばしば利用りようされているほか、小型こがたアクチュエータモーターへの応用おうようもある。静電気せいでんき応用おうようした電子でんし部品ぶひんとしては、一連いちれんあつでん素子そし水晶すいしょう振動しんどうこげでん素子そしコンデンサがたマイクロフォンなどがある。これらは該当がいとう項目こうもく参照さんしょうのこと。また、身近みぢか応用おうようとして有名ゆうめいなもののひとつに、レーザープリンター複写ふくしゃもちいられる感光かんこうドラムの原理げんりがある。

放電ほうでん現象げんしょう応用おうようでは、放電ほうでんのエネルギーを利用りようした点火てんか装置そうち代表だいひょうてきである。コンロライターなどの身近みぢかなガス点火てんか装置そうちあつでん素子そしによる静電気せいでんき利用りようしている。また、空気くうきちゅうでの放電ほうでんオゾン生成せいせい利用りようされる。

静電気せいでんき影響えいきょう

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日常にちじょう生活せいかつでの影響えいきょう

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日常にちじょう生活せいかつのなかではドアノブにれたり自動車じどうしゃのキーをむときに放電ほうでんきていたみをしょうじることがある[1]日常にちじょう生活せいかつでは絨毯じゅうたんうえあるくことでゆか人体じんたいとのあいだ静電気せいでんきしょうじたり、化学かがく繊維せんいもちいた衣服いふくがこすれることによって帯電たいでんしたりすることがある。人体じんたい表皮ひょうひからの放電ほうでんはおおむねいたみをともない、やけどのあと確認かくにんできるものもある。

生活せいかつみだれから血液けつえきちゅうのマイナスイオンが不足ふそくしている状態じょうたいになっていると、自然しぜんとマイナスの電気でんきせる帯電たいでん体質たいしつになりやすい[1]という言説げんせつがあるが、そもそも「帯電たいでん体質たいしつ」というほどの個人こじんはないとされる[3]

なお、帯電たいでんした物体ぶったいほこりちりせるため、美観びかんそこねるなどの影響えいきょうもある。

イヤホン、ヘッドホンへの影響えいきょう

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イヤホンから、微弱びじゃく電気でんきショック発生はっせいする可能かのうせいがある[4][5]空気くうき乾燥かんそうしている場所ばしょや、合成ごうせい繊維せんいなどの特定とくてい素材そざいにつけている状態じょうたいで、ハードウェアに静電気せいでんき帯電たいでんした場合ばあい、イヤホンをとおして微弱びじゃくながら電気でんきショックがある。

静電気せいでんきによる事故じこ

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自然しぜん放電ほうでん

通常つうじょうながれる電流でんりゅうちいさく生命せいめい機能きのう影響えいきょうあたえることはすくないが、可燃かねんせい液体えきたい気体きたい可燃かねんせい蒸気じょうきふくまれる)、火薬かやくなどをあつか場所ばしょ火花ひばな放電ほうでんこると、引火いんかによる爆発ばくはつ火災かさいなどのだい事故じこになりる。

ガソリンスタンドでの引火いんか事故じこ

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セルフしきガソリンスタンドでは、揮発きはつした可燃かねんせい蒸気じょうき(ヴェーパ)が突然とつぜん発火はっかする現象げんしょう発生はっせいする場合ばあいる。きゃく乗降じょうこう着衣ちゃくいとうにおける静電気せいでんき蓄積ちくせきによる火花ひばなとう原因げんいんとされ、注意ちゅういがうながされている[6]。ガソリンスタンド従業じゅうぎょういん帯電たいでん防止ぼうし着衣ちゃくいとう対策たいさくをしているためにこうした事故じこはおこりにくいが、一般いっぱんきゃく場合ばあい給油きゅうゆまえ給油きゅうゆられている放電ほうでんプレートにれること指示しじされており、事故じこ防止ぼうし対策たいさくとして実施じっしされている。日本にっぽんでは2005ねんきゃく除電じょでん店員てんいんさがまわり、その給油きゅうゆ再開さいかいしたところふたた静電気せいでんき帯電たいでんしていたため静電気せいでんき放電ほうでんきてガソリンに引火いんかした事故じこきている[1]
かつては自動車じどうしゃ自体じたい帯電たいでん静電気せいでんき原因げんいんとなっており、アースベルトにより静電気せいでんきがすといったこともおこなわれていたが、現在げんざいではタイヤが導電性どうでんせいたかいものになっており自動車じどうしゃ帯電たいでんすることはられなくなった。

集塵機しゅうじんきでの出火しゅっか事故じこ

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てつ集塵機しゅうじんき吸引きゅういんちゅうてつとフィルターとの摩擦まさつにより静電気せいでんきのスパークがしょうじて出火しゅっかする事故じこきている[1]

可燃かねんせい混合こんごうへの引火いんか事故じこ

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酢酸さくさんエチル小分こわ作業さぎょうちゅう静電気せいでんき放電ほうでんによる火花ひばな酢酸さくさんエチル蒸気じょうき引火いんか拡散かくさん燃焼ねんしょうする事故じこきている[1]

人工じんこう衛星えいせい

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人工じんこう衛星えいせい場合ばあいは、太陽たいよう活動かつどう活発かっぱつ時期じきこうエネルギー電子でんしとう影響えいきょう衛星えいせい帯電たいでんして、放電ほうでんきることにより、衛星えいせいぜんそんするれいもある(1973ねんのDSC-II、1982ねんのGOES-4、1991ねんのMARCUS‐A、1997ねんのINSAT‐2Dなど)。このような被害ひがい防止ぼうしするためには、設計せっけい段階だんかいかく機器きき断熱だんねつカバーの接地せっち念入ねんいりにっておく必要ひつようがある。

静電気せいでんき対策たいさく

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帯電たいでん防止ぼうし対策たいさく

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静電気せいでんき対策たいさく帯電たいでん防止ぼうし対策たいさく基本きほんとなる[1]一般いっぱんけには静電気せいでんき対策たいさくグッズとう販売はんばいされている[1]

接地せっち
接地せっち設備せつび設置せっち帯電たいでん防止ぼうしふく着用ちゃくようなど[1]
帯電たいでん防止ぼうし
加湿かしつ作業さぎょうぶつ所定しょてい時間じかんしずかおけ帯電たいでん防止ぼうしざい使用しようなど[1]
除電じょでん
除電じょでん装置そうち交流こうりゅうしき自己じこ放電ほうでんしき高周波こうしゅうはコロナしき)の使用しようなど[1]
ぼうばく対策たいさく
活性かっせいガスの利用りようなど[1]

製造せいぞう現場げんばにおける静電気せいでんき対策たいさく

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ICなどの半導体はんどうたい部品ぶひん液晶えきしょう静電気せいでんきによるこう電圧でんあつ素子そし破壊はかいするおそれがあり、静電気せいでんきによるほこりの付着ふちゃくきらう。電子でんし機器きき半導体はんどうたい部品ぶひん電子でんし部品ぶひん、HDD(ハードディスクドライブ)、液晶えきしょうなどの生産せいさん現場げんばには静電気せいでんき発生はっせいさせない対策たいさく静電気せいでんき漏洩ろうえいさせる対策たいさくや、静電気せいでんき除電じょでん中和ちゅうわするイオナイザーをはじめ、様々さまざま静電気せいでんき対策たいさくほどこされている。

また、作業さぎょういん自身じしん静電気せいでんき対策たいさくとして静電気せいでんきこりにくいような服装ふくそうをしたり、リストストラップや静電気せいでんき対策たいさくゆか静電気せいでんき対策たいさくくつもちいてからだ一部いちぶ電流でんりゅう制限せいげん抵抗ていこう成分せいぶんかいしアースに接続せつぞくしておくなどの対策たいさくおこなわれている。一般いっぱん家庭かていにおいて、PC内部ないぶさわるときなども、電子でんし部品ぶひんれるまえ筐体きょうたい金属きんぞく部分ぶぶんれるなどして静電気せいでんきがすのが安全あんぜんである。筐体きょうたい金属きんぞく部位ぶいさわった瞬間しゅんかん人体じんたい電位でんい電子でんし機器きき筐体きょうたい電位差でんいさくなるが、人体じんたいたいしてなに静電気せいでんき対策たいさくしていない場合ばあい筐体きょうたいからはなしたつぎ瞬間しゅんかんには、人体じんたい衣服いふくなどによる摩擦まさつ帯電たいでんとう静電気せいでんき帯電たいでんはじまり、非常ひじょう危険きけんである。電子でんし機器きき内部ないぶなどをれる場合ばあいかなら人体じんたい静電気せいでんき対策たいさくとしてリストストラップの着用ちゃくよう必須ひっすである。ホビーとして各種かくしゅ電子でんし回路かいろなどをあつかさいにも静電気せいでんきには留意りゅういするべきであり、アースのためのクリップきコードを接続せつぞくするリストバンド静電気せいでんき帯電たいでん防止ぼうしくつ(安全あんぜんくつ)などが市販しはんされている。

小麦粉こむぎこ製造せいぞうやカーボンブラックの製造せいぞうでも粉塵ふんじん爆発ばくはつ静電気せいでんきによるものが殆んどで往々おうおうにしてだい被害ひがいこす。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 防災ぼうさい調査ちょうさ現場げんばから だい11かい 日立ひたち保険ほけんサービス、2020ねん2がつ13にち閲覧えつらん
  2. ^ Niels H. de V. Heathcote (December 1967). “The early meaning of electricity: Some Pseudodoxia Epidemica - I”. Annals of Science 23 (4): 261. doi:10.1080/00033796700203316. 
  3. ^ バチッといた静電気せいでんき 帯電たいでん体質たいしつ真実しんじつ静電気せいでんき原因げんいん対処たいしょほう専門せんもんきました - at home VOX(アットホームボックス) 2020ねん11月6にち閲覧えつらん
  4. ^ Apple earbuds and static electricity” (英語えいご). Apple Support. 2021ねん1がつ26にち閲覧えつらん
  5. ^ iPodとiPhoneのイヤフォンから静電気せいでんき Appleが注意ちゅうい喚起かんき”. ITmedia NEWS (2009ねん5がつ20日はつか). 2021ねん1がつ26にち閲覧えつらん
  6. ^ 米国べいこくセルフスタンドの火災かさい - 危険きけんぶつ保安ほあん技術ぎじゅつ協会きょうかいホームページ 2011ねん11月4にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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